亜硝酸ナトリウムはどんな食品添加物?特徴と役割について
化学の授業で、強酸かつ危険と習った「硝酸」。そんな硝酸という言葉が含まれる「亜硝酸ナトリウム」は、食品添加物として頻繁に使用されている成分です。どのような目的で使用される添加物なのか、またどんな特徴があるのかを見ていきましょう。
食品添加物以外の分野における亜硝酸ナトリウム
亜硝酸ナトリウムは食品添加物としてだけでなく、工業や医療にも利用されています。亜硝酸ナトリウムが持つ効果について説明します。
工業的利用法
亜硝酸ナトリウムは工業の場面で、金属の表面加工や熱処理剤として利用されます。また、優れた潮解性を示しますので、試薬や漂白にも利用されています。安定性が低いので、ニトロ化合物や酸化窒素の合成にも使われることが多いです。
医薬品としての利用
安定性の低さを活かして、解毒剤として使用されることもあります。例えば青酸カリなどの毒薬を服用してしまった場合、反応性が高い亜硝酸ナトリウムを飲ませることで、体内で安全な物質に化合させることが可能です。
食品添加物としての亜硝酸ナトリウム
工業用に利用される場合も、解毒剤として利用される場合も、私たちが日常的に直接体に摂り入れるという利用法ではありません。より身近な存在である食品添加物としての亜硝酸ナトリウムは、どのような効果があるのでしょうか。
食品添加物としての利用1:発色剤
赤やピンクの肉も、時間が経過するとともに腐ったわけではないのに黒ずんでしまいます。品質には何の問題もなくても、黒ずんでしまった肉はおいしく見えず、時間が経ったものであることが一目瞭然ですので商品として売ることはできません。
長期保存することが目的でもあるソーセージなどの肉加工品も、時間とともに黒ずんでしまいます。ですが、亜硝酸ナトリウムを添加するなら、いつまでも美味しそうな色を保つことができます。発色剤として肉や魚の加工品に利用されています。
食品添加物としての利用2:防腐剤
細菌繁殖による腐敗を防ぐために、加工食品に亜硝酸ナトリウムが加えられることがあります。特に細菌が繁殖しやすい非加熱のソーセージ等の肉加工品は、防腐剤としての亜硝酸ナトリウムの添加が義務付けられているのです。ですから、国内生産の非加熱の肉加工品を購入するなら、亜硝酸ナトリウムは必ず摂取してしまうものであることが分かります。
亜硝酸ナトリウムの危険性と使用基準について
国が添加を義務付けていることは、絶対に安心であるということを意味するわけではありません。本当に安全な添加物ならば使用上限を厳密に決める必要がありませんが、亜硝酸ナトリウムには危険性がありますので使用上限が厳しく設定されているのです。
亜硝酸ナトリウムの使用基準
魚肉ハムや魚肉ソーセージは重量の0.005%以下の使用、肉加工品や鯨肉ベーコンは重量の0.007%以下の使用、いくらやすじこ、たらこなどの魚卵は重量の0.0005%以下の使用と厚生労働省の「添加物使用基準リスト(平成27年9月18日改正)」で定められています。
亜硝酸ナトリウムの危険性
亜硝酸ナトリウムは肉や魚に含まれる「アミン」と化合すると、「ニトロソアミン」という物質を生成します。亜硝酸ナトリウムは解毒剤として使用されることからも分かりますように、安定性が低く反応性が高い物質ですので、「アミン」があるところならばすぐに「ニトロソアミン」を生じてしまうのです。
この「ニトロソアミン」は強力な発がん性物質です。細菌発生による食中毒を避けることも大切ですが、ニトロソアミン発生による発がんを避けることも重要ですので、使用上限が厳しく設定されているのです。なお、肉や魚肉より魚卵にアミンが多く含まれていますので、魚卵に添加する亜硝酸ナトリウムはより厳しい基準となっているのです。
亜硝酸ナトリウムに対する政府の見解
防腐剤や発色剤として必要だとしても、できることなら亜硝酸ナトリウムの摂取は避けたいと思う方も多いでしょう。非加熱ソーセージの購入を避けることや、亜硝酸ナトリウムの表示がある加工食品を避けることはできますが、そもそもなぜ、発がん性物質を生む食品添加物の添加を義務化しているのでしょうか。
農林水産省の公式見解では、
硝酸塩の摂取と発がんについての研究も各国で実施されているところですが、 FAO/WHO合同食品添加物専門家会合(JECFA)は、硝酸塩の摂取と発がんリスクとの間に関連があるという証拠にはならないと言っています。
(注1)
と、絶対に発がん性があるという結果にはなっていないことを挙げて、禁止する理由はないと述べているのです。
危険な可能性があるもの≒危険なもの
絶対に危険かどうかは確証できないとしても、危険な可能性が高い物質であることは間違いないのが「亜硝酸ナトリウム」です。体を害するものだけでなく、害する可能性があるものはなるべく禁止してほしいと、一消費者として願わざるをえません。
参考文献