新生児模倣とは?共鳴動作との違いと赤ちゃんの模倣が育つ順番
生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ首もすわらず、寝ている時間がほとんどです。ところが顔を近づけて口を大きく開けてみせると、赤ちゃんも同じように口を開ける。舌を出すと、ゆっくり舌を出してくる。この不思議な現象が「新生児模倣(しんせいじもほう)」です。
初めて目にすると、思わず「今、まねした?」と声が出ます。もう一度やってみたくなって、何度も顔を近づけてしまう。そんな体験をした方も多いはずです。一方で、何度試しても反応がなく、うちの子はやらないのかなと感じた方もいるでしょう。
ここでは、新生児模倣がどういう現象なのか、よく似た言葉である共鳴動作との関係、うまく見られるための条件、そして新生児期を過ぎたあと、赤ちゃんのまねの力がどう育っていくのかまでを順に整理します。
新生児模倣とは?
新生児期の赤ちゃんが、目の前にいる人と同じ表情や動作をすることを新生児模倣といいます。「小さいのにすごい」と感じられる場面ですが、赤ちゃんが自分で「まねをしよう」と考えて行っているわけではありません。
この時期の赤ちゃんは、まだ体の筋肉を意図どおりに動かすことができません。新生児模倣は、目の前の動きという刺激に対して反射的に起こる反応だと考えられています。つまり、意図的な模倣ではなく、反射に近い性質のものだという点が最大の特徴です。
ここを押さえておくと、見え方が変わります。赤ちゃんが「上手にできた」「できなかった」という評価の対象ではなく、この時期にだけ現れる体のしくみを目撃している、という受け止め方になるからです。
共鳴動作との違いは?呼び名の整理
調べていると「共鳴動作」という言葉にも行き当たり、新生児模倣と何が違うのか迷う方が少なくありません。
結論から言えば、この2つは同じ現象を別の角度から呼んだ言葉です。相手の表情や動作に赤ちゃんがつられるように反応することから、共鳴という言葉が使われています。「模倣」はまねをするという行為の側から、「共鳴」はつられて響き合うという性質の側から、それぞれ名付けられていると考えると整理しやすくなります。
| 呼び名 | 着目している点 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 新生児模倣 | 大人と同じ動きが現れること | まねをしているように見える |
| 共鳴動作 | 刺激につられて反応すること | 意図ではなく引き出されている |
育児書によってどちらの用語を使うかが分かれるため、別々の現象だと誤解されがちです。違う現象を探す必要はありません。同じ場面を指していると理解しておけば十分です。
原始反射との関係
新生児期の赤ちゃんには、生まれつき備わっている反射がいくつもあります。大きな音に驚いて両手を広げるモロー反射、手のひらに触れたものを握る把握反射などが代表的です。これらをまとめて原始反射と呼びます。
新生児模倣は、こうした原始反射と同じように、意図せず現れる点が共通しています。ただし、モロー反射のように名前と手順がはっきり定まった検査項目とは扱いが異なり、赤ちゃんによって現れ方の差が大きい現象でもあります。反射のひとつに近い性質を持ちながら、条件によって出たり出なかったりする。この曖昧さが、そのまま次の項目につながります。
新生児期の赤ちゃんが反射的に行う動作には、新生児模倣のほかに、モロー反射などの原始反射や新生児微笑があります。
新生児微笑とは?
新生児微笑とは、生理的な現象として起こる、新生児に見られる笑顔のことです。感情とは関係なく自発的に起こります。さらに、生後2ヶ月から3ヶ月になると、顔の筋肉を上手に動かせるようになり、社会的微笑と呼ばれるあやし笑いを始めるようになります。
赤ちゃんはどんな模倣をするの?
赤ちゃんが反応しやすいのは、顔の中心で大きく動く、輪郭のはっきりした動きです。次の3つは特に試しやすい動作です。
目を細める、眉を上げるといった細かい表情は、この時期の赤ちゃんには見えにくく、反応も引き出しにくくなります。手を振る、指を折るといった顔以外の動きも同様です。口まわりの大きな動きに絞るのが、最初の一歩としては確実です。
やってみるときは、赤ちゃんからママやパパの顔がはっきり見えるように、顔を近づけて行うのがポイントになります。この距離の話が、次に説明する赤ちゃんの目の見え方と直結しています。
うまく引き出すための3つの条件
「何度やっても反応がない」という声の多くは、赤ちゃんの側ではなく、試している条件のほうに理由があります。距離、タイミング、速さ。この3つを整えるだけで、見える確率は大きく変わります。
条件1:顔の距離は20センチほど
新生児の視力は0.02程度といわれています。1メートル先のものがぼんやり識別できる程度で、目の前にあるものはなんとなく見えても、部屋の中の様子まではっきり見えている状態ではありません。
生まれたばかりの頃は色の違いも分かりにくく、モノトーンに近い見え方とされています。生後3ヶ月から4ヶ月になると徐々に色の違いが分かるようになり、生後4ヶ月を過ぎるころには視力が0.1程度まで上がってくるといわれています。
つまり、大人が普通に赤ちゃんをのぞき込む距離では、顔の動きはほとんど伝わっていません。20センチほどまで顔を近づけると、赤ちゃんの視界に顔全体がしっかり入ります。抱っこして向かい合わせるより、寝ている赤ちゃんの上から顔を下ろしていくほうが、距離を保ちやすくなります。
条件2:機嫌のよい静かな覚醒時をねらう
意外と見落とされがちなのが、赤ちゃんの状態です。新生児は一日の大半を眠って過ごし、起きていても、うとうとしている時間、泣いている時間、じっと目を開けて落ち着いている時間に分かれます。
反応が出やすいのは、この3つめ、目がしっかり開いていて泣いてもいない、静かに覚醒している時間帯です。授乳が終わって少し落ち着いたころ、おむつを替えた直後などが狙い目になります。泣いているとき、眠そうなとき、空腹のときにいくら顔を近づけても、赤ちゃんはそれどころではありません。
条件3:ゆっくり、繰り返す
大人はつい、素早く何度も舌を出したり引っ込めたりしてしまいます。しかしこの時期の赤ちゃんは、見たものを処理して体を動かすまでに時間がかかります。
口を開けたら、そのまま数秒キープする。いったん閉じて、また開ける。この間隔を、大人が焦れるくらいゆっくりにするのがコツです。反応が返ってくるまでに20秒から30秒かかることもあります。「反応がない」と判断するのが早すぎるケースは、かなり多いように思われます。
見られなかったときに考えたいこと
条件を整えて何度か試しても、まったく反応が返ってこないことがあります。「うちの子はやらなかった」と気にかかる方もいるでしょう。
ここで押さえておきたいのは、新生児模倣は現れ方に個人差が大きく、同じ赤ちゃんでも日によって出たり出なかったりするという点です。研究の場でも、条件を厳密に整えたうえで観察される現象であり、家庭で偶然のタイミングに出会えるかどうかは、かなり運の要素があります。
見られなかった主な要因として、次のようなものが考えられます。
| ありがちな状況 | 起きていること | 試せること |
|---|---|---|
| 顔を見てくれない | 距離が遠く、顔が視界に入っていない | 20センチまで近づける |
| 目は開いているが無反応 | うとうとした状態、または空腹 | 授乳後の落ち着いた時間に変える |
| すぐ目をそらす | 周囲が明るすぎる、音が多い | 照明を落とし、静かな場所で |
| 数回試して終わってしまう | 反応が返る前に切り上げている | 1回の動きを数秒キープする |
そして何より、見られなかったからといって困ることは何もありません。新生児模倣は、この時期にしか観察できない面白い現象ではありますが、見られたかどうかで日々の育児が変わるものではないからです。見られたらラッキー、くらいの気持ちで十分です。
赤ちゃんのまねの力は、このあと月齢を追うごとに、まったく別の形で豊かに育っていきます。新生児期に見られなくても、その後の遊びの中で「あ、まねしてる」と気づく場面は何度も訪れます。
動画に残したいときのコツ
短い期間しか見られない現象なので、動画に残しておきたいと考える方も多くいます。ただ、片手でスマートフォンを構えながら顔を20センチまで近づけるのは、実際にやってみると難しい姿勢です。
- 二人がかりで行う:一人が赤ちゃんに顔を近づけ、もう一人が横から撮影する。これが最も確実な方法です。
- スマートフォンは固定する:一人で行う場合は、クッションなどに立てかけて固定し、両手を自由にします。
- 明るさを確保する:暗い部屋では赤ちゃんの表情が映りません。ただし顔に直接照明を当てるのは避け、部屋全体を明るくします。
- 撮り続けて後から探す:反応が返るまで時間がかかるため、短く何度も撮るより、数分回しっぱなしにして後から見返すほうが残せます。
撮影に夢中になりすぎて、赤ちゃんが疲れてしまうこともあります。何度も繰り返すより、機嫌のよいタイミングに数分だけ、を何日か続けるほうが結果的に撮れます。
新生児模倣はいつまで?その後どう育っていく?
新生児模倣は、一般的に生後2ヶ月を過ぎると見られなくなるとされています。現れる期間がとても短いのは、この現象が反射に近い性質のものだからです。
そのかわり、生後3ヶ月くらいになると顔の筋肉の動かし方が身につき、表情そのものが豊かになります。ニコニコしてみせたり、声を出して笑ったりするようになる。目が合ったときに笑い返してくれる。反射としてのまねが消えていく代わりに、気持ちのやりとりとしての反応が始まる時期です。
赤ちゃんの模倣行動は、大きく次のような順番で発達していきます。
| 時期 | 見られる模倣 | 特徴 |
|---|---|---|
| 新生児期から生後2ヶ月ごろ | 新生児模倣(共鳴動作) | 反射的で意図を伴わない |
| 生後3ヶ月から5ヶ月ごろ | 表情や声のやりとり | 笑い返す、声を出して応える |
| 生後6ヶ月から9ヶ月ごろ | 動作をまねる遊びの始まり | 手を叩く、いないいないばあに反応する |
| 生後9ヶ月から1歳ごろ | 直接模倣が盛んになる | 目の前の行動をその場でまねる |
| 1歳半ごろから | 延滞模倣、ごっこ遊び | 時間を置いて思い出して再現する |
この流れを見ると、新生児模倣は「まねの発達の出発点」というより、まったく別の性質を持った独立した現象であることが分かります。ここが消えたあとに、あらためて意図的なまねが育ち始めるという二段構えになっています。
模倣遊びはいつから?月齢別のあそび方
まねを使った遊びが成立し始めるのは、おおむね生後6ヶ月ごろからです。それぞれの時期に合った遊び方を知っておくと、日々のかかわりがぐっと楽しくなります。
生後6ヶ月ごろから:動きの往復を楽しむ
おすわりが安定してくるころ、大人が手を叩くと、赤ちゃんも手を動かそうとする場面が出てきます。まだ正確にまねできるわけではありませんが、「大人が何かをする、自分も何かをする」という往復のリズムを楽しんでいる段階です。
この時期は、いないいないばあ、パチパチ、バイバイなど、動きが単純で繰り返しのあるものが向いています。うまくできなくても、赤ちゃんが手を動かしたら「できたね」と反応してあげると、やりとりそのものが遊びになります。
1歳前後:直接模倣が盛んになる
周囲の人がしている行動を見て、その場でまねることを直接模倣といいます。「ごはんを食べる」「おもちゃで遊ぶ」など、目の前で行われていることを手本として、生活の動作をひとつずつ身につけていく時期です。
掃除機をかけていると、そばに来て同じ動きをする。スマートフォンを耳に当てて何か話す。こうした場面が急に増えてきます。上にきょうだいがいる子は身近に手本が多いため、直接模倣の機会が自然と多くなります。
この時期に効くのは、まねしやすいように動きを分解して見せることです。積み木を積むなら、ひとつ持ち上げて、ゆっくり置く。手元が見えるように、赤ちゃんの正面ではなく隣に座ると、同じ向きから動きを見られるので取り込みやすくなります。
1歳半ごろから:延滞模倣とごっこ遊び
延滞模倣とは、一度見た動作や聞いた言葉を、時間を置いてから思い出して再現することです。一般的に生後9ヶ月頃から見られ始め、1歳半頃に盛んになるとされています。
電車を見た日の夕方に、積み木を並べて動かしてみせる。人形に向かって「もうねんねの時間よ」と、いつも言われている言葉をそのまま話す。大人の口癖が突然出てきて、驚かされることもあります。
これは、その場にないものを頭の中に思い浮かべる力が育ってきた証拠でもあります。ごっこ遊びに付き合うときは、正しさを訂正せず、その世界にそのまま乗るのがコツです。
| 場面 | つい言ってしまう言葉 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 積み木を電車にしている | それは電車じゃないよ | 次はどの駅にとまりますか |
| 人形にごはんをあげている | お人形は食べられないよ | おいしそう。おかわりはいる? |
| まねがうまくいかない | 違うよ、こうやるの | もう一回いっしょにやってみようか |
他にも知っておきたい!そのほかの新生児の特徴
新生児模倣のほかにも、この時期の赤ちゃんに見られる特徴がいくつかあります。どれも短い期間だけの現象なので、知っていると見逃さずにすみます。
情動伝染
情動伝染とは、感情が周囲の人に伝わっていく現象を指す心理学の用語です。赤ちゃんが集まっている場所で、一人が泣き出すと他の子もつられて泣き出す、あの状態のことをいいます。
赤ちゃんの情動伝染は生後数日で現れるといわれています。生まれて間もない時期は、自分と他人との区別がまだつきにくいため、隣の泣き声が自分のことのように響いてしまうと考えられています。
双子や三つ子を育てている家庭では、この場面に出会う機会が多くなります。二人ともすやすや眠っていたのに、一人が目を覚まして泣き出した途端、もう一人も泣き始める。夜中にこれが起きると大変ですが、月齢が進むにつれて落ち着いていく現象でもあります。
ギャラン反射
ギャラン反射は、赤ちゃんに生まれつき備わっている原始反射のひとつです。背中側を刺激すると、体を左右に傾けるような動きが起こることから、お尻をプリプリと振っているように見えるのが特徴です。
新生児期から見られ、生後4ヶ月から6ヶ月ごろまでに見られなくなるのが一般的とされています。乳幼児健診の場で確認されることのある反射のひとつで、家庭で試すものではありません。健診のときに見せてもらえることがあれば、そのタイミングで観察させてもらうとよいでしょう。
エントレイメント
エントレイメント(entrainment)とは、引っ張る、同調させるという意味の動詞から生まれた言葉で、大人と赤ちゃんがお互いの働きかけによってリズムを合わせ、影響し合うことをいいます。
たとえば、ゆっくり話しかけると赤ちゃんが手足をバタバタさせて反応する。その動きに合わせて声のテンポを変えると、また反応が返ってくる。会話にはまだ遠いのに、確かにやりとりが成立している感覚があります。
逆方向の作用もあります。赤ちゃんの泣き声を聞くと、こちらも自然と体が動いてしまう。抱き上げて揺れているうちに、大人の側の呼吸まで落ち着いてくる。影響し合う関係は最初から双方向で、大人が一方的に世話をしているわけではないという点は、覚えておくと少し気持ちが楽になります。
新生児模倣についてよくある質問
Q. 新生児模倣と共鳴動作は違うものですか。
同じ現象を指す言葉です。まねをしているように見えるという点に着目したのが新生児模倣、刺激につられて反応するという性質に着目したのが共鳴動作です。
Q. 何度試しても反応がありません。
顔の距離、赤ちゃんの機嫌、動かす速さの3つを見直してみてください。それでも見られないことは珍しくなく、日によって出たり出なかったりする現象です。
Q. いつごろまで見られますか。
一般的に生後2ヶ月を過ぎるころには見られなくなるとされています。そのあとは、笑い返すなどの表情のやりとりに移っていきます。
Q. 模倣遊びはいつから始められますか。
手を叩く、いないいないばあといった単純な遊びなら、生後6ヶ月ごろから反応が返ってくるようになります。まねの正確さは求めず、往復のリズムを楽しむところから始めてください。
Q. まねをするのが早い子は成長が早いのですか。
模倣の現れ方には大きな個人差があり、早い遅いで比べる意味はあまりありません。身近に手本が多い環境かどうかでも変わってきます。
短い時期だからこそ、見えたら儲けもの
新生児模倣は、生まれてすぐの数週間だけに現れる、少し不思議な現象です。意図してまねているわけではないと分かっていても、目の前で赤ちゃんが同じ形に口を動かすと、確かに何かが通じ合った気がします。
顔を20センチまで近づけて、機嫌のよい時間に、ゆっくり口を開ける。条件はこれだけです。試してみて反応があれば嬉しいですし、なければまた別の日に。見られなかったからといって、赤ちゃんとの関係が変わるわけではありません。
この時期が過ぎれば、笑い返してくれる日が来て、手を叩き合う日が来て、やがて大人の口癖をそっくりまねる日が来ます。まねの力は、これから何年もかけて育っていくものです。今日の数分を、その長い過程のいちばん最初の場面として楽しんでみてください。
