離婚の養育費の相場と養育費が支払われる期間
全ての子供は両親に守られて成長して行きます。ですが、事情により離婚する場合は、両親が協力して子供を守ることができませんので、どちらかの親が「親権」を行使する「親権者」となり、他方の親から養育費を受け取ることができます。
離婚後は子供を引き取り育てていく側にとっては、一般的に養育費としてどの程度の金額が受け取れるものなのか、離婚の際の養育費の相場は気になりますよね。養育費は子供の権利でもありますので、その相場と算定方法を知っておくことは大切です。
養育費を考えるためには、この「親権」について理解を深めておく必要があります。親権とはどのような権利なのか、また親権を分担することがあるのかについてもチェックしていきましょう。
親権とは…「財産管理権」と「身上監護権」
親権とは、未成年の子供を養育して監護する義務・権利のことを言います。大きく分けると、子供の法的行為について同意する権利や子供の財産を管理する権利である「財産管理権」と、子供の行為への親としての同意権や子供の居所を管理する権利・子供の教育やしつけを行う権利・子供の職業を許可する権利である「身上監護権(=監護権とも言う)」の2つに分けることができます。
通常、親権と言うと「財産管理権」と「身上監護権」をどちらも包括して指しますので、子供を持つ夫婦が離婚する場合には、原則的にはどちらか一方の親が財産管理権と監護権の両方を持つことになります。ですが、時間的に子供の世話を行えない方の親が親権を持った場合には、例外的に他方の親が監護権だけを行使するように定められるようなケースもあります。
養育費の用途と算定方法とその相場
養育費は、子供に最低限の生活を保障するために支払うのではなく、養育費を支払う側と同程度の生活レベルを維持するために支払われるものです。ですから、養育費を支払う側の給与や資産状況によって、金額が大きく変わってきます。
通常の場合は、離婚協議や離婚調停において話し合いで金額を決定します。どうしても金額が折り合わない場合は、離婚裁判や離婚訴訟で裁判官に決定権をゆだねることができます。この場合は、東京と大阪の裁判官が共同研究によって定めた「養育費算定表」に基づいて決められることが多いです。
養育費算定表の見方
養育費算定表は、裁判所のホームページ(東京家庭裁判所)において誰でも閲覧することができます。縦軸は養育費義務者(養育費を支払う側)の年収、横軸は親権保持者(養育費を受け取る側)の年収になっており、軸の外側の数字は会社に勤めている場合の年収、内側の数字は自営の場合の年収を示しています。縦軸と横軸のそれぞれの数字が交わる点に表示されている金額(例:8万円~10万円のように、一定の幅がある)が、妥当な養育費の額とみなされます。
この養育費算定表は、子供の人数と年齢によって9つのパターンに分かれています。養育費は子供が未成年の間だけ支給されますので、この場合の子供とは、未成年の子供のみを指します。それぞれのパターンを紹介します。
養育費算定表の種類
- 子どもが1人で、年齢が義務教育終了前である0歳~14歳のとき
- 子どもが1人で、義務教育を終了した15歳~19歳のとき
- 子どもが2人で、2人とも0歳~14歳のとき
- 子どもが2人で、1人は0歳~14歳、1人は15歳~19歳のとき
- 子どもが2人で、2人とも15歳~19歳のとき
- 子どもが3人で、3人とも0歳~14歳のとき
- 子どもが3人で、2人は0歳~14歳、1人は15歳~19歳のとき
- 子どもが3人で、1人は0歳~14歳、2人は15歳~19歳のとき
- 子どもが3人で、3人とも15歳~19歳のとき
未成年の子供が4人以上いるときは、これらの表を応用して算定されます。20歳以上の子供がいる場合や、子供が20歳以上になった場合は養育費の対象から外れます。
具体的にはどのくらいの額がいつまで支払われるのか
では、具体的なケースから、養育費を求める方法を見ていきましょう。まず子どもが2人いて、親権が母親と指定された場合で考えていきましょう。養育費を支払う側の父親(会社員)の源泉徴収票上の年収が720万円、養育費を受け取る側の母親の年収が200万円、子供が8歳と12歳とします。
このケースでは、子供の年齢がどちらも14歳以下ですので、養育費算定表の“3”を参考にします。縦軸を720万、横軸を200万として、交わるところをみると「8万円~10万円」と記されていますので、標準的な養育費は8万円~10万円だと言えます。協議の結果、この幅に入る養育費が決められることになるのです。
養育費はいつまで支払われる?
親は、子供が20歳になるまでは子供を扶養する義務があります。養育費もそういった子供の権利であるため、養育費を支払う側は子供が20歳になるまでは支払い続ける義務があると言えます。
これは、受け取る側の親が再婚したときも同じ。子供が再婚相手の養子となっても実の親子関係が消滅するようなことはないので、その額を減らすことはあっても基本的には再婚後も養育費を支払い続ける必要があります。
養育費算定表の金額では足りない場合
裁判になると、この養育費算定表に基づいた額に決まってしまうケースが多いです。ですが、それでは不足すると考えられる場合は、どのような事情を訴えることができるでしょうか。
私学に通っている場合、もしくは今後私学に通わせる場合
この算定表は、公立教育にかかる費用を元に作られています。すでに私学に通っている場合や、今後私学に通わせることを養育費支払い側が納得している場合、養育費支払い側の学歴や資産状況から子供を私学に通わせるのは妥当と判断させる場合は、その旨を訴えることで算定表以上の養育費を請求することもできます。
他にも、個々のケースで異なることも・・・
他にも、ケースによって養育費が算定表以上に請求できることがあります。足りなくなるのではと考える場合には、離婚を専門に取り扱う弁護士などに相談してみるようにしましょう。