厄年の出産にまつわる言い伝えを正しく知ろう
「厄年に出産すると厄が落とせる」「親の厄が赤ちゃんに移る」など、厄年の出産にはさまざまな言い伝えがあります。妊娠中に見聞きすると、うれしい話ならよいものの、不安をあおる話だとつい気になってしまいますよね。
ここではまず、厄年とはそもそも何なのか、いつなのかという基礎知識をていねいに整理し、そのうえで出産にまつわる言い伝えの由来や、気持ちよく出産の日を迎えるための考え方を紹介します。読み終える頃には、「なんとなく怖い」から「なるほど、こういうことか」に変わっているはずです。
厄年とは?意味と男女の年齢
厄年とは、人生の節目・転換期にあたるとされ、昔から忌み慎んで過ごすのがよいとされてきた年のことです。平安時代にはすでにあった風習といわれますが、なぜその年齢なのか、由来には諸説あり、はっきりとは分かっていません。
よく語られるのが「語呂合わせ」の説です。たとえば男性の42歳は「死に(しに)」、女性の33歳は「散々(さんざん)」、19歳は「重苦(じゅうく)」に音が通じることから、区切りとして意識されるようになった、という説明を耳にしたことがある人もいるでしょう。あくまで言い伝え上の解釈のひとつですが、昔の人が言葉の縁起を大切にしていたことがうかがえます。
また、厄年には「悪い厄」だけでなく「良い厄」も巡るともいわれます。節目を意識して丁寧に過ごす区切りとして、古くから神社やお寺で厄除け祈願をする人が多くいます。本厄の年齢として一般的に知られているのは、次のとおりです。特に「大厄」は意識されることが多い年とされています。
| 区分 | 男性(数え年) | 女性(数え年) |
|---|---|---|
| 本厄 | 25歳・42歳・61歳 | 19歳・33歳・37歳 |
| 大厄 | 42歳 | 33歳 |
ただし厄年の年齢や数え方は神社・お寺によって違いがあります。満年齢で数えるところ、女性の数え61歳も厄年とするところ、幼児の厄年(四つ子参りなど)があるところなどさまざまなので、お参り先で事前に確認すると安心です。
前厄・本厄・後厄の違い
厄年は「本厄」の1年だけを指すのではなく、その前後を含めて3年間を意識するのが一般的です。それぞれの位置づけは次のように語られます。
| 区分 | 意味合い(言い伝え上) |
|---|---|
| 前厄 | 厄年に向かう入り口の年。少しずつ身の回りを整え始める時期とされる |
| 本厄 | 厄の中心とされる年。厄除け祈願を受ける人が最も多い |
| 後厄 | 厄が薄れていく年。油断せず、締めくくりとして過ごすとされる |
とはいえ、これらはすべて縁起の考え方であって、「必ず前厄から祈願しなければならない」という決まりはありません。気になる年に一度お参りする人もいれば、本厄だけ受ける人もいます。自分や家族が納得できる形で区切りをつけられれば、それでじゅうぶんです。
自分の厄年の調べ方(数え年の考え方)
厄年は多くの場合「数え年」で数えます。数え年は、生まれた日を1歳とし、初めて迎える正月(1月1日)で2歳になる数え方です。満年齢とずれるため、「自分は今、数えで何歳?」と迷いやすいところです。
ざっくり計算するなら、その年の誕生日を迎える前は満年齢+2歳、誕生日を迎えた後は満年齢+1歳と覚えておくと分かりやすいでしょう。たとえば満32歳で、その年の誕生日をまだ迎えていなければ数え34歳、誕生日を迎えていれば数え33歳、という具合です。数え33歳にあたる年が、女性の大厄の目安になります。
正確な該当年は、神社・お寺が用意している「厄年早見表」でも確認できます。生まれ年(西暦)を基準に見ると、和暦が変わっても迷わずに済みます。妊娠・出産の年と重なるかどうか、パートナーの厄年もあわせて一度確認しておくと、家族で予定を立てやすくなります。
厄年の出産にまつわる言い伝えと風習
厄年の出産については、「厄落としになる」という前向きな言い伝えもあれば、「控えた方がよい」という言い伝えもあり、地域によって考え方はさまざまです。ここでは代表的な言い伝えと、その背景にある風習を、民俗の視点から見ていきましょう。
「出産は厄落とし」という言い伝えは地域でさまざま
一般的には「出産が厄落としになる」「厄を落として良いことが起こる」と語られることが多い一方、古い言い伝えには「男の子を産むと厄払いになる」「親の厄が子に移る」といったものもあります。同じ厄年の出産でも、地域によって受け止め方が正反対になることもあり、それだけ人々が「新しい命」を特別なものとして大切に扱ってきた表れだといえます。
ただし、これらはあくまで昔からの言い伝えで、出産が厄を落とすことや、親の厄が赤ちゃんに移ることに科学的な根拠はありません。赤ちゃんの体調と厄年は関係がないので、「厄年に産んだせいかも」と自分を責める必要はまったくありません。もし身近な人から気になる言い伝えを聞いても、「昔の人が家族の健やかさを願って生まれた考え方なんだな」と受け止め、事実として抱え込みすぎないことが大切です。言い伝えは、赤ちゃんの誕生を祝う気持ちの表れとして、気楽に眺めるくらいがちょうどよいでしょう。
徳川吉宗にまつわる「拾い親」の逸話
厄年の出産にまつわる言い伝えは江戸時代にも見られ、徳川吉宗にまつわる「拾い親」の逸話が知られています。当時は親の厄年に生まれた子は縁起が良くないとする迷信があり、いったん形式的に神社の神主に「拾い親」になってもらい、家老の加納五郎左衛門のもとに預けたと伝えられています。
これは本当に子を手放したわけではなく、「神様からの授かりもの」として改めて迎え直すという、縁起直しの意味を込めた所作でした。身分の高い家でもこうした風習が行われていたことを示す逸話として語り継がれており、当時の人々がいかに子の無事を願っていたかが伝わってきます。
各地に伝わる「拾い親(仮親)」の風習
「拾い親」は、血のつながりとは別に、儀礼的な親子の縁を結ぶ「仮親(かりおや)」の一種です。日本の民俗には、次のようにさまざまな仮親の形が伝わっています。
| 仮親の例 | 役割(言い伝え・民俗上) |
|---|---|
| 取り上げ親 | 出産に立ち会い、赤ちゃんを最初に抱き上げる役 |
| 名付け親 | 赤ちゃんの名前をつけ、その後も成長を見守る役 |
| 拾い親 | 縁起を気にする年に生まれた子を、形式的に迎え直す役 |
厄年など縁起を気にする年に生まれた子を、いったん形式的に別の縁に託し、あらためて迎え直すことには、子の健やかな成長を願い、多くの大人の縁で見守っていくという願いが込められていました。海外にも、名付け親(ゴッドペアレント)が子の成長を見守る文化があります。日本の仮親も、子を地域みんなで大切にしようとする温かい風習だったといえるでしょう。
拾い親が名付け親を兼ね、その縁が生涯続くこともありました。地域によっては男女で作法が違ったとも伝えられていますが、いずれも所作の細部より「子の幸せを願う」という気持ちが中心にあります。なお、こうした風習は主に昔の暮らしの中のもので、現在はほとんど行われていません。今は無理に再現しようとせず、赤ちゃんから目を離さないことが第一です。気持ちの区切りをつけたいときは、次に紹介する神社・お寺での厄除け祈願がおすすめです。
厄年と安産祈願・戌の日の関係
妊娠中は、妊娠5か月頃の「戌の日」に安産祈願をする風習があります。厄年と妊娠が重なった場合、安産祈願と厄除け祈願をまとめて受けられる神社・お寺も多く、体への負担を減らすうえでも一度の参拝で済ませられるのは便利です。
「厄年だから戌の日は避けた方がいい?」と気にする必要はありません。戌の日と厄除けはそれぞれ別の願いごとなので、両方を同じ日にお願いしても差し支えないとされています。予約時や受付で「安産祈願と厄除けを一緒にお願いしたい」と伝えれば、対応してもらえるか教えてもらえます。
厄年を気にしすぎず、心穏やかに出産を迎えるために
厄年は「気の持ちよう」の面も大きいものです。気にしすぎて「悪いことが起きたらどうしよう」と不安をふくらませ、ストレスになってしまっては本末転倒。「節目だから生活を整えよう」という前向きなきっかけとして受け止めるのがおすすめです。ここでは、実際に区切りをつけたい人に向けて、祈願の流れや過ごし方のヒントを紹介します。
神社・お寺で厄除け祈願をする場合
厄落としとして最も一般的なのが、神社やお寺での厄除け祈願です。祈願を希望する場合は、次の点を事前に確認しておくとスムーズです。
| 確認しておきたいこと | ポイント |
|---|---|
| 受付時間・予約の要否 | 体調に不安があるときは、予約や空いている時間帯だと安心 |
| 初穂料(祈祷料)の目安 | 金額はさまざま。公式サイトや電話で確認を |
| 厄年の数え方 | 神社・お寺によって年齢や数え方が異なる場合がある |
| 参拝時の負担 | 階段や待ち時間など、妊婦さんの体調に無理のない範囲で |
厄除け祈願の一般的な流れと初穂料
初めてだと、当日の流れや持ち物に迷うものです。一般的には、次のような流れで進みます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 受付・記帳 | 社務所や受付で申込用紙に住所・氏名などを記入し、初穂料を納める |
| 2. 待機 | 順番を待つ。妊娠中は座って待てる場所を確認しておくと安心 |
| 3. ご祈祷 | 本殿・本堂でお祓いや読経を受ける。所要時間は15〜30分ほどが目安 |
| 4. 授与品を受け取る | お札やお守りなどをいただく。持ち帰り後は目線より高い清潔な場所に |
初穂料を包む場合、のし袋の表書きは神社なら「御初穂料」または「初穂料」、お寺なら「御祈祷料」「御布施」とし、水引は紅白の蝶結びが一般的です。服装は、フォーマルすぎなくてもかまいませんが、露出の少ない落ち着いた装いだと安心。妊娠中は締めつけの少ない服や、脱ぎ履きしやすい靴を選ぶとよいでしょう。
また、無事に一年を過ごせたら、または出産を終えて体調が落ち着いたら、「お礼参り(御礼参り)」として同じ神社・お寺にお参りし、いただいたお札やお守りを納めるのが習わしです。真夏や真冬は無理をせず、お宮参りやお食い初めの時期にあわせて行くのもおすすめです。
暮らしの中でできる気分の切り替え
昔から、厄落としには神社での祈願のほか、人を招いてごちそうを振る舞う習わしなどもありました。家庭でできる、ちょっとした気分の切り替えとしては、次のようなものが知られています。
暮らしの中の厄落とし・気分転換の例
- 肩や体に粗塩を軽く振る、玄関に盛り塩をする
- 入浴後は浴室の水気を拭いて乾かし、清潔に保つ
- シーツや枕カバーをこまめに洗濯する
- キッチンや水まわりを清潔に整える
- 身の回りを片づけて、気持ちよく過ごせる空間をつくる
いずれも縁起かつぎや気分転換の範囲のものです。義務ではないので、無理のない範囲で、できることだけ取り入れれば十分。
厄年の過ごし方の心構え
厄年の過ごし方には、「新しいことは控えめに」という説と、「節目こそ良い区切り」という説の両方があります。結婚・引っ越し・出産などのライフイベントが厄年と重なる人は少なくありませんが、厄年だからと大切な予定を我慢する必要はありません。「時期を選べるなら落ち着いて」「重なっても気に病みすぎない」くらいの、ゆるやかな心構えでよいでしょう。
大切なのは、節目を「生活を見直すきっかけ」に変えること。睡眠・食事・休息を整え、心配ごとは早めに人に相談する——こうした当たり前の習慣こそ、心身を穏やかに保ついちばんの土台になります。
不安が強いときは一人で抱え込まないで
妊娠中や産後は、体の変化やホルモンの影響もあり、気持ちが揺れやすい時期です。厄年のことが頭を離れず不安が続く、眠れない、気分の落ち込みが続くといったときは、一人で抱え込まず、かかりつけの産婦人科や、お住まいの地域の保健センター・母子保健の相談窓口に相談してみてください。話すだけでも気持ちが軽くなることがあります。
無事に出産したあとも、つい油断して無理をしてしまいがちです。厄年うんぬんに関わらず、産後はしっかり体を休め、周りに頼りながら過ごしましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 厄年に出産すると赤ちゃんに悪い影響がある?
言い伝えはさまざまありますが、厄年と赤ちゃんの健康に医学的・科学的な関係はありません。赤ちゃんの体調を厄年と結びつけて心配しすぎる必要はありません。
Q. 厄年の出産は厄払いになるって本当?
「厄落としになる」というのは地域に伝わる言い伝えのひとつです。根拠があるわけではないので、気になる場合は神社・お寺で厄除け祈願を受けるかどうかを、ご自身の気持ちで決めて大丈夫です。
Q. 厄年だから厄払いは必ず必要?
必須ではありません。「厄払いをして安心したい」なら受ければよいですし、「気にしない」という考え方もあります。地域や家庭の考え方も尊重しつつ、無理のない選択をしましょう。
Q. 前厄・後厄も祈願した方がいい?
決まりはありません。3年間続けて受ける人もいれば、本厄だけの人もいます。ご自身が納得できる形で区切りをつけられれば十分です。
Q. 夫婦で厄年が重なったら?
一緒に厄除け祈願を受けることもできます。夫婦や家族で予定を合わせ、体調に無理のない日を選んでお参りするとよいでしょう。
Q. 安産祈願(戌の日)と厄除けは一緒にできる?
両方に対応している神社・お寺なら、まとめてお願いできることが多いです。予約時や受付で希望を伝えて確認してみましょう。



