イタリアの教育に塾はいらない!日本とは違う自主性が育つ制度の秘密
「毎日塾の送り迎えでママもヘトヘト…」「こんなに小さいうちから受験勉強ばかりで、本当にこの子の将来のためになっているのかな?」と、日本の過酷な教育環境や塾通いに疑問や疲れを感じているママは少なくありません。そんな日本のママたちから近年熱い視線を集めているのが、塾というシステムがそもそも存在しない「イタリアの教育制度」です。
イタリアの教育機関はそのほとんどが公立学校であり、制度上の期間や費用、学期の区切り、さらには「勉強」に対する根底の考え方など、日本とは驚くほど異なる点が数多く存在します。塾がいらないシステムであるため、経済的には親にとって非常にありがたい環境である一方、ペーパーテスト重視の日本教育で育った私たちからすると「塾にも行かずに学力は低くならないの?」「どうやってエリートが育つの?」という疑念を抱いてしまうかもしれません。
しかし実際には、イタリアの子供たちは幼い頃から徹底的に「自分の頭で考え、意見を述べる力」を鍛えられており、ノーベル賞受賞者を多数輩出するような最高峰のエリート教育を行う大学も存在しているのです。
今回は、そんなイタリア独自の教育制度や、幼稚園から大学までの日本との決定的な違いに触れながら、家庭でのしつけにも応用できるイタリア流の「自主性を育む教育全般」について、先輩ママの体験や発達心理の観点も交えてたっぷりとご紹介していきます。我が子をもっとのびのびと、自分の力で歩んでいける子に育てたいと願うママは、ぜひ最後まで目を通してみてくださいね。
入学式も卒業式もない!?イタリアの教育制度の全体像
日本の学校といえば、桜の咲く季節の華やかな入学式や、涙ぐむ卒業式といった「節目」の行事が欠かせませんよね。しかし、イタリアの学校にはそのような情緒的なセレモニーは一切存在しません。合理主義と個人の自主性を重んじるイタリアの教育制度は、大枠のシステムからして日本とは全く異なっています。
実質的な授業は8ヶ月!2学期制で動くイタリアの学校暦
2017年以降の現在のイタリアの教育制度では、小学校5年(6歳~10歳)、中学校3年(11歳~13歳)、高校5年(14歳~18歳)が基礎的な枠組みになっています。日本(小6・中3・高3)と比較すると、小学校が1年短く、他の欧州諸国と比べても高校を卒業するまでの期間が長いのが大きな特徴です。
学校は2学期制を採用しており、新学期は9月中旬からスタートします。日本のミッション系私立学校などにも2学期制の学校が多いため、日本人にもある程度馴染みのあるシステムに思えますが、驚くべきことにイタリアの場合は「全国統一の始業日」が定まっていません。年ごとにカレンダーの曜日配列を見て変動したり、地域(州)によって始業日が異なったりするのです。
さらに入学式・始業式・終業式・卒業式といったセレモニーが一切ありません。夏休みはなんと3ヶ月間もたっぷりとあり、クリスマスやイースターの休みも重なるため、実質的な授業期間は年間で8ヶ月程度しかありません。「そんなに休みばかりで勉強は大丈夫なの?」と不安になりますが、発達心理の観点から見ると、長い休みの中で家族と密に過ごし、学校以外の多様な経験(旅行や自然体験、地域の人との関わり)を積むことが、子供の非認知能力(忍耐力や協調性)を大きく育てる土台になっているのです。日本のママも、長期休みは「勉強の遅れを取り戻す期間」と焦るのではなく、「生きる力を養う期間」と捉え直してみると、親子の時間がもっと豊かなものになりますよ。
イタリアの義務教育期間は6歳から16歳までの10年間
現在のイタリアの義務教育の期間は、欧州全体の教育水準引き上げの動きに伴い、2006年から6歳から16歳までの10年間と定められました。日本の義務教育は中学校を卒業する15歳(9年間)までですが、イタリアの場合は高校の途中までが義務教育に含まれる計算になります。
イタリアの高校は全課程で5年間ありますが、カリキュラムが前期(最初の2年間)と後期(残りの3年間)とに分かれて構成されています。このうち、義務教育の期間に相当するのは高校の前期(2年間)までです。
「高校まで義務教育なら安心だね」と思いがちですが、イタリアでは「義務教育期間中であっても、成績が基準に満たない場合や学習態度が悪い場合は容赦なく留年(落第)させられる」という厳しい現実があります。日本のように「年齢がくれば自動的にエスカレーター式で進級できる」という甘えは一切通用しません。子供たちは早い段階から「自分の学びは自分の責任である」という厳しい自己責任のルールを身をもって体験させられるのです。
公立学校にかかる費用とママに優しい優遇措置制度
イタリアの学校は幼稚園から大学までほとんどが公立学校であり、基本的には学費が無料に設定されています。塾という概念もないため、教育費で家計が圧迫される日本と比べると、親の経済的負担は非常に軽く済むというメリットがあります。ただし、すべての費用が無料というわけではなく、スクールバス代や給食費などは生徒側の実費負担となります。
- 小学校にかかる費用
学費と教科書代は完全に無料です。ただし、給食費やスクールバス代は生徒側の家庭負担となります。 - 中学校/高校にかかる費用
学費は無料ですが、中学校からは教科書代が有料になり、毎年家庭で買い揃える必要があります。 - スクールバス代
バス会社や各自治体のシステムによって料金設定が異なります。
特筆すべきは、生徒の家庭の経済状況が厳しい場合、各自治体や学校の規則に則った優遇措置制度(給食費の免除や教科書代の補助など)が充実している点です。これにより、家庭の経済格差が子供の教育機会の格差に直結しにくい社会システムが構築されています。
現場の先生も困惑?イタリアの教育制度の大きな問題点
ここまで聞くと「イタリアの教育制度って素晴らしい!」と感じるかもしれませんが、もちろん完璧ではありません。イタリアの教育制度の最大の問題点は、「政権が変わるたびに教育改革が頻繁に行われ、法律がすぐに変わってしまうこと」です。
そのため、教育制度(テストの仕組みや進級の条件など)もコロコロと変わってしまい、現在の親の代と違うのはもちろんのこと、少し前に子育てがひと段落した近所のマンマ(お母さん)の時代ともルールが変わっていて、親が正確な状況を掴みにくいという悩ましい問題点があります。ひどい時には、制度の変更内容について現場の学校の先生やイタリア人自身ですら正確に把握できていない場合もあるのが現状です。
子育ての現場では「去年まではこの基準で進級できたのに、今年から突然ルールが変わって大慌てした」という保護者の混乱が日常茶飯事です。しかし、このような流動的な環境だからこそ、親も子供も「国や学校がすべて面倒を見てくれる」という依存心を捨て、「自分たちで情報を集め、臨機応変に対応するサバイバル能力」が自然と鍛えられているとも言えます。日本のママも、学校や塾のルールに盲目的に従うだけでなく、「我が子にとって今は何が必要か」を自分の頭で取捨選択する姿勢を持つことが大切です。
しつけや「個」を大切にするイタリアの幼児教育(保育園・幼稚園)
ここからは、幼稚園(Scuola dell’infanzia)から大学(Università)卒業までの具体的な流れを、子供の心理や発達の側面からさらに掘り下げて見ていきましょう。まずは、人格形成の土台となる幼児教育のステージからです。
3歳児から保育園がない!?公立と私立で分かれる幼児教育
イタリアでは、親が任意で幼稚園や保育園に就学させることが可能ですが、日本と同様で幼児教育は義務教育ではありません。
公立の施設を利用する場合、0~2歳児は保育園(Nido d’infanzia)に預け、3~5歳児は幼稚園(Scuola dell’infanzia)に通うことになります。日本のように「共働きなら保育園にずっと通う」という形ではなく、年齢によって明確に施設が分かれています。ただし、私立の保育園や幼稚園では、クラス編成や年齢制限に多少の融通が利くことが多いです。
現在、イタリアにおける4~6歳児までの幼稚園への平均在籍率はなんと98%に達しており、「これだけ普及しているなら幼稚園の義務教育化が可能なのでは?!」と議論されるほどにまでなっています。一方、0歳~3歳児の保育園での平均在籍率は約25%にとどまっており、3歳までは祖父母(ノンノ・ノンナ)に預けたり、ベビーシッターを雇ったりして家庭で手厚く育てるというイタリアならではの家族の強い絆が見て取れます。
イタリアの幼児教育はカトリック系私立が圧倒的な人気!
イタリアの学校は小学校以降はほとんどが公立であるにもかかわらず、幼児教育の段階においては私立の施設が全国で約13,000校も存在しています。そのうちの約71%が保育園や幼稚園であり、さらに全体の約63%がカトリック系の宗教学校となっています。
イタリアの親たちは、子供が小さいうちはあえて費用を払ってカトリック系の私立の保育園や幼稚園、あるいは私立の小学校に通わせるという選択をするケースが非常によくあります。
イタリアの親たちがカトリック系教育を選ぶ3つの理由
- 公立の保育園は入園するのに両親の就労状況などの厳しい条件があるのに対し、私立は誰でも入りやすく融通が利くから。
- 幼児の時期にこそ、宗教的な倫理観に基づいた「思いやり」や「挨拶」などのしっかりとしたしつけをさせたいという強い要望があるから。
- 外国人シスター達の母国語が英語である場合、保育園や幼稚園の日常の中で自然に英語の授業や会話が組み込まれるから。
幼児期は、善悪の判断基準や他者への思いやりという「心の土台」が形成される最も重要な時期です。「知育よりもまずは心としつけを」と考えるイタリアの親の姿勢は、知育や早期教育に偏りがちな日本の幼児教育選びにも、大切な視点を投げかけてくれます。
個性を伸ばす異年齢(縦割り)クラスと、世界が注目の教育法
イタリアの幼稚園では、通常1クラス14~28名編成で運営されます。日本の幼稚園のように「年少さん」「年中さん」と年齢でクラスを分けるのではなく、異年齢(3歳~6歳まで)の子供たちが混ざり合って1つのクラスが形成される「縦割り教育」が基本です。この異年齢クラスには、通常2名の先生がついて丁寧に見守ります。
通園日は地域ごとの家庭の就労状況や要望に応じて、週5日あるいは6日。親の働き方に対応するため、1日8時間という長い保育時間が設定されている幼稚園も多く存在します。
異年齢の縦割り保育では、3歳の小さな子は5歳のお兄さん・お姉さんの遊ぶ姿を見て「あんな風になりたい」と憧れを抱き、5歳の子は年下の子の靴を履かせてあげたりお世話をしたりすることで「思いやりとリーダーシップ」を学びます。発達心理学においても、異年齢の集団で育つことはコミュニケーション能力や社会性を爆発的に高めることが実証されています。
また、イタリアといえば、日本の幼稚園選びでも非常に注目されることが多い「モンテッソーリ教育」の発祥地として有名な国です。子供の「自分でやりたい!」という自発的な欲求を最大限に尊重し、教具を使って集中力を高めるこの教育法は、イタリア全土に根付いています。

レッジョ・エミリア・アプローチとは 世界が注目する幼児教育とモンテッソーリとの違い
「子供の個性を伸ばす教育を選びたい」というママへ。レッジョ・エミリア・アプローチの考え方と魅力を、歴史・理念・現場の様子から丁寧に解説します。モンテッソーリ教育との違いを一覧表で比較し、日本で似た保育を探すときの見極め方もまとめました。
他には、「レッジョ・エミリア・アプローチ」という芸術的・創造的な教育法を用いた幼稚園なども、子供達一人ひとりの「個」と「表現力」を大切にする教育を行っており、近年世界中から教育関係者が視察に訪れるほど注目されています。
レッジョ・エミリア・アプローチを用いた幼稚園では、担任の先生のほかに、芸術の専門家(アトリエリスタ)など専門性のある複数の大人が関わって子供達の才能を引き出していきます。「子供の意見や疑問を大人が否定せず、一緒にプロジェクトとして探求する」という姿勢は、日本の家庭でも週末の親子工作や図鑑調べなどですぐに取り入れられる素晴らしいアプローチです。
塾はいらない!?イタリアの小学校教育の秘密
幼稚園で豊かな感性と社会性を育んだ後は、いよいよ小学校(Scuola primaria)への入学です。ここからが、塾なしでも子供が自分の力で学力を伸ばしていくイタリア教育の真骨頂となります。
担任制を廃止!複数の専門教師が子供を多角的に評価する
イタリアの小学校は、1990年までは日本と同じような「担任制」を採用しており、クラスの担当の先生が国語から算数、体育まで全教科を1人で教えていました。
しかし1990年以降の教育改革により、一人の担任がすべてを教える制度は廃止され、「複数の教師がチームを組んで1つのクラスを教える」という制度に大きく変わりました。成績評価についても、一人の先生の主観で決めるのではなく、そのクラスを教える全教員が一堂に集まって会議を開き、さまざまな角度から子供の強みや課題を話し合って決定する公平なシステムが取られています。
これは、「子供の才能は多面的であり、算数が苦手でも図工で素晴らしい才能を発揮するかもしれない。だからこそ複数の大人の目で個性を拾い上げるべきだ」という発達心理学に基づいた考え方です。日本でも「担任の先生とウマが合わなくて学校嫌いになってしまった」という話はよくありますが、複数の先生が関わるイタリアのシステムではそうしたリスクが軽減されます。また2003年からは、小学校全学年に英語の授業も導入され、早くからグローバルな視点を育む取り組みが進んでいます。
基本は午前中のみ!フルタイム校との違いと放課後の過ごし方
イタリアの小学校は、1970年までは半日終い(午前中のみ)が基本であり、お昼の13時半前後には授業が終わって子供たちが家に帰ってきていました。イタリアの家族は昼食をとても大切にするため、「お昼ごはんはマンマの作った温かいパスタを家族揃って食べる」というのが伝統的なスタイルだったからです。
ところが1970年後半には、北部の工業都市トリノで公立の小学校が午後も開校するようになり、近年の女性の社会進出と共働き家庭の増加に伴って、大都市及びその近郊都市では、午後も授業を行う「フルタイム(Tempo Pieno)」の小学校が徐々に増えてきました。このフルタイムの学校では学校の食堂で給食が出されます。今後も共働き支援のために、フルタイムの小学校はイタリア全土で今以上に増える可能性があります。
午前中で終わる学校の子供たちは、午後はたっぷりとある時間をスポーツクラブや音楽教室などの習い事に使ったり、地域の広場で泥だらけになって遊んだりして過ごします。「放課後の自由な時間こそが、子供の想像力と自主性を育むゴールデンタイムである」という考え方が根付いているのです。
大量の宿題と「口頭試問」が塾なしで学力を伸ばす最大の理由
イタリアの小学校で学ぶ教科は、イタリア語(国語)、数学、理科、地理、歴史、体育、芸術、音楽、英語、宗教(任意)が必修となっています。
イタリアには基本的に学習塾というものが存在しませんが、塾に行かなくても学力が担保されている最大の理由は、小学校教育から出される「宿題の多さとそのチェック方法」にあります。毎日山のように宿題が出されることはイタリアの学校教育の有名な特徴の一つですが、日本の先生が夜遅くまで丸つけの添削をしている苦労とは全くやり方が異なります。
なぜなら、イタリアの学校では宿題のチェックや理解度の確認を、授業中の「口頭試問(インテッロガツィオーネ)」によって行っているからです。
口頭試問とは、先生が「昨日の歴史の宿題について、あなたはどう考えたかみんなの前で説明しなさい」と生徒を指名し、生徒が自分の言葉で内容をプレゼンテーションする仕組みです。ペーパーテストのように「正解を暗記して書く」だけでは通用せず、「自分の頭で論理的に考え、相手に伝わるように意見を述べる力」がなければクリアできません。この「自分の言葉でアウトプットする訓練」を小学校から毎日繰り返すため、塾でテクニックを詰め込まなくても、真の思考力が自然と鍛えられていくのです。
尚、午後にも授業のあるフルタイムの小学校では、学校にいる時間が長いため、午前中で終わってしまう小学校に比べて家庭学習用の宿題の量が少し少なくなっています。
もし授業についていけず落ちこぼれたらどうする?
塾がない環境で、もし子供が授業についていけなくなって落ちこぼれてしまった場合、教育に関心のある家庭では、イタリアでもさすがに個人的な家庭教師(大学生のアルバイトなど)をつけるのが一般的です。
ただし、全教科で高い平均点を取れるオールマイティな学力を強要する日本の教育とは違い、イタリアの教育は子供の好き・嫌いや適性に合わせて進学できるように、のちの高校の選択肢がたくさん用意されています。いわば「一芸に秀でる教育」が行われているのです。極端に言えば、「どうしても数学が嫌いなら、将来は文系や芸術系の専門学校に進めばいいから、今は最低限の赤点だけ回避すれば数学は深追いしなくても済む」という合理的なシステムになっています。
また、イタリアの授業の質は本当に「担当する先生の力量」によって大きく左右されるため、親たちは情報交換をしていい先生のいる学校に子供を入学させようと努めます。もしどうしても先生の指導方針と子供の性格が合わない場合は、「うちの子がダメになってしまう」と親が迷わず学校に抗議してクラスを変えさせたり、場合によってはあっさりと転校させたりすることも日常茶飯事です。子供を守るための親の行動力はすさまじいものがあります。
成績表は10段階!全国共通テストで学校のレベルも厳しく評価
イタリアの小学校の成績表は、非常に細かい10段階評価でつけられます。テストの点数だけでなく、授業中の発言の多さや意欲といった学習態度もシビアに成績に反映されます。「黙って座って先生の話を聞いているだけ」の大人しい子は、理解していても成績が低くなってしまうため、いかに自己主張できるかがカギとなります。
さらにイタリア語と算数の主要教科については、Invalsi(国立全国学校システム評価研究所)という公的機関によって、小学校2年生と5年生のタイミングで全国共通テストが(通常5月に)一斉に実施されます。
この共通テストは、生徒個人の学習到達度を測るためだけでなく、各学校の教育レベルや指導システムが適切に機能しているかを国が評価するために行われています。先生たちにとっても「自分たちの指導力が試される」プレッシャーの大きなテストなのです。
義務教育なのに卒業させない!?厳しさが自主性を生む中学校
小学校を卒業すると、いよいよ本格的な大人の階段を登り始める中学校(Scuola secondaria di primo grado)へ進学します。しかし、「まだ義務教育の期間中だから」と安心ばかりしていられません。
イタリアの中学校では、日頃の授業態度やテストの成績が悪いと、義務教育期間中であっても容赦なく「落第(留年)」させられる可能性があるからです。10代前半という多感な時期に「自分が勉強をサボれば、来年は年下の子たちと一緒に同じ教室でやり直さなければならない」という強烈な現実を突きつけられるのです。
また、次のステップである高校へ進学するための入学手続きをするには「中等学校修了証」が必要になりますが、これを授与されるには中学3年生の終盤に行われる過酷な「卒業試験」に合格しなければなりません。
つまりイタリアの教育は、「先生や親が手取り足取り卒業させてくれる」日本の環境とは異なり、子供達が「このままでは自分が困る」と自主的に授業態度を改め、自らの意志で学習に取り組まない限り、絶対に卒業できないシビアなシステムなのです!
中学生は半日授業で帰宅!?家族と過ごす午後の時間
驚くべきことに、中学生になると、授業は原則として午前中の半日だけになります。基本的に学校の運営ルールは各学校の裁量に任されているため、週の授業日数や授業時間については学校ごとにまちまちですが、大抵は月曜日から土曜日までの週6日授業が行われ、毎日お昼過ぎには帰宅します。
学校によっては週5日制を採用している所もありますが、その場合は1日の授業時間が1時間ほど長く設定され、通常13時半位に終わる授業が14時半頃まで延びることになります。
「中学生で半日しか学校に行かないなんて、午後は遊んでしまって不良になるのでは?」と心配になりますが、イタリアでは山のように出される各教科の宿題をこなすため、午後は自宅や図書館でみっちりと勉強しなければなりません。また、親が「今日は学校で何を学んだの?」と夕食のテーブルで対話をする文化が根付いており、親子の会話そのものが子供の論理的思考力を高める最高の教育の場として機能しているのです。
第二外国語が必修!世界を見据えたグローバルな授業科目
中学校での授業科目は、イタリア語・数学・理科・歴史・地理・技術・芸術・音楽・保健体育・英語などが基本となります。ここまでは日本と似ていますが、大きな違いは、英語に加えてフランス語・スペイン語・ドイツ語などの中から一つを選び、「第二外国語」として必修科目で学ばなければならない点です(宗教の授業に関しては小学校と同様に任意です)。
陸続きで国境が接しているヨーロッパならではの環境ですが、中学生のうちから多言語に触れることで、「世界には様々な文化や考え方がある」というグローバルな視野が自然と養われます。もちろん、語学の授業でも「学習態度(積極的に発言しているか)」が重要な評価科目の1つになっています。
課外活動としては、日本の部活動のようなスポーツ中心のものではなく、音楽や理科の実験、外国語の歴史や文化を深く学ぶプロジェクト、あるいは英語検定(ケンブリッジ英検など)の取得に向けた準備講座などが、保護者の賛同と支援のもとに任意で行われています。
過酷な関門!筆記と口述(プレゼン)が必須の卒業試験
中学校でも、小学校と同じようにInvalsi(国立全国学校システム評価研究所)が行うイタリア語と数学の全国共通テストがあります。中学では3年生のみに課されており、卒業を控えた毎年6月に一斉に実施されます。
しかし、中学生にとって最大の試練となるのは、学校独自の「卒業試験」です。卒業試験には筆記試験と口述試験(面接・プレゼンテーション)の2種類があり、すべての成績を総合して10段階評価で「6以上」を獲得しなければ、合格(卒業)とはなりません。
筆記試験は、イタリア語・数学・英語・第2外国語(フランス語、スペイン語、ドイツ語など)の主要科目が数日間にわたって行われます。
そして最もプレッシャーがかかるのが口述試験です。口述試験は生徒1人につき約30分間という長い時間をかけて行われます。教室にはそのクラスを受け持つ全教員がズラリと横一列に座り、その目の前で、生徒はあらかじめ自分で設定した「中学3年生の学習内容に関連した全科目共通のテーマ」についての論文を書き上げ、大人たちを相手に堂々と発表(プレゼンテーション)しなければならないのです。
14歳の子供が、複数の教師からの鋭いツッコミや質問に対して、自分の言葉で論理的に反論・説明する姿は圧巻です。この過酷な試験を乗り越えることで、子供たちは「自分の力で人生の扉を開いた」という強烈な自信と自主性を手にするのです。
中学卒業後の3つの進路選択
- リチェオ(大学進学を目指す普通科・専門科)
- 技術学校(専門的な技術を学び、就職と進学の両方を目指す)
- 職業学校(特定の職業に直結する実践的なスキルを学ぶ)
将来のキャリアを決定づける!イタリアの高校選びと厳しい落第制度
日本の受験生が深夜まで塾に通い、胃を痛めながら取り組む「高校受験」ですが、日本と異なりイタリアの子供達は、中学卒業後に入学試験(いわゆる受験)を受けずに希望の学校にそのまま進学することができます。成績さえ足りていれば、基本的には自分の学びたい分野の学校を自由に選べるのです。
一部の職業学校を除いて、どの学校も修業年限は5年制となっており、そのほとんどが公立です。前述の通り、高校課程の最初の前期2年間は義務教育の範囲内ですが、後期3年へ進級する時にも特別な進級試験は行われません。
入学できても安心できない!1年次から待ち受ける過酷な落第制度
「無試験で入学できて、進級試験もないなんて天国!」と思うかもしれませんが、イタリアの高校の恐ろしさは「入学してから」にあります。高校では、入学した直後の1年次から容赦のない「落第(留年)」が待ち受けているのです。
学年が終わる6月の時点で、生徒の成績や態度が以下の条件に当てはまってしまった場合は、自動的に落第が決定します。
- 1つの科目の全授業時間のうち、25%以上欠席している(サボり癖がある)
- 10段階評価の成績のうち、1科目でも「4以下」の赤点がある
- 10段階評価の成績のうち、「5以下」の科目が4科目以上ある
もし、最大3科目までの範囲で「5」の成績を取ってしまったグレーゾーンの生徒の場合は、夏休み期間中である7月に行われる補習授業を必死で受けた上で、9月の新学期直前に行われる追試を受けなければなりません。もしこの追試で1科目でもパスできなければ、その時点で落第が確定し、来年も同じ学年をやり直すことになります。
そして、もし同じ学校で同じ学年を2回留年してしまった場合は、原則として「その学校のレベルや分野が合っていない」とみなされ、別の学校へ転校しなければなりません(ただし、学校との相談の上で、生徒本人が強く希望し努力を誓えば、場合によって残ることも例外的に可能です)。
また、高校でも口頭試問での先生の評価は非常に厳しいため、テスト前の一夜漬けは一切通用しません。日頃の授業での発言や、日々の宿題の積み重ねといった「毎日の誠実な学習態度」が何よりも大切になるのです。この厳しさが、「勉強は誰のためでもなく自分のためにやるものだ」という自立心を強烈に育てます。
進路に合わせて選ぶ!リチェオ・技術学校・職業学校の違い
高校の学校の種類は、卒業後の予定進路(大学に行くか、すぐに働くか)によって14歳の時点で決めることになります。大学進学を考えている子は「リチェオ」に、大学進学と就職のどちらも視野に入れて手に職をつけたい子は「技術学校」に、卒業後すぐに現場で就職する予定の子は「職業学校」に入学する傾向があります。
リチェオ(Liceo):大学進学を目指すエリート養成校
リチェオは、大学進学のための高度な準備をする学校であり、日本の普通科高等学校(進学校)に相当します。各都道府県のトップレベルの県立高校のイメージに近いですが、日本との違いは、学習内容が「古典・人文学系」「理数数理系」「外国語系」のように学校ごとに細かく分かれており、それぞれに特化した専門性の高い授業が行われることです。
現在では社会のニーズに合わせて、言語系、教育学系、芸術系、音楽系、IT系、経済系まで、リチェオで学べる専門分野の枠が大きく広げられており、子供たちは自分の得意分野を徹底的に伸ばすことができます。
技術学校(Istituto tecnico):実社会で活きる専門知識を学ぶ
商業、工業、情報通信などの技術分野について専門的に深く学びたい子供が進む、スペシャリスト・技術者養成のための学校です。日本の高等専門学校(高専)や、レベルの高い商業・工業高校に相当します。卒業後は即戦力として就職することもできますし、さらに専門性を高めるために大学の工学部や経済学部などへ進学することも可能です。
職業学校(Istituto professionale):手に職をつける実践現場
学問よりも、すぐに就職に役立つ実践的なスキルを身につけることにウェートをおいた学校です。高度な専門課程もあるため、日本の高等専修学校に相当します。ホテルでの接客サービスやビジネス実務、美容師、自動車の整備・修理、金属の溶接、プロの調理師、歯科技工など、社会ですぐに必要とされる具体的な技術を学習できます。
職業学校には早く現場に出るための「3年コース」と、より深く学ぶ「5年コース」が存在しますが、もし途中で進路変更して大学などへ進学したい場合は、必ず5年コースを最後まで修了して卒業試験に合格していなければなりません。
高校生活の集大成!卒業試験(マトゥリタ)と大学入試の壁
高校でも、義務教育の最終学年に当たる2年生のみに、Invalsiが行うイタリア語と数学の全国共通学力テストが課されます。
しかし高校生にとって最大の関門は、やはり卒業の年です。リチェオ・技術高校・職業学校(5年コース)のどの学校に進んでも、最後の卒業試験に合格しなければ、高校課程の修了資格(高卒資格)を得ることは絶対にできません。
5年間のすべての学習の修了試験として、6月後半に「マトゥリタ」と呼ばれる全国共通の非常に過酷な統一試験が行われます。この試験で100点満点中「60点以上」を獲得できれば、めでたくディプロマ(卒業証書)が授与され、社会へと羽ばたくことができます。
このマトゥリタ試験を受けて取得するディプロマは、以前のイタリアでは「大学進学へのパスポート」のような絶対的な効力を持っていました。つまり、5年間の高校課程を無事に修了しディプロマを手にした者は、どこの大学でも「無試験」で自由に入学することができたのです。
ところが近年は、大卒の資格を求める大学への進学希望者が大幅に増えすぎたため、設備のキャパシティを超えてしまいました。その結果、人気のある学部や希望者数が極端に多い学部、あるいは高度な専門性が求められる理系学部などは、ディプロマの有無にかかわらず「独自の入学試験」を行うようになっています(特に、医・歯・獣医学部などの医療系は、厳格な国家統一入学試験が義務付けられています)。
高校卒業後に進学する際の4つの進路
- 特殊高等教育機関(即戦力の専門職養成)
- 高等芸術/音楽/舞踏学院大学(芸術・音楽の最高峰)
- 大学(学士・修士・博士課程)
- スクオーラ・ノルマーレ・スーペリオーレ(エリート養成のための特別大学)
エリートを育てる!イタリアの大学と世界レベルの高等教育
過酷なマトゥリタを乗り越え、ディプロマを取得した若者たちが入学できる高等教育機関(Istruzione superiore)は、専門性や目的に応じて大別して次のように分けられます。イタリアの強みである芸術分野や、一部のエリートを育てる特別な教育機関の存在が、イタリアの教育の多様性を支えています。
企業と直結!実利を極める特殊高等教育機関
特殊高等教育機関(formazione tecnica superiore)とは、農業・福祉公共サービス・工芸と産業(製造、情報通信技術 、建設など)・貿易や運輸・観光ビジネス・保険や金融などの特定分野における、高度な技術者あるいはスペシャリストを養成する専門学校です。
単に座学で学ぶだけでなく、実際の企業や特定生産部門に関連する工場での長期間の実習訓練が義務付けられており、即戦力として働くためのスキルを身につけます。希望すれば海外での研修も積極的に支援されます。
また、最先端のIT関係の技術用語や、国家安全保障に関係するグローバルな分野では、すべて英語による授業が行われることもあります。企業や大学から現役で活躍する専門教員が直接指導に当たるなど、その専攻分野におけるテクニカルスキル・プロフェッショナルスキルのトップ専門家養成を目指しています。
芸術の国イタリアの真骨頂!高等芸術/音楽/舞踏学院
高等芸術/音楽/舞踏学院(Alta formazione artistica, musicale e coreutica)とは、その名の通り芸術・音楽分野・舞踏(バレエなど)に特化した最高峰の高等教育機関です。
ドイツと並んで「音楽の国・オペラの国」として世界中に知られている通り、イタリアはこれまでプッチーニやヴェルディなど、歴史に名を残す著名な音楽家を多数輩出してきました。各都市にある名門音楽院では、世界的に活躍する優れた教授陣や、歴史ある充実した施設を備え、圧倒的に高いレベルの音楽教育を日々行っています。
また、ルネサンスの舞台として、自由な発想で数多くの美術作品とダ・ヴィンチのような偉大な芸術家を生みだしたイタリア。長い歴史に培われた伝統美と、現代の革新的な創造性が結びつき、世界トップレベルの美術教育を行っている美術学院(アカデミア)からは、現在でも世界規模で活躍する著名なアーティストやファッションデザイナーが数多く輩出されています。
大衆化と多様化が進むイタリアの大学(Università)
一般的な大学(Università)の学位編成は、日本と似ていますが少し異なり、学士課程が3年、修士課程が2年、博士課程が3年という年数設定になっています(ただし、特別な資格が必要な法律・薬学部・歯学部・医学部などを除きます)。
近年、イタリアの大学は急速に変貌する社会のIT化の波や、産業界からの「即戦力が欲しい」という要望に従って、IT・材料科学・バイオテクノロジー系学部などの新しい学科が次々と開設され、研究分野が多様化・細分化してきています。日本の大学と同じように、いかに社会に役立つ実用的な研究をするかが問われる時代になっています。
国家を動かす超特権階級!スクオーラ・ノルマーレ・スーペリオーレ
数十年前までのヨーロッパでは、大学などの高等教育に進むのは一部の裕福なエリートや、本気で研究者を目指す学生に限られていました。しかし、ここ20年の間に大学の「大衆化(誰でも入れる化)」が一気に進み、前述のように就職向けの実利的な教育が優先される傾向が強くなっています。データを見ても、1990年代後半からドイツやイギリスなど欧州9カ国の平均大学進学率は30%から一気に50%以上に伸びました。
しかしながら一方で、従来の古き良きヨーロッパの「真のエリートを対象にした、哲学や人文学などの高度な教養教育」は、決して消えることなく連綿と受け継がれています。その「超エリート教育」のイタリアにおける代表格が、「スクオーラ・ノルマーレ・スーペリオーレ(Scuola normale superiore)」なのです。
イタリア中部にある斜塔で有名な街・ピサにあるこの「スクオーラ・ノルマーレ・スーペリオーレ」は、なんと1810年にあのナポレオンの命によって設立された歴史ある特権階級養成学校(特別大学)です。これまで、何人ものノーベル賞受賞者やイタリアの大統領、国家のトップに立つエリート達を輩出してきました。
この学校は全寮制であり、なんと学費や寄宿費(寮費)、日々の生活費や教科書代、ひいては毎月の学生のお小遣いの果てまで、生活にかかるすべての費用が国の公費で賄われます。親の経済力は一切関係ありません。
全国のトップレベルの高校から学校長の熱烈な推薦状を手に集まった数千人の天才学生の中から、理系・人文学系を併せても「たったの60人」のみが、想像を絶する難易度の選抜試験をくぐり抜けて入学を許可されます。選ばれた天才学生達は、ここでの高度な特別授業の他に、隣接するピサ大学の講義を一般学生に混じって受講することが義務付けられています。彼らは国を背負って立つ存在として、「世界中のどこへ行っても、ここで学んだ教養がリーダーとしての基礎になる」ように、究極の英才教育を受けているのです。
日本の家庭でも真似できる!イタリア流・自主性を育む子育てのヒント
ここまでイタリアの教育制度を見てきて、「塾がないのに子供が自立して勉強するのは、厳しい落第制度や口頭試問のおかげなんだな」と納得された方も多いでしょう。とはいえ、日本の制度をすぐにイタリア式に変えることはできません。
しかし、イタリアの親たちが家庭で行っている「子供の自主性と責任感を育てるアプローチ」は、今日からでも日本の家庭に少しずつ取り入れることができます。先輩ママの視点から、家庭で真似できる3つのヒントをご紹介します。
ヒント1:「あなたはどう思う?」を毎日の口癖にする
イタリアの口頭試問(自分の意見を述べるテスト)のベースにあるのは、家庭での日常的な対話です。イタリアのマンマは、子供が小さいうちから「今日の夕食は何を食べたい?」「このニュースを見て、あなたはどう思った?」と、常に子供個人の意見を問いかけます。
日本のママも、子供が失敗した時に「だから言ったじゃない!」とすぐに答えや正論を押し付けるのではなく、まずは「どうしてこうなっちゃったと思う?次はどうしたらいいかな?」と子供自身に考えさせ、言葉で説明させる機会を作ってみましょう。間違っていても否定せず、「なるほど、そういう考え方もあるね」と受け止めることで、自分の意見を堂々と言える論理的思考力が育ちます。
ヒント2:子供の「やりたい・やりたくない」の選択に責任を持たせる
習い事などを決める際、親が先回りして「これが将来役に立つからやりなさい」と決めるのではなく、いくつかの選択肢を提示して最終的な決定は子供自身に委ねてみましょう。そして、「自分で選んだのだから、最低でも半年は責任を持って続けようね」と約束させます。
イタリアの高校生が自己責任で留年を受け入れるように、幼い頃から「自分の選択には結果が伴う(責任が生じる)」という経験を小さく積み重ねることが、他人のせいにしない「真の自主性」を育てる近道になります。親は手出し口出しをグッとこらえ、見守る忍耐力を鍛えることが求められます。
ヒント3:長い休みは「勉強」よりも「体験と対話」を優先する
イタリアの3ヶ月ある夏休みのように、日本の夏休みなどの長期休暇も「ドリルや塾の夏期講習で埋め尽くす」のではなく、「家族で一緒に料理をする」「海や山で自然に触れる」「博物館に行って疑問について語り合う」といった生きた体験の時間を意図的に増やしてみてください。
机の上のペーパーテストの点数だけでは測れない「非認知能力(やり抜く力、コミュニケーション力、自己肯定感)」は、こうした机に向かわない時間の中でこそ大きく育ちます。時には親子でイタリア式に、お昼ごはんに温かいパスタをゆっくりと食べながら、「最近気になっていること」をテーマに1時間おしゃべりを楽しんでみてはいかがでしょうか。
イタリアの教育制度に関するよくある疑問Q&A(FAQ)
イタリアの教育事情について、日本のママたちからよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。
Q1. 塾がないのに、子供たちは受験勉強(テスト勉強)をどうしているの?
イタリアの子供たちは、毎日学校から出される膨大な量の宿題を、放課後に自宅で必死にこなすことでテスト勉強に代えています。日本の塾のようにテクニックを教えてくれる場所がないため、教科書を読み込み、親や兄弟と議論しながら「自分の言葉で説明できるレベル」まで内容を深く理解する自己学習のスタイルが自然と身についています。わからないことは翌日、直接学校の先生に質問しに行くのが基本です。
Q2. 勉強が苦手な子はイタリアではどうなってしまうの?
留年(落第)制度が厳しいため、勉強についていけない子は実際に留年を経験します。しかしイタリアでは「留年=人生の終わり」という暗いイメージはあまりなく、「もう一年じっくり学べるチャンス」とポジティブに捉える大らかさもあります。また、どうしても学問が合わない場合は、無理に普通科の高校にしがみつかず、実践的な技術や調理を学べる職業学校へあっさりと転校して、自分の得意な道で輝くという選択が社会的に尊重されています。
Q3. イタリア語が話せなくても、現地の公立学校に入学できるの?
はい、入学できます。イタリアは移民を広く受け入れている国でもあるため、公立学校でも外国籍の子供を柔軟に受け入れる体制があります。言葉が全くわからない子供に対しては、授業時間内に別室で「外国人向けの特別イタリア語レッスン」を無料でサポートしてくれる制度を設けている自治体や学校が多く存在します。言葉の壁があっても、子供同士のコミュニケーションですぐに馴染んでいくケースが多いようです。
Q4. 日本の「詰め込み教育」とイタリアの「自主性教育」、どちらが良いの?
どちらが良い・悪いという正解はありません。日本の教育は「全員が一定の高い水準の基礎学力と規律を身につけられる」という世界に誇れる大きなメリットがあります。一方のイタリアは「落ちこぼれるリスクはあるが、個人の突き抜けた才能や、自分の意見を堂々と主張する強さが育つ」というメリットがあります。大切なのは、両方の良いところを知った上で、自分の子供の性格(コツコツ真面目タイプか、自由奔放な天才肌タイプか)に合ったアプローチを家庭の教育に取り入れていくことです。
まとめ:イタリアの教育制度から学ぶ、我が子の「考える力」の育て方
イタリアの教育制度は、入学式などのセレモニーがなく、塾も存在しない一方で、幼い頃から「自分の頭で考え、口頭で意見を述べる」という厳しい試練と自己責任が求められるダイナミックなシステムであることがわかりました。
「落第」という厳しい現実があるからこそ、子供たちは親に言われて渋々勉強するのではなく、「自分が進級するために、自分の責任で学ぶ」という本物の自主性を身につけていきます。また、得意・不得意に合わせて高校から多様な選択肢が用意されているため、無理に苦手な科目を克服してオールマイティになる必要がなく、一つの突き抜けた才能(芸術や技術)をのびのびと開花させることができるのです。
日本のテスト至上主義の教育に疲れてしまった時は、ぜひこのイタリアの大らかでありながらも「個」を尊重する教育哲学を思い出してみてください。毎日の家庭での会話で「あなたはどう思う?」と問いかけるだけで、子供の論理的思考力と自己肯定感は確実に育っていきます。塾に頼り切るのではなく、親子での豊かな対話を通して、子供が自分の人生を力強く歩んでいける「考える力」をサポートしてあげましょう。


