お盆のお供え物は家庭によって違う!?ルールと供養の意味
お盆とは、ご先祖様にお供えをすることで供養する仏教の宗教行事です。家族そろってのお墓参りや迎え火、盆踊りなど、自分自身子供のころから何らかの形で参加しているなじみ深い行事ではないでしょうか。
南北に長い日本では7月盆・8月盆・旧盆(旧暦の7月15日頃)と、日付もご供養の仕方も地域ごとに違います。さらにお盆になるとお仏壇に供えるお供え物に至っては、同じ地域に住んでいても家庭によって考え方に大きな差があります。
実家と嫁ぎ先のお盆のお供え物にギャップがあって当然ですが、「長くお付き合いする人間関係だけに大きな失敗は避けたい」「良い家族関係を維持するためにも知っておきたい」という人は、お盆の仏壇へのお供え物ルールや基本マナー把握しておきましょう。
お盆のお仏壇へのお供え物!地域差に関係ない基本マナー
お盆のお供え物はその家の宗派や地域によって差があります。ただし、ご先祖様をお仏壇のある自宅にお迎えして供養するという基本的な作法に変わりはありません。
仏壇にともす明かりとお線香、お仏壇にお供えする仏花、砂糖菓子(御供菓子)や果物などの食べ物、清浄な水といったお供え物は「五供(ごく)」と呼ばれ、あの世からお帰りになるご先祖様の御霊を迎えてもてなす際に必要というのが本来のお供え物の考え方です。
一般的にお供え物にかける金額の相場は、3,000~5,000円で、現金を包んでも構いません。ただし、新盆(四十九日のご供養のあと、初めてのお盆)やそのご家庭、地域により全く違いますので義両親に確認しましょう。夫に相談しても、お盆の意味を知らずないがしろにしてしまうこともあります。そのため義両親と考えが合わず、あなたが嫁として矢面に立たされることもありますので注意が必要です。
あくまでも故人を供養するためのものですので、お花や食べ物などのお供え物は故人の好きだったものを中心に、心のこもったものを選ぶといいでしょう。お盆のお供え物は、殺生に通じる肉類や魚介類は避けた方が無難です。
またバラのようにトゲのあるお花や、宗教によってはお酒やコーヒー、タバコなどもふさわしくないといわれることがあるのでお姑さんに確認しましょう。
贈りやすいお供え物
- 旬の果物
- クッキーやおせんべいなどの日持ちのするお菓子
- そうめんなどの乾麺
- 故人の好きだった飲み物
- お花
- お線香やろうそく
- 地域の名産品 など
お盆のお供えの果物は何がいい?よく選ばれるフルーツ
お盆に限らず仏壇へのお供えとして果物を選ぶ人は多いのですが、特にお盆のお供えでは旬の大玉スイカや小玉スイカ入りのフルーツセット、旬の甘夏を選ぶ人が多いです。
また一年中輸入品が手に入ることもあり、グレープフルーツやオレンジ、バナナ、キウイフルーツ、パイナップルはお盆のお供え果物の定番。旬ではありませんが個人に好きだ人が多いリンゴもよく選ばれます。
ちなみに変わり種のお供えの果物としてはマンゴーやマスクメロン、ラフランスなども人気がありますので、ご予算に合わせて選びましょう。
失敗しないお供えの仕方と注意点
お供え物を用意する場合には、むき出しの品物では失礼になってしまうので、「のし」や「掛け紙」をつけましょう。品物をお店で購入する時に「お供えの掛け紙を付けて下さい」と言えば、その地方にあった、のしの表書きを付けてもらえますよ。
お供え物の掛け紙に使う水引は一度きりの意味合いで、「結び切り」を使います。水引の色は、関東では黒白を、関西では黄白を使うなど地域差がありますので、購入するお店で聞くか、あらかじめ贈る先方に確認をしておくと安心です。お供え物の表書きは宗派や亡くなられた日によって書き方はさまざまなのですが、共通して使用できる「御供」にしておけば間違いないでしょう。
お盆の期間はお仏壇のお供え物を絶やさないのがマナーですが、頂いたお供えを開封せず、箱のままお供えするのは失礼にあたります。お供え物を仏壇にあげる時には、お供えしたものがどんなものかご先祖様がわかるように、すぐに食べられる状態でお供えしましょう。また、時期を見計らって下げるなど、長時間お供えしっぱなしにせず手間をかけるように心掛けましょう。
食べ物をお供えする時のマナー
- お仏壇への果物はキレイに洗い、皮を剥いてフォークを添えてお供えしましょう
- お菓子は箱から出して、小袋の状態でお供えしましょう
- 乾麺は茹でて盛り付け、箸とつゆを添えてお供えしましょう
お供えものを下げた場合には?
お仏壇にあげたお供えは、朝供えたら午前中には下げて、無駄にならないように家族で食べるのが本来のやり方です。
ご先祖様はお供えした食べ物の湯気や香りを召し上がるので、湯気が消えるころには下げてよいでしょう。
お供えした食べ物には、「一緒にいただく」という意味もあります。お仏壇にお供えした食べ物は無駄にせず、時期を見計らって下げたら、ご先祖様と一緒にいただくことも供養になります。お盆にいただいたお菓子やフルーツも、ご挨拶に見えたお客さんにお出ししても問題はありません。
もしお仏壇にあげた食べ物を食べることに抵抗があるのなら、白い紙に包み清めて処分しても良いでしょう。ゴミとして処分する時も、いただいた人とご先祖様への感謝の気持ちをもつことを忘れないでくださいね。
お盆で見かける「精霊馬」の扱い方
お盆の時期に見かける、ナスを牛に、キュウリを馬に見立てて作られる飾りを「精霊馬」といいます。精霊馬はお盆の時期にあの世から戻ってくるご先祖様の御霊を運ぶ乗り物で、帰ってくる時には足の速い馬で、あの世に変える時には足の遅い牛でゆっくりとお帰り下さいという祈りが込められています。
地域によってはナスやキュウリを使わずに、昔ながらの真菰(マコモ:植物の一種)で作る精霊馬もあるそうです。精霊馬はお仏壇に飾るのではなく、正面に位牌をおいた盆棚にお供え物と一緒に乗せて飾ります。
精霊馬の向きも迎え日と送り日で変える必要があります。迎え日の7月または8月13日の夕方は、位牌に向けるように内側へ、送り日の16日の夕方(地域によっては15日)には位牌に背を向けるように外側へと向けて置くのが正しい飾り方です。お盆の期間盆棚に飾った精霊馬は、感謝の気持ちをこめて土に埋めるか、白い紙に包み清めて処分するとよいでしょう。
お盆に帰省しない場合のお供え物は?
お盆には帰省してご先祖様を供養したい気持ちはあっても、仕事の都合などで帰省できないことも多くありますね。
そんな時には、お供え物だけでも送ってご先祖様に敬意を表しておきましょう。特に婚家に対しては、「あの嫁はウチの先祖を大事にしない」と思われると今後の関係がギクシャクしてしまいますよね。
誘われても帰省ができない場合には早めに事情を伝え、墓前や仏前にご挨拶に行けなくても心の中で手を合わせる気持ちをアピールしましょう。帰省できないからといって大げさなお供え物を送る必要はありませんが、新盆の場合やお盆のお供えを丁寧に行っている義実家の場合は、その地域の相場を義母に尋ねるなどの気遣いを見せましょう。供養はあくまでも心づけですので、特に指定されなければ相場でOKでしょう。
金額だけにとらわれずご先祖様に感謝し、故人を偲んでお供え物を選びましょう。お供えの品物を送るだけでは不躾になってしまいますので、仏壇で供養をしている義両親への手紙を一筆添えるようにしてくださいね。
A失敗してもフォローしてくれる姑に感謝!
結婚した初めてのお盆に出産間近で、遠隔地の夫の実家に帰省することができませんでした。夫のお義母さんはもともとしきたりに厳しい人ではなく、私たちが帰省できないことも快く許してくれたのですが、何かお供え物でもと考えて、私のお気に入りの無農薬野菜のセットを送りました。
ナスやキュウリが入っているセットだから、お盆にピッタリだと思って、「ご先祖様にお供えする精霊馬にしてください」って手紙を添えたんですね。ところがキュウリもナスも大きくて、後で送ってもらった写真を見ると、仏壇前の盆棚で精霊馬がスゴイ存在感を発揮しているんです。
実家の母にも精霊馬は小さめの野菜で作るもんだと怒られて、あわててお義母さんに謝りの電話を入れたところ、「大きな立派な精霊馬で、ご先祖様も喜んでるわよ!」と笑い飛ばしてくれました。世間知らずな嫁ですが、なにかとフォローしてくれるおおらかなお義母さんに感謝!もっとお盆のマナーをお義母さんからも教わりたいと思います。
お盆にお供え物をする理由は母の罪が始まり
昔、インドでお釈迦様が教えを説いていらした頃のお話です。お釈迦様の十大弟子の一人に神通力に優れた目連尊者(もくれんそんじゃ)というお弟子さんがいまいした。ある日、目連尊者が亡くなった母親の姿を神通力で見たところ、餓鬼道という生前欲深かった人が行く世界にいたそうです。この世界に行くと飲食ができず、飢えと渇きで痩せ衰え、苦しみ続けます。
目連尊者は母親の苦しむ姿を見て嘆き悲しみ、「優しかった私の母が、一体どんな罪を犯してこのようなことになったのでしょう?」と、お釈迦様に訪ねました。するとお釈迦様は「あなたの母親は、我が子可愛さに他の子供に対して物惜しみをしたのだよ」と答えられたそうです。我が子可愛さに、他人の子供への思いやりや慈悲の心が欠けてしまい地獄に落ちたのですね。
お釈迦様は、「あなたの母親の犯した罪は消えることはない、たとえ私でも神でも助けることはできないが、7月15日の僧侶達が修業を終えて新たな修行に向かう日に、あなたがお供えをすることによって母親はもちろん先祖も罪を免がれ、苦しみから救われるだろう」と目連尊者に救いの手を差し伸べたそうです。
こうして、目連尊者は7月15日に僧侶たちへお供えをし、母と親族達は救われたそうです。さらに目連尊者は、「私と同じ願いを持った人達も、同じように供養を行えば親や親族を救うことができるのでしょうか?」とお釈迦様に問いました。すると「身分の関わりなく、孝行を願う心があるならば、自分を産んでくれた両親と先祖のために、7月15日に供養をしなさい。そうすれば供養された者も天界で喜びを享受できるだろう」と答えられたそうです。これがお盆の始まりです。
お盆のお供えは夫婦で一緒に選びましょう
何かとしきたりのあるお盆のお供え物ですが、お盆は自分や夫の両親、ご先祖様への孝行と感謝の心を込めて行う行事です。また、母としても我が子に目連尊者と同じ心の痛みを与えてはならないという反省ができるチャンスですね。婚家のご先祖様を大事にすることは、婚家につながる今の夫や子供達を大事にすることにもつながりますから、ぜひ積極的に供養にかかわってみて下さいね。
また、大切なのは夫婦そろってお盆の供養をすることです。お盆のお供え物などの供養の考え方が人それぞれ違うことから、実はお嫁さんと婚家のすれちがいで深刻なトラブルに発展することあります。旦那さんがお盆の行事を疎かにし板挟みになってしまう場合は、あなたが婚家と夫の橋渡し役をしましょう。
あくまで主体は義実家ですので、そちらのしきたりに合わせ、旦那様を積極的にお盆の行事にかかわらせましょう。夫婦そろってお盆の行事やお供え物のマナーを義両親から学び、子供にも伝えていけたらステキですね。