レッジョ・エミリア・アプローチとは 世界が注目する幼児教育
レッジョ・エミリア・アプローチとは、子供それぞれの可能性を尊重し、従来の「教える」タイプの教育とは異なる関わり方を土台にした保育のあり方です。1960年代に北イタリアのエミリア・ロマーニャ州にある、レッジョ・エミリアという町で始まりました。1991年にはアメリカの週刊誌で革新的な保育として紹介されたほど、世界的に注目を集めてきたイタリアの幼児教育法の一つです。わが子に「自分らしく伸び伸び育ってほしい」と願うママにとって、その考え方は大きなヒントになります。今回は、誕生した経緯、この保育法の魅力、そして同じく世界的に有名なモンテッソーリ教育との違いまで、順を追ってご紹介します。読み終えるころには、園選びのときに「ここはどんな考え方なのかな」と中身を見る目が育っているはずです。
レッジョ・エミリア・アプローチ誕生の経緯
第二次世界大戦の終わり、レッジョ・エミリア市では、幼児のための学校づくりと、それを通じた町の再建・復興を目指す気運が、親と教育者の間で高まりました。「自分たちの子供に理想の教育を受けさせたい」という市民の熱意の代弁者となり、リーダーとなったのが、のちにレッジョ・エミリア・アプローチの生みの親となる、児童心理・教育学の専門家ローリス・マラグッツィでした。戦争で傷ついた町の人たちが、子供の学び場をゼロから立ち上げたという出発点には、思わず胸が熱くなります。「教育は誰かが与えてくれるもの」ではなく「みんなで作るもの」という発想は、今の日本の子育てにも通じるのではないでしょうか。まずは、この保育法がどのように世界へ広がっていったのか、年代ごとに見ていきましょう。
1963年 イタリア初の公立幼稚園が開園
ボランティアの親たちのグループの働きかけと、レッジョ・エミリア市当局の後押しを受けて、戦後に廃棄された戦車やトラック、馬を売った資金をもとに、3歳から6歳までの幼児のためのイタリア初の公立幼稚園が開園しました。これは「小さな子供を預けられる学校をつくる」という、当時としては新しい考え方を世に示したという点で、とても重要な出来事でした。鉄くずを元手に学校を建てたという逸話には、「ないなら作る」という市民の底力を感じます。ちなみに現在では、0〜2歳の保育所が13か所、3〜6歳の幼児学校が21か所、市内に開設されています。小さな町ぐるみで子育てを支える仕組みが、今も根づいているのです。
1980年代 組織の原型が誕生し世界へ
このアプローチを取り入れた教育の成果をめぐり、レッジョ・エミリア市では幼稚園と各家庭をつなぐ情報サービス網を管理する組織の原型ができました。1981年には、常設展示「壁を超えた目 子供達から見る社会」の中で、レッジョ・エミリア・アプローチの研究と経験が公開されます。主役はもちろん子供たちでしたが、プロジェクトに関わった保育士や調理担当、芸術の専門家であるアトリエリスタ、児童教育者、そしてマラグッツィも一緒でした。翌年、作品の追加と改善を重ねたこの展示は「子どもたちの100の言葉」と名前を変え、ストックホルムでの展示を皮切りに国際的な評価を受け、1987年以降は太平洋も越えていきました。子供の表現を「展示」という形で社会に開いた発想は、今見ても新鮮です。気になった方は、お住まいの地域に子供の作品展がないか探してみると、似たまなざしに出会えるかもしれません。
1990年代 週刊誌掲載で世界の注目が高まる
「レッジョ・エミリアの幼稚園は、児童教育のアプローチにおいて前衛的なレベルの園である」と、世界的に認識されるようになります。さらに1991年には、アメリカの週刊誌に「世界で幼児教育を最も尊重した革新的な学校」の例として、レッジョ・エミリア市のある幼稚園が紹介されました。1994年には、子供の権利の保護、国際的なイベントの開催、アプローチの普及、公立学校への支援を促進する趣旨を盛り込んだ「世界の友の会」が、市に発足します。一つの町の取り組みが、メディアをきっかけに世界の関心を集めていく流れは、現代のSNS時代とも重なって見えます。
2000年代 レッジョ・チルドレンを結成
レッジョ・エミリア・アプローチは特にアメリカで広く普及し、2002年には北アメリカの連盟ができました。さらにアルバニア、ボスニア、ケニア、コソボ、キューバ、マケドニア、パレスチナ、セネガル、セルビア、ネパールなど、多くの国や地域との交流も始まりました。2006年には、幼児・児童教育の研究機関「レッジョ・チルドレン」を結成するまでに成長し、「ローリス・マラグッツィ国際センター」も開設。現在では世界各国の教育関係者を招いて、その普及に努めています。このセンターは活動の中心として、関係者を招くための講堂、活動のためのアトリエ、記録のための設備、教育の研究所などを備えています。小さな町が世界の学びの拠点になったという事実は、子育てを「地域でひらく」可能性を教えてくれます。
レッジョ・エミリア・アプローチの基本理念
レッジョ・エミリア・アプローチの基本理念は、生みの親であるマラグッツィの詩「子どもたちの100の言葉」に込められています。そこには、子供一人ひとりの「個」を大切にする、温かいメッセージが流れています。
「子どもたちの100の言葉」に込められた思い
子どもには100通りの表現がある。日常生活の中で活発に手を使い、いろいろな材質のものに触れ、たくさんの視点から考え、感じ、語り、聞き、話し、驚き、愛し、歌い、理解し、夢を見ている。けれど、その99は大人の現実的な考え方によって奪われ、いつしか「1しかない」と思うようになってしまう。でも、確かに100はあるのだ。
子供から生まれる100の発想を大切にしながら、表現力と創造力を豊かに育て、一人の社会に生きる人間として育つ機会を与える。これがレッジョ・エミリア・アプローチの基本理念です。心から理解する鍵は、まず子供の潜在的な可能性を信じること。そして子供は皆同じではなく、教育の方法も一つではないと理解することから始まります。「うちの子はこういう子」と決めつけそうになったとき、この詩を思い出すと、子供の見え方がふっと変わります。今日は、お子さんの「言葉にならない表現」を一つ見つけてあげるつもりで、遊ぶ様子を眺めてみてください。
レッジョ・エミリア・アプローチの特徴
レッジョ・エミリア・アプローチの特徴を簡潔に言えば、アート作品を共同で制作するときの手法を、幼児教育に応用した「プロジェクト型保育」です。作品づくりに必要な観察力や調査、そして創造的な体験を通して、子供たちに自ら考えさせ、潜在的な力を引き出そうとする試みです。「正解を教える」のではなく「一緒に探す」という発想が、この保育の土台にあります。具体的にどんな仕組みで進むのか、ポイントごとに見ていきましょう。
プロジェクト型保育
特定のテーマに沿って、自然物と人工物の豊富な素材を活かした活動が行われます。これを「プロジェクト」と呼びます。実際には、一つのテーマを数か月から一年という長いスパンで、子供・保育者・保護者が一体となって掘り下げていきます。プロジェクトには、声を使ったもの、体を使ったもの、楽器を使ったもの、グラフィックや絵画などがあります。子供の感性や表現を尊重し、自由な発想を大切にしながら進められます。作品を作り上げる過程で、子供たちは他の子供や保育士、保護者、アトリエリスタ、地域の人など、大人とも対等に関わりながら、自主性・協調性・社会性を育んでいきます。子:「これ、どうやって作る?」という問いから何か月も探究が続くと聞くと、家庭でも「すぐ答えを言わずに待ってみよう」と思えますね。週末の工作を、一回で終わらせず「続き」にしてみるのもおすすめです。
国によって進め方が違うことも
同じレッジョ・エミリア・アプローチでも、本場のレッジョと他の国では、いくつかの違いがあると言われています。その一つがプロジェクトの期間です。短い期間で進める地域では、一つのテーマへの理解が浅くなりがちという見方もあります。また、独立心や自己責任といった個人に価値を置く文化もあれば、レッジョのように、グループとの共同性や互いに支え合う関係に価値を置く考え方もあります。同じ名前でも中身は一様ではない、という点は園選びのヒントになります。
アトリエリスタとペダゴジスタ
プロジェクトを進めるにあたって、各学校には、ペダゴジスタ(児童教育の専門家)とアトリエリスタ(子供の芸術体験を支える芸術の専門家)というプロのスタッフが配置されます。ペダゴジスタは、保育士が方針に沿って活動するのを支え、アトリエリスタや保育士とともに、子供の創造的な活動を後押しします。日本の園に置き換えると、担任の先生のほかに「表現の専門家」と「学びの設計役」がいるイメージです。専門家がチームで子供を見る体制があると聞くと、心強く感じる方も多いのではないでしょうか。
保育士は子供と対等
展覧会のための作品を作るときは、子供たち自身が「何を、どのように、誰と作るのか」を話し合います。保育士やアトリエリスタは指示を出すのではなく、その話し合いに対等に参加して、互いに学び合います。さらに、保護者にも状況を共有して理解を求めます。先生が「教える人」ではなく「一緒に考える仲間」になるという関係は、家庭での声かけにもそのまま応用できます。子供が何かを見せてくれたとき、「上手だね」で終わらせず「どうやって思いついたの?」と聞いてみると、対等な対話が生まれます。
活動をドキュメント化する
プロジェクト活動の過程を、保育士がメモや写真、動画、録音などに残し、それをパネルにして展示することで、子供自身や親にフィードバックします。子供にとっては自分の活動を振り返るきっかけになり、大人にとっては、子供の個性と力を見極め、どう向き合えば個性を引き出せるかを考える資料になります。これは家庭でもまねできる工夫です。お子さんの作品や遊びの様子をスマホで撮りためて、月末に一緒に見返すだけでも、「自分はこんなに作ったんだ」という自信につながります。今日撮った一枚を、ぜひ後で一緒に眺めてみてください。
異年齢の交流を生む共同スペース
園内には、子供たちが自由に使える共同スペース「ピアッツァ」や、「アトリエ」と呼ばれる空間が用意されています。木の枝や葉、小石などの自然のもの、本、布地、楽器やパソコンなどの機器、リサイクル素材まで、身の回りのさまざまな材料が教材として使われています。こうした空間があることで、親や先生と話したり遊んだりできるだけでなく、年齢の違う子の活動を見ることで刺激を受け、成長につながります。きょうだいや近所の子と一緒に遊ぶ機会が減りがちな今、「異年齢で交わる場」の価値は見直したいところです。公園や児童館など、わが子が年上・年下と関われる場を、生活の中に一つ持っておくとよいですね。
レッジョ・エミリア市の園長が語る現場の考え方
レッジョ・エミリア市の保育園・幼稚園の園長は、このアプローチについて次のように解説しています。現場の言葉から、理念がどう実践されているのかが見えてきます。
初の公立幼稚園、命名のエピソード
1963年に開校した初の公立幼稚園は、有名な小説『ロビンソン・クルーソー』からヒントを得て「ロビンソンスクール」と名づけられました。無人島に漂着した主人公が、生き残るために自分を変えながら自力で生活していく物語です。この学校に初めてレッジョ・エミリア・アプローチが取り入れられたことから、新しい試みに挑戦する精神を重ね合わせて、この名がつけられました。最初の試みは「子供たちの学校と社会との関わり」という、児童教育学の重要な概念の一つでした。そこから少しずつ、別の試みが加えられていったのです。学校の名前一つに「挑戦」の意味を込めるところに、この園の姿勢がにじんでいます。
従来の保育との違い
根本的な違いは、マラグッツィが到達すべき目標をあらかじめ設定せず、学ぶ内容を子供たちと一緒に作り上げていく方法を取り入れた点です。従来は、子供に小さな課題を与え、それを楽しませる方法が中心でした。園には、子供が自分の関心ごとを主体的に学べる自由度があります。これは、ほかの子との関係を築くうえでも、集団生活のルールを作るうえでも、とても大切なことです。「やることが決まっている」のではなく「やりたいことから始まる」。この順番の違いは、家庭の遊びにも取り入れられます。次の休日は、親が予定を決めすぎず、お子さんの「やってみたい」から一日を組み立ててみませんか。
クラスの分け方
現在は0〜6歳児を対象とし、0〜2歳と3〜6歳の2つのグループに分けています。実験的な学校ではなく、教育サービスのためのさまざまな要素を併せ持つ、総合的なネットワーク型の保育です。年齢を細かく区切りすぎないことで、異年齢の関わりが自然に生まれる仕組みになっています。
評価の考え方
この園では、子供が何かを試したり楽しんだりすること、そして創造性や独創性を表現できることを大切にし、その結果がより個性的であることを評価します。子供が描いた絵などについて、「合っている・間違っている」と判断する厳密な基準はありません。結果は「そう表現した一つの機会だった」と受けとめます。一人ひとりが自分の表現を思うままに使え、他人から批判されることもない、とても公平な関わり方です。人と違うことは豊かさであり、マイナスではありません。この一文は、つい人と比べてしまう子育ての場面で、何度も思い出したい言葉です。お子さんの「ほかの子と違うところ」を、今日は一つほめてみてください。
プロジェクトでの大人の関わり
人が何かを表現する技法はたくさんあります。言葉だけでなく、体を使ったり、音楽だったり、粘土や絵画やグラフィックだったり。大切なのは、大人も子供たちの間に入ってあげることです。子供たちが言葉やしぐさを織り交ぜて協力し合うところに大人も加わると、子供の表現をさらに引き出すきっかけになります。記録を取りながら子供たちと一緒にプロジェクトを作っていきますが、子供たちはこうした環境に慣れてなじむことで、力を発揮していきます。「見守る」と「混ざる」のちょうど中間に、大人の役割があるのですね。
先生と家族の役割
学校の先生たちは、教えること以上に、プロジェクトを作ることに力を注ぎ、その過程を組み立てていきます。同じように、親もプロジェクトに関わり、子供たちとどう進めていくかを実践します。家庭と園が「お任せ」と「丸投げ」の関係ではなく、共同のチームになる点が大きな特徴です。
プロジェクトを進めるための大事な要素
- 家族の参加
- 地域の関係者みんなによる共同作業
- 整えられた教育環境
- 芸術の専門家と園内のアトリエ
- 園内の台所
- 教育的な調整と、支え合うサービス網
イタリア発祥 モンテッソーリ教育との違い
ここで気になるのが、同じイタリア発祥で有名なモンテッソーリ教育と、レッジョ・エミリア・アプローチの違いでしょう。どちらも「個」を尊重する教育ですが、実はさまざまな違いがあります。モンテッソーリ教育の生みの親であるマリア・モンテッソーリの考え方や目的とあわせて、両者の違いを見ていきましょう。名前は聞いたことがあっても、中身まで知る機会は意外と少ないものです。
マリア・モンテッソーリとは
マリア・モンテッソーリは、男女の役割が大きく分かれていた1800年代後半のイタリアで、女性として高い学問を修めた先駆者の一人です。さまざまな環境にある子供たちの教育に携わる中で、子供が感覚を通じて学ぼうとする姿に着目しました。たとえば、身近なものを手や指先でしきりに触り、確かめようとする様子から、「子供は自分の感覚を使って世界を知ろうとしている」と気づいたのです。その後は、子供の育ちを支える教育のあり方を深く研究し、哲学や子供の発達についての学びを重ねました。やがて、子供が指先や感覚を使って自分から学べるような道具や環境の工夫を体系化し、独自のモンテッソーリ教育と呼ばれる幼児教育法を確立しました。子供の何気ないしぐさを「ただの遊び」と見るか、「学びのサイン」と見るか。そのまなざしの違いが、教育法の出発点になっているのですね。
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育の目的は、自立して自主性を持った子供に育てることです。子供は生まれながらに、自ら成長し育つ力を持っている。だから親や教師の役割は、子供が成長の段階ごとに何を必要としているかを理解し、その自発的な活動を手助けすることだ、という考え方が土台にあります。そのために、自由が保障された環境づくりと、成長段階に合わせた独特の教具を使った教育を行っていきます。
2つの教育法の違いを比較
同じ国で生まれた2つの教育法、レッジョ・エミリア・アプローチとモンテッソーリ教育の違いを、一つの表にまとめました。並べて比較すると、考え方の違いがはっきり見えてきます。園を見学するときの「質問のヒント」としても役立ちます。
| 項目 | モンテッソーリ教育 | レッジョ・エミリア・アプローチ |
|---|---|---|
| 成り立ち | 専門家によって体系化された方法 | 親たちの手によって生み出された方法 |
| 発達段階のとらえ方 | 子供には明確な発達段階がある | 段階に縛られすぎる教育には限界があるとする |
| 到達目標 | 学習の到達目標がある | 学習の到達目標を設定しない |
| 文化との関係 | 教育は国境を越えて普遍的 | 子供は文化に深く根ざした存在 |
| 向き合う対象 | 子供の要求に向き合う | 家族のニーズにも向き合う |
| 教具 | 課題に応じた専用の教具を使う | 教具は身の回りにあるもの |
| 教師の立場 | 子供の自主活動を支えるガイド役 | 教師自身も一人の学ぶ人 |
| 個性のとらえ方 | 個性は経験から作られる | 個性は属する社会や環境から作られる |
| 焦点 | 子供の自立と自主性 | 子供と環境とのつながり |
| 記録の仕方 | 子供を観察することを重視 | 活動を記録しパネルで展示する |
| 保育のスタイル | 専用の教具を用いた自主性尊重型 | アートの手法を取り入れたプロジェクト型 |
こうして見ると、モンテッソーリは「一人の子供が自分で伸びる力」に、レッジョは「子供と周囲とのつながり」に重心を置いていることが分かります。どちらが優れているという話ではなく、わが子の気質や家庭が大事にしたい価値観に合うかどうかが選ぶときの鍵です。お子さんが「一人で集中するのが好き」か「みんなで作るのが好き」か、ふだんの様子を思い浮かべながら読み比べてみてください。
日本でプロジェクト型保育を行う園の選び方
日本にも、従来の指導型の保育だけでなく、レッジョ・エミリアのようにアートを幼児教育に取り入れた「プロジェクト型」保育を行う保育園・幼稚園があります。お子さんが絵を描いたり何かを作ったりするのが好き、自由な環境で個性を活かした教育を受けさせたい、というご家庭は、こうした園を選択肢に入れてみるとよいでしょう。ただし、同じ「レッジョを取り入れている」という園でも、中身はさまざまです。見学のときに、次のような点を確認すると、わが子に合うかどうかを見極めやすくなります。
- アトリエや共同スペースがあるか ── 自然素材や廃材など、多様な材料に自由に触れられる環境が整っているかを見てみましょう。
- 一つのテーマにじっくり取り組む時間があるか ── 数か月単位で探究を続けられるか、短期で切り替えるかで、学びの深さが変わります。
- 活動の記録を共有してくれるか ── 写真やパネルなどで子供の活動を振り返り、家庭にフィードバックする仕組みがあると安心です。
- 先生が「教える」より「一緒に考える」姿勢か ── 見学中の先生と子供のやりとりに注目すると、園の雰囲気が伝わってきます。
- 家庭や地域との連携を大切にしているか ── 保護者が関われる機会があるかどうかも、プロジェクト型保育の大事な要素です。
パンフレットの言葉だけで判断せず、実際に足を運んで、子供たちが生き生きと活動しているかを自分の目で確かめるのが一番です。気になる園があれば、まずは見学を申し込んで、わが子の反応を見てみましょう。
イタリア国内では知らない人も多い
長い芸術の歴史を持つイタリア国内では、国外ほどレッジョ・エミリア・アプローチへの注目が集まっていないのが実情です。知らない人は意外に多く、「国内よりも海外で有名な教育法」として紹介されることもあります。イタリアに長く住む筆者の周囲に尋ねても、「知らない」という返答が返ってきました。世界が注目するものが、本国では当たり前すぎて意識されない。これは日本の伝統文化にも似た現象で、なんだか親しみがわきます。
イタリアでは一般的な児童教育学
イタリアで「ペダゴジーア」と呼ばれる児童教育学は、芸術系の大学などで学ばれ、アートを児童教育に取り入れることが奨励されています。筆者が受けた授業も、あるテーマのプロジェクトを役割分担して話し合いながら、チームワークで進めていくという、レッジョ・エミリア・アプローチとよく似た手法でした。つまりこのアプローチは、イタリアの幼児教育のオーソドックスな手法とも重なるのです。それが、国内でことさら特別視されない理由の一つと考えられます。
筆者の子供も、幼稚園の頃の担当が芸術系の大学出身の保育士だったため、印象派の絵画の模写などを活動で行い、その絵を見て驚かされたことがあります。子供の力を侮ってはいけない、と実感した出来事でした。
レッジョ・エミリア・アプローチによる子供たちの作品のレベルの高さにも、目を見張ります。幼い子供たちだけで、あのレベルにたどり着くのは難しいでしょう。市や町をあげて一大プロジェクトを組織的に進め、結果として町おこしにもつながったという点でも、レッジョ・エミリア・アプローチは国際的な評価を受けるにふさわしい、すばらしい事例といえます。
よくある質問
レッジョ・エミリア・アプローチについて、保護者からよく寄せられる質問をまとめました。園選びや家庭での関わりの参考にしてください。
レッジョ・エミリア・アプローチは何歳から受けられますか
本場のレッジョ・エミリア市では、0〜2歳と3〜6歳の2つのグループに分けて、0歳から就学前までを対象にしています。日本で取り入れている園も、おおむね幼児期が中心です。乳児期はまず安心できる環境と感覚的な体験を大切にし、年齢が上がるにつれてプロジェクト型の活動が本格化していく流れが一般的です。気になる園があれば、何歳からどんな活動をするのか、見学時に具体的に聞いてみるとよいでしょう。
家庭でも取り入れることはできますか
はい、考え方の一部は家庭でも取り入れられます。たとえば、答えをすぐ教えずに「どうしてだと思う?」と問い返す、子供の作品や遊びを写真に残して一緒に振り返る、身の回りの自然物や廃材を素材として自由に使わせる、といった工夫です。大切なのは、結果の上手・下手を評価するのではなく、表現したこと自体を認める姿勢です。完璧を目指さず、一日一つ「子供の発想に乗ってみる」ところから始めてみてください。
モンテッソーリ教育とどちらが子供に合っていますか
どちらが優れているという比較ではなく、お子さんの気質やご家庭が大切にしたい価値観によって、合うものは変わります。一人で集中して取り組むのが好きな子には、専用の教具で自主性を伸ばすモンテッソーリが合いやすい一方、みんなで話し合って何かを作るのが好きな子には、つながりを重視するレッジョが向くこともあります。記事中の比較表を参考に、ふだんのお子さんの様子と照らし合わせて考えてみましょう。
日本でレッジョ・エミリア・アプローチの園を探すには
「プロジェクト型保育」「アトリエ」「探究的な学び」といった言葉を手がかりに、地域の保育園・幼稚園の方針を調べてみるのがおすすめです。ただし、同じ名前を掲げていても中身は園ごとに異なるため、必ず見学して、環境や先生の関わり方、活動の記録の共有方法などを自分の目で確かめましょう。お子さんが実際にその場でどんな反応を見せるかも、大事な判断材料になります。
まとめ レッジョ・エミリアが教えてくれる子育てのヒント
レッジョ・エミリア・アプローチは、戦後の北イタリアで、親と教育者が手を取り合って作り上げた幼児教育法です。「子どもたちの100の言葉」に込められたように、子供一人ひとりの可能性を信じ、表現と創造を尊重する姿勢が、その根っこにあります。アートの手法を活かしたプロジェクト型保育、対等に学び合う大人と子供の関係、活動を記録して振り返るドキュメント化など、現場の工夫はどれも、家庭の子育てに通じるヒントにあふれています。同じイタリア発祥のモンテッソーリ教育とは、焦点の置き方に違いがあり、どちらが正解ということはありません。大切なのは、わが子の気質や家庭の価値観に合う関わり方を選ぶことです。園選びに迷ったら、肩書きや名前だけでなく「どんな子供観で関わっているか」を見てみてください。そして家庭では、答えを急がず、子供の「やってみたい」と「100の言葉」に耳を澄ます。その小さな積み重ねが、お子さんの個性を伸ばす一番の土台になります。




