自己有用感のある子とは?自己有用感が自尊感情を高める理由
「我が子に自信を持たせたい」と考えたとき、真っ先に思い浮かぶのが自尊感情(自己肯定感)ではないでしょうか。自己肯定感を高めるために褒めて自信を身につけさせることは、子供にとって重要なことです。
でも、自尊感情よりもさらに子供の自信につながる感覚として、今注目されているのが「自己有用感」です。なぜ、自己肯定感よりも自己有用感のほうが、より効果的に自信が身に付くのでしょう?
今回は、自己有用感について、自己肯定感と比較しながら分かりやすく解説。さらに、子供の自己有用感を高める具体的な方法についても紹介しているので、子供に自信をつけさせたいママは必見ですよ。
自己有用感とは?自尊感情(自己肯定感)との違いは?
自己有用感とは、「自分は人の役に立っている」「○○をすると喜んでもらえる」など、他人から評価されることによって得られる感情のことをいいます。自己有用感は、他人から評価されることによって自信が養われるのが特徴です。
それに対して、自尊感情とは、自分に対して肯定的な評価をすることによって得られる感情のことです。自己肯定感とも呼ばれ、大人に褒められることによって、自信が養われるのが特徴です。
自尊感情は、あくまでも他人を介さない自己評価のため、過大評価につながりやすく、周囲の友達などから評価が得られないと、せっかく身についた自信を喪失してしまう恐れがあります。
そのため、自尊感情を高めるためには、ただ周囲の大人がほめて自信をつけさせるのではなく、はじめに自己有用感を高めることによって自信をつけさせる方が、より強い自信につながるのです。
自己有用感が高い子供の5つの特徴
自己有用感を得ることで自信を持った子供は、具体的にどのような考えを持つようになるのでしょう。主に、自己有用感が高い子供には、次のような特徴があります。
1自分にはよいところがあることを知っている
人の役に立ち、人から感謝されることが、自分の自信につながります。そのため、自己有用感が高い子供は、ほかの人から良い評価を受けるという経験を重ねることで、自分の良さを自覚しています。
2人を思いやることができる
自己有用感が高まると、困っている人を助けたい、人に喜ばれたいという気持ちが強くなります。自分が行動することで、他人に感謝されることに喜びを感じて、自然と思いやりの心が育つのです。
3何事にも積極的
自己有用感が育っている子供は、人に評価されることに喜びを感じて、もっと頑張ろうという気持ちになります。それによって、何事にも積極的になり、どんどん行動してさらに自信をつけていくでしょう。
4人と協力しながら物事を進められる
人から感謝されるようになると、自然と人への感謝の気持ちが生まれ、相手の気持ちを大事にできるようになります。そのため、人とうまく協力できるようコミュニケーション能力も高まるので、集団生活でもうまくやっていけます。
5自分で考えて行動できる
人からの評価にやりがいを感じて、「どうすれば人の役に立つのか」と常に考えながら行動をします。自分が相手のことを考えてした行動が、良い評価として返ってくると、さらにやりがいを感じるようになります。
自己有用感を高めるとどんな効果があるの?
自尊感情(自己肯定感)は、他人とのかかわりとは無関係に生まれる感情なのに対し、自己有用感は他人の存在なしでは生まれない感情です。そのため、自己有用感を高めることは、子供の社会性の発達におおいに役立つのです。
また、他人とのかかわりによって自己有用性を高めることで、次のような自信が身に付きます。
- 自分は人の役に立つ存在だ
- 自分は価値のある存在だ
- 自分は周囲の人から認められている
自己有用感と自尊感情の高さによる考え方の違い
自己有用感と自尊感情の特徴の違いについて何となく分かったところで、次に具体的な考え方の違いについてみていきましょう。
ここでは、学校で行われる合唱コンクールのピアノ伴奏者を選ぶ場面を例に、それぞれの考え方の違いを解説していきます。
タイプ1~自尊感情が低い/自己有用感が低い
「どうせ私はピアノが下手くそだから、伴奏者に選ばれるはずがない」
自分の能力を過小に評価し、人からも必要とされていないと感じるので、何事も悪い方に考えてしまいます。
タイプ2~自尊感情が高い/自己有用感が低い
「私はクラスで一番ピアノが上手いのに、誰も私を選んでくれない」
自分に自信はあるのですが、「私のことを誰も理解してくれない」と考えがち。自分が選ばれないことを人のせいにしています。
タイプ3~自尊感情が低い/自己有用感が高い
「他にもピアノが上手い子はいるのに、みんなのおかげで伴奏者に選ばれた」
自尊感情の低さから、自分の能力を低く考える傾向が見られますが、自己有用感が高いため、他人からの評価に感謝することができます。
タイプ4~自尊感情が高い/自己有用感が高い
「クラスで一番ピアノがうまいから伴奏者に選ばれた。みんなのためにも頑張りたい」
自分は優秀だということに気づきながらも、特段に自慢することなく、周囲に感謝しつつ、持っている力をみんなのために使おうと考えることができます。
子供の自己有用感を高める方法は?
自己有用感の高い子供に育てるためには、親子のかかわり方の中でも気をつけたいポイントがあります。具体的な方法は次のとおりです。
子供に関心があることを示しましょう
普段から「ちゃんとあなたのことを見ているよ」というメッセージを送り、親が子供に関心をもっていることを感じさせることが大事です。
自己有用感を育てるためには、他人からの評価が大切です。周囲の大人が自分に対して無関心だと感じてしまうと、自己有用感が持てなくなってしまうことから、親がいつも自分を見ていることを知ってもらう必要あります。
子供に達成感を得られる機会を与えましょう
子供自身が物事をやり遂げたという達成感を味わうためには、そのような機会を用意してあげることも大事です。家庭の中でのお手伝いや弟・妹のお世話、家の周囲のゴミ拾いなど、ちょっとしたことでも構いません。
また、やり遂げた後で「ありがとう」「よく頑張ったね」と感謝やねぎらいの気持ちを伝えると効果的です。
子供なり工夫や努力したことを評価してあげましょう
大人目線で結果を評価するのではなく、子供がどう頑張ったのかプロセスについて評価してあげましょう。そのためには、何かを成し遂げる過程において、子供が子供なりの努力したことや工夫した点について目を向けることが大切です。
たとえ、失敗してしまっても、頑張ったことを評価されることによって、「次は成功できるよう頑張ろう」と思えるはずです。
人と交流する場を設けましょう
他人から評価されるためには、いろいろな人と交流することが大事です。普段一緒に暮らしている家族以外の人と触れ合うことで、子供が人のために何かができる機会を増やすことができます。
特に、さまざまな年齢の人が集まる場では、「年上から優しくされる」「年下を思いやる」などの体験を重ねることで、人とどのように接するべきかが自然と分かるようになります。
子供を「褒める」のではなく「認める」ことが大事
子供を「褒める」ことで自尊感情(自己肯定感)が育つのに対して、自己有用感を育てるためには、子供を「認める」ことがとても重要です。
そのため、子供を褒める際は、主語は子供(あなた:you)ではなく、ママやパパ(私:I)となるよう意識してみましょう。
例えば、子供が片付けをした場合、「一人で片づけができて、あなたはいい子ね」と子供を主語にするのではなく、「一人で片づけができて、ママはうれしい」とママを主語にすることで、子供はママに認められたと感じることができます。
このように、子供の褒め方を工夫することでも、子供の自己有用感を伸ばすことができるのです。