オリーブオイルとトランス脂肪酸の基礎知識
健康によい植物性の油として、まず名前があがる「オリーブオイル」。育ち盛りの子どもがいるご家庭や、健康を意識するご家庭でなじみ深い油の一つではないでしょうか。そのオリーブオイルにも「トランス脂肪酸」がわずかに含まれることがある、と聞くと不安になるかもしれません。
「離乳食を卒業した子のためにパンケーキを焼こうとして、フライパンの前で手が止まった」という声は少なくありません。オリーブオイルなら安心だと思っていたのに、トランス脂肪酸が入っているかもしれない。パッケージを見ても答えは書かれておらず、調べてみると「悪玉」「危険」といった強い言葉ばかりが目に入って、かえって混乱してしまう。そんな場面から、この記事は始まります。
先に結論をお伝えすると、過度に心配する必要はありません。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、日本人の大多数はトランス脂肪酸に関する世界保健機関(WHO)の目標(総エネルギーの1%未満)を下回っており、その健康への影響は飽和脂肪酸より小さいと考えられる、とされています。ただし、不可欠な栄養素ではなく、積極的に摂る必要もない、というのが公的な見解です。正しく知って、上手に付き合っていきましょう。
この記事では、2026年10月時点で確認できる厚生労働省、農林水産省、食品安全委員会、消費者庁、WHOなどの資料をもとに、トランス脂肪酸の基礎、オリーブオイルに含まれる量の考え方、家庭での選び方と使い方を整理します。いずれも一般的な目安であり、個人差があります。体調や持病に関わる判断は、かかりつけ医や管理栄養士などの専門家にご相談ください。
トランス脂肪酸とは何?
脂肪酸には、炭素の二重結合がない「飽和脂肪酸」と、二重結合がある「不飽和脂肪酸」があります。このうち不飽和脂肪酸は、さらに「トランス型」と「シス型」に分けられます。
トランスは「対角線上の」という意味で、二重結合をはさんで水素が対角線上についているもの。シスは「同じ側に」という意味で、水素が同じ方向についているものを指します。形でたとえると、シス型は二重結合のところで折れ曲がり、トランス型は比較的まっすぐな形です。形がちがうため、同じ不飽和脂肪酸でも性質が変わり、トランス型は飽和脂肪酸のように固まりやすい性質をもちます。
天然の食品にトランス型の不飽和脂肪酸はほとんど含まれません。ただし、牛や羊のように食べたものを反すう(何度も咀嚼)する動物の肉や乳には、胃の中の微生物のはたらきで、ごく微量の天然由来トランス脂肪酸が含まれます。
まずは脂肪酸の種類を、ざっくり整理しておきましょう。
| 脂肪酸の種類 | 常温での状態 | 多く含む食品の例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 飽和脂肪酸 | 固体になりやすい | バター、ラード、肉の脂身 | 摂りすぎるとLDLコレステロールを増やす傾向 |
| 一価不飽和脂肪酸(オメガ9) | 液体 | オリーブオイル、なたね油 | オレイン酸が代表で、酸化に比較的強い |
| 多価不飽和脂肪酸(オメガ6・オメガ3) | 液体 | ごま油、えごま油、魚油 | 体内で作れない必須脂肪酸を含む |
| トランス脂肪酸 | 主に加工の過程で生じる | マーガリンやショートニングを使った食品 | 必須栄養素ではなく、摂りすぎに注意 |
脂質は、体のエネルギー源になるだけでなく、細胞をつくる材料にもなる大切な栄養素です。とくに成長が著しい乳幼児期は、体の大きさのわりに多くのエネルギーを必要とするため、油を減らしすぎないことも大切になります。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1歳以上の脂質の目標量は総エネルギーの20〜30%とされています。つまり「油を避ける」のではなく、「どんな油を、どれくらい、どんな形でとるか」を考えるのが基本です。
よくあるつまずきは、「固い油は悪い油、液体の油はよい油」と単純に分けてしまうことです。たしかに常温で固まりやすい油には飽和脂肪酸が多い傾向があります。ただ、液体の植物油を固めるために水素添加をしたマーガリンやショートニングにはトランス脂肪酸が生じることがあり、見た目の固さだけでは判断できません。上の表のように、種類ごとの特徴を並べて見ると整理しやすくなります。
トランス脂肪酸が体に与える影響
脂質そのものは、人が生きていくうえで欠かせない栄養素です。ただし、種類を問わず大量に摂ればエネルギー過多になり、肥満などの一因になることがあります。
トランス脂肪酸については、摂りすぎるとLDL(悪玉)コレステロールが増え、HDL(善玉)コレステロールが減る傾向があり、冠動脈疾患のリスクとの関連が指摘されています。こうした背景から、WHOは飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を、植物由来の不飽和脂肪酸や食物繊維を含む食品などに置き換えていくことをすすめています。
とはいえ、必要以上に怖がることはありません。前述のとおり、厚生労働省は「日本人の大多数はWHOの目標(1%エネルギー未満)を下回っており、影響は飽和脂肪酸より小さい」としています。一方で「不可欠な栄養素ではなく、摂取量はできるだけ低く抑えることが望ましい」「脂質に偏った食事をしている人は留意が必要」とも示しています。つまり、神経質になりすぎず、油や加工食品にかたよらないことが大切です。
公的機関が示すトランス脂肪酸の目安
WHOは、工業由来および反すう動物由来のトランス脂肪酸からとるエネルギーを、総エネルギーの1%未満にすることを目標としています。厚生労働省も同じく「1%エネルギー未満、できるだけ低く」が望ましいとしています。日本人の平均摂取量は、この目安を下回っているとされています。
「同じ量なら飽和脂肪酸より影響が大きいのに、なぜ日本では心配しすぎなくてよいの?」と疑問に思う方もいるでしょう。食事摂取基準には、トランス脂肪酸を同じ量とった場合にLDL/HDL比へ与える影響は、飽和脂肪酸の約2倍と紹介されています。一方で、日本人の平均摂取量は0.3%エネルギー程度、飽和脂肪酸は7%程度と大きな差があるため、集団全体への影響は飽和脂肪酸の12分の1程度との試算も示されています。つまり、1gあたりの影響の大きさと、実際にとっている量の少なさの両方を見て、「通常の食生活では健康への影響は小さい」と評価されているのです。食品安全委員会も、2012年3月の評価で同じ結論を示しています。
数字のイメージがわくように、脂質1gを9kcalとして、エネルギー量別の「1%エネルギー」と「平均0.3%エネルギー」の重さを計算してみました。
| 1日のエネルギー量の例 | 1%エネルギーにあたる量 | 平均0.3%エネルギーにあたる量 |
|---|---|---|
| 1,200kcal | 12kcal、約1.3g | 3.6kcal、約0.4g |
| 1,500kcal | 15kcal、約1.7g | 4.5kcal、約0.5g |
| 2,000kcal | 20kcal、約2.2g | 6kcal、約0.7g |
この表は算術で出した目安で、家庭で毎日グラム数を測ることをすすめるものではありません。子どもの必要なエネルギー量は年齢や体格、活動量で異なります。大切なのは、数字に追われるより、菓子類や揚げ物が続く食事になっていないかを振り返ることです。食事摂取基準にも、脂質に偏った食事や脂質の多い菓子類の食べすぎなど、偏った食事では平均を上回る可能性があると書かれています。
健康診断でコレステロール値を指摘された、脂質異常症などで食事指導を受けているといった場合は、油の種類だけで自己判断せず、かかりつけ医や管理栄養士の指導を優先してください。
トランス脂肪酸はどのような食品に含まれる?
牛肉・羊肉や乳製品には天然のトランス脂肪酸が含まれますが、ごく微量のため、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられています。気にかけたいのは、食品の製造過程で生じるトランス脂肪酸のほうです。加工によって生じるものは、天然由来に比べて含有量が多くなることがあります。
農林水産省によると、トランス脂肪酸には天然由来と加工由来があり、現時点で由来のちがうものを区別して分析する方法はありません。食事摂取基準でも、由来によって健康への影響が異なるかを区別する十分なエビデンスはないとされています。そのため、バターや牛乳をむやみに避ける必要はなく、「どの食品をどれだけ、どんな頻度でとるか」を見ていく考え方が現実的です。
店頭でも、こんな場面があります。おやつ売り場で「トランス脂肪酸ゼロ」の文字に安心して、いつもより多めにカゴへ入れてしまった。ところが、ゼロ表示でも脂質が少ないわけではなく、エネルギーや脂質は菓子として相応にある。「ゼロ」の文字は、トランス脂肪酸だけの話にすぎません。
水素添加で生じるトランス脂肪酸
常温で液体の油脂を、扱いやすいように固形にする加工技術を「水素添加」と呼びます。たとえば植物油は常温では液体ですが、これを原料につくられるマーガリンは、水素添加によって固形になっています。この水素添加の工程で、トランス脂肪酸が多く生じることがあります。
水素添加技術が使われる主な食品
マーガリン、ショートニング、スプレッド、またこれらを使って調理した揚げ物、洋菓子、パンなど
買い物のときは、原材料表示に「マーガリン」「ショートニング」「ファットスプレッド」「加工油脂」といった名前があるかを見てみましょう。ただし、これらの表示があるからといって、必ずトランス脂肪酸が多いとは限りません。製品や製造方法によって含有量はちがい、近年は低減に取り組む事業者もあります。気になる商品は、栄養成分表示にトランス脂肪酸の記載があるかを確認する方法もあります。
トランス脂肪酸の含有量の表示は、消費者庁が2011年(平成23年)に公表した「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」にもとづく情報開示が中心で、事業者が任意で行うものとされています。表示がない商品は、含有量が不明という意味であり、多いという意味ではありません。メーカーのお客様相談窓口で問い合わせる方法もあります。
高温処理を行った食用油
ラードや牛脂などの動物性油は体に良くないイメージを持たれがちですが、植物油も精製方法によってはトランス脂肪酸を含むことがあります。
植物油を精製する過程では、好ましくないにおいを取り除くために高温処理(脱臭)を行うことがあり、このとき油に含まれるシス型不飽和脂肪酸の一部がトランス型に変化します。
高温処理されている食用油の例
サラダ油などの精製した食用油、精製方法を確認しても「加工していない」と明記されていない食用油
ただし、精製のときに生じるトランス脂肪酸は、水素添加で生じる量と比べるとごくわずかです。農林水産省の調査では、160〜200℃の揚げ調理で同じ油を繰り返し加熱しても、トランス脂肪酸の増加はごく微量で、健康への影響は無視できる程度と確認されています。なお、これはトランス脂肪酸に限った話で、油は使うほど風味や色が落ちやすくなるため、揚げ油は早めに使い切るのが基本です。
家庭で過度に心配する必要はありませんが、揚げ物や洋菓子、加工食品にかたよらず、いろいろな食材をバランスよく取り入れることを心がけましょう。なお、持病があって医師や管理栄養士から脂質などの食事指導を受けている場合は、自己判断せず、かかりつけの専門家に相談しながら進めると安心です。
2026年10月時点の最新情報:以前の前提と現在の状況
以前の前提
トランス脂肪酸は「摂ってはいけない悪い油」、マーガリンやショートニングは「体に悪いもの」と、ひとまとめに受け止められてきた面があります。オリーブオイルのような植物油にも「含まれているなら避けたい」という不安が向きがちでした。
現在の状況
公的機関の資料を確認すると、2026年10月時点では次のように整理されています。
| 項目 | 現行の内容 | 対象 | いつから |
|---|---|---|---|
| 日本人の食事摂取基準(2025年版) | 目標量は設けず、参考値として1%エネルギー未満、できるだけ低く。通常の食生活では影響は小さいと考えられる | 日本人全般 | 令和7年度から令和11年度(2025年4月から2030年3月) |
| 農林水産省の実態調査(令和4・5年度) | 油脂類・油脂原料加工食品27品目522点で、過去の調査と比べトランス脂肪酸は全体的に減少傾向 | 市販の油脂類・加工食品 | 2024年10月30日に公表 |
| 消費者庁の情報開示指針 | 含有量の表示は事業者による任意の情報開示 | 食品事業者 | 2011年(平成23年)2月21日 |
| 食品安全委員会の評価 | 日本人の大多数はWHO基準を下回り、通常の食生活では健康への影響は小さい | 日本人全般 | 2012年3月 |
| WHOの目標 | 成人で総エネルギーの1%未満。工業由来トランス脂肪酸の排除を目指している | 世界の各国 | 継続中 |
農林水産省の令和4・5年度の調査では、共通する26品目すべてで、過去の調査と同じか、より低い結果でした。飽和脂肪酸には大きな変動はなく、農林水産省は「通常の食生活では健康への影響は小さい」水準が維持されているものと考えています。なお、こうした調査の結果は、市販の油脂類全体の傾向を示すもので、個別の商品の含有量を示すものではありません。
家庭での対応
減少傾向にあるからといって「どれだけとってもよい」という意味ではありません。引き続き、菓子類や揚げ物が続かないようにし、いろいろな食品をバランスよく食べることが基本です。次の改訂や調査で数値が更新される可能性もあるため、気になるときは厚生労働省や農林水産省の最新の公表資料を確認してみてください。
オリーブオイルにトランス脂肪酸は入っている?
オリーブオイルには、精製方法によっていくつかの種類があります。果実を搾っただけの「エクストラバージンオリーブオイル」、精製した「精製オリーブオイル」、両者をブレンドした「ピュアオリーブオイル」などが一般的です。呼び方や分類はメーカーによって異なることもあります。
日本農林規格(JAS)の「食用植物油脂の日本農林規格」には「オリーブ油」「精製オリーブ油」の区分があります。一方、店頭で目にする「エクストラバージン」「ピュア」は商品の呼び名として使われることが多く、定義はメーカーや規格によってちがいます。ラベルの名前だけで判断せず、裏面の表示や説明を読む習慣をつけると安心です。
オリーブオイルのトランス脂肪酸はごく微量
オリーブオイルは、オメガ9に分類されるオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)を多く含む油です。文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)脂肪酸成分表編」では、エキストラバージンオイルを試料としたオリーブ油は、100gあたりオレイン酸が約73gとされています。脂肪酸の総量に対する割合で計算すると約77%で、飽和脂肪酸は約14%、多価不飽和脂肪酸は約8%です。オレイン酸は酸化に比較的強いため、加熱調理にも使いやすいのが特徴です。
このオリーブオイルも、高温で加熱する脱臭などの精製工程を通る場合には、トランス脂肪酸がわずかに生じることがあります。とはいえ、その量は水素添加で生じるものと比べてごく少量です。とくにエクストラバージンオリーブオイルは、果実を搾って使うタイプで、脱臭のような高温の精製工程を通さないため、トランス脂肪酸が生じる要因が少なく、ほとんど含まないものもあると考えられます。ただし、実際の含有量は商品や製造方法によってちがいます。この記事では個別の商品の数値は取り上げず、公的資料で確認できる範囲で説明しています。
「オリーブオイルだからトランス脂肪酸はゼロ」「精製だから危険」と、どちらかに言い切ってしまうのも誤解のもとです。大切なのは、種類ごとの違いを知ったうえで、毎日の使い方に落とし込むことです。
家庭での選び方と使い方の目安
選ぶときの目安として、生のままサラダや料理の仕上げに使うならエクストラバージンを、加熱調理に使うなら好みや価格に合わせて選ぶと無理がありません。使い方別に整理すると、次のようになります。
| 使い方 | 選び方の目安 | ひと言ポイント |
|---|---|---|
| サラダ、仕上げのひとたらし | エクストラバージン | 香りを生かしたいときに向いています |
| 炒め物、焼き物 | 好みや価格に合わせてエクストラバージンや精製タイプ | 煙が出るほど熱しすぎないようにします |
| 揚げ物 | 量が必要なため、価格や風味に合わせて選ぶ | 油は使うほど風味が落ちるので早めに使い切ります |
| 離乳食、幼児食 | ごく少量を、加熱後に少しかける程度から | 月齢や体調に合わせて進めます |
開封後は時間とともに酸化が進むため、早めに使い切れる量を選ぶのもポイントです。光や熱、空気に触れると風味が落ちやすいので、使ったらふたをしっかり閉め、コンロのそばを避けて保管しましょう。大容量を買って何か月も使い続けるより、小さめのボトルを使い切るほうが、味も保ちやすく、結果的に無駄になりません。
離乳食や幼児食に使うときは、油を足さなくても素材の味を楽しめる時期であることも忘れずに。炒め物に少し使う、仕上げに数滴たらすなど、ごく少量から始めれば十分です。離乳食の進め方や子どもの食事量に不安があるときは、乳幼児健診や市区町村の保健センター、小児科で相談できます。
買い物で確認したい3ステップ
「結局、店でどう選べばいいの?」という声にこたえて、手間のかからない確認手順をまとめます。
- 原材料表示を見る。マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、加工油脂などの名前があるかをさっと確認します。
- 栄養成分表示を見る。トランス脂肪酸の記載があれば量を、なければ脂質やエネルギーを参考にします。なお、食品100gあたり0.3g未満であれば「0g」と表示できる基準があり(農林水産省の資料より)、食べる量が多いと少量は入りうる点も知っておくと安心です。
- 頻度で考える。1つの商品に一喜一憂せず、菓子や揚げ物が毎日続いていないかを、1週間の単位で振り返ります。
この3ステップは、忙しい日でも数十秒でできます。完璧を目指さず、「気づいたときに確認する」くらいの気持ちで続けるのが長続きのコツです。
家族で共有したい声かけ例
パパや祖父母が「おやつにこれをあげていい?」と聞いてくる場面は、どのご家庭にもあるでしょう。情報を共有するときは、強い言葉より、具体的な見方を伝えるほうが伝わりやすくなります。
| 場面 | 伝わりにくい言い方 | 伝わりやすい言い方 |
|---|---|---|
| おやつをあげるとき | 「トランス脂肪酸が入ったお菓子は絶対だめ」 | 「毎日続かないように、週の中で楽しみにしよう」 |
| パンにつけるものを選ぶとき | 「マーガリンは体に悪いから使わないで」 | 「表示を見て、使う量を少なめにしてみよう」 |
| 料理に使う油を選ぶとき | 「オリーブオイルなら全部安心」 | 「用途に合わせて、使い切れる量を買おう」 |
先輩ママの失敗談としてよく聞くのが、「トランス脂肪酸を避けようと神経質になりすぎて、食事の時間がぴりぴりしてしまった」という話です。食事が楽しくなくなっては本末転倒です。まずは家族みんなが無理なく続けられる範囲で、少しずつ整えていくことをおすすめします。
よくある誤解を整理しよう
- 「オリーブオイルなら何でも安心」と思いがちですが、種類や使い方、量によって考え方は変わります。エネルギーは他の油と同じく、1gあたり約9kcalです。
- 「トランス脂肪酸ゼロなら体によい」とは限りません。ゼロ表示でも脂質やエネルギーが少ないわけではなく、食べすぎれば脂質のとりすぎになります。
- 「天然のトランス脂肪酸なら安全」と言い切ることもできません。WHOは、工業由来も反すう動物由来も同じ基準で目標を示しています。ただし、これは「とりすぎに気をつける」という意味で、バターや牛乳を普通に食べる範囲であれば、過度に避ける必要はありません。
- 「トランス脂肪酸は、子どもが少しでも食べたらいけない」と思い込む必要はありません。通常の食生活では健康への影響は小さいとされており、頻度や量のバランスで考えます。
今日からできるチェックリスト
- おやつや菓子パンが、毎日続いていないかを振り返る
- 買い物のときに、原材料表示のマーガリン、ショートニングなどの名前を確認する
- 揚げ物や洋菓子の頻度を、週の単位で見直す
- オリーブオイルは、使い切れる大きさを選び、ふたを閉めて冷暗所に置く
- 健診の結果が気になる、食事指導を受けているときは、自己判断せず専門家に相談する
トランス脂肪酸とオリーブオイルのよくある質問
Q. オリーブオイルで揚げ物をしてもいいですか?
A. 揚げ調理そのものでトランス脂肪酸が増える量は、農林水産省の調査ではごく微量とされています。オリーブオイルはオレイン酸が多く酸化に比較的強いので使えますが、価格が高めなので、量が必要な揚げ物では他の油と使い分けるご家庭も多いようです。揚げ油は風味が落ちるので、早めに使い切りましょう。
Q. 子どもは、トランス脂肪酸をどれくらいまでとってよいのですか?
A. 食事摂取基準では、トランス脂肪酸の目標量は設けられておらず、参考値として1%エネルギー未満、できるだけ低くとどめることが望ましいとされています。年齢別の細かな数値は示されていません。数値を管理するより、菓子や揚げ物が続かないように、全体の食事のバランスで考えるのが現実的です。
Q. バターとマーガリンは、どちらがよいのでしょうか?
A. 一概にどちらがよいとは言えません。バターは天然由来のトランス脂肪酸を微量に含み、飽和脂肪酸が多い食品です。マーガリンは製品や製造方法によってトランス脂肪酸の量がちがいます。どちらも使いすぎないことが基本で、気になる場合は栄養成分表示を確認してみましょう。
Q. エクストラバージンと精製オリーブオイルは、どう使い分ければよいですか?
A. 香りを生かしたいサラダや仕上げにはエクストラバージン、毎日の炒め物には好みや価格で選ぶとよいでしょう。精製工程で高温の脱臭を通る場合、トランス脂肪酸がわずかに生じることがありますが、その量は水素添加と比べてごく少量です。過度に心配せず、味や使い勝手を基準に選んで問題ありません。
Q. 開封後のオリーブオイルは、どのくらいで使い切ればよいですか?
A. 開封後は酸化が進むため、風味が落ちないうちに使い切るのが目安です。何か月で使い切るべきかは商品や保管状況によって変わるため、パッケージに書かれた使用目安を確認してください。光や熱を避けて保管し、においや味に違和感があれば無理に使わないようにしましょう。
困ったときの相談先と、今日からできること
トランス脂肪酸の話は、「ゼロにしなければ」と考えると苦しくなります。オリーブオイルも含めて、油は子どもの成長に欠かせない栄養素の一つです。種類や使い方を知ったうえで、菓子や揚げ物が続かないように整え、いろいろな食材をバランスよく食べることを、まずの目標にしてみてください。
健診でコレステロール値を指摘された、アレルギーや持病で食事制限がある、離乳食や幼児食の進め方に不安があるといったときは、かかりつけ医や管理栄養士、乳幼児健診や市区町村の保健センターなどで相談できます。家族の食生活を健やかに保つ近道は、油の種類や使い方を、ご家庭に合う形でバランスよく整えていくことです。



