子供の登山デビューは無理なく楽しく!おすすめの時期や注意点
子供と登山に行きたいパパやママにとって、気になるのは子供がいつからどれくらいの山に登れるのかでしょう。登山は体力向上だけでなく、子供の心の教育にも役立つため非常によい体験なのですが、心配なのが山の事故です。
日本国内には大人の初心者でも登れて小学生の登山者も多い3000m級の山がある反面、2018年5月には1000mに満たない新潟県牛頭連山(ごずれんざん)で、小学校1年生になったばかりの6歳の男の子と30代の父親の親子遭難事故が起こり、尊い命が失われました。
比較的低い山に登ることが多い子供との登山ですが、甘く見ず念入りに計画や準備をおこなってから山に挑みましょう。
子育て4コマ漫画:子供との登山は準備しすぎるくらいがちょうどいい!?
子供の登山はいつから?デビューにおすすめの年齢は4~6歳
0歳の赤ちゃんとベビーキャリアを使用して登山をする人などもいますが、子供が自分の足で登山ができるようになる時期は、幼稚園の年中年長にあたる4~6歳からです。
ただし、子供の体力に合った山を選ばないと登りきることができません。普段から歩かない生活をしていて体力がない子供には、「幼児でも登れる!」と口コミなどで書かれている山でも登ることは困難。
周りの景色を楽しむことができず「大変だった」「疲れた」といったマイナスの感情しか残らない場合もありますので、お子さんの年齢や性格・体力も考慮して、山登りデビューの時期やトライさせる山を決めましょう。
子供の登山デビューは夏がおすすめ!梅雨入り前の初夏が人気
子供の山登りデビューにおすすめの季節は、山の日(8/11)があるぐらいですので夏です。特に幼稚園や学校で登山遠足が行われることが多い初夏、梅雨入りする前の5~6月はおすすめの時期です。
山は平地より標高が高いため登り出すと思いのほか寒くなることもありますが、猛暑の時期でもマイナスイオンたっぷりのすがすがしい空気の中で登山を楽しめます。
ただし初夏に登山デビューを果たした後、同じ山に秋や次の年の春に挑戦すれば、夏とは違う楽しみ方ができます。山の風景が一変し、空気の冷たさの違いや植物の変化が楽しめて四季を感じられますので、五感を存分に刺激できる情操教育や知育にもなります。
いきなり3000m級は無謀!子供連れ登山は低い山でも計画や準備が必須
無謀な子供連れの登山者が増えています。3,000m級の山に乳幼児をおんぶして登ったり、子連れで強行して子供がグズグズしたりといったケースも見られますが、こうした無理な登山は子供にとって危険な行為。子供の肺は大人よりも小さく、慣れない登山で高山病になって体調を崩し、グズっている恐れもあるのです。
近年、外国人観光客のハイヒールや半袖短パンでの無謀な富士登山、急な天候不順への準備もせず山小屋にも宿泊しない弾丸ツアーが問題視され、マスコミでも取り上げられるほどですが、大人でも自然を甘く見ると命を落とす恐れがあるのが登山です。
2017年の全国山岳遭難者は3,111人。中高年の登山ブームで増加傾向にありますので、低い山に祖父母と登る時にも注意も必要です。警察庁でも体力に見合った山を選び、低い山でも十分に計画や準備を行うことを呼び掛けていますので、子供連れの登山は思い込みで行わず、事前に子供中心の計画や荷物の準備をしっかりと行いましょう。
子供との登山予定が決まったら行おう!荷物以外に必要な4つの配慮
子供連れの登山の予定が決まったら、次は山選びや登山計画などの準備です。初めての場合は情報検索に時間がかかることもあるため早めに準備を行うのが鉄則ですが、その際子供との登山ならではの配慮を行うことが大切です。
親の心の余裕が変わりますので、子供の成長をより楽しめるだけでなく、安全面も大幅に向上します。
1子供の体力や運動神経に無理のない山選び
子供との登山では、運動神経も考慮に入れて山選びをすることが重要です。
登山経験のない子供と登る山選びでは、標高300~500mぐらいの低い山がおすすめ。いきなり大人でも遭難者が多い富士山登山に連れて行く人もいますが、小学生であってもおすすめできません。
300~500m級の山であれば、子供の足で2~3時間程度で登頂できます。高い山に登らせたい場合は、まず標高の低い山から体を慣らし、計画的にレベルアップさせましょう。
また、子供の年齢や体力によっては登り切った達成感で帰りは歩きたがらないこともありますので、自信がない場合はロープウェーがある山もおすすめです。
大人が2~3時間で登りきれると思っても、子供はその1.5倍はかかります。そのため寄り道時間や30分に1回の途中休憩なども含め、時間に余裕のある登山計画を立てましょう。
当たり前ですが山は坂道。そのため平地で2時間歩くよりも大変なことは容易に想像がつくでしょう。子供ならばなおさらですので、30分に1回を目安に休憩を取る登山計画を立てることが大切です。
トイレの場所や山登り途中で休憩をとる場所があるかを調べておくことも大切です。子供の「疲れた~のどか湧いた~」の声に迅速に対応できるような山選びをしましょう。
2登山に必要な子供の体力づくりや体調管理
子供との登山の予定が決まったら、すぐに子供に体力をつける取り組みを日常生活の中で行っていきましょう。普段から登山に向けて子供と2時間かけて歩くようにしている保護者もいます。
子供の体力図作りも山登りの大切な準備の一環。幼稚園や保育園に自転車で通園している場合は、できるだけ徒歩通園にするのもおすすめです。
登山前に子供に体力をつける取り組みの事例
- 平地で一駅歩いてみる
- いつも自転車で出かける所を徒歩に変える
- アスレチック遊具のある公園に積極的に出かけるなど外遊びを増やす
3登山日前後の天候調査
「山の天気は変わりやすい」と聞いたことがある人も少なくないでしょう。普段私たちがTVで目にしているのは平地の天気予報。そのため、TVの天気予報では晴天でも、山は雨なんてこともあるのです。
山は平地よりも雨が降りやすく気温も低いですし、風も強くなりやすいです。大人であれば小雨の予報でも雨具で対応する登山者もいますが、子供連れの場合は体温が低下しやすいので避けた方が良いです。
特に注意が必要なのは強風、豪雨、濃霧、降雪です。最悪なケースに至る恐れが高いため日本気象協会が発表している「山の天気」やアプリなど、現地の気象予報チェックは欠かさないようにしましょう。
「tenki.jp 登山天気」
日本気象協会の登山に最適なお天気アプリ。ふもと、登山口、山頂の最低気温と最高気温、降水確率、落雷や紫外線情報、おすすめの服装などの登山に必要な情報が一目でわかります。雨雲の動きも確認できるので、急な雨にも早めに対応できます。
4道に迷った際の対応を親子で確認
遭難する登山者は、「道に迷ったかも」「この道で大丈夫かな?」と思うまで自分達が道に迷うまで想像すらしません。けれど万が一道に迷った際に対応を知っているか否かが、運命の分かれ道になることも。
次の2大鉄則だけは登山前に子供と一緒に親子で確認しておきましょう。
子供との登山で道に迷った際の2大鉄則
- 迷ったら引き返すか、見通しのよい場所に登る
- 迷ったときに沢に下りない
当たり前のことですが、迷ったと思ったら自分の感覚に任せず、まずは元の場所まで引き返しましょう。引き返せれば正しい道へまた戻ることができます。来た道が分からなくなってしまった場合は、見通しの良い場所に登ること。「多分このままで大丈夫」と過信するのは禁物です。
また沢に下りるつもりが無くても、人間の心理として下山を目指し、その結果沢に出てしまう人が少なくありません。沢は樹木がないため開けたように感じますが、そのまま進むと断崖絶壁に行き当たり落下する危険もありますので、「おかしいな」と感じた際はまず引き返しましょう。
子供との登山に必要な道具や服装は?登りやすさや体温管理に配慮しよう
登山靴、レインウエアー、ザック(リュック)は、山登りの3大装備と言われています。山登り用品店に行くと高価なウエアーや本格的な登山靴が多くありますが、初めて子供が登山をする際は、履きなれた滑らない靴や動きやすい服装を心がけましょう。気温によっては風を通さないジャンパーなどがあるとよいでしょう。
登山では体温調節のために服を脱ぎ着ができることが大切です。最初は肌寒く感じても徐々に体が温まり暑くなって汗をかくこともありますし、逆に最初は暑くても天候の急変などで肌寒くなることもあります。こまめな体温調節は体調管理やケガ予防にも繋がりますので、リユックには脱いだ上着や長袖ズボンを入れられるスペースを空けておくのが鉄則。
ちなみに300~500m級の山に登る幼稚園の登山遠足は、ゴム付きの帽子、半袖短パンの上に長袖の上下ジャージ、運動靴という服装に、リュックと水筒をぶら下げた出で立ちで行われることが多いです。
子供の登山におすすめの服装や必要な持ち物
- 半袖短パンの上に長袖長ズボン
- 肌着は速乾素材がおすすめ
- 靴底がしっかりしている履き慣れた運動靴
- 帽子はゴムひも付き
- 子供用の軍手
- 重過ぎず大きすぎない遠足リュック
- 汗拭きタオル
- 水筒とお弁当、おやつ
- レインコートかポンチョ
- 日焼け止め
- 虫除け
- 消毒液やバンソウコウなどの救急用品
- 軍手 など
基本的に身につけるものは、普段使い慣れている物で大丈夫。いきなり新しい登山靴を履いて出掛けても、靴擦れを起こしたら大変ですので使い勝手が最優先。リュックサックも園の遠足などで使っている子供が背負っても軽い物がおすすめです。
また大人も山を登る際は両手が空いていることが必須条件ですので、必要な持ち物はザック(リュック)に入れて背負っていきましょう。「子供と一緒に登る山は大人にとってはハードルの高い山ではないし大丈夫だろう」と軽んじないでください。
スマートフォンは大人の必需品です。スマートフォンは電波が届かなくても人工衛星を利用しているGPSは使えますが、今のスマホにはほとんどGPSがついていますので、登山用アプリと連動すれば山中でもGPSを使えます。備えあれば患いなし。
「ジオグラフィカ | 登山用GPS」
高度を音声で教えてくれ、歩いたルートも記録できる便利な登山用GPSアプリです。登山用GPSは高額なのですが、今のスマホは基本的にGPS機能がついていますので、このアプリを入れるだけで登山用GPSに早変わりします。
登る山によっては、子供用の軍手も意外と役に立ちます。そんなに激しい山は選ばないよと思うパパママも少なくないでしょうが、軍手をしておくことで子供が途中の山道で転んだ際に擦り傷を作ることを防げますので、暑過ぎたり子供が嫌がったりしなければ軍手をさせましょう。
水分はお腹に負担がかからないように少しずつ飲むようにしましょう。また小さなおにぎりや個包装のお菓子などを少し口に入れるのもエネルギー回復に有効です。
未就学の子供との登山におすすめの全国の山4選
全国には幼児とファミリー登山におすすめの山がたくさんあります。お住いの近くの山から挑戦もしくは旅行先で山デビューでもよいのでぜひ登ってみましょう。自然豊かな山に親子で癒されること間違いなしです。
北海道!函館山(標高334m)
ミシュラン観光ガイド三つ星を獲得した絶景の夜景を誇る函館山。一度は見たいと思われる人は少なくありません。
特に函館山のロープウェーは、3分ほどで頂上に到着できる人気のスポットですが、実は昼であれば徒歩で登ることもできます。
大人の足で寄り道しなければ40分ほどで登れ、近隣の幼稚園児は年中から登ります。登山の途中に日露戦争の要塞跡が見られますので、子供にとっても貴重な経験ができます。ただし頂上までトイレがないので注意が必要です。
子供の年齢に合わせ季節や時間を変えて訪れるのも楽しい山です。
東京!高尾山(標高 599m)
ミシュラン観光ガイド三つ星を獲得したことで大人気となっている高尾山。いくつかの登山コースがあり、何度訪れても新鮮味を感じることができます。お土産屋さんやお茶屋さんがあるので楽しみながらハイキング感覚で登山ができます。
またケーブルカーがあるので比較的簡単に山頂に到着できるのも、登山初心者親子には嬉しい山です。このケーブルカーの最高傾斜は31度で日本最高。最前列で見れば迫力満点で子供も喜ぶこと間違いなしです。
ただしシーズンによってはケーブルカーの下りは混みます。1時間待ちで整理券が配られていたとの話もありましたので、注意しましょう。
大阪・兵庫!妙見山(標高660m)
山頂には妙見大菩薩をお祀りしている能勢家ゆかりの寺院があり、参拝される方も多い山です。リフトやケーブルカーがあるので子供と楽しみながら登山することができます。特にリフトは初年度一人で乗れなかったのに次年度には一人で乗れるようになったため、子供の自信に繋がるとの声もあります。
また、リフトの近くにはシグナス森鉄道という森林鉄道風の小さなトロッコもあり、自然の中を走る姿に子供も喜びます。行きは歩いて山を登り帰りはリフトとケーブルカーを利用して下山すれば、山登り初心者の子供の負担も少なく山を堪能できます。
福岡!油山(標高597m)
6世紀に椿油を精製したことに由来して、「油山」という名前が付けられています。福島市内から車で30分の所にあり、牧場やアスレチック公園に併設されているので子供に楽しめる山です。
登山コースはABCの3つがあり、子供と登るならばスタート地点にアスレチックがあるBがおすすめです。2時間ぐらいで登れますが途中階段が続くため、体力不足の幼児だと辛いかもしれません。ただし秋は紅葉やどんぐり、松ぼっくりを拾うことができるので、子供が飽きることなく登れます。
子供連れでの登山は、家族に伝えてから出かけよう
登山は子供が達成感を得られるベストスポットの一つですので、ゴールデンウイークや夏休み、シルバーウイークを利用して出かけるご家族も多いのですが、子供と楽しめる山であっても登山日、入山、下山の時間を事前に家族に伝えて出かけましょう。
「初心者向けの山だから遭難のリスクは少ないから平気」と楽観的に考えるのは危険です。万一遭難した際は、家族が救助要請をしてくれるので早期発見に繋がります。
家族に伝えることは、もしもの時に備える保険となります。そのため子供と登山をする際は入山、下山の際に家族に連絡を入れることを徹底しましょう。