ピアノを練習しない子に親がすべき6つの働きかけ&NGワード
かつては「お嬢様の習い事」というイメージがあったピアノですが、近年では、幼児期にピアノを習うことが脳に良い影響を与えるという研究結果もあり、一般家庭でもピアノを習う子どもが増えています。体験レッスンで「楽しい!」と喜んでいた子も、両手で弾くようになると難易度が上がり、次第に練習をしなくなってしまうこともあります。
せっかく習っていても、レッスンの前に課題曲の練習をしなければ、なかなか上達しません。親がいくら言っても練習しないと、「辞めさせたほうがいいのかな」と悩むママも多いですよね。そこで今回は、子どもが練習したくなるような親の働きかけと、やる気を失わせるNGワード、レッスンに通うことの効果、先生や子どもの本音についてご紹介します。
ピアノを練習しない子にすべき親の働きかけ6つ
どんな習い事でもそうですが、ピアノは特に自宅での練習が結果に大きく影響します。ところが「ピアノは好きだけど練習は嫌い」という子どもは昔から一定数います。そこで、親としてできる6つの働きかけをご紹介します。
1 練習時間を楽しい時間にする
音楽は「音を楽しむ」もの。子どもが楽しいと感じれば、その気持ちは音に表れます。「練習しなければならない」ではなく、「練習が楽しい」と思えるようになることが成長のカギ。無理にやらせるのはNGです。
習い始めの頃は、幼稚園に行く前や帰宅後、食後などに本人と一緒に練習時間を決めたり、「今日は寝る前に練習するの?」と声かけをするのも有効です。ただ、しばらく続けている子は、練習しない理由を理解している場合が多いもの。
「練習しなさい!」と言い続けると、自主性を失い、ピアノが嫌いになってしまいます。実際、音大を卒業しても「子どもの頃、親に怒られてばかりで人前で弾けない」という人も少なくありません。それでは本末転倒ですね。
楽しい時間にするには?
練習中は、間違っても止まっても、ママは笑顔で楽しそうにしましょう!「前の課題曲のメヌエット弾いてみて」とリクエストして、演奏を披露させるのもおすすめです。子どもも楽しく弾けるようになりますよ♪
2 ママが弾いて見せる
ママがピアノ経験者なら、演奏を見せてあげるのも良い刺激になります。「練習するとこんなに弾けるんだ」と目標を持たせることができます。子どもが弾きたくなるようなアニメの曲なども効果的です。
ママが経験者でない場合は、実はさらに効果的。下手な演奏をした後に「◯◯ちゃんの方が上手だね!」と言えば、子どもは得意げに。「じゃあ教えてあげる!」という展開になればしめたもの。教えるには練習が必要ですからね。
3 親子で音楽鑑賞をする
ピアノへの興味が薄れてきた時は、親子でクラシックを聴いたり、コンサートに出かけたりして音楽に触れる時間を持ちましょう。親子のコミュニケーションにもなります。
また、車の中でクラシックCDを流すのもおすすめ。音楽性が自然と身につき、表現力が上がればレッスンで褒められる機会も増えて、やる気アップにつながります。
ポピュラーやジャズなど、さまざまなジャンルのピアノ演奏を聴かせてあげるのも効果的。多様な音楽に触れることで、新しい楽しさを見つけることができます。
4 とにかく褒める!
上手に弾けていなくても、「練習した」という姿勢をしっかり褒めてあげましょう。特に自分から進んで練習した時には、オーバーなくらいに褒めてください。ママに褒められると、子どもはもっと頑張ろうと思えるものです。
5 練習を習慣づける
子どもは遊びたい気持ちや興味が他に向いていると、練習を嫌がるものです。10分でも15分でもいいので、毎日の生活の中にピアノ練習を組み込むようにしましょう。
学校や幼稚園から帰った後、外遊びの前、夕食までの時間など、無理のないタイミングを選ぶと継続しやすいですよ。
6 見守ることも大切
「練習しないと上達しないよ!」という親の言葉が、時にプレッシャーとなり、ピアノが楽しくなくなってしまうことも。子どもが自分で「練習しなきゃ」と気づく日を信じて、焦らず見守る姿勢も大切です。
辞めさせる?続けさせる?それぞれの意見
練習しない子どもに対して、辞めさせるべきか、それとも続けさせるべきか。どちらにも納得できる理由があります。あなたはどちら派ですか?
辞めさせるべき!
練習をしないということは、やる気がないということ。本当に好きなことなら、親に止められてもするはずなので、その子にピアノは向いていないのでしょう。ピアノは必ず練習しないと上達しません。年齢が上がれば上がるほど、上達すれば上達する程練習が必要になる習い事です。プロのピアノストですら毎日7~8時間、多い人で12時間れんしゅうするそうです。
ですから練習が嫌いで他のことに興味があるのに、続けさせて強制的に練習させても、苦しくて辛い思いをし、しかも上達せず…。子供の態度に親もイライラし、「練習しなさい」「したくない」の押し問答が続くと親子関係にヒビが入りかねません。
それに練習をしないと上達もしないし、月謝がもったいない!親にお金を払って貰ているのに、平気でやるべきことをやらないという教育的に悪い状態が続くことになります。早めに見切りをつけて辞めさせ、他の習い事をさせる方が将来のためになるでしょう。
続けさせるべき!
練習をしないからといって辞めさせるのは少し違うと思います。習い事って上達することだけが目的じゃないから。練習しないことで嫌な気持ちを味わい続けることも経験ですし、嫌でも逃げずに続けることも経験です。辞めさせるということは嫌なことから逃げさせるということ。逃げ道を与えて甘えさせず、試行錯誤しながらでも成長できたときの達成感をぜひとも子供に味わってもらいたいです。
また、子供の場合小学校5~6年生になって、突然スイッチが入って練習を始めるようになる子もいます。小学校5年生から習い始めてプロのピアニストになった人もいます。情操教育として音楽に触れることは非常によいことですし、習い続けることで周囲の子よりも音楽の成績が良くなり、自信がつき、そこから音楽への興味が広がることもあります。
また、子供の頃中途半端な練習しかしなかったことを後悔し、大人になってからピアノを再び習い始めたことで、ストレス発散に大変役立ち、一生に通じる趣味として楽しんでいる人もいますので、目先の上達だけにとらわれるのは良くないでしょう。
ピアノの練習をしない子供への6つのNGワード
子供に練習をしてほしいと思うのは、子供によかれと思ってのこと。そんな親の必死の思いも、言葉を間違えれば子供に上手く伝わらず、ますます子供にやる気をなくさせてしまいます。そんな練習嫌いになるNGワードをみていきましょう。
1「練習しないなら辞めなさい」
言ってしまいがちな言葉ですよね。売り言葉に買い言葉で子供も、「じゃあ、辞める」とアッサリ言われてしまいかねません。練習は嫌いでもピアノ自体は好きという子が多いので、お互いに意地を張って辞めることになってしまったらママも子供も後悔しますよ。
2練習した後に「それだけ?」
子供の練習時間が5分程度と短めだったことに、「それだけしかしないの?」と言ってしまったことがあるママも多いでしょう。でも、子供にしてみれば、なけなしのやる気をふりしぼって練習したのです。「練習したのに文句を言われるなら、もうやりたくない」と思ってしまう子も多いでしょう。
3「どうしてできないの?」
ママもピアノ経験者の場合、子供ができないことがあれば、どうしても口出ししたくなってしまいます。でも、そこはグッとこらえて練習をしている過程を褒め、「これができるようになってすごいね。次はここをやってみよう」と子供のペースに合わせた声かけができると良いですね。
4「早く練習しなさい!」
「今練習しようと思っていたのに!」という子供の返答が聞こえてきそうですね。命令口調は絶対NG!子供の自尊心を傷つけてしまいます。「練習する?それとも先にご飯にする?」と選択権を与えてあげると、子供は自分で選べるため、自尊心が保たれるのです。
5「練習しないと遊ばせないわよ」
このセリフと同様に「おやつ抜き!」「おこづかいなし!」など脅して練習させるのはいかがなものでしょう。それなら逆に「ご褒美制」の方がまだモチベーションアップがアップします。「練習頑張ったら、さっきママが買ってきたアイス食べようか」とか…。最初は練習とご褒美がセットでも、成長とともにピアノの楽しさを覚えてご褒美がなくても練習するようになってきますよ。
6「好きにすれば」
このように投げやりになって言ってしまうのは、親子のピアノ練習バトルが長引いているときでしょう。親もつい疲れきって投げやりになってしまうこともあるかもしれません。でも、ママの投げやりな態度は、子供を慌てさせるどころか、余計に投げやりにしてしまうかも。バトルに疲れても子供とのコミュニケーションは大切にしたいですね。
ピアノは自宅で練習しないと無駄なの?
ピアノは自宅で練習しないと上達しないもの。でも、練習しないと無駄だということはありません。ピアニストを目指しているわけではないのだったら、そんなにめまぐるしい上達は必要ないはず。ピアノを楽しむことが第一なのです。練習によってピアノが嫌いになっては本末転倒ですからね。
週一回40分間のレッスンだけでも、指先を動かすことや楽譜を読んだり記憶したりすることで、確実に脳に良い影響を与えていると脳科学者の澤口俊之氏は言っています。楽しむことによって脳から出るドーパミンの効果で、IQやHQの向上も期待できますので、レッスンに楽しく通い続ければよし!と考えるのもママのイライラを軽減する一つの方法です。
HQとは!?
IQが知能指数であることに対して、HQは知恵を育てる力のことです!人間が生きていくうえで大切な判断をする未来志向行動力や、協調性や思いやりをもつ社会関係力のことでもあり、HQの向上は夢の実現や社会的成功につながると考えられています
ピアノの先生の、練習しない子への本音
ピアノ講師にも様々な考え方の人がいます。練習しないで行かせ毎回怒っている先生に申し訳ないと思うママも少なくないでしょう。こちらでは、ピアノの先生の本音をご紹介します。
A月謝がもったいない!
自宅でピアノ教室を開いています。幼稚園から中学生まで、年代はさまざまですが、私の経験上練習しない子は小学校3年生以上の子が多いです。本人は「練習した」って言うんですけどね。
週1回のレッスンで、前週と何も進歩していないときは、保護者の立場になって考えると、「月謝がもったいないなぁ」と思ってしまいます。どんなに練習の必要性を説いても、きつく怒ることのできない世の中なので、家での練習時間まで干渉することはできないのです。
A正直に言うと…
音楽教室でグループレッスンから個人レッスンまでおこなっています。練習してきていない子は、すぐにわかりますよ。正直、教えていても意味がないです。グループだと他の子とどんどん差が開くし、個人だと毎週同じところを聴いているだけ。
教え甲斐がなさすぎて、こちらもやる気が出ません。仕事じゃなかったら、「もう辞めたら?」と言いたいくらいです。
A練習嫌いがピアノ嫌いと限らない
ピアノの講師を20年以上勤めています。練習をする・しないは永遠のテーマです。子供に練習させようとしてくれる親御さんには感謝していますか、結局は本人のやる気次第なのです。
でも、練習が嫌いな子は、ピアノが嫌いなわけではないと思っています。「ピアノが好き」という気持ちさえ持っていてくれれば、いつか練習を楽しんでくれると信じ、私は一生懸命教えるだけだと思っています。
ピアノを練習しない子の本音
「ピアノを練習しない」のと「ピアノがしたくない」のとは全く違うものです。練習しなくちゃいけないことは、実は本人が一番よくわかっています。でも、どうしてもやる気が起きなかったり、他にやりたいことがあったり、「練習しなさい」と言われるとますます反発してみたくなったり…。
「辞めたいわけじゃない」と本音では思っている子供は非常に多いです。特に長く続けているとモチベーションが保てなくなることもあります。「ピアノ自体は好き」という気持ちさえあれば、きっとやる気が起こる日が来るはずです。信じて待ちましょう。