兄弟姉妹の仲が悪いとき、その原因を一つに絞ることは難しいことがほとんどです。多くの場合、いくつかの要素が重なって今の関係になっています。そして、親の関わり方は要素のひとつではありますが、すべてを決めているわけでもありません。
お子さんを何人か育てていると、同じ両親から生まれ、同じ環境で育つ兄弟であっても個性があり、本当に面白いものですよね。ですが、兄弟姉妹の個性がぶつかり合ってしまうと、兄弟喧嘩が始まってしまい、「どうしてこんなに仲が悪いの!?」と困ってしまうパパやママも多いのではないでしょうか。
同じような兄弟構成でも、仲が良い兄弟もいれば、仲の悪い兄弟もいます。ここでは、兄弟姉妹の仲が悪くなる背景を要素ごとに整理しながら、今日から変えられる関わり方を具体的に見ていきます。あわせて、大人になってからの関係がどう変わっていくのかにも触れていきます。
兄弟姉妹の仲が悪くなる6つの原因
同じ親を持ち小さな頃から一緒に生活する兄弟姉妹であれば、何でも分かち合って無条件に仲よく暮らせる。そう思っていたのに実際は違った、という声はよく聞かれます。小さな頃の取っ組み合いの喧嘩から、大きくなってからのいがみ合いなど、どうしても仲良く過ごすことのできない兄弟姉妹も多いのが実情です。
親として困惑してしまうほどの仲の悪さの背景には、どんな要素があるのでしょうか。順番に見ていきましょう。
1親の対応
小さな子どもにとって家庭はとても大切な居場所です。一番身近なパパやママの影響を受けて育ちます。自分以外の存在から愛情を実感し、信頼関係を育むのも、まずパパやママとの間からです。そのため親の関わり方は、兄弟姉妹の関係にも影響する要素のひとつになります。
ただし、ここで押さえておきたいことがあります。親の関わり方は要素のひとつであって、すべてではありません。同じ関わり方をしていても仲のよい兄弟になる家庭もあり、逆に細心の注意を払っていてもぶつかり合う兄弟もいます。子どもは家庭の外でも多くの影響を受けて育っていくので、家庭のなかだけで関係が決まるわけではないのです。
この記事で親の関わり方を扱うのは、責任の所在をはっきりさせるためではありません。いくつかある要素のなかで、今日から手をつけられるのがここだからという理由です。すでに大きくなったお子さんがいる方も、これまでを責める必要はありません。
2相性
同じ両親から生まれた兄弟姉妹といっても、人間である以上相性があります。血のつながりがあっても、どうしても受け入れられないところや、乗り越えることが難しい感情のぶつかり合いは存在します。
相性という言葉はあいまいに聞こえますが、中身を分けてみると具体的になります。ぶつかりやすい組み合わせには、たとえば次のようなものがあります。
- ペースの違い:さっと動く子と、じっくり考えてから動く子。支度の場面で毎朝ぶつかります
- 音や刺激への感じ方の違い:にぎやかにしていたい子と、静かでいたい子。同じ部屋で過ごすと片方が我慢することになります
- 気持ちの表し方の違い:思ったことをすぐ口に出す子と、飲み込んでから出す子。前者の言葉が後者に刺さり続けます
- 負けの受け止め方の違い:勝ち負けにこだわる子と、こだわらない子。ゲームや競争のたびに温度差が出ます
このように分けて見ると、相性の悪さは「性格が合わない」ではなく「特定の場面が合わない」ことが多いとわかります。だから、その場面だけを分けるという手が使えます。支度の時間をずらす、寝る場所を分ける、ゲームは親も入れて3人でやる。関係そのものを変えようとするよりも、ぶつかる場面を減らすほうが現実的です。
パパやママが無理に仲良くさせようと働きかけることで、かえって関係が悪化してしまうこともありますので、無理は禁物ですよ。
3能力差への比較
子どもにとって兄弟は一番身近な家族であるとともに、年齢差はあっても同じ環境で育つライバルでもあります。周りの大人から、「お兄ちゃんはよくできるのに…」とか、「妹さんは、可愛いね」などと比べられると、知らない間に心の中に対抗心が芽生えてしまったり、自分の足りないところに目が向いて兄弟姉妹を認められなくなってしまったりすることも多いです。
ここで見落としがちなのは、比べているのが家族ではない場合も多いことです。親戚、近所の方、園や学校の先生、習い事のコーチ。悪気なく口にした一言が、子どものなかに残ります。「お姉ちゃんは静かだったのにね」と言われた場面を、下の子が何年も覚えていることがあります。
家庭のなかで気をつけていても、外からの比較は止められません。だからこそ、言われたあとのフォローが効いてきます。帰り道で「さっきああ言われたけど、あなたのそういうところが好きだよ」と一言添えるだけで、受け取り方が変わります。外の言葉を消せなくても、上書きすることはできます。
4喧嘩の延長
兄弟姉妹は喧嘩をする機会が多く、喧嘩が長引いて、意地を張ってお互いを認め合えなくなることもあります。一旦はパパやママに仲裁されて仲直りをしても、「謝ってくれない!」とか、「勝手に自分の物を使った!」など、大人から見れば取るに足らないことにこだわって、なかなか心から仲直りができないケースも多いようです。
子どもがこだわっているのは、実は物や順番そのものではないことが多いです。「自分のほうが軽く扱われた」という感覚のほうが本体です。だから、物を返しても、順番を譲っても、機嫌が直りません。
この見方ができると、仲直りの手順が変わります。「はい、返したね、おしまい」ではなく、「勝手に使われたのは嫌だったよね」と、軽く扱われた感覚のほうに先に触れる。順番が逆になっただけで、収まり方がずいぶん違ってきます。
5共通するものがない
子どもの性格にはとても個人差が大きく、兄弟姉妹であっても好きな食べ物の傾向が違ったり、服装の好みや趣味も全く違ったりすることもあります。親としては兄弟姉妹が同じようなことに興味を示してくれれば手間はないのですが…。
例えば、お兄ちゃんがスポーツ好きで弟は物静かで博物館で勉強するのが好きというように、興味のあるものが180度違ってしまうと、子どもながらにも話題がなく、あまり話をしなくなったままお互いへの興味を失ってしまいがちです。
ここでの働きかけには、コツがあります。共通の趣味を作ろうとしないことです。片方に合わせれば、もう片方が退屈します。そうではなく、趣味とは関係のないところに一緒にする時間を置きます。
たとえば、水槽の魚に一緒に餌をやる、玄関の靴を2人で並べる、休みの日の朝食だけ2人で作る。好みが関係ない作業を共同ですると、話題がなくても同じ時間を過ごせます。趣味でつながらなくても、生活のなかの持ち場でつながることはできます。
6なんとなく仲が悪い・距離が近すぎる
兄弟姉妹の仲が悪い背景で、意外と多いのが「なんとなく」とか、「特に原因は見当たらない」といった理由です。兄弟姉妹は最も身近な存在で、あまりにも長い間一緒にいるため、小さな不仲のきっかけが積み重なっているだけで、明確な「ここがイヤ!」という理由が見つけにくいのかもしれませんね。
また、他人であれば幼稚園や学校、習い事が終われば顔を合わせずに済むため、多少のワガママや意見の不一致にも目をつぶりやすいのですが、兄弟姉妹の場合はそうはいきません。安らげるはずの家庭にいるにもかかわらず、距離が近すぎるため我慢を強いられると、「外でも疲れたのに、家でも我慢しなきゃいけないのはコイツのせい」と怒りの矛先が全て兄弟姉妹に向いてしまうことがあります。
兄弟姉妹は喧嘩をしても離れられない緊密な距離で過ごすため、友だちのように我慢して付き合う必要もなく、甘えが出て八つ当たりの対象にもなりがちです。
この「距離が近すぎる」という要素は、住まいの作りで動かせる部分があります。個室を用意できなくても、一人になれる場所をひとつ作ると、ぶつかる回数が減ることがあります。押し入れの下段に座布団を敷く、ダイニングの椅子を「ここは自分の席」と決める、カーテンで机の周りを仕切る。物理的に離れられる場所があるかどうかは、思っているより効いてきます。
7生まれた順番と年齢差による立場の違い
もうひとつ、動かしようがないのに影響が大きい要素があります。生まれた順番と年齢差です。
上の子は、ある日から「一人だけの子」ではなくなります。それまで全部自分に向いていた時間と関心が、半分になる経験をします。下の子は最初から分け合う前提で育つので、この落差を知りません。同じ家に育っていても、スタート地点の体験がまったく違うのです。
年齢差によっても構図が変わります。
| 年齢差 | 起きやすいこと | 関わり方の目安 |
|---|---|---|
| 1〜2歳差 | 持ち物や遊びが重なり、取り合いが多い。周囲から比較されやすい | 同じものを2つ用意できる場面は用意する。比べられたあとのフォローを丁寧に |
| 3〜4歳差 | 上の子が世話役になりやすく、我慢が固定されやすい | 世話をしてくれたことを言葉にして返す。世話役を降りていい時間を作る |
| 5歳差以上 | ぶつかりは少ないが、生活が重ならず接点が薄くなりやすい | 一緒にする用事を意識的に作る。上の子の予定を下の子にも伝える |
この要素は変えられません。ただ、知っておくだけで受け止め方が変わります。上の子が下の子に厳しいのは、性格が悪いのではなく、失ったものがある側だから。そう考えられると、叱る前に一呼吸置けるようになります。
「兄弟不仲の原因1位」を探しても答えが出にくい理由
兄弟仲について調べていると、「原因の1位はこれ」という形の情報を探したくなります。ただ、この問いには順位という形で答えが出にくい事情があります。
原因は一つに絞れないことが多い
ここまで見てきた要素は、どれかひとつが単独で働くことはあまりありません。年齢差が近くて持ち物が重なり、そこに周囲からの比較が加わり、上の子が我慢を重ねているうちに、家に一人になれる場所がなかった。こういう重なり方をしているのが実際の姿です。
そのなかから「1位」を選び出そうとすると、どうしても切り取りになります。「比較が原因」と決めてしまうと、他の要素に手をつけないまま終わってしまいます。
順位や割合を示す数字は慎重に扱いたい
兄弟仲の悪さについて、「何割が仲が悪い」「原因の1位は何」という数字を見かけることがあります。ただ、こうした数字は調査した対象や質問のしかたによって大きく変わります。
「仲が悪い」の線引きも人によって違います。年に一度会って世間話をする関係を「仲が悪い」と答える人もいれば、「普通」と答える人もいます。連絡を取っていない状態を「絶縁」と表現する人もいれば、「そういうもの」と受け止めている人もいます。同じ状態が、答える人によって別の分類に入るのです。
そのため、この記事では割合や順位の数字は挙げません。数字がないと物足りなく感じるかもしれませんが、あいまいな数字を根拠に「うちは平均より悪い」と考えるほうが、かえって苦しくなります。
順位よりも、自分の家庭の要素を数えるほうが役に立つ
代わりにおすすめしたいのは、ここまでの7つの要素のうち、自分の家庭にいくつ当てはまるかを数えてみることです。
3つ当てはまったなら、そのうち動かせるものはどれかを見ます。年齢差は動かせません。相性そのものも動かせません。でも、ぶつかる場面を分けることはできます。外からの比較へのフォローもできます。一人になれる場所を作ることもできます。
動かせないものと動かせるものを分ける。これが、順位を知るよりもずっと役に立つ整理のしかたです。
兄弟姉妹の距離ができやすい親の関わり方
子どもにとってパパやママは大きな存在で、兄弟姉妹はそんなパパやママの愛情を分かち合う仲間であり、ライバルでもあります。そのため、関わり方によっては、兄弟姉妹の距離が広がるきっかけになることがあります。
ここから挙げていくものは、誰の家庭でも起きていることです。読んでいて心当たりがあっても、それは至らなかったという話ではありません。気づいた時点から変えられるものとして読んでいただければ十分です。
1えこひいき
子ども同士に相性があるように、親と子どもの間にも相性があります。そのため、心の中では兄弟姉妹を平等に扱おうと思っていても、「より自分と気が合う」「自分の期待に応えてくれそう」という感情から、無意識にお気に入りの子どもにばかり目をかけてしまうことがあります。すると、そうでない子どもとの間に差が生まれてしまうのです。
ここは、相性の偏りそのものをなくそうとしなくてよいところです。気が合う子と合いにくい子がいるのは、親も人間なので自然なことです。なくそうとすると、合いにくい子に対して不自然に振る舞うことになり、子どもはそのぎこちなさを敏感に感じ取ります。
代わりに効くのは、行動の量を数えることです。今週、この子と何分二人で話したか。この子の話を最後まで聞いたのは何回か。感情は測れませんが、行動は測れます。数えてみて少ないほうがわかったら、そこを増やすだけです。気持ちを変えようとするより確実で、続けやすい方法です。
2比較
兄弟姉妹は比較される機会が多いのですが、他人に比較されることと、大好きなパパやママから比較されることでは、意味合いが違います。親の比較は子どもの心に、「僕の方が愛されている」という誤った優越感と、「僕は愛されていない」という悲しい失望を生み出してしまい、兄弟姉妹の仲を裂いてしまいやすいのです。
比較が口から出やすい場面には、パターンがあります。急いでいるときです。「お姉ちゃんはもう着替えたよ」は、時間がないときに最も出やすい言葉です。悪意はなく、動いてほしいだけです。
この場面で使える言い換えを用意しておくと、口をついて出るのを防げます。
- 「お姉ちゃんはもう着替えたよ」→「あと3分で出るよ。靴下はどっちにする?」
- 「お兄ちゃんは静かに待てるのに」→「ここは静かにする場所だよ。座って絵本にする?」
- 「妹はちゃんと食べてるよ」→「あと3口食べたらおしまいにしよう」
共通しているのは、比較のかわりに具体的な行動を渡している点です。「早くして」だけでは何をすればいいかわからないので、つい他の子を引き合いに出してしまいます。次にする動作を示せば、比較する必要がなくなります。
3もう一方をけなす
子ども同士を比較するのは避けたいところですが、これがエスカレートしてしまうと、「お兄ちゃんを見習いなさい!」とか、「お姉ちゃんに比べてお前は…」なんてセリフが親から出て、一方的にけなしてしまうこともあります。
子どもは大人の心の動きにとても敏感ですので、大好きなパパやママの失望を感じとり、自分に自信を持ちにくくなります。また、親にそういった気持ちを抱かせる兄弟姉妹にも、強いコンプレックスと反発を持ってしまうことがあります。
もし言ってしまったあとなら、あとから取り消せます。「さっきお姉ちゃんと比べたのは、よくなかったね。ごめん」と伝えるだけです。言ってしまったことをなかったことにはできませんが、「あれは言うべきでなかった」と親が認めた記憶は残ります。子どもにとっては、比べられた記憶と同じくらい大きく残るものです。
4厳しすぎる態度
パパやママが子どもに対して厳しすぎると、子どもの心はどうしても余裕がなくなり、ぎすぎすしがちです。そうなると子どもは身近な存在や、自分より小さい相手に優しく接することができなくなり、兄弟姉妹の仲もとげとげしてしまいがちになるのです。
この構図は、外から見るとわかりやすい形で現れます。親に叱られた直後に、下の子に当たるという順番です。順番に注目すると、下の子への態度は原因ではなく結果だとわかります。
だから、下の子に当たったことを叱っても止まりません。止まるのは、叱られたあとの余白を作ったときです。叱ったあとに「もう終わり。おやつ食べよう」と場面を切る、少し抱きしめる、別の部屋に移る。叱りっぱなしにしないだけで、下の子に向かう分が減ることがあります。
5役割を押し付ける
子どもにとって「お兄ちゃん」に生まれたことも、「妹」に生まれたことも自ら選んだことではありませんよね。それなのに、パパやママから「お兄ちゃんなんだから…」「妹のくせに…」と役割を押し付けられると、プレッシャーや理不尽さだけを感じるため、次第に「妹はいいなぁ…」「お兄ちゃんがうらやましい」という対抗心を抱くようになり、兄弟姉妹の仲が悪化してしまいやすくなるのです。
この言葉が出るのは、たいてい親が譲ってほしいと思っているときです。「お兄ちゃんなんだから貸してあげて」の中身は「今は貸してほしい」です。役割を持ち出さずに、そのまま頼めば済みます。
「今、貸してくれると助かる。あとで戻ってくるからね」。これなら、上の子は「立場のせいで我慢させられた」とは受け取りません。頼まれて応じた、という形になるからです。同じ結果になっても、残る感覚がまったく違います。
6気持ちをわかってあげない
子どもにとって兄弟姉妹はライバルでもありますが、最も身近な愛情を感じる存在でもあります。そのため、兄弟喧嘩をしてしまうことはとても悲しいことです。ですから、喧嘩をするにも、子どもなりの理由があるはずなのです。
ところが、そんなときにパパやママが「お前が悪い」「謝りなさい」と頭ごなしに押さえつけてしまうと、親に受け入れられない反発心が原因を作った兄弟姉妹に向いてしまうため、大きな確執を作り出してしまうことがあります。
とはいえ、両方の話をゆっくり聞く余裕がない場面もあります。夕方の台所、外出先、下の子が泣いている最中。そういうときは、ひとまず「あとで聞く」と宣言して先延ばしにするという手があります。
「今は無理だから、ごはんのあとに二人ずつ聞くね」。これで、押さえつけずに済みます。そして実際にあとで聞く。約束を果たすことで、「言えば聞いてもらえる」という前提が家庭のなかに残ります。この前提があるかどうかが、長く効いてきます。
矛盾しやすい2つの助言を、どう使い分けるか
兄弟仲の話には、一見矛盾する助言が並ぶことがあります。実際に迷いやすい2つを整理しておきます。
「お兄ちゃんだから」は避けたいのに、「さすがお兄ちゃん」と褒めるのは矛盾しないか
役割の押しつけは避けたいのに、褒めるときには立場を使う。これは矛盾しているように見えますが、使う場面が違います。
分かれ目は、子どもがすでにしたことか、これからさせたいことかです。
| 言葉の例 | 子どもの受け取り方 | |
|---|---|---|
| したあとに立場を使う | 「さすがお兄ちゃんだね」「お姉ちゃんらしいね」 | 自分で選んだ行動を認められた |
| させる前に立場を使う | 「お兄ちゃんなんだから貸して」「お姉ちゃんでしょ」 | 立場のせいで我慢させられた |
同じ「お兄ちゃん」という言葉でも、あとから添えるなら誇りになり、先に持ち出すと縛りになります。褒める場面では使ってよく、頼む場面では外す。この使い分けを覚えておくと、迷いが減ります。
まとめて扱うのと、一人ずつ向き合うのはどう両立するのか
もうひとつの迷いどころが、まとめて扱うべきか一人ずつ扱うべきかという点です。これも、場面で分けるのが答えになります。
まとめてよい場面は、楽しいことや与えるものです。おやつ、おでかけ、絵本の読み聞かせ、抱っこ。ここを一人ずつにすると「順番」や「量」の比較が生まれるので、まとめたほうが穏やかに済みます。
一人ずつにしたい場面は、話を聞くときと叱るときです。喧嘩の言い分を二人まとめて聞くと、相手の前では本音が言えません。叱るのも、もう一方の前でやると「見られた」ことが残り、そのまま兄弟への反発に変わります。
整理すると、与えるものはまとめて、受け止めるものは一人ずつ。この一行で使い分けられます。
兄弟姉妹の仲を改善する4つの対応
パパやママは兄弟姉妹の仲に影響を与えますが、プラスの方向に働きかけることで、兄弟姉妹の関係が変わっていく可能性もあります。お子さんたちの関係にあまり干渉する必要はありませんが、反目するのではなく、お互いをスムーズに認めあえるように促す働きかけをしてみませんか。
1愛情をストレートに伝える
子どもは身近に兄弟姉妹がいると、どうしても心の中に親の愛情を勝ち取ろうという競争心を持ってしまいますが、こういった感情はたくさんの愛情を伝えることで、「争わなくても、愛してもらえる」と子どもに感じさせ、気持ちを解きほぐす働きがあります。そのため、結果的に兄弟への対抗心をやわらげることにつながります。
言葉だけでなく、スキンシップで愛情を示すことも大切ですよ。
伝わりやすいのは、条件のつかない言い方です。「お手伝いしてくれて、いい子だね」は、手伝ったから認めたという形になります。「いてくれてうれしい」「今日も一緒にいられてよかった」は、何もしなくても向けられる言葉です。競争を降りていいと感じられるのは、後者のほうです。
言い慣れないうちは、時間を決めておくと続きます。寝る前の布団のなかで一言ずつ、朝の見送りで一言ずつ。決めた場面に置いておけば、忙しい日でも抜け落ちません。
2ポジティブな言葉をかける
子どもは厳しい言葉やネガティブな言葉をかけられると、ストレートに心が沈んでとげとげしくなり、家族の空気を悪くしてしまいがちです。ですから、子どもにはどんどんポジティブな言葉をかけて、心に余裕を持たせましょう。
特に、子どもの行動に対して「さすが、お兄ちゃんね」「お姉ちゃんが大好きなんだよね」と、兄弟姉妹の立場を意識して褒めてあげると、子どもたちの気持ちが和らぐことが多いですよ。
もうひとつ効きやすいのが、もう一方のいいところを本人に伝えることです。「お姉ちゃんが、あなたのこと待ってたよ」「弟が、お兄ちゃんの絵うまいって言ってたよ」。直接は言えない言葉を、親が運ぶ形です。
兄弟同士は、面と向かって相手を認める言葉を言いにくいものです。照れもあり、負けたくない気持ちもあります。親が伝書鳩の役をすると、言えないままだった好意が届きます。作り話にする必要はなく、実際にあった一言を運べば十分です。
3兄弟姉妹はまとめて扱う
子どもを一人ひとり平等に扱おうとすると、どうしても無理が出てしまいます。そんな時には、おやつも一緒、遊びに行くのもいっしょ、抱きしめるのも一緒と兄弟姉妹をまとめて扱いましょう。
子ども一人ひとりに分散していた手間を減らして、保護者にも余裕ができるはずです。子どもにとってもまとめて扱われることで兄弟に対するチーム意識が育まれ、自然と兄弟姉妹が協力しやすくなります。
チーム意識を作りやすいのは、2人でやると達成になる用事です。二人がかりで洗濯物をたたむ、二人で車を洗う、二人で祖父母に電話をする。終わったときに「二人でやったからできたね」と言える形にしておくのがコツです。
逆に、まとめて叱るのは避けたいところです。「二人とも!」でまとめてしまうと、悪くなかったと思っている子に不満が残り、その不満はもう一方に向かいます。まとめるのは楽しいことのほうだけ、と決めておくと安全です。
4子どもの言い分をよく聞く
子どもが「えこひいきされた」とか、「あいつばっかり!」というひがみを持ちやすいのは、自分が認められていないという思いを抱えているからです。こうした思いは自分に自信を持ちにくい状態につながりやすいので、子どもの話は充分に聞いて、子どもを認めてあげましょう。
話を聞く時には「ながら」ではなく、しっかり目を見て向き合ってください。そういった積み重ねを続けることで、子どもは嫉妬などのマイナスの感情を持ちにくくなり、自分を認められることで兄弟姉妹のことも受け入れやすくなりますよ。
時間が取れないときは、長さより形を優先します。3分でも、手を止めて体をその子のほうに向け、最後まで口を挟まずに聞く。これだけで「ちゃんと聞いてもらった」という手応えは残ります。逆に、30分聞いていても途中で家事をしていたり口を挟んだりすると、残りません。
5仲裁を「判定」から「通訳」に変える
喧嘩に入るとき、多くの場面で親は判定役になります。どちらが悪いかを決めて、謝らせて終わり。この形は早く済みますが、負けた側に不満が残ります。
そこで、判定ではなく通訳に役を変えてみます。やることは、お互いが言った言葉を、相手に届く形に言い換えて渡すだけです。
「バカって言った!」→「そんなふうに言われて悔しかったんだって」
「先に取ったのに!」→「順番を守ってたのに横から取られて、納得できなかったんだって」
そして最後に、両方の気持ちを並べて置きます。「お姉ちゃんは順番を守ってたのが伝わらなくて悔しかった。弟は待つのが長くてつらかった。二人とも困ってたんだね」。
これで終わりにして構いません。どちらが正しいかを決めなくても、両方の言い分が親に受け止められたという事実が残ります。判定してもらえなかった不満よりも、この事実のほうが後まで効いてきます。
6一人ずつの時間を、短くても作る
まとめて扱うことの効果とは別に、一対一の時間にも独自の働きがあります。兄弟がいる子は、親と二人だけになる機会が構造的に少なくなります。
長い時間は必要ありません。買い物に一人だけ連れて行く、寝る前に5分だけ二人で話す、休みの日に片方を祖父母に預けて片方と過ごす。その時間だけは自分のものという体験が、競争心をやわらげます。
やり方のコツは、ずるいと言われないように、順番を先に決めて見せておくことです。「今日はお姉ちゃん、次の休みは弟」とカレンダーに書いておけば、待っている側も納得しやすくなります。
兄弟姉妹の仲がいいのは親の影響?体験談
子どものうちに兄弟姉妹の仲が悪いと、「将来もこの調子なのでは…?」と悲観してしまいがちですが、気持ちは体とともに成長していきますので、大きくなってから兄弟仲が変わっていくこともあります。子どものときに、将来にわたっても根を残すような相手に対する過剰な敵対心や嫉妬心を抱かせないことが大切ですので、子ども同士が兄弟喧嘩をしたら、さりげなくパパやママがフォローしてあげましょう。
兄弟関係に関して言えば、あまりパパやママが「お兄ちゃんであること」や「妹であること」を強要しない方が上手くいく傾向があります。パパやママはあくまでも中立の立場をとったほうが、お互いへフォローをしやすくなりますので、兄弟の対立には一歩下がって、客観的に見ることができるようにしましょうね。
受験を期に仲良くなりました
私には1歳下の弟がいます。私たち兄弟はお互いに趣味や好きになるものが似ていて何かと競争になりましたし、年子の兄弟ということで周りから比較されることが多く、はっきり言って仲が悪かったです。
中学生になる頃には反抗期のせいもあって、一緒に食事をしていても口をきかないなんてことはよくあったのですが、私が大学受験に失敗して一浪し、弟と一緒に受験勉強をするときになって、お互いを理解することができるようになりました。
というのも、私は自分が弟と同じ学年になることに抵抗があったのですが、両親はそんなそぶりも見せず、弟と同じようにただの受験生として扱ってくれたからです。そのため、私も後ろめたさを感じずに一緒に受験をする仲間としての気持ちを持つことができましたし、弟の方も受験の先輩として不安な気持ちなどを相談してくれるようになり、お互いに大学に合格してからは、とても良い関係を築けるようになりました。
今はお互いに結婚し、子どももいますが、近くに住んでいるのでお互い行き来して、家族ぐるみで仲良くしています。
この体験談から読み取れる3つのこと
智さんのお話には、兄弟仲を考えるうえで手がかりになる部分がいくつもあります。
1つめは、不仲の背景が「似ていること」だった点です。趣味や好きになるものが似ていて競争になった、と書かれています。共通するものがないと接点が薄くなりますが、逆に近すぎても比べる材料になります。似ているから仲良くなるとは限らないという実例です。
2つめは、関係が変わったのが思春期のあとだった点です。中学生の頃は口もきかない状態でした。それが大学受験の時期に変わっています。小学生のうちに何とかしなければと焦る必要はない、と読み取れます。
3つめは、親がしたことが「何もしない」に近かった点です。浪人した上の子に対して「両親はそんなそぶりも見せず、弟と同じようにただの受験生として扱ってくれた」とあります。励ましたわけでも、気を遣ったわけでもありません。差をつけなかった、それだけです。
この3つめが、最も再現しやすい部分かもしれません。上の子がつまずいたとき、親は励ましたり、逆に触れないようにしたりと、特別な扱いをしがちです。そのどちらも、本人には「特別扱いされている」と伝わります。いつもと同じ扱いを続けることが、結果として楽にさせるという場面があります。
大人になってからの兄弟仲はどうなっていくのか
今のお子さんの様子から、将来を心配される方もいらっしゃると思います。大人になってからの兄弟関係について、知っておくと見通しが立ちやすい点を整理します。
関係が変わるきっかけになりやすい場面
兄弟の距離は、子ども時代のまま固定されるわけではありません。生活が変わる場面で、関係も動きます。
- 進学や就職で家を出るとき:毎日顔を合わせなくなることで、ぶつかる材料が消えます。距離ができて初めて話せるようになる、という順番もあります
- どちらかが困ったとき:智さんの体験談のように、片方がつまずいた場面で立場が並ぶことがあります
- 結婚や子どもが生まれたとき:それぞれが親の立場になると、共通の話題が生まれます。いとこ同士のつながりが橋になることもあります
- 親の生活に変化があるとき:協力が必要になる場面で連絡を取り直すことになります。ここは関係が良くなることも、逆に難しくなることもある分かれ目です
つまり、関係が動くタイミングは何度もあるということです。今の状態がそのまま続くと考えなくて構いません。
連絡が途絶えた形で落ち着くこともある
一方で、大人になっても距離が縮まらず、年賀状だけ、あるいは連絡を取らない形で落ち着く兄弟もいます。
これを失敗と考える必要はないかもしれません。近すぎたことがぶつかりの原因だった場合、離れることで両方が穏やかになるということが起こります。無理に近づけようとすると、また同じ摩擦が始まってしまいます。
親としては寂しく感じるところですが、本人たちが選んだ距離を認めるという関わり方もあります。「仲良くしてほしい」と伝え続けると、それ自体が両方の負担になることがあります。
親が元気なうちに、話し合いの場を作っておく
大人になってからの兄弟関係が難しくなりやすいのは、親のことで話し合いが必要になる場面です。介護の分担、実家をどうするか、財産の分け方。ここで初めて向き合うと、子ども時代のわだかまりが一緒に出てきてしまいます。
そのため、親が元気なうちに次のようなことを共有しておくと、あとの話し合いが進みやすくなります。
- 実家をどうしたいか、親自身の考え
- それぞれの子に何を託したいか、その理由
- お金や書類がどこにあるか
- 誰にどこまで頼るつもりか
ポイントは、理由を添えて伝えておくことです。分け方だけを伝えると「なぜあの子が多いのか」という不満が残ります。「あの子には家のことを頼むから」という理由がわかっていれば、受け止め方が変わります。
なお、遺産の分け方について話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所での調停を利用できる仕組みがあります。当事者だけで抱え込まずに済む道があることを知っておくだけでも、いざというときの気持ちの持ち方が変わってきます。
兄弟姉妹の喧嘩を否定しないで!子供が学ぶこと
子どもは手加減がまだ上手ではありませんから、小さいうちは相手を言い負かしてしまったり、大泣きをするほどの兄弟喧嘩をしてしまったりすることもよくあります。ですがこういった兄弟喧嘩に対して、パパやママがあまり神経質になる必要はありません。「喧嘩をするほど仲が良い」という昔の言葉がある通り、お互いに興味や愛情を抱いているからこそ、嫌な思いをしてでも相手に食いついていくのです。
兄弟喧嘩のなかで、子どもは実際にいくつかのことを覚えていきます。自分の言いたいことを言葉にする、相手の言い分を聞く、譲るところと譲らないところを決める、こじれたあとに元に戻す。どれも、家の外で使うことになる力です。
家庭の外だと、こじれた相手とはそれきりになることもあります。兄弟の場合は、明日も同じ家にいます。戻らなければならない相手がいる環境で、戻り方を練習していることになります。この練習相手は、なかなか他では得られません。
もちろん、兄弟がいない環境でも、こうした力はいとこや友だち、園や学校の集団のなかで育っていきます。兄弟の有無で身につくかどうかが決まるわけではなく、兄弟喧嘩はその機会のひとつだという位置づけです。
パパやママは無理に兄弟喧嘩を止める必要はありませんので、さりげなくフォローをしながら見守っていきましょう。ただし、勢いがつきすぎてきたと感じたときは、一度間に入って離すほうがよいでしょう。止める理由は、あとで二人が後悔するような言葉が出やすくなるからです。「一回ストップ。お茶飲もう」と場面を切って、落ち着いてから話を聞けば十分です。

兄弟喧嘩は仲裁しない?適切な親の対応とママのイライラ防止策
「どっちが悪いの?」と親がジャッジするのはNG!子どもが自分で解決する力を引き出す、親の正しい見守り方と魔法の声かけ例を具体的にご紹介します。
年齢によって、関わり方の重点は変わっていく
兄弟仲への働きかけは、年齢によって効くところが変わります。目安として整理しておきます。
| 時期 | 起きやすいこと | 関わり方の重点 |
|---|---|---|
| 下の子が生まれた直後 | 上の子が赤ちゃん返りをする、下の子に手が出る | 上の子と二人の時間を作る。「お兄ちゃんになった」より「あなたはあなた」を伝える |
| 幼児期 | 物やおもちゃの取り合いが中心。手が出やすい | 同じものを2つ用意する。順番を目に見える形にする |
| 小学校低学年 | 「ずるい」「不公平」という訴えが増える | 言い分を一人ずつ聞く。判定ではなく通訳をする |
| 小学校高学年 | 勉強や運動での比較を本人たちが意識し始める | 比較の言葉を避ける。それぞれ別の得意分野を持てる場を作る |
| 思春期 | 口をきかなくなる、部屋にこもる | 無理に仲良くさせない。一人になれる場所を確保する |
| 家を出たあと | 接点が減り、自然に距離が落ち着く | 親が集まる機会を作るが、参加を強く求めない |
この表で伝えたいのは、思春期に口をきかなくなるのは想定内だということです。この時期は親とも話さなくなるので、兄弟とも話さなくなります。仲が悪化したのではなく、それぞれが自分のことに向かっているだけ、という場面が多くあります。
兄弟姉妹の仲についてよくある質問
Q1.上の子が下の子に手を出します。何度言っても直りません
叱った直後に起きていることが多いので、まず順番を確かめてみてください。親に叱られた分が下の子に向かっている場合、下の子への態度を叱っても止まりません。叱ったあとに場面を切る、少し抱きしめるといった余白を作ると、向かう分が減ることがあります。手が出そうな場面では、一度離して落ち着かせてから話を聞きます。
Q2.「お兄ちゃんだから我慢して」と言わないと、生活が回りません
立場を持ち出さずに、そのまま頼んでみてください。「今、貸してくれると助かる。あとで戻ってくるからね」なら、上の子は「頼まれて応じた」と受け取ります。結果は同じでも、残る感覚が違います。頼んだあとに「助かった」と返すところまで含めると、次も応じやすくなります。
Q3.どちらかをかわいく感じてしまう自分に罪悪感があります
親と子の間にも相性があるので、偏りが生じるのは自然なことです。気持ちを変えようとするより、行動の量を数えてみてください。今週この子と何分話したか、何回最後まで聞いたか。少ないほうがわかったら、そこを増やせば十分です。感情は測れませんが、行動は測れます。
Q4.思春期に入って、まったく口をきかなくなりました
この時期は親とも話さなくなるので、兄弟とも話さなくなるのが自然な流れです。関係が悪化したとは限りません。無理に会話をさせようとすると、両方にとって負担になります。一人になれる場所を確保して、食事など同じ空間にいる時間だけ保っておくという関わり方で足ります。
Q5.大人になっても仲が悪いままだったら、親の育て方のせいでしょうか
親の関わり方は要素のひとつですが、すべてを決めているわけではありません。年齢差、それぞれの性質、家の外で受ける影響、そのときの生活の状況など、いくつもの要素が重なった結果です。また、離れた距離で落ち着くことが両方にとって穏やかな場合もあります。仲の良さの形は一通りではないので、本人たちが選んだ距離を認めるという関わり方も選べます。
兄弟姉妹仲の悪さは長い目で見守って
兄弟姉妹の仲が悪いと不安になるのは、この先ずっとこのままかもしれないと思うからでしょう。ただ、関係が動くタイミングは、家を出るとき、どちらかが困ったとき、それぞれが家庭を持ったときなど、思春期のあとにも何度もあります。今の状態がそのまま固定されるわけではありません。
そして、原因を一つに絞る必要もありません。動かせない要素と、動かせる要素を分ける。年齢差や相性は動かせませんが、ぶつかる場面を分けること、比較のかわりに具体的な行動を渡すこと、判定ではなく通訳をすること、一人ずつの時間を作ることは、今日から手をつけられます。
時間はかかっても構いません。子ども時代の兄弟関係は、その後何十年も続く関係の一部分にすぎません。長い目で見て、それぞれのお子さんが自分を認められる状態を保っておくこと。そこができていれば、兄弟同士の距離は、いずれ本人たちが決めていきます。


