子供の盗み癖に関する記事

『子供の盗み癖は親が原因?病気?小学生にすべき5つの対応』

子供の盗み癖の原因は一体何なのでしょう?小学生から急増する窃盗。我が子が盗む側で盗まれる側でも悲しいですよね。子供が物を盗む時の心理状態を解説しながら、病気の可能性、家庭での対処法などについて解説します。

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子供に盗み癖がある親御様へ!小学生の窃盗の原因・心理と適切な対処法

学校で新しい文房具が紛失した、集めておいた給食費がなくなったなど、小学校の現場では昔から金品の紛失や窃盗の事例が発生しています。

もしご自身の子供の盗み癖が明らかになったとしたら、親御様としては計り知れない衝撃を受け、「どうして?私の育て方が悪かったのだろうか?どうしよう…」と、深く思い悩んでしまうことでしょう。

子供の盗み癖を改善へと導くことは、子供の健全な成長と将来のために、避けて通れない重要な課題です。盗み癖に気づいた際には、早期かつ適切に対処することが求められます。そこには、親御様には見えていなかった子供の心のSOSや抱えている問題が隠されている可能性が高いからです。

今回は、小学生の子供の盗み癖の原因や子供の複雑な心理状態について深く掘り下げて解説をしながら、トラブル発生時の家庭での具体的な5つの対処法、専門家への相談が必要となるケースなどについて、詳しくご紹介していきます。

所有の概念の理解:子供の盗みと発達段階の区別

小さな子供を育てていると、親の大切なアクセサリーを勝手に持ち出したり、兄弟が大事にしているおもちゃや人形を隠してしまったりといった経験があるかもしれません。これは、自分の物ではない物を自分の物にしてしまう行為の繰り返しです。

この行為は一見「人の物を盗む癖がある」ように見えますが、幼い頃はまだ「所有(誰の物か)」という概念を完全に理解できていないことが主な原因で起こります。そのため、発達段階における行動であり、いわゆる盗み癖(窃盗行為)とは区別して考える必要があります。

他人の物と自分の物の区別がつく年齢の目安

一般的に、他人の物と自分の物の区別がつく年齢は2歳前後からとされています。それまでの子供は、目の前の物が他人の物であるということが理解できず、自分の物にしてしまうことに罪悪感を抱きません。ただし、これには個人差があり、3歳を過ぎても区別が難しい子供もいます。

「〇〇の~」「ママの~」と子供が所有者を主張し始めたら、それは物の所有者を認識し始めた大切なサインです!

幼稚園や保育園などの集団生活を経験する中で、「これは先生の役割」「これはお友達の物」といった所有者や役割への区別が徐々につくようになり、小学校入学までに勝手に人の物を取ってしまう行為は自然と減少していくことが期待されます。小学校に入学するまでの期間は、親御様が根気よく指導し、見守ってあげましょう。

子供の盗み癖は窃盗症(クレプトマニア)なのか?専門的な定義

お店での万引きや親の財布から無断でお金を持ち出すなどの盗み癖が我が子にあると、「まさか窃盗症(クレプトマニア)なのでは?」と不安になる親御様も少なくありません。この疑問は、子供の行動を理解する上で非常に重要です。

クレプトマニアとも呼ばれる窃盗症は、個人的な利益やその物の価値のためではなく、「盗みたい」という強い衝動を抑えられず、必要ではない物を盗む行為を繰り返すことを特徴とする精神的な疾患です。2013年に米国精神医学会から出版された『精神障害の診断と統計マニュアル』の第5版(DSM-5)では、「秩序破壊的・衝動制御・素行症群」として分類されています。

窃盗症は、以下のDSM-5の診断基準で示されるような特徴を持ちます。一般的に、その発症は思春期以降、17歳~20歳の高校生や大学生の頃に始まることが多いため、小学生の盗みには別の原因があるケースがほとんどです。

窃盗症(クレプトマニア)の診断基準と特徴(DSM-5による)

  • 個人的な利用のためでも、金銭的価値のためでもなく、物を盗ろうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
  • 窃盗に及ぶ直前には緊張の高まりがある。
  • 窃盗に及ぶ際には快感、満足、または解放感がある。
  • その盗みが怒りや復讐のため、または妄想や幻覚による反応ではない。
  • その盗みが、素行症、躁病エピソード、または反社会性パーソナリティ障害などの他の精神疾患ではうまく説明されない。

警視庁生活安全局少年課が発表している統計によると、令和5年中の刑法犯少年(14歳以上20歳未満)の検挙・補導人員のうち、窃盗犯は全体の約4割(37.6%)を占めており、これは決して少なくない数字です。また、小学生(6歳以上14歳未満)の触法少年の検挙・補導人員においても窃盗が最も多い罪種(約6割)です。

このように、小学生による窃盗行為は稀なことではありませんが、その原因が窃盗症であるケースは非常に稀であり、多くは心理的・環境的要因が関係しています。

子供の盗み癖を問い詰めるだけでは解決しない!嘘をつく子供の心理

子供に盗み癖があると判明した場合、親御様が「どうして盗んだの?」と問い詰める対応をしてしまうのは自然なことです。しかし、子供は自分を守ろうとするため、問い詰めても事実と異なる嘘や言い訳が返ってくることがよくあります。

この時、感情的に腹を立ててはいけません。子供の盗み癖を解決するためには、まずなぜ盗んでしまうのか、その子供の心の中の原因を親が冷静に、そして深く理解することが不可欠です。

子供が物を盗んだ時、またはそれを隠そうと嘘をついた時には、親が感情的にならずに冷静に対処することで、初めて問題解決へ一歩踏み出せることを心に留めておきましょう。子供の嘘の裏には、親に知られたくない、親を失望させたくないという複雑な感情が隠されていることが多いです。

小学生の盗み癖に見られる5つの主な心理・原因

私たちは幼い頃から「他人の物を盗んではいけない」と教えられて育ちます。小学生になれば、「物を盗むこと=悪いこと」という社会的なルールと意識が形成されます。それでも盗み癖のある子供がいるのは、必ず子供なりの、声にならない理由や心理的背景があるからです。

親御様にとって、そういった子供の心のSOSをしっかり理解していくことが、問題解決の鍵となります。

1愛情不足と寂しさからくる関心の引き付け

子供が問題行動をあえてとる時、その根底には「もっと自分を見て欲しい」「自分に関心を向けて欲しい」というメッセージが込められていることが多いです。怒られるような悪いことをすることで、親や周りの関心を一時的に引こうとしているのです。

言葉で「寂しい」と訴えても親の関心を引けないと無意識に感じている場合、その心の抑圧が言葉にできないまま、物を盗むという悪い行動に走ってしまうことがあります。特に子供の場合、悪意や計画性ではなく、寂しさを解消するために無意識に盗みを行ってしまうケースが多く、これは愛情不足のサインとして捉えられることがあります。

2物への強い「欲しい」という欲求

おもちゃ、お菓子、ゲーム、またはそれを買うためのお金など、「どうしても欲しい!」という強い感情は、人間が物を盗む最も原始的な原動力の一つです。

小学生になると、ある程度感情をコントロールできるようにはなりますが、お友達に見せびらかされたり、みんなと同じものを持っていないことで仲間外れにされるといった状況に直面すると、自分を守るために気持ちをコントロールできなくなり、欲しいものを盗んでしまうことがあります。これは社会的な比較や孤立への恐れが背景にあることが多いです。

3スリルや刺激を求める衝動

小学生であれば、物を盗むことが悪いことであり、叱られて嫌な思いをすると理解しています。物を盗む際にはドキドキ・ハラハラして「バレたらどうしよう…」という緊張感を覚えますが、一般的にはこの気持ちを不快に感じます。

しかし、中には日常に満足できず、退屈さや満たされない気持ちから強い「スリル」を意図的に求め、ゲーム感覚で物を盗んでしまう子供もいます。特に思春期以降になると、「反抗してみたい」という突っ張った心理が優位になり、衝動的な行動が増える傾向があります。

4非行を正当化する言い訳の心理

盗み癖のある子供に見られる心理として、「中和の技術(非行の正当化)」というものがあります。これは、「盗みは悪いこと」という社会的なルールを打ち破るために、非行を心理的に正当化するための理由付け(言い訳)を行うことで、反社会的な行為をしやすくする心理メカニズムです。

例えば、「買ってくれない親が悪いから、盗むのは仕方がない」、「友達もやっていることだから、大した問題ではない」というように、「盗みは悪いことだけど、自分にはそうする理由がある」と強引に正当化することで、罪悪感を乗り越えて他人の物に手を出してしまうのです。この心理は、盗みという行為を自己防衛的に捉えることで、心の葛藤を解消しようとする表れでもあります。

5ストレスやフラストレーションの代償行為

学校生活や家庭内で感じる強いストレス、抑圧された感情、満たされない欲求などが、盗みという問題行動として代償的に現れることがあります。盗むという行為そのものが一時の「ガス抜き」となり、心のバランスを取ろうとしているのです。

特に、真面目で周りの期待に応えようと頑張りすぎる子供や、感情表現が苦手で悩みを溜め込みやすい子供が、内面的な葛藤を問題行動という形で表出することがあります。

子供の盗み癖に隠された精神医学的要因や環境要因

子供の盗み癖に対処するにあたっては、単なる心理面のケアだけでなく、物を盗むという行為の背景に隠された精神医学的な問題(病気)や深刻な環境要因がないかを慎重に見極めることが親御様の重要な役割です。

ケースによっては、スクールカウンセラーや児童専門の精神科医などの専門家による助けが必要になります。専門的な意見も聞きながら、子供の将来を見据えた慎重な対応を心がけましょう。

1素行症(行為障害)や反抗挑戦症の可能性

物を盗むという反社会的な行動を繰り返し、他者の権利や社会のルールを著しく侵害する子供の盗み癖の裏には、素行症(行為障害:DSM-5では素行症)が隠れている可能性があります。

素行症は、他者の基本的権利や年齢相応の主要な社会規範または規則を反復的・持続的に侵害する行動パターンが特徴です。これには人や動物への攻撃性、財産の破壊、欺瞞や盗み、重大な規則違反などが含まれます。素行症は、その多くが反抗挑戦症(反抗挑発症)を持つ子供が思春期になってから移行しやすいと言われています。

素行症は13歳未満で始まり、6ヶ月以上続いている状態を指す小児期発症型と青年期発症型に分類されます。早い子では10歳前後から思春期が始まるため、小学生の盗み癖に素行症が関係している可能性は否定できません。

また、ごく稀ではありますが、前述の通り窃盗症(クレプトマニア)が関係しているケースも否定できません。子供の様子に不安や気になる点がある場合は、児童相談所、スクールカウンセラー、児童専門の精神科医などの専門機関に早期に相談してみることを強くお勧めします。

2家庭環境におけるストレスや問題

子供の盗み癖は、単に親の関心を引きたいだけでなく、両親の不和、家庭内のトラブル、親の過干渉や無関心、共働きによる物理的な・精神的な接触時間の不足などが原因で、子供が寂しさや情緒の不安定さを募らせてしまい、心の抑圧が引き起こしているケースもあります。

特に盗み癖は、「学校の先生の評価が高い」「優秀で真面目な子」や、「手が掛からない子」だと親が思っていたにもかかわらず、内心親に対して不満や諦めを抱えている子供に見られることが多いです。

子供の盗み癖がなかなか改善されない場合には、子供だけでなく親のカウンセリングなどを通して、子供の家庭環境全体を改善していくことが根本的な解決に繋がります。

3友人関係や集団からの影響

子供にとって友達は、自己肯定感を育み、社会性を学ぶ上で非常に貴重な存在です。しかし、友人関係によっては、悪い影響を受けてしまうこともあります。

例えば、友達に盗み癖があり、その子との付き合いを通して物を盗むことへの罪悪感が薄れてしまったり、友情と引き換えに物を盗んでくることを強要されてしまったりするケースも意外と多く存在します。

親御様は子供の話を根気よくよく聞き、友人関係に問題がないか、慎重にチェックし、必要に応じて学校や専門家と連携して適切な対応をとりましょう。

子供の盗み癖に親がすべき5つの具体的な対応ステップ

子供に盗み癖があると判明したら、その状況を改善する方向へ導いてあげられるのは、親御様だけです。子供を一方的に責めるのではなく、親として、家族として子供の心に寄り添い、早期に適切な対処をすることが最も大切です。

子供の気持ちを深く理解しようと努めながら、冷静な態度で対処を進めていきましょう。

1まずは頭ごなしに怒らず、理由を傾聴する

自分の子供に盗み癖があるとわかった時、それを認めることは親御様にとって精神的に苦痛を伴うでしょう。しかし、ここで親御様が子供から目を背けてしまえば、子供の盗み癖は習慣化してしまう恐れがあります。

まずは頭ごなしに感情的に怒るのではなく、親御様自身が冷静になって、子供の話をとにかく最後まで聞くことに徹してください。子供の嘘や言い訳にも上手につきあいながら、「なぜ盗んでしまったのか」という根本的な原因をしっかり理解することが、解決への第一歩となります。

2子供の立場に立って真剣に叱る

大人でもスリルを味わいたい気持ちはありますが、万引きなどの窃盗は、より重大な犯罪へ進むきっかけとなる「ゲートウェイ犯罪」の一つとも言われています。

物を盗んだことが親に見逃されてしまうと、「社会のルールを守る」という意識が希薄になってしまい、子供が窃盗だけでなく他の重大な問題行動に走っていく傾向が生まれる可能性があります。

体罰や暴力で教え込む必要は決してありません。ですが、両親が本気の言葉と真剣な態度で「他人の物を盗むことは社会的に悪いことであり、罰を受ける行為である」ということを毅然としてしっかり伝えることは非常に重要です。

もし片方の親が、怒っているもう片方の親から「もうわかっただろう、そんなに厳しく叱らなくても」とかばったり、軽く「悪いことだからやめようね」と優しく微笑んで伝えたりする態度では、子供に親の本気と事態の重大さが伝わりません。両親が一貫した態度で臨むことが大切です。

3子供自身に被害者への謝罪をさせる

未成年者が他人の物を盗んでも、刑事的な処罰を受けることはありません。しかし、悪いことをした以上、子供であってもその行為に対する責任を取るように指導することは、親御様の最も大事な役割の一つです。

もし子供の盗み癖に気づいたら、被害者(所有者)への謝罪を必ず子供自身にさせましょう。

「まだ小さいから」と安易に甘い態度をとることは好ましくありません。子供自身に謝罪をさせるという行為を通して、子供に「自分が悪いことをしたのだ」ということをしっかり自覚させ、反省の念を持たせることが重要です。

4親が相手に謝罪する姿を子供に見せる

もちろん、子供のしたことである以上、親が保護者として相手に謝罪することも必要不可欠です。親が迷惑をかけた相手に深く頭を下げる姿は、できるだけ子供に見せるようにしてください。

大好きな親が自分の失敗のために頭を下げる姿を見ることで、子供は深く反省し、「パパやママは自分のことを真剣に気にかけてくれている」と、両親の愛情に気が付くことができ、心を落ち着かせる効果が期待できます。

ただし、「お前のせいで謝らなければならなくなった」などと、子供を責めるようなひどい言葉を浴びせることは絶対に避けてください。そのような態度は、「親は義務を果たしているだけで、自分のことが嫌いなんだ」と誤解させてしまい、子供をさらなる孤独に追い込み、盗み癖が悪化する原因になりかねません。

5質の高い「コミュニケーション」を増やす

子供の話をよく聞き、本気で指導し、親子で相手に謝罪をして問題がクリアになったら、ここからが親子の関係改善の新たなスタートです。

意識的に親子で話をする機会を増やし、盗み癖に走らせる要因となった子供の根底にある寂しい気持ちや反発する気持ちなどを、時間をかけて「解きほぐす」ように努めていきましょう。

スキンシップは、愛情を伝える最大のコミュニケーションの一つです。暖かな触れ合いを通して親子の信頼関係を着実に高め、子供が自分の心を押し込めることなく、何でも相談できるような心理的な安全基地となる関係を築き、家族全員が自分の家庭を「幸せな家庭」と感じられるようにしていくことが最終的な目標となります。

子供の盗み癖に落ち込む前に:価値観と受け止め方の違いを学ぶ

子供に盗み癖があることが発覚した際、特に母親はショックで自責の念に駆られたり、逃げ出したくなったりする方が多いでしょう。「私なりに精一杯やってきたのに…」と思ってしまうのは当然のことです。

しかし、親になるということは、子供の全てを受け止め、その経験を通して自分の価値観や視野を広げ、親自身も学んでいくということです。子供が社会のルールを学ぶように、親もまた多様な価値観や一人一人の感じ方、受け止め方の違いを学ばなければなりません。

ヴィクトル・ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」では、盗みを働いた登場人物が偉大な司教の許しと慈悲によって改心し、残りの人生を人助けに捧げる物語が描かれています。また、日本の二宮尊徳(金次郎)の逸話にも、軽蔑や責めではなく、人の心を動かすことで村を復興させた改心の事例が見られます。

人は責めるのではなく、許しや真の理解から新たな道を切り開くことができます。親御様がいつまでも「どうしてこんな子に…」と盗み癖のある悪い子というレッテルを貼ったり、「私の育て方が悪かった」と自分を責め続けたりするのは、建設的な解決には繋がりません。

しっかりと子供と向き合い対応したら、気持ちを切り替えて、家族全員が強い絆と愛情を感じられる関係構築へと、前向きな一歩を踏み出しましょう。必要であれば、躊躇せずに専門家のサポートを求めてください。

この記事を書いたライター

羽根田るみこ

第一子から15年間保育園に通い続け、まだまだ記録更新中です!