個性を育む!イタリアの幼稚園に関する記事

『イタリアの幼稚園11の特徴~個性や発想を尊重する幼児教育』

イタリアはモンテッソーリ教育法やレッジョ・エミリア・アプローチなど、世界的に有名な幼児教育法が生まれた国。近年日本の幼稚園選びでも注目されつつあります。そんな子供の個性や発想、自主性を尊重するイタリアの幼稚園の特徴とは?

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「やりたい」を尊重するイタリアの幼稚園!個を伸ばす11の特徴

イタリア人は小さな子供に鷹揚。「子供が泣くのは何か必要な時か、何か欲しい時だ」という言葉がイタリアにある通り、子供が泣いたりぐずったりするのは何かしら満たされない理由があってのことと考えます。

そして子供達はいつでも主役。周りの大人が盛り上げて、注目を浴びて育ちます。子供が何かしている時、大人がすぐに手を出したり口を挟んだり、とやかく言わず放っておいて様子を見るのです。

「イタリアほど子供が大切にされているところはない!?」と感じる筆者が、今回はイタリアの幼稚園の特徴イタリアの幼児教育についてご紹介します。

やる気を尊重!イタリアの幼稚園11の特徴

イタリアの幼稚園は、遊びを中心とした集団生活を行う中で「個性」を伸ばす教育をしていますまずは筆者の体験も併せてその特徴からご紹介しましょう。

異年齢児保育

1クラスの人数は18人~26人と決められていて、通常3歳~6歳までの子供が一緒に過ごす異年齢児保育を行っています。園では、合唱やダンスなど皆が一緒に同じことをする時間と、年齢ごとに子供達が別々のことをする時間があります。

また、幼稚園は午前中までの園と午後4時までの園との2種類ありますが、午後までの園は1クラスに先生2名が交代で当たっています。

新入生は徐々に慣らす

イタリアの幼稚園は9月に始まります。そして、入園したばかり頃は、同クラスの年上の子供達と同じ時間帯では活動しません。最初は1~2時間位、園での様子を見ながら徐々に活動時間を延ばしていきます。

給食がある園は、大体2ヶ月目以降から他の子供達と行動を共にします。

スキンシップが多い

泣いている子供がいれば、抱きしめたり抱っこしながらなだめます。なぜ泣いているのか、理由を訊かれて話すうちに自然と子供は泣きやみます。

また学校が終わって「さよなら」をする時は、先生にお別れのキス。シャイな子や小さい子は頬っぺを先生に向けてキスをしてもらうのを待っていたりします。

イタリアの幼稚園では、スキンシップを通して先生と生徒の「信頼関係」を築きます!言葉が分からない子供に対して、一番分かり易い愛情の伝え方です

褒めて育てる

イタリア人は褒めながら子育てをします。幼稚園でも、できなかったことができたり、上手く何かをできたりした場合は必ず褒めます。褒められることで子供は自分に自信を持ち、さらに好奇心を持って物事に取り組めるようになります。

大人に話すかのように話しかける

イタリアの幼稚園では先生が子供と話す際、あたかも大人と話すかのように話しかけます。子供を大人と対等に扱い、話しをよく聞いて会話することで、子供の言語能力の発達を促しています。

毎日のお絵描きで色彩感覚が身につく

イタリアではお絵描きが、毎日の幼稚園活動の中で重視されています。筆者の子供が通った幼稚園は、クラス内に大きなテーブルが3つか4つ置いてあり、学校に着いて点呼が終わると、下絵の付いた紙をもらってマジックペンなどで色塗りをしたり、自由に絵を描いたりしていました。

周囲にも感化されて、色使いがだんだん鮮やかになります。クリスマス前などは工作のために、貝にも色塗りしていました。

子供の「やりたい!」に対して寛容

イタリア人は、子供の自我を育てることを大切にしています。自我は子供が成長するための礎で、個性を育てるために必要だという考えからです。

筆者の子供が通った幼稚園では、おもちゃで遊ぶ時や外遊びをする時は子供同士が喧嘩をしても敢えて仲裁に入らず、泣いた場合だけ慰めていました。

基本的に、子供がやりたいことを好きなようにやらせます!子供が興味を持って取り組んでいることを見守ることで、子供の自主性が身についていきます

お昼寝の時間がある

筆者の娘達が通っていた幼稚園では、毎日1時間くらいのお昼寝の時間がありました。ほとんどの子供が、寝ていました。

眠たくない子には先生がお話を読んだり、フェルト布を渡してフェルト上に付いている印に沿ってびょうを差して絵を作ったり、全部打ち終わると絵ができ上がる遊びなどをしていました。子供達が皆、起きている場合は映画を見ていました。

誕生会がある

希望があればクラスの子供の誕生会を(時間内に)催してくれます。筆者の場合は、下の子が生まれた時に上の子が幼稚園児でしたが、クラスで先生がささやかなお祝いパーティーをしてくれました。

10文字を書くための練習を始める

具体的にアルファベットを教えることはしませんが、5歳になった子は午前中の1時間を使って、1cm×1cmの方眼ノートに、同じ大きさとサイズのクローバーやハート・ひし形・丸・木の芽の模様をいくつも書く練習をします。

あるいはABCの形を型抜きしてあるプラスチック製のステンシルプレートを使って、上から文字の部分をマジックペンでなぞったりして遊びます。

11個人面談は年1回

筆者の子が通っていたイタリアの公立の幼稚園では、毎年、学年末に先生との個人面談がありました。

幼稚園側で付けていた評価表を見せてくれましたが、特別なことは言われず、普段の子供の様子や取り組んでいることなどを教えてもらえました。

イタリアの幼稚園のガイドライン

世界に名だたるモンテッソーリ教育法や、今注目されるレッジョ・エミリア・アプローチなどの幼児教育法が生まれた国イタリア。こうした教育が生まれたのは、子供の個性を尊重し、忍耐強く子供と向き合う文化を持った国だからこそ。

イタリア教育大学研究省の示すガイドラインにも、幼稚園での教育とは自己認識を出発点とした子供の探求心や好奇心を尊重し、自分で行動を決められる子ども主体の教育方針や、周囲に対して自分から関わりをもつ社交性や協調性をもった子どもを育てることなどが記されています。

また、経験豊かな教員が3歳から6歳までの性格や生育過程の異なる子供達たちを迎え、次に示す教育目標を実現する
ために幼児期の子供の成長に適した環境作りをすることが掲げられています。

イタリアの幼稚園の教育目標

  • 子供と教師と保護者の教育コミュニティーの実現
  • 協同生活をするためのルールの共有
  • 子供それぞれの成長段階における好奇心を重視した子供主体の教育
  • クラスでの協調性

さらに教育目標を達成するために、実際の活動の基本方針は次の5つの分野において幼児教育の要望に応えることとし、情緒を育み、知ることへの関心と欲求を元に探索と学習への動機づけをすることを目指しています。

  1. 「自己と他者」の認識
    個性を育む
  2. 「身体と運動」
    身体の健やかな成長を促す
  3. 「会話と言葉」
    言語能力の育成
  4. 「色・音・絵」
    感受性・美的感覚・想像力の育成
  5. 「世界を広げる」
    協調性・社会性・思いやりを育てる

イタリアの幼稚園の待機児童問題

イタリアの公立幼稚園にかかる費用は無料。給食費のみ実費です。支払金額はそれぞれ家庭の所得によって異なります。イタリアでは幼稚園が義務教育ではないため、もし私立と公立で内容的に余り変わらないのであれば、イタリア人は、一般的に公立に入れたがります。

金銭的な理由もありますが、公立びいきみたいな所がイタリアにはあるからです。

そのためイタリアの幼稚園にも待機児童問題があり、午後まで開いている公立の幼稚園、特に保育園に入るのは難しいです。ですから日本の保育園待機児童問題と同様に、イタリアでも選考に漏れた場合は待機となります。

幼稚園への申請手続きや選考方法

仕事で来る日本人は、ミラノの日本人学校に幼稚部がないため、選択肢がインターか現地校になります。子供にイタリア語ではなくて英語を学ばせたいということで、私立のインターに入園させるケースが多いです。

一方イタリアの現地校に入れる場合は、私立を選んでも転勤の場合は補助金が出ます。ただしミラノに来た日本人が子供を私立のモンテッソーリに入れ、学費はともかくとしても給食費だけで子供2人分を合わせて月5~6万円位払ったというケースもありますので、イタリアの幼稚園への申請手続きや選考方法などを知っておくとよいでしょう

入園申請手続き

予め希望する幼稚園のオープンデーや学校説明会の開催日を調べておき、下見すると同時に申し込み方法について調べておきす。大抵、説明会は年明け1月に開かれますが、私立は11月に行うところもあります。

また、幼稚園も含めた公立学校と一部、私立学校への入学については、イタリア教育大学研究省のサイトへの登録が義務付けられています。2017年の場合、年明けの1月9日からホームページ上で入学希望者ログイン用パスワードの設定が可能になり、1月16日の8時から2月6日の20時までが入学希望校の(3校まで申請可)申請期間でした。

ただし、申請手続きの方法は自治体によって異なるので、市役所に確認するか、希望する幼稚園に予め問い合わせて確認する必要があります。

入園のための申請手続きの方法

  • ホームページからのみ申請可能
  • 市役所から申請書を受け取り申し込む
  • 居住地域の幼稚園を統括している学校の事務局に行って申請する

選考方法

公立幼稚園の場合は、点数制です。申請書に記入した家族状況に関する内容を点数化し、点数の高い順から入園が決まります。例えば、希望する幼稚園が居住区域内かどうか、核家族かどうか、共働きかどうか、兄弟姉妹の有無、同居している入園希望者の祖父母が働いているかどうかなど、ケースによって点数が細かく分類されています。

本人や親/兄弟に障害がある場合やシングルマザー(ファザー)などの場合は優先順位が上がります。尚、同点だった場合は誕生日で順位付けされます。

結果は5月頃に発表になります。万一選考に漏れた場合、希望する幼稚園に空きが出来れば、待機リストの順に入園可能です。年度半ばで入園するケースもあります。また、たとえ入園できなくても、翌年以降の選考に優位になることもあります。

イタリアの幼稚園入園体験談

筆者の子供の場合、9月に入園してしばらくは幼稚園に慣れずによく泣いていました。数ヶ月後にクリスマス合唱会があった時も、催しの後で教室で行われた小パーティーで大勢の保護者に怖がって泣いていました。

先生がすぐに気が付いて抱き上げて慰めてくれましたが、その時の様子から普段から娘にも気を配って下さっていたことが理解できました。

また子供のアート方面の素養が養われたのは、幼稚園時代のお絵描きと先生のお陰です。本人曰く、毎日幼稚園でのお絵描きが楽しく、褒めてもらえたり可愛がってもらえたのが良い思い出になっているそうです。

イタリアの幼稚園で感性を育んでもらえたことは、子供の生活に彩りと楽しみを添えることになりました。言葉の面でも幼稚園に入ってから、イタリア語を沢山覚えました。よい先生との出会いや幼児期という二度とない、かけがいのない時間を有意義に楽しく過ごせたことに感謝しています。

この記事を書いたライター

川島レア

イタリア人研究者と結婚後、イタリア生活早20年。現在、翻訳及び被服関係、バイリンガル教育活動中の2児の母です。