お昼寝はいつまで必要?園への対応は?効果と年齢による注意
小さな子供は体力がなく、しばらく元気に遊びまわっていたと思ったら、次の瞬間にはコトリと眠ってしまうことがあって、私達は当たり前のように子供にお昼寝をとらせます。これまで、保育園でもお昼寝を日課としてきましたが、最近になって「お昼寝がもたらす弊害」が話題になり、お昼寝を見直す園が増えているってご存知でしたか?
今回は、お昼寝はいつまで必要か、メリットとデメリット、昨今のお昼寝事情、お昼寝の長さや時間帯などについて詳しくご紹介していきます。
お昼寝は本当に必要なの?
日本では昔から「寝る子は育つ」といわれ、子供はよく遊びお昼寝をするものと当たり前のように考えられてきました。厚生労働省が定めた保育所保育指針解説書にも「午睡(ごすい)」という記述があり、長時間にわたって幼児の保育を請け負う保育園では、昼食の後にお昼寝の時間を設けてきました。(注1)
ところが最近になって、「幼児のお昼寝は、百害あって一利なし」という意見が出始めているのです。本当のところ、お昼寝はいったい何歳まで必要なのでしょうか?
「お昼寝は必要ない」という意見の背景
幼児のお昼寝に対して否定的な意見が出始めた背景には、保育園に通う子(お昼寝をしている子)と幼稚園に通う子(お昼寝をしていない子)を比較した結果、お昼寝をする子には次のような問題点があることが分かってきたということがあります。
- 家庭で眠りにつく時間が送れ、生活リズムが乱れる
- お昼寝をすることで眠りが浅くなり、幼児が夜間熟睡できない
- 夜間充分に眠れないことで朝の機嫌が悪くなり、幼児が登園を嫌がるようになる
実際にお昼寝をしている子供としない子供の生活リズムを比べると、お昼寝をしている子供の方が1~2時間程度就寝時間がずれこんでいました。また、保育園児は小学4年生くらいまで夜ふかしする傾向があるとの調査結果も…。
そのため、「子供も日中はお昼寝せずに活動し、夜眠るという本来の生物のリズムに戻すべきだ」という考え方が訴えられるようになったのです。あながち間違いではないのかもしれませんね。
それでも子供にお昼寝は必要?
しかし、幼児の多くは体力がなく、親が促さなくても自発的にお昼寝に入ってしまいますし、面倒を見ている親にとっても、元気いっぱいの子供が日中絶え間なく騒ぎを起こしているのでは、家事をこなしたり体を休めたりする間がありませんよね。幼児に全くお昼寝をとらせないというのは、現実的ではないかもしれませんね。
昼間突然スイッチが切れるようにお昼寝に入ってしまのは、子供の体が睡眠を必要としているからです。いくら生活リズムを整えるためだといっても、身体機能の未熟な幼児がお昼寝をするのを妨害していれば、
- 疲労が激しく、元気に活動できない
- 眠気が取れず、スッキリとしない
- 不注意から事故にあいやすくなる
等の、睡眠不足の悪影響が出やすくなってしまいます。
お昼寝が必要かは、子供の様子で判断!
確かに幼児のお昼寝にはデメリットもありますが、睡眠は子供だけでなく、私たち大人にとっても体が受けたダメージを修復する大事な役割をはたしています。ですから、「お昼寝はいつまで」「何歳まで必要!」と決めつけず、子供の様子を見て判断するとよいでしょう。
私たち日本人は、世界的に見ても睡眠時間が不足している民族だといわれています。勉強に追われる学生や、仕事や育児に追われる私たち大人にとっても、15~30分程度の適度なお昼寝は健康な体の維持と精力的な活動を維持するために効果的ですよ。
お昼寝に秘められた驚くべき効果6つ
普段私たちが何気なく子供に促しているお昼寝には、どのようなメリットがあるのでしょうか。お昼寝をすることによって子供達が得られる効果を6つご紹介します。日頃のお昼寝の良いトコロを見直してみて下さいね。
1情緒が安定する
充分な睡眠をとらないと、子供も大人も不安が増してイライラしてしまいますが、お昼寝は睡眠時間を増やし、情緒を安定させる効果があります。特に2~3歳前後の幼児は、お昼寝を怠ると精神を安定させる働きのあるメラトニンの分泌量が低下して不安が増加し、喜びや好奇心が減退してしまうことがわかっています。子供のメンタルを安定させるためにも、お昼寝の良さを見直しましょう。
2体を健やかに成長させる
睡眠中は成長ホルモンが分泌される貴重なチャンス!子供の身体を大きく成長させ、日中の活動でダメージを受けた疲労を回復させるためには、20:00~2:00まで寝ているのが最も良いとされています。
ところが近年は、親の仕事の都合などで睡眠時間が遅くなっている子供が多く、お昼寝で補う必要があるのです。
幼児期に睡眠時間が不足して成長ホルモンが十分に分泌されないと、身体の成長がストップしてしまうリスクもあります。ただし、昼寝では成長ホルモンが十分には分泌されませんので、あくまでも不足分の補助として、睡眠時間が不足気味なお子さんが昼間眠そうにしていたら、短時間のお昼寝で補ってあげるとよいでしょう。
3学習効果がアップする
私たちの脳は睡眠中に成長をしていくので、幼児はたっぷりと睡眠時間をとる必要があります。お昼寝は睡眠時間を増やす効果がり、お昼寝をする子ほど記憶や感情に関わる脳の海馬の体積が大きくなり、脳のレベルが向上し、語彙数が増えるなどの学習効果が向上させることが期待できます。
4良い生活リズムが身につく
子供の場合は生活リズムが乱れると、夜泣きや寝グズリを起こすことが多いので、小さい頃から良い生活リズムを身につけておくことが大切です。毎日決まった時間に適度な長さのお昼寝をすることは子供の生活にメリハリをつけ、自然と生活リズムを身に着けることができます。
3歳くらいまでにお昼寝を中心とした生活リズムを身につけておくことで、大人になって徹夜などで一時的に生活リズムが乱れても自律神経がうまく働いて、体の不調を招かずに元の生活リズムに戻ることができます。
5疲労が回復し活動的になれる
昼間起きている間はできるだけ活動的な行動をしたいものですが、どうしても疲れてしまうと気力が低下して元気がなくなってしまいます。適度なお昼寝はこういった疲労を回復する効果があり、疲れをリセットしてくれるので、お昼寝をすることでまた元気に活動をして、遊んだり学んだりと楽しく日中を過ごすことができます。
6ストレスが緩和できる
嫌なことや困ったことがあってストレスが溜まっても、ひと眠りすると気分がスッキリとして、イライラが治まることってありますよね。ちょっとの時間のお昼寝でも、睡眠は考えをまとめ、気分をリフレッシュさせる作用があるので、適度なお昼寝をすることは子供のストレスの緩和に役立ちます。
お昼寝が遅い/長すぎによるデメリット
お昼寝をするメリットに対して、お昼寝をするデメリットもあります。お昼寝のメリットを半減させてしまうのは、「お昼寝する時間が遅い」「お昼寝する時間が長い」というケースです。このような場合は夜の就寝時間をずれこませて、子供に次のような悪影響を与えてしまいます。
1夜泣きがひどくなる
お昼寝の時間が長くなってしまうと子供の疲れが軽くなり、夜中にグッズリ眠る必要がなくなってしまいます。そのため夜中に寝たり、起きたりを繰り返してしまうのですが、深い眠りにならないためグズリ、夜泣きをしてパパやママを困らせることが多くなります。夜泣きがひどいと朝の目覚めも悪くなり、午前中はずっと機嫌が悪くなってしまうこともあります。
2寝つきが悪くなる
お昼寝を始める時間が遅かったり、必要以上に長い時間お昼寝で睡眠をとってしまったりすると、子供の目が冴えて就寝時間になっても眠らなくなってしまいます。お昼寝は年齢にあった適度な睡眠時間を守ることと、お昼を早めに食べさせて遅くても午後1時頃にはスタートすることが大事ですので、夜の寝つきに悪影響を与えないように、昼間眠くなる子にはパパやママがお昼寝の時間を管理してあげましょう。
3長期的な睡眠サイクルが乱れる
「お昼寝で眠っている時間が長い」「時間帯が遅い」と、子供の夜の就寝時間がずれ込むだけでなく、食事の時間も不定期になってしまい、生活サイクル全体が乱れてしまいます。睡眠のサイクルが乱れると子供は充分な成長ホルモンの分泌を受けることができず、心身の発達に悪影響が出てしまいますので、一定の睡眠サイクルが守れるようにパパやママが気を付けてあげましょう。
4不登園・不登校に繋がる
お昼のし過ぎで夜の就寝時間がずれこんだり、睡眠の質が低下したりすると、当然のことですが子供は朝スッキリと目を覚ますことができません。そのため幼稚園や保育園、学校へ行く時間になっても機嫌が悪いまま、不登園や不登校になりがちになってしまいます。
5睡眠障害を引き起こす
お昼寝によって睡眠や生活リズムが乱れると、子供の食欲は低下し、一日に必要な食事量が取れずに、元気に遊んだり学んだりすることが出来なくなります。さらに昼夜が逆転して長時間のお昼寝を必要とするようになり、睡眠障害を発症するリスクが高くなります。睡眠障害は昼間の気力低下や学力低下につながりますので、パパやママがお昼寝をコントロールして子供の生活リズムを整えてあげましょう。
6アルツハイマーの危険率が2倍に…
最近の研究では、1日30分程度の短時間のお昼寝は心身のストレスをやわらげ、ダメージの修復に役立つので、認知症予防に効果があることがわかっています。その反面、お昼寝で長時間眠ってしまうと夜間充分な睡眠が出来なくなってしまい、アルツハイマー型認知症の危険率が2倍になると言われています。
お昼寝する時間や長さに気をつけて
お昼寝は、完全に眠らなくてもゴロゴロと横になったり、椅子に座ってうつらうつらしたりしているだけで効果があります。むしろ、記憶がなくなるほど熟睡するとお昼寝時間が長くなり、夜中の睡眠を妨げしまいます。
睡眠時間は個人差がありますが、一般的に成長して年齢が上がっていくにつれて必要とする睡眠時間は短くなっていきます。年齢による睡眠時間の目安やお昼寝の時間帯をご紹介しますので、もし子供のお昼寝の時間が長すぎるようであれば、パパやママが早めにお昼寝を切り上げさせるなど、お昼寝をコントロールしてあげて下さいね。
幼児の場合
1~2歳の幼児に必要な睡眠時間は11~14時間。3~5歳の幼児に必要な睡眠時間は10~13時間です。そのうち1~2時間をお昼寝でとる子供が多いです。ただし睡眠時間には個人差が多く、幼児でも長く眠る子と眠りの浅い子など、その子なりの睡眠のとり方がありますので、2歳だから2時間のお昼寝をさせる、5歳だからお昼寝はさせないなどと決め付けるのはよくありません。
お昼寝が長時間になったり、遅い時間になったりしないのであれば、お昼寝による悪影響を心配し過ぎる必要はありません。幼児期はまだまだ多くの睡眠時間が必要な年代なので、子供の生活リズムや体力、機嫌などにあわせて、本人が眠そうにしているのであれば自然にお昼寝させてあげるとよいでしょう。
小学生以上の場合
小学生に必要な睡眠時間は9~11時間といわれていて、それよりも少ないと心身の発達が遅れメンタルの不安定を招くともいわれています。一般的に小学生になると日中を学校で過ごすことが多くなり、お昼寝の機会が減ってしまいます。小学校高学年からの思春期になると、帰宅後の夕方5時~夜9時に仮眠をとり、深夜まで起きている子供も増えてきます。
下校後の遅い時間の仮眠は、就寝時間が遅くなり睡眠の質が低下することがわかっていますのでやめさせ、夜勉強で寝るのが遅くなる子供には、できるだけ早い時間に就寝させて朝勉強をするように促すとよいでしょう。
保育園児と幼稚園児のお昼寝
自宅で子供の面倒を見ている場合には、パパやママがお昼寝の時間などをコントローしてあげることができますが、日中保育園や幼稚園に通っている場合はそうはいきませんよね。基本的に集団生活をしているので、きめ細やかなお昼寝時間の管理は難しいのですが、睡眠は個人差が大きいことは園や先生方も十分承知をしています。
子供が夜なかなか寝つけなかったり、夜泣きがひどかったりする場合は、先生に相談してお昼寝時間を調節してもらうなどドンドン園に相談しましょう。
保育園児のお昼寝
保育園は忙しいパパやママに代わって幼児の保育を請け負う施設ですので、昼食後に年齢に応じた2~3時間のお昼寝時間を設けています。保育園でのお昼寝は疲労を回復するだけでなく、お布団を引く、パジャマに着替えるなどの良い生活習慣を身に着けさせることが目的でもありますので、保育園の指導方針に従って大丈夫です。
ただし、子供によってはまったくお昼寝を必要としない子もいますし、長々とお昼寝を続けてしまう子もいますので、家庭で睡眠に関するお悩みを抱えている場合は、休日などの様子を先生に伝え、無理なお昼寝をさせない、必要以上長い時間眠らせないなどの対策をとってもらいましょう。
幼稚園児のお昼寝
幼稚園は子供を集団生活に慣れさせる、幼児の学校という位置づけですから、基本的に開園時間も午前9時ころから午後2時ころ前後と短く、お昼寝時間を設けている園もあれば、無い園もあるとさまざまです。
認定こども園になっていて保育もお願いできる場合は、保育時間の長さに応じてお昼寝時間を設けているケースは多いですし、子供が眠くなった場合は無理をさせずに子供ごとにお昼寝をさせてくれるといった対応をしていますので、お昼寝が必要な子の場合は事前に園や先生に相談をしておくといいですね。
幼稚園でお昼寝が無い場合、体力のない小さい子の場合は午後おうちに帰ってきてちょっと遊んでいる途中に眠ってしまうことが多くなります。当然通常のお昼寝よりも遅い時間にお昼寝がスタートしてしまうので、夕方以降の生活に悪影響を与えてしまう恐れがあります。そのような場合は、長くならないように、早めにお昼寝を切り上げさせましょう。
降園後、子供が疲れてぐずる場合には、おやつや外出、ちょっと早めのお風呂に誘ってあげるといいでしょう!あわせて就寝時間の見直しをして夜の睡眠時間を長くすることで、お昼寝時間が短くてもいいように調整をしてあげましょう。
無理のないお昼寝で子供を健康的に成長させましょう
睡眠は子供の成長にとって素晴らしいメリットをもたらすものですが、ただ眠ればよいというものではありません。睡眠サイクルや睡眠の質を理解し、良質な睡眠をえられる習慣を身につけてあげることが大切です。必要以上にお昼寝をすることは成長に害を与えることもあるというリスクを充分理解し、子供の年齢や体力、個性に応じた自然なお昼寝がとれるように見守ってあげましょうね。
参考文献