さくらんぼ計算って何?無駄だとツイッターで批判された算数の教え方
さくらんぼ計算とは、10を合成もしくは分解し、1房に2個ついているさくらんぼの絵の中に入れることで、繰り上がりの足し算や繰り下がりの引き算を1桁の計算だけで行おうとする手法です。
塾通いをする小学生の割合は年々増えていますが、最近この小学校で習うさくらんぼ計算についてパパやママ、学習塾の先生などから批判の声が上がっています。
さくらんぼ計算を習うのはいつから?小学校1年生の2学期から
さくらんぼ計算が小学校の算数の授業に登場するのは、小学1年生の2学期から。1年生の計算能力の目標は、100まで数えられるようになり、繰り上がりと繰り上がりを含む1桁の足し算と引き算ができるようになることです。
通っている学校や使っている教科書によって進度の違いはありますが、基本的には小学校に入学すると一学期のうちにまず数の概念についてじっくり学び、その後1桁の足し算と引き算を学びます。
2学期になると答えが10を超える繰り上がり算、10を超える数字から1桁の数を引く繰り下がり算を学び、このときに「さくらんぼ計算」が登場します。
小学校1年生の算数の授業で習うこと
- 数字の書き方や意味
- 個数や順番の数え方
- 数の大小や順番、数直線
- 2位数の表し方や、簡単な3位数
- 10を単位とする数の捉え方
- まとめて数えることや、等分する意味
- 足し算・引き算の意味と計算式の作り方・書き方
- 1位数の足し算・引き算と、簡単な2位数の繰り上がり・繰り下がり算
- 図形の特徴の捉え方
- 図形の構成や、分解の仕方
- 方向や物体の位置の意味や表し方
- 大きさや広さの比べ方、単位を使った数の比べ方
- 時計の読み方や時刻の表し方
- 絵や図、数直線やグラフから数を読み取る方法、比べる方法
親や指導者から批判の声が殺到!さくらんぼ計算でわかる子もわからなくなった
さくらんぼ計算は普通に計算するより、説明が複雑で大人でも混乱しやすいのが特徴の計算方法です。そのため1学期までは算数が得意だったのに、さくらんぼ計算でつまずいて算数嫌いになり、中学生になっても克服できないという子もいます。
さくらんぼ計算を批判する保護者の声
- そもそも数を分ける意味が理解できない
- 直感的に答えが出せるから、わざわざさくらんぼ計算で数の分解や合成をすのは無駄
- いちいちさくらんぼのマスに数を書くのが面倒
- 無駄なことをさせられるのは嫌だ
- さくらんぼ計算以外の解き方では◯をもらえないので、点数が下がってしまった
- 自分の解き方でも答えが出せるのに、さくらんぼ計算ばかりを強制されて面白くない
小学1年生の算数の目標にはあっているのですが、さくらんぼ計算による繰り上がり繰り下がり計算の解き方は、無駄に計算を難しくしているというツイッターでの指摘が多いのです。
さくらんぼ計算が強制の学校もある!答えしか書かずに減点された小学生
なかでも批判が集まっているのは、学校の先生からのさくらんぼ計算の強制です。筆算・暗算・図形を用いた方法など、計算方法にはいくつもの方法があり、さくらんぼ計算もその一つにしかすぎません。
あくまでも補助的なもの、プリントに描かれたさくらんぼマスは使っても使わなくても良いというのであれば問題はないのですが、必ずマスを埋めなくてはいけないと強制的な指導をする学校や先生は多いです。
答えは正確に出ているのに、さくらんぼのマスが埋まっていないことで×をつけられたり、テストで減点されたりして成績評価されてしまうこともあります。それでは子供がやる気をなくしてしまいます。
さくらんぼ計算の足し算のやり方!まずは親が理解しておこう
さくらんぼ計算で子供がつまずいてしまったら、パパやママが教えてあげましょう。ただし大人でもさくらんぼのマスを見ただけでは、「何の数字をいれればいいの?」と考えてしまうことがあります。パパやママは学校でサクランボ計算を習っていませんからね。
まずは「8+5=13」の足し算をさくらんぼ計算で行う方法を例にして、やり方をみていきましょう。足し算のさくらんぼ計算の場合は、「足して10でまとめる」のが基本です。
1左側の数字を見てあといくつで10になるか考える
足し合わせる2つの数を比べ、10に近い大きい数字はそのままにし、大きい数字にあといくつ足すと10になるかを考えて、さくらんぼの左側に数を書きます。この場合は「8」をそのまま残し、小さい数字の「5」を分解します。
5の分け方は、「1と4」と「2と3」の2通りがあります。「8」が「10」になるには「2」が必要ですので、左側のさくらんぼに「2」を入れます。
2右側の数字から左のさくらんぼの数を引いて右のさくらんぼに入れる
さくらんぼの左側に「2」を入れたら、右側のさくらんぼには「5」から「2」を引いた答えの「3」を入れます。この段階でさくらんぼに分けた「2」と「3」を足し合わせ、もともとの「5」になることを確認するとよいでしょう。
3答えは左のさくらんぼの数に10を足した数
ここまでくれば、あとは簡単です。「8」と左側のさくらんぼの「2」を足すと「10」の束が1つできますので、残った右側のさくらんぼの「3」を10に足し合わせる「10+3=13」の計算をして答えを出します。
さくらんぼ計算の引き算のやり方!大人でもこんがらがる
さくらんぼ計算はまず簡単な足し算から始め、次に繰り下がりの引き算にと進んでいきますが、さくらんぼ計算の足し算をスムーズにマスターした子でも、引き算で混乱してしまうことは多いです。
これは「さくらんぼ計算は、足して10でまとめるもの」というイメージが定着してしまっているから。引き算の場合は足し算とは違った考え方をしていく必要があります。
次は「13-6=7」を例にとって、解き方を見ていきましょう。引き算のさくらんぼ計算の場合は、「10を取り出して、10から数を引く」のが基本です。
1左側のさくらんぼに10を入れる
さくらんぼ計算の引き算では、10を超える数の大きい数の方をさくらんぼで「10」との残りの数の2つに分けます。
引き算の場合は組み合わせに悩む必要がありません。この場合は大きい「13」から取り出した「10」を、左側のさくらんぼに入れます。
2左側の数から10をひいて右側のサクランボに入れる
次は大きい数から10を引きます。「13-10=3」ですので、残った「3」を右側のさくらんぼに入れます。さくらんぼに分けた「10」と「3」を足して、もともとの「13」になるのを確認しておきましょう。
3答えは10から右の数を引き右側のさくらんぼの数を足した数
さくらんぼ計算の引き算は、ここから一気に難しくなります。まず左側のさくらんぼの「10」から小さい方の数を引きます。この場合は「10-6=4」。を2つのサクランボの隣に答えを書いておくと、後でわかりやすくなります。
次に右側のさくらんぼの「3」と、さきほど引き算で導き出された「4」を足します。つまり「3+4=7」で、最終的な答えが「7」となります。
さくらんぼ計算への文部科学省の見解は「学校や教育委員会の判断」
さくらんぼ計算に対する批判的な意見は文部科学省にも届いています。実はさくらんぼ計算を教える授業を文部科学省が推奨しているわけでも、マスターしなくてはいけない計算方法として規定しているわけでもありません。
文部科学省が定める「学習指導要領」はあくまでも小学校や中学校での学習目標を示すもので、年間のカリキュラムや指導内容、学習方法については地域ごとの教育委員会や学校、プリント指導を行う個々の先生に任せられています。
さくらんぼ計算を取り入れるか取り入れないか、取り入れた場合は強制するかしないかが学校や先生によってまちまち。それで子供が算数への苦手意識を持ってしまうのでは、子供や保護者が混乱しても致し方ありません。
さくらんぼ計算の考え方はそろばんと同じ!無駄とは言い切れないメリットもある
さくらんぼ計算を使った繰り上がり算と繰り下がり算は、正式には「加数分解・被加数分解」と呼ばれていますが、実は「5」を示す大きい玉1つと「1」を示す小さな玉4つ、合わせて5個1列で0~9の数を表すそろばんと考え方が似ています。
「読み書きそろばん」といわれるように、昔はそろばんが算数を学ぶ上で最も適した道具でした。数を簡単に可視化できるため、子供の脳を刺激しやすく、スピーディかつ正確に計算ができるため、海外でも注目されているアイテム。そろばんと同じ考え方のさくらんぼ計算にも、デメリットばかりではなく、メリットがいくつかあります。
さくらんぼ計算で10の合成分解を身に着けると計算が早くなる
さくらんぼ計算はコツと10になる数字の組み合わせさえ覚えておけば、10の合成や分解がスピーディにできる計算方法。数の分解合成が一瞬でできるほど練習を重ねれば、かなり計算時間を短縮できます。
どんな計算式も手の指を1本1本数えていけば答えが出せますが、やっぱり時間はかかりますし、計算間違いも起こりがち。
あらかじめ10になる数字の組み合わせを覚えておいて、ルールに従ってマスを埋めていったほうが、素早く答えが出て計算間違いも防げます。
さくらんぼ計算ができると掛け算の理解度が早くなる
私達が使っている算数は10を区切りに桁が変わっていく10進法ですから、さくらんぼ計算で10を意識するようにしておくと、掛け算や割り算へのステップアップもスムーズに進みます。
3位数、4位数といった大きな数の計算も、すべて10の数がベース。将来的に大きな数の計算をするときにも理解がしやすく、無駄に苦手意識を引き起こすリスクを回避できます。
暗記に頼らず柔軟な解き方ができるようになる
どんな計算も一つ一つ数を加えていく、もしくは引いていけば答えはでますが、子供達が知らない、もっと楽に答えを出せる方法はいくつもあります。
さくらんぼ計算やそろばんは、そういった計算方法の一つ。たくさんの計算方法があることを知ることで、子供達が柔軟な考え方ができるようになることをサポートします。
記憶力を強化して学習意欲を向上させる
さくらんぼ計算で10の合成や分解のパターンを繰り返して覚えることで、子供の脳が鍛えられて記憶力を向上させるのに役立ちます。
記憶力は計算のベースとなるだけでなく、国語や社会、理科などすべての学習の礎。記憶力が良くなると勉強することが楽しくなり、子供達が積極的に学ぶようになります。
自由な発想力や理系脳を育てるのに役立つ
型どおりの計算方法に固執することなく数式の法則性を発見し、より無駄のない計算方法を考えて工夫することは、子供の自由な発想力を育てます。
さくらんぼ計算は「さくらんぼのマス」という面白い絵柄で子供の興味を引き、楽しく学ばせる工夫が凝らされていますから、算数好きになるとっかかりとしては悪くありません。
最初は「難しい!」と思っていても、自分で苦労して計算方法を習得することで、次第に効率よく物事を考えられる「理系脳」へと育ちやすくなりますので、避けずに幼児期から10の合成分解を遊びに取り入れるなど、前向きに学習することをおすすめします。
さくらんぼ計算で算数嫌いにさせない!家庭でできる学習サポート
さくらんぼ計算は必ずできなくてはいけない計算方法ではありませんが、先生やプリントの指定があれば使わざるを得ませんので、最初に苦手意識を持たせないことが大事です。
子供が小学校に入る前から入学以後まで継続的に、家庭でさくらんぼ計算がスムーズになる次のような学習サポートを心掛けましょう。
1入学前は遊びを通して10の合成分解の経験を増やす
子供に苦手意識を持たせないためには最初が大事ですから、年長さんになって数を数えられるようになったら、10の数の作り方を早めに教えておくことをおすすめします。
一本一本指を折らせる、おやつのクッキーやみかんなどをテーブルに出すなど、子供の興味を引くものを使って、「何個を足したら10になるかな?」などと遊びに誘って教えましょう。
10の合成分解はさくらんぼ計算だけでなくすべての計算の基礎ですから、入学後の算数の授業でも理解力が向上します。
2入学後は毎日の復習をがんばらせる!理解より身に着いたかに着目して
宿題に対する考え方は学校や先生で違いますが、学習は繰り返すことで定着しますので、小学校入学後は先取り学習よりも家庭での毎日の復習が必要です。
子供が帰ってきたら「今日はどんな勉強をしたの?」と話しかけましょう。一定の時間が経ってから学んだことを思い出す反復練習は記憶を呼び覚まし、学習効果を高めます。
パパやママもその都度子供の理解度を確かめることができ、子供の欠点を早期に把握して素早くサポートに対処できるので一石二鳥です。
3間違えても理解できなくてもOK!1段階ずつ練習を重ねることが大切
さくらんぼ計算のやり方で示した3つのステップのどこで間違えやすいのかを把握するためにも、10の合成分解ができるようになった子には、1段階ずつ練習を重ねさせて、少しずつステップアップさせましょう。
特に引き算の場合は複雑なので、面倒でも段階的にステップを踏んで解いていくクセをつけることが大切です。最初は解けなくても、繰り返しの練習で解き方のルールを体得させるのがベストでしょう。
4間違えても怒って教え込まないで!できるだけ解き方を子供に説明させよう
自宅での学習サポートでは、パパやママが怒ったりイライラした態度を見せたりするのを控えましょう。子供が委縮して反発し、さくらんぼ計算嫌い、ひいては算数嫌いになりかねません。
中学受験に成功した子供の中には、間違えた問題の解き方を親に説明することで、自分が何につまずいているのか気づけて、学習の理解度が高まったと言う子もいます。
一方的にやり方を教え込まず、間違えたときほど「どうしてそうやったの?」と子供なりのやり方を説明する機会を与えましょう。1年生では答えられないかもしれませんが、2年生になってもさくらんぼ計算でつまずく子は多いので、将来的に役立ちます。
5算数セットを活用!目で見える効果が計算能力を伸ばす
さくらんぼ計算は絵や図を取り入れることで子供にもわかりやすく作られていますが、ペーパー上でイメージがしにくい場合は算数セットのおはじきや数ブロックを活用しましょう。数を視覚化することで、算数が苦手な子供でも10の合成分解の理解度がグッと向上します。
例えば「8+5=13」のさくらんぼ計算なら、8のほうに2個のブロックを移動させて10を作り、残りの3を足し合わせれば答えがでます。
「13-6=7」の引き算の場合は、13のブロックを3と10に分け、10から6を引いて余った3と4を足して答えを導き出すなど、視覚化して繰り返し練習をすることで、さくらんぼのマスに入れる数字が理解できるようになります。
最近は算数セットを使わない学校もありますが、レゴブロックやおはじき、100均ショップなどのカラフルなボタンなどでも代用できますので、パズル感覚で楽しんで学ばせましょう。
さくらんぼ計算は算数の登龍門!避けずに習得すれば未来は明るい
さくらんぼ計算に対しては大人側、子供側からも賛否両論ですが、ここをクリアしてしまえば小学校2年、3年へと進んだときに、掛け算や割り算がスムーズに習得できます。
計算方法に問題があるわけではなく、あくまでもさくらんぼ計算は繰り上がり算と繰り下がり算が簡単にできるやり方の一つ。早めに継続的な家庭のフォローがあれば、算数を苦手にさせずに乗り越えることができます。
小学生向けの問題集の中には子供が面白がるものもありますが、さくらんぼ計算程度であればママやパパが思いついた問題を紙に書いて教えることも出きます。親があまり否定的になると子供に苦手意識を植え付けかねませんので、家庭でも前向きに取り組みましょう。