妊婦健診の費用はどれくらい?公費助成を受けるために
妊娠すると、ママの体には様々な変化が起きます。自分の体調は自分で何となく分かることができても、お腹の赤ちゃんが元気に成長しているかどうかを知ることは難しいことから、ママは定期的な産婦人科での検査が必要なのです。
そのような、妊婦さんの健康状態やお腹の赤ちゃんの発育状態を調べるために、自治体が行う検査のことを妊婦健康診査、略して「妊婦健診」といいます。
妊娠から出産にかけて何かと準備が必要なことから、なるべく妊娠中の出費は抑えたい妊婦さんは多いはず。そこで、妊婦健診でかかる費用や妊娠中に受けられる公費助成について解説していきます
妊婦健診の頻度と回数
妊婦健診は、母子保健法の第十三条で、市町村が妊婦に対して実施を定めているもので、市町村は妊婦が妊婦健診を受けることを推奨しなければなりません。(注1)
また、厚生労働省では、妊婦健診は1回目を妊娠8週頃とし、次のようなスケジュールで計14回くらい妊婦健診を受けるのがのぞましいとしています。(注2)
妊婦健診の主な内容
妊婦健診では、妊婦さんの健康状態を把握するための問診や保健指導のほか、体重・子宮底長・血圧・尿糖・尿たんぱくなどの検査計測が基本検査として行われます。
また、必要に応じて、血液検査(血算、血糖など)や超音波検査のような医学的検査が、期間内に一回行われます。
妊婦健診にかかる費用は?
妊娠は病気ではないため、基本的に妊婦健診は健康保険の適用外となります。とはいえ、すべて自費で妊婦健診を受けるとかなりの費用がかかることから、経済的な負担を軽減するために健診費用には、公費による補助制度があるのです。
一般的に、妊婦検査を自費で受けた場合、一回あたりの基本検査は5000円、そのほかの検査に1万~1万5千円ほどかかることから、14回受けると10~15万円は必要になります。
それに対して、市町村から母子手帳と一緒に交付される妊婦健診の受診券(助成券)は、14枚つづりで5000円が上限とされているのが一般的です。
そのため、妊婦健診の自己負担額は、5~10万円は見積もっておくといいでしょう。
知らないと損をする健康保険の給付金
妊娠や出産費用に対して、健康保険や国民健康保険から支給される給付金があるのをご存知ですか?制度を使用しないとせっかくの給付金がもらえないことから、手続き方法などについて知っておくことが大切です。
出産手当金
出産の前後は、仕事をすることができないため、収入はなくなってしまうことから、経済的な不安を解消するために支払われる給付金が「出産手当金」です。(注3)
出産手当金の支給は、社会保険に加入している被保険者が対象となって、出産前の42日(双子の場合98日)前から、出産の翌日以後56日までに会社を休んだ期間が支給対象となります。
出産手当金として支給される1日あたりの金額は、次のような計算式で求められます。
(支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額の平均額)÷30日×2/3
出産手当金の手続きを行う際は、出産後に医療機関で出産の証明をもらう必要があることから、出産前に申請書を入手し、出産後に必要事項を記入してお勤めの会社の窓口に提出します。
出産育児一時金・家族出産育児一時金
出産には高額な費用がかかることから、経済的な負担を軽減するために、健康保険や国民健康保険、共済組合などから、一人の出産につき、被保険者には出産育児一時金として42万円が支給されます。(注4)
また、被扶養者も同様に、家族出産育児一時金が支給対象です。出産育児一時金を受けるためには、支払方法によって次のような2つの制度があります。
直接支払制度
直接支払い制度とは、保険者から医療機関に出産育児一時金を直接支払う制度です。申請から支払いまでの手順は次の通りです。
- 直接支払制度の申込みを行う
~出産~ - 明細書が交付される
- 費用の請求を行う
- 出産育児一時金の支払い
- (出産費用が42万円未満だった場合)差額の請求
- 差額の支払い
※出産費用が42万円以上の場合は、医療機関の窓口で不足分を支払う必要があります。
また、直接支払制度の利用しない場合は、退院時に出産費用を直接支払った後で、必要な書類に領収書や明細書を添付して直接、出産育児一時金の支給の申請を行う必要があります。
受取代理制度
直接支払い制度を導入していない小規模な医療機関で出産する場合、出産する被保険者の代わりに医療機関が出産育児一時金を受け取るのが受取代理制度です。
受取代理制度は、制度を利用可能な医療機関で2ヶ月以内に出産予定の妊婦さんに限られています。申請から支払いまでの手順は次の通りです。
- 受取代理申請書を作成する
- 受取代理申請書を提出する
- 受取代理申請書受付通知書を受け取る
~出産~ - 費用請求報告書などの書類を送付する
- 出産育児一時金の支払い
- (出産費用が42万円未満だった場合)差額の支払い
※出産費用が42万円以上の場合は、医療機関に不足分を支払う必要があります。
知っておきたい医療費控除
医療費控除とは、所得税の申告を行う本人や配偶者などに1年間に10万円以上の医療費がかかった場合、一定金額が所得から控除されることをいいます。
医療費控除の対象は、妊娠と診断されてからの定期健診や検査などの費用、通院費用などです。(注5)
医療費控除を受けるためには、1月1日から12月31日までの1年間にかかった医療費についての控除額を確定申告書に記入して、翌年の確定申告期間に最寄りの税務署に提出しなければなりません。
控除される金額は次のような計算式で求められます。(注6)
(1年間で支払った医療費の合計)-(出産育児一時金などの保健で補填される金額)-10万円
※総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等5%の金額を差し引く
里帰り出産する場合の妊婦健診は?
妊婦健診の受診券(助成券)は各市町村が発行していることから、里帰り出産のために別の市町村で妊婦健診を受ける場合、そのまま使うことができませんが、東京都などの一部の地域では、別の市町村で妊婦健診の費用を自腹で支払った場合に、一定額を助成する制度があります。
また、里帰り出産のために住民票を移した際、お住まいの地域でもらった受診券を、里帰りした市町村で交換してもらうことができる場合があるので、住民票を移す際に確認しておく必要があります。
使わずに余った受診券は、市町村でそのまま現金として返金されるケースは少ないようですが、自治体や病院によって対応が異なることから、念のため確認してみるといいでしょう。
参考文献