共同注意~赤ちゃんの発達に欠かせない行動とは?
赤ちゃんは毎日泣くだけで、ママの気持ちなんてさっぱり分かってくれない…と感じているママは多いはず。でも、赤ちゃんは、意外なことにママの気持ちを汲み取ろうとしているってご存知ですか?
それが分かるのが「共同注意」という行動です。他人との気持ちの共有がベースとなる共同注意は、赤ちゃんの言語の発達や社会的発達に欠かせないため、ママは共同注意について詳しく知っておくことが大切です。
ここでは、具体的にどのような行動が共同注意につながるのか、共同注意が赤ちゃんの成長に及ぼす影響などについてご紹介。赤ちゃんの知られざる行動を知ることで、赤ちゃんへの愛おしさがますます増していくことでしょう。
共同注意ってどんな行動?
共同注意(ジョイントアテンション)とは、赤ちゃんが相手と同じものに注意を向けて、「相手の行動の意図を共有する」「自分の行動の意図を共有してもらう」などの調整を行う行動のことをいいます。
「赤ちゃんにそんなことができるの?」と、思われるかもしれませんね。もちろん、生まれたばかりの赤ちゃんがすぐに共同注意ができるわけではなく、さまざまな経験を積み重ねることによって、徐々に身につけていくのです。
ここからは、共同注意とはどのような行動なのか、具体的に解説していきます。
アイコンタクトと共同注意の違い
アイコンタクトとは、相手と視線を合わせることをいいます。ママと赤ちゃんは抱っこや授乳、オムツ替えの時など日々のお世話ややりとりの中で、自然にアイコンタクトをしていていますよね。
アイコンタクトによってママと赤ちゃんは、互いに関心を持つことを相手に示すなどして、徐々に気持ちを共有することができるようになります。
共同注意とは、赤ちゃんとママ以外の物を介してコミュニケーションをとることをいいます。ママが見ているものに赤ちゃんが注意を向けたり、ママに見て欲しいものに目を向けるよう、赤ちゃんが視線で促す場合もあります。
共同注意と言われてもピンとこないママのために、次に具体例を挙げてみましょう。
おもちゃを介した赤ちゃんとママの共同注意
- ママがおもちゃのスイッチを押して、おもちゃを動かす
- ママが「おもしろいね」と言いながら、おもちゃに視線をむける
- 赤ちゃんは、ママの視線の先を目で追う
- 動いているおもちゃを見て、赤ちゃんもおもしろいと思う
- 「おもしろい」という気持ちをママと赤ちゃんで共有することができた!
共同注意によって、赤ちゃんはママの感情や意図から、おもちゃの遊び方や楽しさを学びます。ママと赤ちゃんの間に物が介入することで、赤ちゃんは物の名前や使い方などの情報を知識として得ることができるのです。
共同注意と共同注視との違い
共同注意と似た言葉に共同注視がありますが、共同注視とは、ママと赤ちゃんが同じ物を同時に注視していることを言います。共同注意は、同じ物を見るだけでなく、その物について気持ちを共有している状態なので、共同注意は共同注視が発達した段階の行動であると言え、区別されるのです。
共同注意につながる赤ちゃんの行動
赤ちゃんの成長、特にコミュニケーション能力の発達において、共同注意という行動は欠かせないものです。赤ちゃんが共同注意を身につけるためには、それまでにさまざまな経験を積んでおく必要があります。
特に、次のような行動が共同行動につながります。
指差し
「指差し」とは、赤ちゃんが意思や要求を相手に伝えるために、指を指す行動のことです。
赤ちゃんの指差しには、大人が指差した方向に視線を向ける「指差し理解」のほか、大人の注意を引きたい場合に指差しを行う「要求の指差し」、大人からの質問に指差しで答える「応答の指差し」などがあります。
指差しには、相手の意図を理解するスキルと自分の意図を相手に伝えるスキルが必要なため、成長するうえで欠かすことができない重要な行動です。
さらに、指差しをし始める時期は、物の名前など言葉を教えるチャンスでもあります。
視線追従
相手が視線を向けた方向を、赤ちゃんも一緒に見ることを「視線追従」と言います。視線追従ができるようになるためには、相手の視線の動きに注意を向けて、その意図を理解する必要があるため、かなり高度なスキルだといえます。
このように、視線から相手の気持ちを理解するスキルが、共同注意を身につけるためには必要となるのです。
提示・手渡し
提示・手渡しには、赤ちゃんが持っている物に対して「ちょうだい」と言うと、相手に見せたり手渡しする「応答の提示・手渡し」と、赤ちゃんが自分から「どうぞ」と相手に見せたり手渡したりする「自発的提示・手渡し」の2つがあります。
提示・手渡しができるようになることで、赤ちゃんが相手との物を介したコミュニケーションが可能になったことが分かります。
社会的参照
社会的参照とは、赤ちゃんにしたいことがある場合、大人の表情を参考にしながら行動することで、「他者への問い合わせ」とも呼ばれます。社会的参照によって、赤ちゃんは善悪の区別を身につけていくのです。
何らかの理由によって社会的参照が発達しない子供は、将来やっていいことと悪いことの区別がつかなくなってしまう可能性があるため、注意しなければなりません。
赤ちゃんのコミュニケーションの発達の流れ
赤ちゃんは、生まれてすぐに共同注意ができるようになるわけではありません。成長の過程で、徐々にママとの間でコミュニケーションが取れるようになるのです。
ママは、赤ちゃんのコミュニケーションの取り方の変化に合わせて、共同注意を行うためのスキルが発達するように働きかけていきましょう。
生後3ヶ月ころ
赤ちゃんは生後3ヶ月くらいになると、ママなどの養育者と間でアイコンコンタクトができるようになります。
この時期は、30cmくらい離れたものが見えるようになり、動くものを目で追う「追視」ができるようになるため、赤ちゃんはママとアイコンタクトすることによって、ママの視線の動きや表情を読み取れるようになっていきます。
生後3ヶ月~9ヶ月
ママが赤ちゃんの機嫌の良し悪しや欲求などを読み取り、それに応じた反応を見せると、赤ちゃんはママがどのような反応をするのか予測するようになってきます。
喃語を話し始める生後4ヶ月くらいになると、声でコミュニケーションがとれるようになってきます。さらに、生後6ヶ月くらいから、ママの姿を目で追って後について行く後追いが見られるなど、ママの存在を強く認識しはじめます。
生後9ヶ月ころ
生後9ヶ月くらいになると、いよいよ共同注意が可能になります。
自分と相手の1対1だったコミュニケーションが、これまで培ってきた指差しや視線追従を使って、それ以外の物を介してもコミュニケーションが取れるようになるのです。
相手が見ている物に目を向けたり、自分が見てほしい物を見るよう視線で相手に促したりするなど、コミュニケーションの幅が広がりますよ。
共同注意がもたらす赤ちゃんの発達への影響
指差しや視線追従によって相手の意図が理解できるようになると、徐々に大人が発するサインを読み取る「社会的参照」の他、相手の痛みへの共感やいたわりの気持ちを行動として示す「向社会的行動」がみられるようになってきます。
成長とともに共同注意が形成されることによって、誰かと同じものを見て笑ったり、泣いたりするなど、他者との相互理解や感情の共有につながるのです。
共同注意を行うことは、人とコミュニケーションをとるうえで、とても大切な働きだといえます。
共同注意が形成されないとどうなるの?
人とのコミュニケーションや社会性に問題がある自閉症スペクトラム障害の子供は、共同注意が困難な場合があります。
自閉症スペクトラムには、「指差しをしない」「人と目を合わせない」「人の気持ちが分からない」などの特徴があることから、共同注意が発達しにくいのです。
ただし、共同注意がみられないからといって、必ずしも自閉症スペクトラムというわけではありません。
子供の成長には個人差があることから、1歳から1歳半になって共同注意が見られない場合は、成長の遅れが考えられるため、かかりつけの小児科医に相談することが望ましいです。