子供の幸せを願ったつもりが…早期教育の利点と弊害&アドバイス
昨今、「子供の能力を幼児期に高めることで人生を豊かに幸せに過ごして欲しい!」と願うパパママが増え、子供が小さいうちから幼児教室などに通わせています。幼児教室では、文字・漢字・言葉・数・図形などをパズルやタングラム、フラッシュカードなどの教材を用いて学習させています。
『子供の脳が柔軟なうちに刺激を与えて子供の知的好奇心を促進し、高い順応能力を持つ幼児期に専門的な訓練を行うことにより、「優秀な」人間を育てる。』
という理念のもと、街には多種多様な早期教育の幼児教室やシステムがあふれていますが、一方では早期教育による子供への弊害も指摘され始めています。
親になったら考えたい早期教育の利点と、親として知っておきたい子供への弊害&アドバイスについてご紹介します。
早期教育の利点って一体なに?
子供の豊かな将来を約束する可能性をもつ早期教育。
しかし早期教育を受ければ誰もが傑出した人物になれるかといえば、そうではありません。
それはその子供の個性、向き、不向きであるとしか言いようがありません。
知能指数に関しては、早期教育を受けて幼児期に高い知能指数を示した子供でも、青年期に入れば平均的な知能指数に落ち着いていくという調査結果もあります。
子供のころから知能指数だけにこだわる必要はあまりありません。
どんな子供に育てたいのかよりも、子供に何が必要なのかを考えて、親が子供にあった早期教育のプログラムを、賢く選ぶ必要があるといえるでしょう。
早期教育に期待できるメリット
- 早い時期に基礎学力をつけることで将来の可能性を広げられる
- 幼児期のうちから専門的な技術を体得させられる
- 年齢にとらわれず自由に教育を受け、得意分野を伸ばすことができる
- 基礎学力を身につけて「落ちこぼれ」を回避できる
早期教育じゃないと賢い脳にならないの?
人間の脳は、無数の神経細胞(ニューロン)から成り立ちます。
このニューロン同士を結合させる結合部分はシナプスと呼ばれ、このシナプスの数が多いほど人間の運動能力・記憶力・創造力・理解力が優秀になると言われています。
またシナプスは0歳から3歳までに8割、6歳までに9割、12歳までにほぼ10割が完成すると言われています。
ではどうすればシナプスは増え、子供の能力は伸びるのでしょう?
実は、「うれしい、楽しい、面白い」そう感じることのできる体験。そういった経験がシナプスの数を増やし、素晴らしい能力を開花させるのです。
つまり早期教育を受けなくても、楽しく様々な体験を積んでいる子の脳は、自然に賢くなるのです。
子供の脳を発達させるには
文字や数字などの特定の知識を詰め込むのではなく、感情を豊かに育み、本人に多くの経験をさせることが大切です!
子供の幸せを願ったつもりが…5つの早期教育の弊害&アドバイス
早期教育には一体どのような弊害があるのでしょうか?
また弊害を回避して子供を賢くするために、親は何をすべきなのでしょう。
1 自然な脳の発達を阻害する
早期教育により知識のつめこみを行うと、「自然な脳機能の発達を阻害してしまう恐れがある」と言われています。
脳が未成熟なうちに情報を詰め込むことで、本来発達するべき「感情」や「個性」を育む脳の活動が損なわれてしまう可能性があるそうです。
インプット型の早期教育へのアドバイス
情報のインプットばかりをせず、いろいろな体験をさせましょう!
シナプスは愛情、肌の触れ合い、会話などの受け答えを伴うコミュニケーション、適度な音楽や運動などの刺激、お手伝い、外遊び、自然体験などにより増えてゆきます。
2 コミュニケーション能力が育たない
早期教育に時間をとられると、子供自身が自発的に外に出て友達を作り、喧嘩をしながら共同作業を行っていく本来の「遊び」が減ってしまいます。
この自発的な友達との遊びが減ることで、コミュニケーション能力の発達を阻害してしまう恐れがあると言われています。
「早期教育のお教室で遊べるから…」と思うママも多いと思います。
けれど早期教育の遊びは一方通行の遊びが多いため、コミュニケーションを伴わない孤独な遊びの時間となりやすいのです。
つまり早期教育は、幼児期に学ぶべきコミュニケーション能力が育つことを期待できない場合が多いと言えます。
一方通行の早期教育へのアドバイス
- 公園に連れていったり、お友達を呼んだりして、子供同士で遊べる機会を多く持たせましょう!その際に親が口を出し過ぎたり、無理強いせずに、子供の自発的な意志を大切にしましょう
- 「つまらない」は悪いことではありません!友達を作りたいという意欲に繋がり、幼児期の集団生活の礎になります。集団生活を通して自発的に考える力、物事を正しくとらえて判断する力、想像力や感受性などを育むことが将来の様々な能力を伸ばすことに繋がります
- 宿題が多くて遊ぶ時間が持てない時や子供が宿題を喜んでやらない時は、宿題を減らしてもらい、友達と遊ぶ時間を増やす
3 自己肯定感が育まれない
自己肯定感とは、「自分はかけがえのない大切な存在だ」と自分の存在を肯定できる気持ちのことです。子供時代に「自己肯定感」を育むことは最優先にすべき教育と言えます。なぜなら自己肯定感こそが人間の生きる基盤、生きる意欲となるのです。
ところが早期教育で自己肯定感を失くし、自分を愛せない人間に育つと、他人を愛することも他人に愛されることも難しくなります。
早期教育を受ける子供たちは、楽しくて、喜んでプログラムに取り組むことが多いです。それはできることを親に褒めてもらえるからです。
では逆に、子供が親の期待に応えられない場合、子供はどう感じるのでしょう?
目の前のプログラムがこなせない、要求されている答えが導き出せない。
そんな時にママの溜息やパパの困った顔を見て、子供は悲しみ、自己肯定感を失ってしまいます。
そして親の期待に応えることや良い評価を得ることだけが大切だと勘違いしてしまい、自分の存在そのものが素晴らしいという、本来持つべき自己肯定感を育むことが難しくなります。
その結果、大きくなって学習意欲を失ったり、中には自分をわざと傷つけてしまう子供たちもいるそうです。
自己肯定感を育むためのアドバイス
- 子供が受け身になりすぎないよう、自分のことはで選ばせるようにし、子供の自主性を尊重する
- 手伝いをさせて感謝の気持ちを伝える!その際上手にできなくても口うるさく指導したり、やり直しをさせずに「ママ助かったわ。ありがとう」と褒める
- 「できた・できない」ではなく、挑戦したことや頑張ったことを褒める
4 子供に過大なストレスを与える
早期教育により常に知識を詰め込まれ、親の期待に応えることを要求されると、心も体も未発達な子供にとっては大きなストレスになります。
その結果、疲れやすくなったり、頭痛がしたりという症状を引き起こし、重い病気を発症してしまう可能性があります。また、人格形成にも影響を及ぼします。
常に緊張状態でいることを強いられた子供は、良い結果を出そうと頑張り、自分の意思に関係なく交感神経を活発にさせて、体が興奮状態になります。
長い時間興奮状態を維持することで、血管が収縮して血液の巡りが悪くなると、脳に酸素が供給できず、脳の正常な発達が阻害されてしまいます。
脳の機能の発達が阻害されることで、突然奇声を上げたり暴れだす「キレやすい」人格が形成されてしまったり、自傷行為をくりかえす危険性も…。
幼児期には自分の意思を表現できませんし、表現できても大好きな両親から与えられたものには「イヤ!!」とは言えません。
だからこそ、親は子どものストレスのサインを見逃なさいように注意することが必要なのです。
気を付けたい幼児のストレスサイン
- 疲れや無気力な行動
- 下痢や腹痛、嘔吐やめまい、頭痛などの身体症状
- チックやどもり
- おねしょや頻尿
- 気管支ぜんそくや円形脱毛症
- 指や物を噛んだりくわえたりする
5 親子の関係を壊してしまう
何もできなかった我が子が、早期教育によって目まぐるしく知識や技能を身につけていくと、親は子供の脳の発達以上の教育を注ぎ込もうとする傾向があります。
その結果、親子の信頼関係を壊してしまうことがあります。
日々成長し、感情を豊かにしてく子供。
始めは何の意思表示をしなかった子供も、いずれ「アレは好き」「コレはイヤ」という「自我」を持ち、親から離れて自分の思い通りのことをしたいという、「自発性」が芽生えてきます。
そんな時に、一方的に知識や技能をママやパパが押し付けてきたら子供はどう感じるでしょう?
「自分のできないこと、嫌なことを押し付けられた…」そう感じた子供は、その場で言葉や態度に表さなくても、内心親への信頼を失ってしまいます。
ひどい時には、親子の絆が修復困難なほどに壊れてしまうことも…。
幼児期の親子の信頼関係は、その後の人間関係の基礎となるもの。
子供の信頼を失うことがないように、子供の発達に見合った、子供の個性にあった教育を見極めていくことが肝心です。
子供を伸ばす早期教育の選び方は?
- 子供の発達に見合った教育をする
- 教育を親同士の競争にしない
- 子供の自発的な遊びや集団遊びを大切にする
- 親も子も楽しんで学習できる
- 学習や宿題を親や子供に強要しない
えっパパママにも?早期教育が親に与える弊害
「親が選び、望んだ将来が、子供にとっての幸せであるとは限らない」
そんな当たり前の思考を親から奪ってしまう…。それが早期教育が親に与える弊害です。
早期教育を行うことによって一定の成果を得られれば、さらなる上を目指してしまう親の欲望。
他の子供よりも上を目指そうとする親の競争心。
それが子供を追い詰め、親子関係を悪化させ、間違いに気づいたときには子供は心に大きな傷を負い、親は多額の教育費を使っていた…というケースもあります。
親としか社会とつながるすべを持たない幼児は、早期教育が親に与える弊害をダイレクトに自分のものとして引き継いでしまいます。そのことを、忘れないように注意しましょう。