給食ハラスメントに関する記事

給食ハラスメントを子供がされたら?担任への保護者の対応

給食ハラスメントを子供がされたら?担任への保護者の対応

行き過ぎた給食指導、完食を強要される給食ハラスメントは未だにあり、2017年の9月にはニュースでも取り上げられました。食育を進める文科省の方針に反する給食ハラスメントに、保護者としてどのように対応すればよいのでしょう。

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給食ハラスメントは子供が悪いから仕方ない?まずは親が正しく理解して

給食ハラスメントという言葉を聞き、親の中には学生の頃の給食の様子を思い浮かべて「子供が悪いから仕方がない」と思ってしまう人もいるでしょう。

親や教師から給食を残すことを悪いことだと教えられ、疑うことなく従ってきた人の中には、子供が給食ハラスメントを受けたと訴えても「あなたが悪い」と責めたり、家で食べられるようになるための訓練を強要したりする人もいます。

豊かな人間形成は強要される苦痛からは育めない!

食育とは、食の楽しさを体験させることで導く教育。2005年に制定された食育基本法にも「国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成を旨として行われなければならない」と記されています。強要される苦痛から食への興味感心や楽しさは学べません。親は給食ハラスメントがどれほど子供の将来に深刻な悪影響を与えるかを知り、行き過ぎた善意から子供を守る必要があることをまずは理解しましょう。

給食ハラスメントとは?完食できない子への先生の強要や友達の嫌がらせ

「給食ハラスメント」とは、保育園や幼稚園、学校の教職員が完食を強要する指導やお友達からの嫌がらせなど、給食が食べられないことで引き起こされるトラブル全般を指す言葉です。

2017年9月には小学校の50代教諭が無理やり給食を食べさせたことで児童5人が嘔吐したというニュースが報道され、全国のパパやママに衝撃を与えました。これも給食ハラスメントの一つ。

具体的には、次のようなものが給食ハラスメントに該当します。

給食ハラスメントの類型

  • 給食完食の強要
  • 食べ終わるまでの居残り
  • 給食を残すことを「わがまま」と言う
  • 食べきれない量の給食を盛り付ける
  • 残したことをからかう、嫌味を言う

給食は子供の健やかな成長のためにカロリーや栄養を調整し、美味しく作られているものですが、食の嗜好や味の好み、適正な食事量は人それぞれで違います

アレルギーなどの正当な理由がなくても、どうしても食べられない食材は多くの子供にあり、出された給食を完食できないケースもあります。

こうした個人差を教師や周りのお友達が認めてくれないと、給食を食べることができない子供の心には深い傷が残ってしまいます。

給食ハラスメントの悪影響は?健康被害プラス心への深刻なダメージ

献立表を見る小学生の女の子

食事の量はその日の体調によっても変わりますので、多くの人が給食を食べきれずに困ったという経験をしたことがあるでしょう。

問題なのはこういった給食に絡むトラブルが恒常化してしまうこと。食べることは生きるための本能の一つですが、人間の行動はメンタルによっても大きく左右されますので、保護者から見ればモンスター教師に思える担任に給食を強要され、頑張ったことで吐き気嘔吐などの健康被害が出ることもあります。

中には給食に強い拒否感を抱いて登校拒否になってしまったり、給食の時間を避けたいばかりに学力に見合わない午前だけの定時制高校への進学を選んでしまったりする子もいて事態は深刻。

幼児期に得る記憶や体験は、将来生きるための礎。給食ハラスメントが高じて会食恐怖症になってしまうと、集団でのコミュニケーションや社会生活に支障が出てしまいますし、デートをすることにも恐怖を感じ、結婚して新しい家族を作ることにも消極的になってしまいかねません。

会食恐怖症とは?

他人と一緒に食事をすることに強い不安や恐怖を抱き、緊張して食事が満足に摂れなくなったり、胃痛や吐き気、めまいなどの不調を訴えたりする症状のこと。社会不安障害(SAD)の症例の一つとされ、給食ハラスメントを始めとするさまざまな原因によって引き起こされることがわかっています。

ママになっても苦しい!給食ハラスメント体験談

給食ハラスメントの子育て4コマ漫画

周りの強い励ましやからかいをきっかけに給食ハラスメントや好き嫌いの克服ができる子供もいますが、なかにはできない子もいます。そういったことを教師やママ達が理解していないと、もしかしたら子供の将来に大きな不安を植え付けてしまうかもしれないのです。

シャーン
36歳

給食恐怖症です

小学4年生の女の子と、1年生の男の子のママです。
うちの子供達は幸い給食嫌いではありませんが、現在36歳の私は小さな頃のトラウマで給食嫌い。私が子供の頃の先生はとても厳しくて、給食のお残しはダメだったので、好き嫌いが多い私はいつも泣きながらお昼休み無しの居残り。男の子からはからかわれて、いつもイヤな思いをして成長しました。

そのため子供達の授業参観に行っても、教室の中に給食の匂いが残っているだけで気分が悪くなってしまい、いつも参観を途中で断念してしまいます。

とくとく茶
40歳

今でも急に涙が出てきます

私は小さな頃からマヨネーズが嫌いで、口に入れると胃が勝手に吐き戻してしまうため給食の時間は本当に苦痛でした。私の担任は食べられないことで怒ることはありませんでしたが、昼休みも掃除の時間も5時間目もとにかく完食するまで食べるというルールを作っていたので、口の中で一口吐いては飲み込みながら給食を食べていました。

幼いながらに本気で悩み、自宅でも自分でマヨネーズを作るなどして克服しようとしましたが、油と酢を多量に使うマヨネーズは元々胃腸が弱い体質の私には負担だったのでしょう。クラスで1、2を争う程小さかったこと、早生まれであることなどもあり、どうしても体が給食を時間内に完食することやマヨネーズを受け付けてくれませんでした。

私は担任に文句を言ったり、親に苦痛を訴えたりできるタイプではなかったので、あまりにも辛い時は仮病を使って学校を休み、気分をリフレッシュしていました。学校って自己主張ができない弱者にとっては過酷な場所です。子供ながらに自分のことを棚に上げて道徳の授業などで思いやりを語る先生や大人の理不尽さに呆れていました。

今は油の量を抑えるなどして多少食べられるようにはなりましたが、揚げ物などで油を大量に摂ると胸やけや吐き気がします。主治医からは「胃腸が丈夫ではないので無理をしないように」と言われています。今でも昔のことを思い出したり小学校に行ったりする度に、気づいたら涙が出ています。

はるママ
39歳

給食ハラスメントで好き嫌いがひどくなった

物心ついた頃から食が細くて好き嫌いが多い子供だった私は、当然給食も苦痛でした。小学校での給食ハラスメントが嫌で、床にこぼすフリをしたり、掃除の時間になると床に嫌いな肉だけポイ捨てしたりしていました。

うちは母子家庭で母親は料理が下手で食事に手をかけられない人でしたが、給食の度に嫌な思いをするので、好き嫌いが余計にひどくなり、給食や食事が大嫌いになりおやつばかり食べていました。今でも好き嫌いは直りません。

給食ハラスメントがなくならない理由は?感謝への誤った理解や勉強不足

献立メニュー

「給食ハラスメント」という言葉は近年聞かれるようになった言葉ですが、保育園や小学校の給食の強要は昔からあったことです。

けれど昔と今では指導方法もかなり異なっており、平成17年6月には国会で「食育基本法」が成立し7月より施行され、現在は厚生労働省「保育所における食事の提供ガイドライン」、文部科学省「食に関する指導の手引」共に食育推進について記されていて、保育園や学校では子供に喜ばれる美味しい給食レシピを公開するなど、食育に繋がる活動を行っています(注1、2)。

食育基本法は「生涯にわたり健全な食生活を実現することで、心身の健康増進及び豊かな人間形成に役立てる」という目的を持つ食育を推進させるための法律(注3)。それなのにどうして子供達の心身の健康を害する指導が、保育園や小学校で行われているのでしょう?そこには次の2つの理由があります。

  • 食の感謝への誤った理解
  • 指導者の勉強不足

動物は人間と異なり不必要な狩りや無理な完食をしません。生きるために食べ、他者の命を受け継いで生きています。それこそが生き物の健全で自然な姿なのですが、吐いてでも食べること、不必要な量や体が拒絶する食べ物までお腹に入れることが、食への感謝に繋がる行為だと勘違いしている指導者がいるのです。

飽食の時代である現在の日本では、食べ過ぎや偏食、朝食を抜くことによる害が深刻です。そのため厚生労働省は次の5つの特徴を持つ子供を理想像とする「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針~」を参考にするようにとしています。(注3)

  1. お腹がすくリズムを持っている
  2. 食べたい物や好きな物が増やせる
  3. 一緒に食べたい人がいる
  4. 食事作りや準備に関わる
  5. 食べ物の話題をする

小学校の食に関する指導についても「食事の喜びや楽しさの理解」「食べ物を大切にし、感謝する心を持つ」といった内容が記されており、平成28年2月に小学校で配布された指導を見ても残さずに食べることの大切さは伝えていますが、給食を強制的に完食させる指導をするようにといった記載はされていません。(注2、4)

つまり昔の指導から変わっていることや、なぜ変わったかといった知識がない、または誤った理解をしている保育園及び小学校の指導者が、誤った指導を独自の判断で行っているために給食ハラスメントがなくならないのです。

給食ハラスメントから子供を守る親の3つの対応

基本的に保育園や幼稚園、小学校での子供の指導は担任の先生に一任されていて、なかなか周りの手が入りにくいのが実情です。そうなると給食の時間は先生と子供だけの密室。子供が家庭で給食や先生に対する不満を訴えて、初めて給食ハラスメントに気付くことになります。

我が子が給食ハラスメントにあっていることが分かった場合、親は保育園や幼稚園、小学校にどう対応すればいいのでしょう?

1子供の訴えを無視しない

まず大事なのは、子供の訴えを無視しないことです。パパもママも完食教育で育った人が多いので、先生の指導を「当たり前のこと」と受け止めてしまうこともあるのですが、子供が困って悩んでいる気持ちを無視せず、何とかしてあげなければなりません。

子供が頼れる大人の第一はパパやママです。給食ハラスメントが現在および将来に害のあることは明白ですので、親子の信頼関係を崩さないように親身になって子供の話に耳を傾け、子供の気持ちを労わってあげましょう。

2園や学校に早めに連絡をする

担任の先生の対応についての苦情はなかなか言いにくいものですが、給食は毎日のことですから、トラブルを把握したら早めに担任の先生に相談をしましょう。

もちろんストレートにクレームをつけてしまうと、先生も感情的になってしまいます。それでは話がまとまらないので、まずは「うちの子供が困っていて…」という切り口で、悩み事を相談するように話を向けることをおすすめします。

熟練の先生の中には自分の指導方法に自信をもっていて、子供が困っているということを正面から受け止めてくれず「お宅のお子さんだけ特別扱いできません」と言われてしまうケースもあります。そういったときには担任の先生だけでなく、主任や教頭先生などの上の人にも同席してもらい、話をすると良いでしょう。

3子供の事情を理解してもらう

給食ハラスメントは故意ではなく、担任の先生の理解不足で起こるのが大半ですので、子供の食の嗜好や食事量についてしっかり理解をしてもらえれば、無理な指導は減らせるはず。成長の様子は家庭での食事内容について詳しく説明をして、担任の先生の指導が子供の心と体に負担を敷いていることをわかってもらいましょう。

先生のなかには好き嫌いを早めになくすことが子供のためになると考えている人もいますが、給食の目標はあくまでも食の楽しみを知ることであって、苦しむことではありません。文部科学省がホームページで紹介している指導者用のパンフレット(注4)をさりげなく提示するなどして、少し考え方をやわらげてもらうよう働きかけることも大切です

給食ハラスメント早期発見のポイントは?相談しやすい家庭環境

保育園の給食室の前に立つ子供

給食ハラスメントの害をくい止めるには、日頃から子供が何でも話せる良い家庭環境を作っておくことが大事です。それと共に重要なのが、家庭でも子供に対して食のプレッシャーを与えないこと。もったいない精神で教育されているのは保育園や小学校の担任だけでなくパパやママも同じです。

子供の食の嗜好や食事量は個人差があって当然ですし、小さい頃は無理でも成長に従って自然に克服できる可能性は充分にあります。焦って好き嫌いを親が強制したり、褒めたりご褒美を与えたりして無理に食事量を増やす必要はありません

子供に好き嫌いが多い理由を理解し、子供の成長する力を信じて温かく見守りながら、普段から家庭でも食事は自分のペースや量をわきまえて無理のない範囲で楽しく食べればよいということを教えていきましょう。

この記事を書いたライター
羽根田るみこ

羽根田るみこ

第一子から15年間保育園に通い続け、まだまだ記録更新中です!