フランスの育児スタンスは、完璧な母親はいないから私が一番良い母親
「私が一番良い母親よ」— 日本人のママには、なかなかそんな自信を持つことはできません。
ところが、女性の社会進出が進むフランスのママたちは全く逆の考え方を持っています。彼女たちは、自分たちが一番良い母親だと言い切る傾向にあります。
フランスのママはさぞかし子どもに尽くしていると思われるかもしれません。しかし、フランスは、産後の早期復職や公的保育の充実といった社会的な背景から、母乳育児率が先進国中最も低い水準にあると言われています。多くのママが産後3ヶ月までにはミルク育児に切り替え、早期に仕事に復帰するケースが非常に多いのです。
子どもと離れていても、「良い母親だ」と言い切れる自信。フランスのママが育児に自信を持つ秘密は、女性が育児と仕事を両立させやすいように整えられた育児支援体制にあります。
女性がいつまでも女性として輝くために、フランス人ママ流の子育てのコツにアプローチしていきましょう。
日本とここが違う!フランス人ママ流子育てのコツ5つ
育児支援体制がフランスのように整っていない日本ですが、ママやパパの意識を変えることでフランスの育児環境に少し近づけることはできます。まずはフランス人ママの育児のコツを知って、「羨ましいけど私にもできるかも」と思うことから参考にしてみましょう。
1 自分に自信を持つ
フランスのママたちが育児の上で重視するのは、自分自身を信じることです。無駄に育児書を買いあさることはないのだそうです。
フランス人の母親の育児スローガンは、「完璧な母親はいない」。多少間違っても、命に関わる危険がなければ許容範囲と考えるおおらかな気持ちで自信をもって子どもと接すると、子どもにやさしくなれます。
初めて子どもを持った時、あなたはどうやって子育てを学びましたか?育児書を読みあさったり、インターネットで情報を検索したりした人が多いと思います。自分や夫の母親の育児論を長々と聞く、なんて人もいるでしょう。
情報化社会の昨今では、さまざまな情報が入り乱れ、必要な情報を選び取るのが一苦労です。正しいと思っていたことが、別の本ではしてはいけないと書かれていて、一体どちらが正しいのかと悩むことも少なくないと思います。
何を選び取っていいのかさえ分からない情報の多さが、日本人ママの育児の不安をあおる一因だともいえるでしょう。
母親が育児に不安を感じると…
- 母親が過保護になり、子どもの自由と自立心を奪う傾向がある
- 母親の情緒が不安定になる。
- 不安やストレスが重なることで、育児ストレスやノイローゼのリスクを高める一因となる
2 いつまでも女性であり続ける
フランス人の子育て術で一番大事なことは、子どもを産んでも「個人としての女性であり続ける」ことです。彼女たちは、夫に自分を「ママ」とは呼ばせません。自分の名前を呼ばれることで、女性は自分自身を確立させ、自立することができます。
もちろん、女性であるための努力として、オシャレやマナーにも気を使います。夫のパートナーとしての自分を大事にする彼女たちにとって、子どもをベビーシッターに預けて夫婦でデートすることは当然です。小さな赤ちゃんから離れることに、罪悪感を感じることはないそうです。
またフランスでは0歳の時から夫婦と子どもは別室で就寝するのが一般的です。「親子は川の字で寝るもの」という日本の習慣とはかけ離れていますが、0歳児の時からママが必要以上に子どもの世話を焼かないことは、子どもの自立心を養うために効果的だといわれています。
このようにフランス人親子は生まれた時から自立を促されているため、成長し家庭を持った子どもと同居する祖父母はほとんどなく、親子の過度な依存や嫁姑問題などの家族間の摩擦を避けられる傾向にあります。
一方、日本人の家庭では、夫が妻を「お母さん」、「ママ」と呼ぶことが多いです。夫婦喧嘩のネタになることも少なくありません。日本において子どもを産んだ女性は「母親」として見られ、「男性のパートナーである女性」としての意識が薄れていってしまうことがあるのです。
女性が女性であることを忘れると…
- オシャレに気を使わなくなる
- 女性らしい行動がなくなり、物事が雑になる
- 早く老け込む
- 自分に自信が持てなくなる
3 赤ちゃんが泣いてもビクビクしない
フランスのママのすごいところは、赤ちゃんが泣いてもビクビクしないことです。赤ちゃんの要求にすぐに応じず、自律性を育むため、泣いても簡単に抱っこはしません。夜泣きをしても5~10分待ってなぜ泣くのか観察したり、抱っこの代わりに赤ちゃんの背中を軽く叩いてあげたり、歌を歌ってあげたりします。
「赤ちゃんが泣くのは仕方がないこと、母親である自分に責任はない」と割り切って考えているのだそうです。
コミュニケーションの方法は違っても、生まれた時から愛情豊かに、一人の小さな大人として扱われて育ったフランスの子どもたちは、自己責任の意識を強くもって成長します。
日本では赤ちゃんが泣いていたら、抱っこするのが当たり前。なかなか泣き止んでくれなくて、「ああ、私って駄目な母親…」なんて落ち込んでしまうこともありますね。しまいには赤ちゃんが泣くのを怖がって、おっかなびっくりと生活をすることもあるでしょう。そんなストレスはフランス人ママには無縁なのです。
フランス人の子どもの特徴(フランスの育児哲学に基づく傾向)
- 極端な甘えん坊にならない
- して良いことと、悪いことの区別が早くつくようになる
- 人見知りをせず、ベビーシッターなどに預けやすい
4 大人中心の生活をする
フランスでは、あくまでも大人が生活の主体です。フランスの保育・教育制度はこの典型的な例といえます。ママが働きやすいよう、大人の都合にあわせて子どもを家庭外で長く預かってくれる教育体制が整えられています。
フランスでは、子どもが家庭外で同年代の子どもたちの集団の中で社会的スキルを学ぶことは、子どもたちに与えられる重大な権利と考えられています。
集団生活に慣れてコミュニケーション力を鍛えるだけでなく、大人社会を垣間みるチャンスの多い子どもたちは、社会性や他者を尊重する姿勢を身につけていくそうです。
大人中心の生活のメリット
- 善悪の判断を自分でつけられるようになる
- 自分で責任をとることの大切さを知る
- 集団生活の忍耐力が身に付く
- 社会的なマナーが身に付く
5 良い制度は120%活用する
フランスのママの素晴らしいところは、自分たちの生活をより良いものにしようとする向上心です。大人のために整えられた保育・教育制度を120%活用して育児ストレスを軽減しているのです!母親のストレスのない育児環境が子どもに良い影響を与えることは言うまでもありません。
フランスは女性の社会進出が非常に進んでいる国として知られ、25~49歳の女性の就業率は84%とOECD諸国の中でも高い水準にあります。フランスでは女性が仕事をもち、働くことにとても理解があります。
ママになっても育児と仕事に専念できるよう、さまざまな社会支援が確立しているのも、その表れといえますね。
女性が仕事を持ち社会で働くことは、女性の自立の第一歩です。働くことで社会に必要な存在である自分に誇りをもち、成果をあげることで自信をつけることができます。女性の輝きは、社会の元気のバロメーターです。女性が生き生きと輝いて子どもたちを養育することで、社会は維持されていくのです。
フランスの優れた保育・教育体制
- 就業の有無にかかわらず0歳から子どもを預かってくれる保育園がある
- 保育園以外でも小規模保育園や保育ママ、家政婦やベビーシッターなどのサポート体制が充実している
- 乳幼児受け入れ手当などがあり、保育費用があまりかからない
- 無料の学校(エコール・マテルネル)へ2歳8ヶ月から入学できる
- 学校の休日や時間外に対応してくれる託児施設がある
フランスの育児ルールに学ぶストレスフリーな育児とは
少子高齢化が進む日本の家庭では、子どもはまさに宝物です。大事な宝物を守りたいがために過保護になってしまったり、子どもに依存してしまったりと、今、日本のママが抱える育児の課題がクローズアップされています。
誰にも頼れず育児のストレスをため込み、人知れず子どもに手をあげてしまう母親もいます。
日本のママが抱える育児ストレスや孤独感を生み出すものは、さまざまなストレスと言えるでしょう。日本の育児の主体は「子ども」、そして「母親=子どもの面倒を見るもの」という考えが根強く残っています。「良い母親」でいなければいけない、こういったストレスが日本のママに重くのしかかっているのかもしれません。
フランスの育児ルールでは、育児の主体になるのはママ自身です。自分の都合を優先させて、頑張りすぎず、さまざまな公的支援を積極的に利用することで、ストレスを減らし、より育児を簡単に、楽しいものに変えていっているのです。
育児の現場に大人の都合を優先させるのか、子どもを優先させるべきなのか、これは賛否両論、さまざまな意見があるでしょう。ですが、子どもと一緒に居る時間の長さよりも、一緒に居る時間の質の高さを重視する、そんなフランスの育児ルールは、学ぶべきところも多くあります。