保育ステーションって何?待機児童問題に悩むママへのサービス
保育ステーションとは、子どもを人口の少ない地域の保育園まで送迎をしてくれる自治体サービスのことです。長らく日本の社会を騒がせている待機児童の問題。これを解消する事業の一環に「保育ステーション」があるのです。送迎保育ステーションとも呼ばれるこの事業は、まだまだ数は少ないものの、今後全国的に増えていくことが期待されている新育児支援。
今回はこの保育ステーション事業の趣旨や事業内容、実際に事業を行っている地域などについて解説をしながら、利用方法などについてまとめてご紹介していきます。今まさに保育園に入れずに困っているママや、これから保育園を利用して仕事に出たいと考えているママ必見です!
「保育ステーション」ってどんな事業?
保育ステーションとは、駅前など人口が集中する利便性の良い場所に拠点を設けて子どもを預かり、親に変わって遠方にある保育園まで幼児をバスで送迎する、自治体の子育て支援事業のことです。
保育園に子ども預けたいのに受け入れてもらえない待機児童問題は、今は深刻な社会現象になっているのですが、待機児童は人口が集中する都市部に集中し、逆に山間部などの過疎地域では入園を希望する子どもが少なく、閉鎖に追い込まれる保育園があるなど、かなりの地域差があります。
つまり自宅近くの利便の良い保育園でなくても、児童数の少ない遠く離れた地域の保育園であれば、入所できる可能性があるということ!ただし保育園まで通う交通費がかさみ時間もかかるため、このジレンマを解消するために生まれたのが保育ステーションなのです。
オフィスが集中し、交通の便の良い繁華街などに設けられた保育ステーションが利用できれば、親は近場で子どもを預けて働きに出かけることができますし、子どもは安全に保育園に送ってもらい、伸び伸びと過ごすことができます。
待機児童問題が改善されるだけでなく、保育園も助かるという画期的な取り組みなのです。
保育ステーションを実施している自治体
待機児童問題解消のため、厚生労働省でも保育ステーションの全国的な展開を推奨していますが、導入している自治体はまだまだ多くありません。今後増加が見込まれる保育ステーションですが、既に次のような市町村で運用されています。
東京都町田市
TEL: 042-850-8596
町田駅近隣に「つながり送迎保育園」を設けて一時保育事業を行うと共に、遠隔地の保育園に通う家庭や保育の希望時間と保育所等の開所時間が合わない家庭に対して、送迎サービスを実施している。
大阪府大東市
TEL: 072-870-0474
JR住道駅近くに送迎保育ステーションを設け、遠隔地の保育園に通う家庭の子どもを専用バスで市内の保育施設へ送迎するサービスを実施している。
千葉県流山市
TEL: おおたかの森送迎保育ステーション
047-366-7351
南流山送迎保育ステーション
04-7159-7473
社会福祉法人に業務委託を行い、つくばエクスプレスの市内主要駅である流山おおたかの森駅と南流山駅に送迎ステーションを設け、市内の指定園に通う家庭に対して送迎サービスを実施している。
千葉県松戸市
TEL: 047-366-7351
松戸駅前に保育ステーションを設け、遠隔地の保育園に通う家庭のために、専用バスによる送迎サービスを実施している。
神奈川県横浜市
社会福祉法人と連携して旭区の相鉄線 希望ヶ丘駅近隣に「ヨコハマ旭チャイルドステーション」を設け、0~2歳児はステーションで保育を行う一方で、3~5歳児は他の指定園へ送迎するサービスを実施している。
埼玉県草加市
TEL: 048-922-1491
民間保育園に業務委託し、松原団地駅西口近くに送迎保育ステーショを設けて、遠隔地の保育園に通う家庭や保育の希望時間と保育所等の開所時間が合わない家庭に対して送迎サービスを実施している。
埼玉県志木市
TEL: 048-473-1111
志木駅前に「ぷりえ保育ステーション」を設け、遠隔地の保育園に通う家庭や兄弟姉妹が別々の保育園に通園している家庭のために、専用バスによる送迎サービスを実施している。
茨城県古河市
TEL: 0280-92-3111
古河駅前に「駅前ヤンチャ森」を設け、古河駅を利用して市内保育園に通う家庭に対して送迎サービスを実施している。
保育ステーションの具体的な取り組み
保育ステーションの事業内容はそれぞれの自治体で異なりますが、1日の基本的な流れとしては次のようになります。
- 朝は出勤にあわせて保育ステーションに子どもを連れて行き、保育士やステーション職員に預けて仕事に出かける
- 子どもは送迎時間まで、ステーション保育士と一緒に過ごす
- 送迎バスやワゴン車などを使って、ステーションの職員が指定の園に子どもを送っていく
- 子どもは日中、保育園のスケジュールに従って過ごす
- 降園時刻になったら保育ステーションの車が子どもを保育園に迎えに来て、保育ステーションまで送り届ける
- 親は退勤にあわせて保育ステーションに子どもを迎えに行き、一緒に帰宅する
利用料金・利用方法・利用時間は?
保育ステーションの利用料金や利用時間は、自治体によってさまざまです。保育ステーション事業のモデルケースとして取り上げられることの多い流山市の場合は、次のように定めています。
流山市の保育ステーションの場合
-
利用料金
月額2,000円もしくは、1日あたり100円 -
利用時間
朝 7:00~ 9:00
夕方 16:00~18:00
流山市の場合は保育園経営をしている社会福祉法人に業務委託をしているので、別途料金で最大21:00まで保育ステーションでの延長保育も可能ですし、夕食の提供などにも応じてくれます。利用の申し込み方法も自治体に行う場合と、入園している保育園を介して行う場合とがありますので、詳しくはホームページを参考にするか、自治体の担当課の方に直接問い合わせるといいでしょう。
また車に乗せて送迎する都合上、利用できる子どもの年齢に制限がある場合も多いです。子どもが安全に車に乗ることができるのかを確認するために、申し込み時に担当職員が親子の面接を求めるケースや、事業に対する同意書などの書面提出を求める自治体もあります。
残念ながら保育ステーションでも子どもを受け入れる定員があります。希望すれば誰もが利用できるわけでなないことは、しっかり理解しておきましょう。
保育ステーションのメリット&デメリット
メリット
保育ステーションを利用するメリットは、なんといっても親も子供も保育園を利用する負担が減ることです。待機児童になるわけにいかない場合には、自宅から離れた園に入園することもできますが、保育園に通うために何時間も早く起きて通うのでは生活がたちいきませんし、小さな子どもの体にも負担がかかってしまいます。
その点、保育ステーションを利用できれば、親は自宅と身近な保育ステーションの往復だけで済みますので、時間も手間も、また交通費の面でも負担が軽くなり、子どもが自宅近くの保育園に通っているのとほとんど変わりがありません。
就業開始時間が保育園の開園時間よりも早く、保育園が開くまでの間の預け先がなくて仕事につけなかったママでも、保育園に通いやすいといえます。
保育ステーション事業は単なるバス停ではなく、子どもを一時的に安全に預かる施設という側面も備えていますから、子どもは日中整った施設で安全に過ごし、保育ステーションでも安全に楽しく遊びながら待つことができるので、子どもにとってもメリットが高いのです。
デメリット
車での移動を伴うため交通事故などの安全性や、車酔いなど子どもの体調面への悪影響に不安を持つママ達が多いのも事実です。
また親は基本的に保育ステーションに子どもを送迎するだけで良いのですが、多くの自治体では子育て情報を共有するために週1回程度は保育園と親が直接行き来をするよう推奨していて、これが親に対して負担をしいているというデメリットも否定できません。
実際に横浜市では導入当初5ヶ所作った保育ステーションのうち、利用者が少ない2カ所を廃止するなど、利用しにくい保育ステーションが淘汰される動きも出ています。保育ステーションの利用を検討している場合には、こまめに自治体の情報をチェックしておくことをおすすめします。
保育ステーションで子育てしやすくなる?
これまで日本では女性が専業主婦となって子育てをする家庭が多かったのですが、1997年を境に共働き家庭の方が多くなり、核家族化が進んでいることもあって急激に保育園を利用する人が増えました。ですが施設や保育士はそう簡単に確保できるものではありません。
結果として保育園に入りたくても入ることができない子供、つまり待機児童が増えてしまったわけですがのですが、流山市の場合は事業が始まった平成19年度の利用者は76名であるのに対し、平成22年時には170名に利用者が増えるなど、保育ステーションは確実に待機児童の解消に貢献しています。
保育ステーションはまだまだ首都圏や都市部に集中していますが、厚生労働省でも順調に事業が拡大すれば、千数百人規模の待機児童が保育園に無理なく通えるようになると試算しています。働きながら子育てをするママにとっては、今後に期待がもてそうです。