【左利きはいつわかる?】赤ちゃんの利き手が決まる時期と矯正のリスク、親ができること
「赤ちゃんの利き手はいつ決まるのだろう?」「左利きだったら右手に直さなくてはいけない?」と悩むパパやママ、祖父母は少なくありません。
実際、民族にかかわらず、人類の大半(約90%)は右利きであり、左利きの人は全体の10%程度であるため、ハサミやカメラ、多くの生活用品が右利き用に設計されています。
そのため、日常生活の不便さを心配し、乳幼児期に子供の利き手を右側に矯正しようとする風潮は、日本だけでなく世界にも存在していました。
この記事では、赤ちゃんの利き手が決まる正確な時期や、利き手矯正に関する最新の知見、そして親がどのように子供の個性を尊重して見守るべきかについて、詳しく解説します。
1.利き手はいつからわかる?固定されるのは4歳頃
パパやママにとって赤ちゃんの利き手が気になりだすのは、赤ちゃんがおもちゃなどにしきりに手を伸ばし始める生後6ヵ月~1歳を過ぎる頃が多いようです。しかし、この時期の動きだけで利き手を判断するのは早すぎます。
利き手が気になる生後6ヶ月~1歳頃は「両手使い」が理想
1歳前後の赤ちゃんの体の機能は、まだまだ発達途上にあります。この時期の赤ちゃんは、両手を一生懸命使う訓練をしている真っ最中です。実際には、利き手とは無関係に、右手の近くにあるものは右手で、左手の近くにあるものは左手でつかもうとしているケースの方が多く見られます。
乳幼児期は、左右の脳をバランスよく発達させるためにも、両手を使えることが理想的です。パパやママもあまり神経質にならずに、赤ちゃんの成長を見守ってあげましょう。
発達心理学が示す利き手の固定時期
子供の発達研究分野のパイオニアである、アメリカの発達心理学者アーノルド・ゲゼルは、子供の利き手について詳しく研究しました。
その結果、赤ちゃんは1歳ごろに両手が使えるようになり、2歳ごろになると左右どちらかの手を多く使うようになる傾向が見られますが、その後3歳ごろには再び両手をまんべんなく使う時期を経て、4歳ごろになってようやく利き手が固定される、ということが分かりました。
つまり、赤ちゃんの利き手は成長の過程で頻繁に変化するものであり、乳幼児期に左手を多く使っていても、それが将来の利き手になるとは限らないのです。無理に矯正しようとせず、ゆったりと構えて赤ちゃんと接してあげることが大切です。
「左利き」は「両手利き」と捉える現代の認識
実際には、文字を書くのは左手で、箸を使うのは右手であるなど、動作によって使う手が決まっている人や、同じ動作をどちらの手でもできる人も多くいます。本来の利き手とは異なる動作を訓練により習得している人が多いため、現代では「左利き」の人は「両手利き」の側面も持っていると捉えられています。
2.利き手は遺伝する?知能が高いって本当?
利き手と遺伝の関係性
残念ながら、利き手遺伝子なる決定的なものは特定されておらず、利き手と遺伝との関係についてはまだ科学的に完全に解明されていません。
しかし、最近の遺伝子学の調査では、両親が右利きの夫婦よりも、両親のどちらか、もしくは双方が左利きの家庭の子供には、統計的に左利きの子供が多く表れるという結果が出ており、何らかの関係がある可能性について研究が続けられています。
また、利き手の決定には、遺伝的な要因だけでなく、胎内での位置や環境的な要因も複雑に関与していると考えられています。
左利きと知能の高さに関する学説
「左利きには天才が多い」という言葉を耳にすることがありますが、利き手が知能の高さを左右するという科学的根拠は、今のところ解明されていません。
過去には「左利きの人の方が脳幹部の発達が大きい」「左右の脳の情報の連携が発達している」といった学説もありましたが、これらの学説は研究規模が小さかったり、結果が知能と直接的な関係性がないと否定されたりすることが多く、現時点では知能が高いと証明されていません。
左利きの人の中には、ミケランジェロやアインシュタインなど、歴史上の偉人が多く存在したという事実はありますが、これはあくまで「そうした傾向がある」という俗説に留まります。
3.乳幼児の利き手の見分け方と注意点
赤ちゃんの利き手を見分けるための明確で科学的な方法は確立されていませんが、以下の行動を参考に、焦らず4歳頃まで観察しましょう。
とっさの行動や好きな物への手の伸ばし方を観察する
赤ちゃんが4歳頃になったら、自分の興味のあるものや好きな物に自発的に手を出すときや、とっさの行動をよく観察し、子供の利き手を見分けてあげて下さい。
- 自分からおもちゃを取ろうと伸ばす手
- お菓子などの食べ物を受け取る時に伸ばす手
- 転びそうになったときなど、とっさに出す手
- 両手を使う動作で「持っている手」と「支えている手」の役割分担
お箸やクレヨンの持ち方は、周囲の様子から学習する傾向があるため、こればかりを利き手の判断基準にしないようにしましょう。頻繁に右手を使っているからといって、その子を右利きであると判断することはできないのです。
科学的根拠がない見分け方(参考程度に)
以下のような説は巷で言われることがありますが、科学的な根拠は薄いとされています。
- 胎児の指しゃぶり説:妊娠10~12週の胎児が頻繁に指しゃぶりをしている方の手が利き手になる確率が高いという説もありますが、再現性についてはまだ確証がありません。
- 寝るときの顔の向き説:生後3ヶ月未満の赤ちゃんが、眠るときの顔の向きで将来の利き手が予測できるという説もありますが、これも明確な根拠は示されていません。
- 指しゃぶりをする手:単純に指しゃぶりをする手が利き手とは限りません。赤ちゃんは時期によって両手の指を吸い分けたり、特定の指しか吸わなかったりするためです。
4.乳幼児の利き手矯正に無理は禁物!その影響とサポート方法
利き手矯正がもたらす深刻な影響
利き手は先天的に決まる側面が強いため、利き手そのものを変更することはできません。矯正とは、本来の利き手ではない方の手を訓練によって利き手と同様に使えるようにすることです。
しかし、この矯正に無理強いをすることで、赤ちゃんに多大なストレスを与えることが近年明らかになってきました。特に、無理やり左利きを右利きに矯正することは、子供の心身に深い傷を残すリスクがあります。
- 吃音・言語障害:利き手矯正によって、言語能力をつかさどる左脳に過度な負担がかかり、重度の吃音(どもり)や言語障害を引き起こす可能性があります。
- 心理的ストレスと自己肯定感の低下:うまく腕を動かせないストレスに加え、矯正を強いる親が激しく叱ることで、「自分はダメな子だ」と自己肯定感が損なわれることがあります。
- 人間関係の構築への影響:強い否定やストレスは、人間不信や引きこもりなど、後の社会性にも影響を及ぼす可能性があります。
利き手矯正よりも「両手使い」の促進を
最近は左利き用のハサミや包丁、お玉など、左利きの人にとって使いやすい道具も多く市販されており、左利きの人にとってのバリアフリー社会も進んでいます。
利き手の矯正は本人の望みではなく、親や周囲の過保護・過干渉となる可能性も理解し、決して無理な矯正は行わないことが重要です。むしろ、本来の利き手を尊重しながら、右手の機能も向上させる「両手使い」の能力を伸ばすことを優先しましょう。
右利きも左利きも、それは子供それぞれの個性です。どちらの手を利き手に選んでも、それは正常な発達なのだということを、親がきちんと理解し、子供の才能を開花させる手助けをすることが最も大切です。

