マイナンバー制度が銀行などの金融口座に適用される理由とは
2018年からすべての新規口座に、2021年からすべての既存口座に、マイナンバーの登録が義務化される予定です。マイナンバーが金融口座と紐付けられる理由を解説します。国民の情報を一元管理することができる、マイナンバーと銀行口座が紐付けられることにより、私たちにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
マイナンバーを口座に紐付ける理由1:納税漏れをなくすため
会社に勤務している場合、給与から所得税と住民税が源泉徴収されます。このように『給与』として収入を得るときは、納税漏れや脱税を起こすことはあまりないといえます。ですが、個人事業主として働いている場合や相続を得た場合、税金を計算する第三者(会社の経理部や庶務課)の存在がないため、隠そうとすれば隠すことができるのが現実です。
マイナンバーを個人や法人の口座と結び付けることで、お金の流れが把握しやすくなり、どの部分で税金の支払いが行われていないか、また税の二重取りになってはいないかが発見しやすくなると考えられます。
マイナンバーを口座に紐付ける理由2:社会保障受給の迅速化
生活保護を受けるためには、資産状況などを把握し困窮度合いを確かめることが求められますので、申請してから受給までに数週間かかることも珍しくありません。本当に生活に困って申請している場合、1日受給が遅れることが命を左右することにもなりかねません。
個人の金融口座にマイナンバーを紐付けることで、資産状況の把握がすぐに行われるなら、社会保障が必要な人に適切な保証を迅速に与えることにも繋がります。
マイナンバーと口座が結び付けられるメリットとデメリット
マイナンバー制度は、2018年からは任意で個人・法人口座に適用されますが、2021年を目途に、個人や法人の金融口座にマイナンバーもしくは法人ナンバーを登録することが義務となることが予定されています。適用が完了すると、個人の生活にどのようなメリットやデメリットが生じると考えられるでしょうか。
マイナンバー制度が銀行口座に適用されるメリット
結論から言いますと、
マイナンバー制度が口座に適用されることで、個人が得るメリットは何もありません。
メリットがあるのは国のみであるのが、金融口座へのマイナンバーの紐付けなのです。
マイナンバー制度がないときも、国税庁は各金融機関に個人や法人の口座情報の開示を求めることは可能でした。ですが1つ1つの口座に対して開示を求め、金融庁の役人を派遣してお金の流れに違法な部分はないかを検証しなくてはならず、小額の脱税や納税漏れの場合には費用対効果を考えるとマイナスとなることが多く、事実上、目をつぶった方が金銭的にはプラスであることが多かったのです。
ですが、マイナンバー(個人のマイナンバー、法人の法人ナンバー)制度を適用することで、知りたい口座情報をオンラインで簡単に見ることができるだけでなく、関係者の口座情報も閲覧することができるようになりますので、所得隠しなどの発見が容易になると予想できます。
マイナンバー制度が銀行口座に適用されるデメリット
「税金を納めないようにしよう!」と目論んでいる人以外にデメリットはないはず・・・なのですが、悪意なく税金の納め忘れがあった場合も『脱税者』になってしまいます。国が個人の資産を管理する以上に、自分の資産はしっかりと管理しなくてはならないといえるでしょう。
個人の生活は何が変わる?貯金や養育費への影響
「銀行の預金残高が政府に筒抜けになってしまう・・・」と不安に感じて、口座を解約しようと考える方や、マイナンバー制度自体を拒否しようと考える方も少なくないかもしれません。
しかし防犯上、家に多額の現金を置いておくことはお勧めできませんし、決まってしまった制度自体を拒否することは却って「何か隠したいお金があるのでは?」と政府の監視を強化してしまうことにもつながりかねません。マイナンバー制度が怖いと思い込むよりも、まず、自分自身の生活にどのような影響があるかを理解しておくほうが賢いマイナンバーとの付き合い方と言えるでしょう。
貯金は減らない
現在の日本では保有する資産は課税対象とはなっていませんので、口座とマイナンバーが結び付けられたとしても貯金額に影響は及びません。
慰謝料と養育費
慰謝料も養育費も非課税です。しかし慰謝料は所得として計上しませんが、養育費の8割は所得として計上されるという違いがあります。そのため養育費が多すぎると児童扶養手当が減額されたり、もらえないことがあります。同じ額を月々受け取る、もしくは分割で受け取るなら養育費ではなく慰謝料として受け取るほうが良いケースが多いといえます。
気になる方は、行政で行っている法律無料相談などを利用してみましょう。しかしマイナンバー情報が口座情報や児童扶養手当等に影響することがあるにしても、受け取る慰謝料・養育費の額を少なく申告するような脱税行為は認められません
また児童扶養手当の所得制限は、扶養する人数や住民票がある市町村によって異なりますので、どのような基準になっているか確認しておきましょう。