折れない心を作るには?ストレスに負けない子供の育て方
お母様やお父様なら誰もが、「子どもには困難を乗り越えて強く生きてほしい」と願うものですよね。これから先の人生では、失敗を経験し、心が折れそうになることもあるでしょう。しかし、すぐに諦めてしまっては、人間的な成長は望めません。失敗しても立ち直れるよう、子どもをたくましく育てるためには、どのような点に気をつけたらよいのでしょうか。
今回は、「折れない心」をキーワードとして、心理学の専門用語である「レジリエンス」の意味や、心が折れやすい子どもの特徴、折れない心を育むためのポイントなどについて解説します。逆境に強い心を作るためのヒントをたくさんご紹介しますので、子育ての参考にしてくださいね。
子どもの抑うつ的な状態について
大人だけの問題と思われがちな心身の不調ですが、近年、子どもや思春期の若者の間でストレスによる心身の負担が増えている可能性が指摘されています。例えば、大規模な調査では「小学生の約8%、中学生の約23%が抑うつ的な状態(抑うつ傾向)にある」といった結果も出ています。
人間関係の複雑化や、スマートフォンなどの普及により学校外でも人間関係のやり取りが続くことなど、現代社会のさまざまなストレスが背景にあると考えられます。このような環境下で、さまざまな不安や困難に負けないためには、子どものころから意識して、困難に立ち向かい乗り越える力、つまり「しなやかに適応する力(レジリエンス)」を育てることが大切なのです。
「折れない心」とは「レジリエンス」のこと
心が折れるとは、「困難に直面した際に、立ち向かう意欲を失い、挫折して頑張れなくなってしまうこと」を言います。心が折れやすいと、問題解決を試みる前に諦めてしまうことにつながります。そのため、困難から立ち直る力を培うことが、子どもの成長において重要となります。
「折れない心」と聞くと、何があっても揺るがない「強い心」をイメージする人が多いかもしれません。しかし、本当に大切なのは、困難なことが起こった時に、一時的に落ち込んでも、そこからしなやかに適応し、回復することができる「柔軟な心」です。心理学において、この柔軟な心のことをレジリエンス(resilience)と呼びます。
例えば、太い木の枝が強風で折れてしまうように、無理に硬く立ち向かってばかりでは、何かの拍子にくじけてしまう恐れがあります。強風に身を任せる柳の枝のように、しなやかな心でいる方が、逆境から立ち直る真の意味で強い心と言えるでしょう。
心が折れやすい子供の主な特徴
難しい問題に直面した時、すぐに諦めたり深く落ち込んだりする子どもには、いくつかの共通する特徴があります。心が折れやすい子どもの主な特徴を4つにまとめました。
自己肯定感が低い・自尊心が低い
自己肯定感(ありのままの自分を受け入れ、尊重する気持ち)が低い子ほど、心が折れやすい傾向にあります。自分を肯定的に捉えられないため、「どうせ自分はダメなんだ」と自分自身を過度に責めてしまい、なかなか自信を持つことができません。
また、自分に自信がないため、特定のものや人に依存しやすい傾向も見られます。このようなことから、自己肯定感が低いと、困難な問題を解決する前に諦めてしまうことが多いのです。
何事も諦めやすい
心が折れやすい子どもは、問題に直面するとすぐに諦めてしまう傾向があります。人間は、困難な課題を解決することで自分に自信を持ち、成長していくものです。しかし、何に対してもすぐに諦めてしまうと、最後までやり遂げた時の達成感や成功体験を得る機会を積むことができません。
そのため、自分に自信を持つことができず、新たな問題に直面した時に、またすぐ諦めてしまうという悪循環にはまってしまうのです。
マイナス思考が強い
マイナス思考が強いと、行動する前から失敗することばかりを想像し、行動に移すことができません。マイナス思考を持つ子どもは劣等感が強く、「自分なんて何をやってもダメ」「自分にできるはずがない」と考えがちです。
自分のことを省みず、できないことを人のせいにしたり、苦手なことから逃げたりする場合もあり、問題解決に取り組む前から心が折れている状態と言えるでしょう。
気持ちの切り替えが苦手で影響を受けやすい
心が折れやすい子は、他の人が気にしないような小さな失敗でも大きなダメージを受けてしまいます。周囲の様子に敏感に反応し、些細なことに一喜一憂してしまうと、精神的に疲弊してしまいます。その結果、何をやっても長続きせず、気持ちの切り替えができずに心が折れやすい状態となってしまうのです。
多様性を受け入れる柔軟性に欠ける
他者の性格や多様性を受け入れることができず、凝り固まった考え方をしている子は、心が折れやすいと言えます。柔軟な心を持つには、他人や自分の良いところを認められることが大切です。自分中心の考え方しかできない子どもは、自分よりも優れている他者の存在に強い悔しさを感じやすい傾向があります。
他者と自分との違いを認められないため、自分自身の良さや個性を認めることも苦手になりがちです。気持ちの持ち方が硬直化し、柔軟な考え方ができないので、ちょっとしたことで挫折しやすくなるのです。
逆境から立ち直る力「レジリエンス」の重要性
現代社会では、変化の激しいビジネス環境や複雑な人間関係の中で、ストレスに強く、困難を乗り越えられる人材が求められています。その鍵となるのが、先ほど触れた「レジリエンス」です。
子どもの折れない心を育てるためにも、このレジリエンスの強さが重要となります。ここでは、レジリエンスの専門的な意味や、心の鍛え方についてご説明します。
レジリエンスの意味
レジリエンス(resilience)とは、「精神的回復力」「復元力」「適応力」などの意味で使われる心理学用語です。一般的には「トラウマ、逆境、悲惨な出来事、または継続的な困難な人生経験に直面した際に、うまく適応する過程と結果」と定義されています。
困難な問題が起こった時に、不安や失敗などのネガティブな感情を抱くのは自然なことです。レジリエンスとは、一時的に落ち込んでも、そこから立ち直り、さらにその経験を成長の糧とするしなやかな心を指します。
レジリエンスを鍛えることが折れない心を作る
人とのコミュニケーションが重視される現代では、ストレス社会を生き抜いていくために、レジリエンスを鍛える必要性が求められています。折れない心を作るために、レジリエンスをいかにして鍛えるかに注目が集まっています。
レジリエンスは、先天的な資質だけでなく、後天的に学習し、高めていくことが可能です。例えば、企業研修などでは、逆境を乗り越える力を身につけさせるために、レジリエンス・トレーニングが取り入れられています。
【レジリエンス・トレーニングの主な流れ(一例)】
- 非合理的なマイナス思考のパターンを認識し、抜け出す
- 失敗や困難からスムーズに立ち直るための具体的な行動を学ぶ
- 逆境から立ち直った経験を成長の糧として次に生かす
折れない心を育てるために必要な4つの要素
大人になってから強く生きていけるよう、折れない心(レジリエンス)を育てるためには何が大事なのでしょうか。レジリエンスを高めるために必要な主な要素を4つご紹介しますので、子育ての参考にしてください。
1. 自分自身への信頼感(自己効力感)
「自分にはできる」と自分の持っている力を信じる自己効力感は、折れない心を育てる近道です。自己効力感とは、「自分がある特定の行動を遂行し、目標を達成できるという信念」を指す心理学用語です。自分のことを信用できないと、「自分には無理だ」とほんの少しハードルが上がっただけで、すぐ諦めたり挫折したりしてしまいます。自分を信頼するためには、「自分ならできるかもしれない」という前向きなイメージを常に持ちながら行動することが大切です。
折れない心を育てるためのポイント
親は、「どうせ無理だから」と諦めがちな子どもをサポートし、成功体験を積ませることで、「自分はやればできる」という自分自身への信頼感(自己効力感)を高めていきましょう。
2. 感情のコントロール能力
折れない心を作るには、感情のコントロール能力が重要です。目先の失敗や成功に一喜一憂しないで、広い視野で物事を捉える必要があるためです。ネガティブな感情に支配されて行動できなくなるのを防ぎ、冷静な判断で次の行動に移す力がレジリエンスの根幹となります。
折れない心を育てるためのポイント
子どもの失敗や成功に関わらず、「次はどうする?」「次も頑張ろうね」と促してあげることで、結果だけに振り回されない、感情を適切に処理する力を育てましょう。
3. 自尊心・自己肯定感
自尊心・自己肯定感とは、自分の考えや性格などをありのままに受け止め、大事にすることを言います。これらを養うには、誰にでも長所と短所があることを理解し、全てにおいて完璧を求めすぎないことが重要です。
また、自分だけでなく、他者を思いやる心(他者の尊重)も教えていきましょう。自分を大事にできる人は、相手のことも大事にできる人です。親が率先して、他人を思いやる態度を見せれば、子どもにも自然と身に付くはずです。
折れない心を育てるためのポイント
周りの大人が子どもの存在を認め、無条件に愛し、大事に育てれば、子ども自身もありのままの姿でいいと感じ、揺るがない自尊心や自己肯定感が育っていきますよ。
4. 楽観的な考え方(現実的楽観性)
折れない心を持つために、楽観的な考え方(現実的楽観性)ができるように育てましょう。ここでいう現実的楽観性とは、ネガティブな現実も認識した上で、自力でコントロールできるものに焦点を当て、希望を持って前向きな行動を起こす能力を指します。
子どもが成長する上で、どうしても今はできないことや、失敗することが必ずあるものです。「今はできなくても、努力すればいつかはできるようになる」「失敗は学びの機会だ」という建設的な考え方を持たせることで、またチャレンジしてみようと前向きになることができます。
折れない心を育てるためのポイント
子どもが過去の失敗を思い出してくよくよしていたら、「そのうちできるようになるよ」「次はここを工夫してみよう」と声を掛け、建設的な姿勢で受け入れられるように促しましょう。

