幼児的万能感とは?健全な自己肯定感を育てるための親の関わり方
小さな子供は、自分がヒーローに変身して、悪者と戦って勝てると真剣に思い込んでいることってありますよね。また、「大きくなったらアンパンマンになりたい」なんて、可愛い夢を持っていたりします。
このように、子供ができるはずがないことをできると本気で信じているのには、「幼児的万能感」という感覚がかかわっています。
幼児的万能感は、幼児期の子供なら誰でも持っている感覚で、心が育つ途中に現れる自然な姿です。「自分でやりたい」という意欲の元になる一方で、思い通りにならない場面ではかんしゃくや大泣きにつながりやすく、関わるママやパパが戸惑うことも多い時期です。
幼児的万能感とは、一体どんなもので、どうすれば自然に卒業できるのでしょう?
ここでは、幼児的万能感を持つ年頃のお子さんのママが知っておくと安心な、幼児的万能感と付き合うコツや、健全な自己肯定感への移行を促す方法をご紹介します。やりたがる場面、できないと分かって悔しがる場面、負けて泣く場面など、日常でよくあるシーンごとの声かけの例も取り上げます。
心理学における幼児的万能感の意味と発達段階
「万能感」とは、心理学用語で「自分は万能だ」という根拠のない自信の感覚のことで、特に、幼児期にみられる万能感のことを「幼児的万能感(または、全能感)」といいます。
赤ちゃんは、泣けばママがおむつを替えてくれるし、おっぱいやミルクを飲ませてくれるし、何もしなくても欲求を満たしてもらえます。さらに、少し大きくなってハイハイや歩きはじめると、周囲の大人が常に先回りをして、転びそうな場所や手の届く物に気を配ってくれます。
このように守られた環境で成長することによって、子供は自我の芽生えとともに「自分はなんでもできる」「自分は世界の中心だ」という感覚が強くなっていくのです。この万能感が生まれる主な理由は、乳幼児期に周囲の大人から手厚く世話をされ、欲求がほぼ満たされる環境にあること自体にあります。特定の育て方だけが原因というわけではなく、乳幼児期には誰にでも共通して起こる自然な発達の流れです。
人生経験を積んだ大人なら、「そんなはずはない」ということはお分かりですよね。子供も同様に、幼児的万能感を経て、さまざまな経験をすることで「自分は何でもできるわけではない」ということに少しずつ気づいていきます。幼児的万能感は、子供が成長する上で健全な自我を形成するために必要な感覚だといえます。
万能感は「できると信じる力」でもあるため、挑戦する気持ちの土台になります。「どうせできない」と最初から諦める子より、「やってみる」と飛び込める子のほうが、経験を重ねる機会に恵まれます。この時期の万能感は、取り除くものではなく、現実と出会いながら少しずつ形を変えていくものと考えると、親の気持ちも楽になります。
| 時期の目安 | 子供の様子 | 万能感との関わり |
|---|---|---|
| 0歳から1歳ごろ | 泣くと大人がすぐに応えてくれる | 安心して過ごせる経験が積み重なり、周囲への信頼の土台になる |
| 1歳から2歳ごろ | 歩く、触る、「自分で」と主張しはじめる | 自我が芽生え、何でも自分の思い通りにしたくなる |
| 3歳から5歳ごろ | 「やるー」「できる!」と何にでも挑戦したがる | 万能感が目立つ時期。ごっこ遊びで変身や魔法を本気で楽しむ |
| 5歳から小学校低学年ごろ | 友達との比較や、できないことへの気づきが増える | 「努力すればできる」という実感に少しずつ置き換わっていく |
時期はあくまで目安で、子供の個性や生活環境によって前後します。同じ年齢の子と比べて早い、遅いと心配するより、目の前の子の様子を見守る気持ちで読み進めてください。
幼児的万能感はいつからいつまで続き、どう変化していくのか
幼児的万能感は、「母子一体感」という母親との一体感が薄れることで自我が芽生える時期である、イヤイヤ期のころから目立ちはじめます。イヤイヤ期と重なる2歳から3歳ごろにも見られ、3歳ころから5歳くらいの幼児に特に顕著にみられる特徴です。
それまで、親の手厚い保護のもとで、大きな失敗を経験することなく育ってきたことで、何かをしようとする時に不安を感じることはあまりありません。それどころか、「やれば何でもできる!」という根拠のない自信で満ち溢れています。
そのような自信から、とりあえず何でも「やるー」と言ってやりたがる「やるやる期」が到来するのです。この時期は、子供が自発性や主体性を学ぶための大切なステップだと考えられています。
やるやる期の子供の特徴と行動
やるやる期の子供は、とにかく何でも自分でやりたがるようになって、できもしないことを「できる!」と言い張ります。ママが先にやってしまうとヘソを曲げるのも困りものです。
さらに、自分は万能だと思っているので、「私は魔法が使える」とか「大きくなったらライオンになる」ということを、本気で考えています。現実と空想の区別がまだあいまいで、想像力が豊かな時期の現れでもあります。
やっとイヤイヤ期が終わったと思ったら、今度はやるやる期か…とため息が出そうですが、ママを困らせることも成長の証として、広い心で受け止めてあげましょう。
やるやる期によく見られる行動には、次のようなものがあります。
- 牛乳をコップに注ぎたがり、こぼしても「自分でやる」と譲らない
- 重い荷物や大きな箱を「持てる!」と言い張る
- ボタンや靴のマジックテープなど、時間がかかる作業を急いでいても自分でやりたがる
- できなかったとき、「ママのせい」と怒ったり、「もう一回!」とやり直したがったりする
どれも、「自分でできるようになりたい」という気持ちの表れです。大人から見れば遠回りでも、子供にとっては、できることを増やすための練習の時間になっています。
幼児的万能感の健全な消失と自己肯定感への移行
自分は何でもできると自信満々だった「やるやる期」は、いつまでも続くというわけではありません。
「自分が太刀打ちできない相手に出会う」「思い通りにならないことがあることに気づく」など、小さな挫折や失敗の経験を重ねることによって、多くの場合、就学前後にかけて幼児的万能感は少しずつ薄れていきます。この過程で、根拠のない万能感は「私は努力すれば、できる」という健全な「自己有能感」や「自己肯定感」へと置き換わっていくのが、理想的な成長の流れです。
ここで大切なのは、万能感が薄れるときに、子供が「できない自分はだめだ」と感じてしまわないことです。万能感が崩れる瞬間は、子供にとって大きなショックです。「ほんとうは、できないことがある」と気づいたときに、「でもやってみたらちょっとできた」「ママが一緒にいてくれる」という経験が支えになると、現実の自分を受け入れやすくなります。
反対に、挑戦する前から親がすべて先回りしてしまうと、子供は「自分は何ができて、何ができないのか」を確かめる機会が少なくなります。過度に手を貸すことは、現実の自分を知る機会を減らすことにつながる点に気をつけたいところです。
では、日常のどんな場面で、どう関われば自然な移行を後押しできるのでしょうか。次の章で、具体的な場面ごとに見ていきましょう。
やるやる期によくある場面と、受け止め方の声かけ
万能感を持つ年頃の子供との日常は、「できる!」「やる!」の連続です。そのたびに、否定も手出しもしすぎない関わり方を意識できると、子供は安心して現実と向き合えます。基本は、気持ちを受け止める、事実を伝える、できる範囲を一緒に探す、の3ステップです。
声かけの基本は、「できない」と決めつける言葉より、「やってみよう」「どうしたらできるかな」と一緒に考える言葉です。ただし、褒めすぎや持ち上げすぎは、かえって万能感を強めることもあるため、事実に沿った言葉を選びます。
| 場面 | つい言いがちな声かけ | おすすめの声かけ |
|---|---|---|
| 「ヒーローに変身できる!」と言うとき | 「変身なんてできないよ」 | 「かっこいいね!どんなヒーローなの?」と世界観に付き合う |
| 重い荷物を「持てる!」と言い張るとき | 「無理でしょ、貸して」 | 「じゃあ、このくらいの重さからやってみる?」と、できる量に切り替える |
| できなくて泣いたとき | 「だから言ったでしょ」 | 「悔しかったね。次はどうしたらいいかな」と気持ちに寄り添ってから考える |
| ママが先にやってしまいヘソを曲げたとき | 「早くしないと遅れるよ」 | 「ごめんね、やりたかったんだね。次は最初から見ているね」 |
| かけっこで負けて悔しがったとき | 「大丈夫、ほんとうは一番だったよ」 | 「悔しいね。最後まで走りきったね」と事実と頑張りを伝える |
魔法やなりきり遊びには、世界観ごと付き合う
「私は魔法が使える」「ライオンになる」といった発言は、現実と空想の境があいまいな年齢ならではの楽しい想像です。ここで「そんなことはできない」と現実を突きつけてしまうと、想像する楽しさまで一緒にしぼんでしまいます。
NGの例は、「魔法なんてないんだよ」と一刀両断することです。おすすめは、「すごい!どんな魔法?」と質問を返し、遊びのなかで物語を広げることです。そのうえで、食事や片づけといった生活の場面では、「ライオンさんは、ごはんを食べて強くなるんだよね」と、遊びの設定を使いながら現実の行動へ誘います。想像を認めながら、生活のルールは変わらないことを自然に伝えられます。
運動会やかけっこで負けて悔しがる場面
万能感が強い年頃の子供は、「自分は一番になれる」と本気で信じていることがあります。だからこそ、運動会のかけっこやゲームで負けたとき、思いがけず強い悔しさを感じて泣き出したり、「もうやらない」と怒ったりしやすい時期です。
この悔しさは、「自分は何でもできるわけではない」と気づきはじめたサインであり、現実と出会う大切な経験の一つです。親が慰めようとして「ほんとうは一番だったよ」と事実と違うことを伝えてしまうと、子供は現実を受け止めるチャンスを逃してしまいます。かといって、「負けたんだから仕方ないでしょ」と突き放すのも、気持ちの置き場がなくなってしまいます。
おすすめの流れは、次の3つです。
- まず気持ちを言葉にして受け止める(「悔しかったね」「一番になりたかったんだね」)
- 事実と頑張りを具体的に伝える(「最後まで走りきったね」「前より速くなったね」)
- 気持ちが落ち着いてから、次にやってみたいことを聞く(「次はどうしたい?」)
運動会の前には、「全力で走るのが楽しみだね」「負けても勝っても、やってみることが大事だよ」と、結果よりも取り組み方に目を向ける声かけをしておくと、当日の気持ちの揺れが小さくなりやすくなります。
悔しがって泣いたときは、すぐに泣きやませようとせず、気持ちが落ち着くまで隣にいるだけでも十分です。ゲームや遊びで負けたときも同じで、勝ち負けのある遊びを家庭で少しずつ経験しておくと、「負けても、また楽しく遊べる」ことを体験できます。
幼児的万能感から健全に卒業させるためにママがすべき5つのこと
幼児的万能感は自然に薄れていくものですが、日々の関わり方によって、その移り変わりはよりスムーズになります。それでは、子供を幼児的万能感から健全に卒業させるためには、ママはどのようなことをするべきなのでしょう?
子供の成長を後押しするために、次の5つのことに心がけてみましょう。
1「失敗」や「挫折」の機会を奪いすぎない
子供に対して過保護になるあまりに、親がさまざまな障害物を取り除いてしまうことで、子供の「失敗」「挫折」の機会を奪ってしまっていることがあります。
可愛い子供に失敗や挫折を経験させることは、親として大変つらいことですが、失敗や挫折は、時として子供の成長を促す「学びの糧」となることもあるのです。見ていて危なっかしくても、「多少うまくいかなくてもしょうがない」と割り切る心を持つことも大事ですよ。その代わり、そばで見守り、困ったときにはいつでも手を貸せる距離にいてあげましょう。
実際の場面では、親が手を出す前に「自分でやってみる?」と聞くのが第一歩です。たとえば、靴を履くときは、「ママは見ているから、やってみてね」と伝えて、少し待ちます。うまくいかなくて子供が助けを求めてきたときに、「ここを持つと、入りやすいよ」とコツだけ伝えると、最後は自分の力でできたという実感が残ります。
NGの例は、「貸して!ママがやるから」と、子供が悩み始めてすぐに取り上げてしまうことです。時間に余裕がない朝などは、「今日は急いでいるから、ここだけママが手伝うね」と、理由を添えて部分的に手伝うのがおすすめです。
2子供を「特別な存在」として過度に扱わない
親が子供の世話をするのは当たり前のことですが、決して子供の「召使い」になってはいけません。親は何でも自分の言うことを聞く存在だという、誤った認識を持たせないよう注意しましょう。
子供が可愛いからといって、何でもわがままを聞いて好き勝手にさせていると、子供は「自分は特別扱いされて当たり前」と思い込んでしまい、周りの人の気持ちに目が向きにくくなります。大切にすることと、何でも言いなりになることは別のものです。
また、注意が必要なのが、おじいちゃんやおばあちゃんの存在です。目の中に入れても痛くないほど可愛い孫の言うことなら何でも聞いてしまうので、甘やかしすぎないよう、夫婦で方針を話し合っておくことも大切です。
家庭内で、「お菓子は1日1回」「お片づけは自分でする」など、ルールを共有しておくと、場所が変わっても子供の混乱が少なくなります。祖父母には、「ルールを守れたらたくさん褒めてあげてね」とお願いすると、角が立たず協力してもらいやすくなります。
子供が何か頼むときの声かけも、具体的な例で意識できると安心です。NGの例は、「ジュース持ってきて」という要求に、黙って応じ続けることです。おすすめは、「ありがとうって言ってくれたら、持ってくるね」「一緒に取りに行こうか」と、頼み方を教えながら関わることです。親が召使いにならなくても、愛情はしっかり伝わります。
3ルールの大切さと他者への配慮を教える
子供がしてはいけないことをした時に、感情的に怒るのではなく、「何がいけないのか」を分かりやすく伝える叱り方を身につけましょう。
うわべだけで叱っても、小さな子供にはきちんと伝わりません。「なぜその行動がダメなのか」「その行動が相手にどのような影響を与えるのか」ということを、短い言葉で伝えることが大切です。
子供を叱る際は、次のようなことに気を付けるようにしましょう。
子供を叱る際の注意点
- 感情的にならず、冷静に伝える
- 何がいけないのか分かりやすく、具体例を示して説明する
- 子供の目線に合わせて顔を見て話す
- 長々と時間をかけず、簡潔に終える
- 行動を叱るのであり、子供の人格を否定しない
たとえば、お友達のおもちゃを無理に取ってしまった場合、NGの例は「なんでそんなことするの!悪い子ね」と頭ごなしに叱ることです。おすすめは、しゃがんで目線を合わせ、「取られたら、◯◯ちゃんは悲しい気持ちになるよ。貸してって言ってみようか」と、相手の気持ちと次にとる行動を伝えることです。
「悪い子」という言葉は、行動ではなく子供そのものを否定してしまうため、「その行動はよくないよ」と言い換えます。叱ったあとは、できた場面を見つけて、「ちゃんと貸してって言えたね」とすぐに認めると、ルールを守る気持ちが育ちます。
ルールは、一度言えば伝わるものではなく、同じ内容を、同じ言い方で、繰り返し伝えることで少しずつ定着します。親の機嫌によってルールが変わらないようにすることも、大切なポイントです。
4努力とプロセスを褒めて「自己有能感」を育む
幼児的万能感が強い時期は、「困った時は誰かがやってくれる」という気持ちから、何でも楽をして手に入れようとする様子が見られることがあります。
また、面倒なことや、地道にコツコツすることを嫌がるため、何らかの壁にぶつかってしまった時に、頑張って自力で乗り越えようという気持ちになりにくいこともあるでしょう。
親としては、「欲しいものや大切なものは、少しずつ努力して手に入れるものだよ」ということを、日常のなかで伝えていけるとよいですね。結果だけでなく、「頑張ったね」「諦めずに挑戦したね」と、努力のプロセスを褒めることで、「自分はやればできる」という健全な「自己有能感」を育みましょう。
プロセスの褒め方のコツは、具体的に伝えることです。NGの例は、「すごいね、天才!」と能力そのものを持ち上げる声かけです。おすすめは、「最後まで諦めなかったね」「前よりもていねいに塗れたね」と、行動や変化に目を向ける声かけです。「天才」と言われ続けると、失敗が怖くなって挑戦を避けたくなる子もいるため、頑張ったことを見つけて言葉にする習慣が役に立ちます。
うまくいかなくて泣いてしまったときも、「泣かないの」と止めるのではなく、「悔しいくらい頑張ったんだね」と気持ちを認めましょう。気持ちが落ち着いたら、「次はどこからやってみる?」と声をかけ、小さな一歩を決めます。
5子供の話に耳を傾け、感情を受け止める
子供の話をじっくり聞くことは、子供の自我と自己肯定感を育むために非常に重要です。子供が一生懸命に伝えようとしているその気持ちを、是非一緒に感じてみてください。自分の存在を親に無条件に受け入れてもらっているという実感が、子供が現実の自分と向き合うための土台となります。
幼児的万能感の背景には、「親に認めてもらいたい」「愛されている」という、純粋な承認欲求が隠れている場合があります。日常のコミュニケーションの中で、子供の感情を否定せずに受け止めることで、子供は安心して次のステップへと進むことができるのです。
聞くときのコツは、まず手を止めて、子供の顔を見ることです。家事をしながらの「ふーん」「後でね」という返事が続くと、子供は話を聞いてもらえていないと感じることがあります。忙しいときは、「ごめんね、3分だけ待ってね。そのあとでゆっくり聞かせて」と伝え、約束した時間にきちんと聞くと、安心感が伝わります。
子供が空想の話や、できないはずのことを話してきたときは、「そうなんだ」「それからどうなるの?」と、話の続きを聞いてみましょう。いきなり訂正するのではなく、まず気持ちと想像に付き合うことで、子供は「話を聞いてもらえた」という安心感を持つことができます。
最新情報:国が示す幼児期の育ちの考え方
幼児的万能感ややるやる期の関わり方は、国の指針とも重なる考え方です。以前は、「しつけ」や「できることを増やす」ことに目が向きがちでしたが、現在は、子供が安心できる環境のなかで、遊びや体験を通して自分から挑戦する力を育てる、という考え方が広く示されています。
こども家庭庁の「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」は、令和5年12月22日に閣議決定されました。このビジョンでは、乳幼児期の育ちを支える大切な要素として、「アタッチメント(愛着)」と「遊びと体験」に着目し、「安心と挑戦の循環」という考え方を示しています。安心できる大人のもとで挑戦し、うまくいかなくても戻れる場所がある、という経験の積み重ねが、子供の育ちを支えるという考え方です。
また、文部科学省の幼稚園教育要領などでは、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の一つとして「自立心」が挙げられています。身近な環境に主体的に関わりながら、しなければならないことを自覚し、自分の力で行うために考えたり工夫したりして、諦めずにやり遂げることで達成感を味わう姿とされています。やるやる期の「自分でやりたい」という気持ちは、この自立心の入口に位置づけて考えることができます。
| 項目 | 現行の内容 | 対象 | いつから |
|---|---|---|---|
| はじめの100か月の育ちビジョン | 「アタッチメント(愛着)」と「遊びと体験」に着目し、「安心と挑戦の循環」を通してこどものウェルビーイングを高めるという考え方を示す | 妊娠期から幼児期までの子供と、その養育者 | 令和5年12月22日に閣議決定 |
| 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 | 「自立心」「協同性」「道徳性・規範意識の芽生え」など10の姿を示す | 幼稚園、保育所、認定こども園などで過ごす幼児 | 幼稚園教育要領などに示されている |
家庭での対応としては、「できた、できない」の結果より、「やってみようとした気持ち」を認めることから始めるのがおすすめです。やりたがったときはすぐに手を出さず、危なくない範囲でまずやらせてみる。うまくいかなかったときは、気持ちを受け止めたうえで、一緒にやり方を考える。この繰り返しが、家庭での「安心と挑戦の循環」になります。
なお、国の考え方や制度は見直されていくことがあります。園や自治体から配られるおたよりなども、あわせて確認すると、お住まいの地域の取り組みが分かります。
5歳を節目に幼児的万能感から自己肯定感へ成長しよう
生まれたばかりの赤ちゃんは、ママやパパがお世話をして守ってあげなければ生きていけません。しかし、子供はいつまでも何もできない赤ちゃんのままではない、ということを忘れてはいけません。
子供は自分のことを自分でするようになり、いつかは親の元から巣立っていくものなのです。
周囲の大人が意識して接することで、子供は幼児的万能感を手放し、次のステップに進んでいきます。そのため、いつまでも赤ちゃん扱いせずに、子供の年齢に見合った接し方を心がけ、自立を促すことが大切です。
「できる!」と言い張る姿に振り回されて大変なときもありますが、それは子供が育っている証拠でもあります。一つひとつの場面で、気持ちを受け止め、挑戦を見守り、頑張りを具体的に言葉にしていくことで、万能感は少しずつ「やればできる」という自信へと変わっていきます。
幼児的万能感についてよくある質問
幼児的万能感は、何歳ごろに強く出ますか?
一般には、イヤイヤ期のころから目立ちはじめ、3歳から5歳ごろに特に強く見られるといわれます。ただし、子供の性格や環境によって時期や強さは異なります。同じ年齢でも、慎重な子もいれば、何にでも飛び込む子もいるため、他の子との比較より、その子の様子の変化に目を向けてみてください。
「できる!」と言い張るときは、そのまま挑戦させたほうがいいですか?
危なくない範囲なら、まず挑戦させてみるのがおすすめです。やってみて難しいと感じる経験が、現実を知る大切な機会になります。うまくいかなかったときは、「難しかったね」と気持ちを受け止め、「どこなら手伝おうか」と相談すると、自分でできた部分も実感しやすくなります。
「ヒーローになれる」など、空想の話を否定しないほうがいいですか?
空想は想像力の成長の表れなので、否定せずに付き合って大丈夫です。「どんなヒーローなの?」と聞いて世界観を広げながら、食事や片づけといった生活の場面では、いつも通りのルールを伝えます。遊びと現実の線引きを、楽しい会話のなかで少しずつ伝えていけます。
負けて悔しがって泣くのは、成長の証ですか?
多くの場合、「自分は何でもできるわけではない」と気づきはじめた表れで、成長の過程の一つと考えられます。まず気持ちを受け止め、落ち着いてから「最後まで走りきったね」と頑張りを具体的に伝えましょう。悔しさを味わった経験が、次に挑戦する気持ちの土台になっていきます。
祖父母が何でもやってあげてしまうときは、どう伝えればいいですか?
否定から入らず、「いつもありがとうございます。最近は、自分でやるのが楽しい時期なので、少し見守ってもらえると助かります」と、感謝と理由をセットで伝えると受け入れてもらいやすくなります。家庭でのルールを事前に共有しておくのも、役に立ちます。



