子供の親権が父親に渡るとき・親権者決定の基準
子どもがいる夫婦が離婚する際、親権を母親が持ち父親は養育費を支払う・・・というのが一般的なケースと見られてきました。ですが実際には、父親が親権を持つケースも少なくありません。どのような場合において、父親が親権を持つことになるのでしょうか。
親権の決め方
離婚理由を作ったのがどちらにあるのかなどは、親権を決定する際には関係がありません。子どもの親権がどちらにある方が子供の生活が安定し子どもの幸福に寄与するのかが、親権を決定する際の基準となるのです。
一般的には、婚姻期間中に子どもを養育し、そばにいた方が親権を持つことになります。そのため、子どもの世話を主に行っている母親が、親権を持つことになるケースが非常に多くなります。また、乳幼児などの場合は、母親の必要性も特に高いと判断される要素となり、子どもの年齢が小さければ小さいほど、親権が母親にわたるケースが多くなるのです。
親権が父親にわたる割合
平成25年度の司法統計によると、離婚調停や裁判によって離婚が決定した夫婦において、父親が親権を持ったケースは1899件、母親が親権を持ったケースは18740件ありました。つまり、親権を父親が持ったケースは、母親が親権を持つケースの10分の1程度となっています。
親権を父親が持つケース
では、どういった場合に、父親に親権が認められるのでしょうか。親権を定める裁判で、父親が有利になるパターンを3つご紹介します。
母親が出ていった場合
母親が家庭を出ていったことで別居状態になり、父親が子どもの養育を行っていた場合は、親権が父親側に認められることが多いです。父親と子どもだけの生活期間が長ければ長いほど、父親の親権獲得に有利に働きます。
母親が育児放棄をしていた場合
母親が家庭にいる場合でも、育児を放棄していたことが証明されるならば、父親に親権がわたることが多いです。子どもの年齢が小さければ小さいほど母親不適格とみなされますので、親権を母親が持つことが子どもの幸福につながらないと判断されます。
子どもが父親を選んだ場合
親権を両親が争う場合、子どもが15歳以上のときには、裁判官は子どもの意向を確認しなくてはなりません。子どもが父親と暮らしたいと答えるならば、親権は父親が持つことになります。
また、小学校高学年程度で子どもも自分の意思をはっきりと表現できるならば、子どもの意向も尊重されますが、基本的に調停では、子供の言葉だけではなく子供と親との生活状況や関係、子供の表情などから調査官が子供の意思や本心を探るということになるようです。どちらの親と暮らすことになるにせよ、子どもの意思が反映される結果になるように協議が繰り返されることも少なくありません。
親権を持つためにできること
では、親権を勝ち取るためにはどのようなことができるでしょうか。父親側と母親側に立って、考えてみましょう。
父親が親権を持つためにできること
父親が母親よりも資産や収入が多い場合には、自分と一緒に暮らすことで、子どもの将来に経済的・社会的メリットが多くあるということをアピールすることができます。また、暮らす場所が離婚前と変わらない場合は、子どもの幸福(引っ越しをしないこと)につながると判断される傾向にあります。
また、普段から土日や仕事が休みのときに子どもと遊んでいたならば、そのことをアピールすることで子どもの養育に適性があると判断されることもあります。自分以外の看護者として親の手助けがある場合、子どもの急病や学校行事への対応などもきちんとできていた場合はそこも重視される点となります。
母親が親権を持つためにできること
父親よりも資産や収入が多い場合は、子どもの幸福につながるということでアピールできますが、基本的には子どもが幼い場合には母親に親権が認められるケースが非常に多いうえに、もし夫より収入が少ないとしても、養育費を受け取る等の手段で子供を養育していければOK。それまで専業主婦で収入がなかったとしても、それだけで親権は認めれなくなることはないようです。もし、資産状況で不利と考える場合は、子どもが母親の世話を必要としている事実を訴えましょう。
父親の言葉や身体的な暴力行為を子どもが見ていた場合は、それらの子どもの発育に不適切な環境から守ると言う意味で母親に養育権が認められるケースが多いです。しかし、自分がどれだけ傷ついたかではなく、子どもに幸福な環境を提供したいと言う視点でアピールすることが大切です。
相手にわたってしまった親権を取り返すには…
一旦、相手方に渡ってしまった親権を取り戻すことは、非常に困難なこととなります。親権変更が認められるのは、原則的に養育環境が悪化した場合のみとなっているのが現状です。
子どもの養育環境の悪化とは・・・
親権を持った親が再婚して、再婚した相手が子どもを差別したり無視したり養育しなかったりする場合は、親権変更が認められやすくなります。また、再婚しない場合でも、親権を持った親が子どもを大切にしていないと認められる場合には、親権変更を訴えることができます。
親権変更は調停が必要
親同士の話し合いだけで親権変更を行うことはできません。親権を変更する場合は「親権者変更調停」が必要になります。家庭裁判所調査官の調査を受け、家庭裁判所に申し立てを行います。裁判を何度も繰り返すことにならないよう、離婚時には親権についてしっかり考えて行動しましょう。