情報リテラシー教育~小学生にネット社会で身を守る術を教えよう
世界中の人とリアルタイムで繋がることができるインターネットはとても素晴らしいものである反面、情報リテラシー教育をしていない家庭の小学生は様々なリスクにさらされています。
スマホデビューしたての子、あるいはこれからデビューさせようかと考えている子のママ、ゲーム機や音楽プレイヤーでネットを楽しめる子のママは、情報リテラシー教育についての学校の取り組みや家庭での実践方法について知っておくと共に、自らの情報リテラシーを高めましょう。
情報リテラシー教育とは
情報リテラシー(information literacy)とは、パソコンやスマートフォンなどの情報端末やインターネットを利用して、必要な情報を入手したり整理して組み換えたりして活用するとともに、安全に情報やデータの管理を行う能力のこと。「ICTメディアリテラシー」「ITリテラシー」とも呼ばれています。
リテラシーの本来の意味は「読み書き能力」。これまでの親は子供の学力向上のために国語教育としてのリテラシー教育を行うのみで良かったのですが…。
情報リテラシーが低い親子が背負うリスク
- ネットの情報に騙されて誤った学習をする
- 個人情報が知らぬ間に流出する
- 詐欺や課金などの金銭トラブルが起こりやすい
- 出会い系などで知り合った人からの脅迫
- アカウントの乗っ取り
- 生活習慣の乱れ
- 情報の盗み取りやウイルス感染の被害を受ける
- ネットの向こう側にいる相手を意図せず傷つける(傷つけられる) など
「2020年までに小学生1人につき1台の情報端末を整備する(注1)」と政府が目標を定めた現代。既に幼児期からスマホやタブレット端末を利用している子供達も少なくありませんので、家庭でも親子で情報リテラシーについて学び、情報化社会を生き抜く道具として使えるように導いてあげることが大切です。
子供にはスマホを持たせない方がいい?
スマートフォンは今や私達の生活に欠かすことのできない存在。小学生の子供にスマホを買ってほしいとせがまれ、困りつつも結局持たせているご家庭も多いでしょう。
小学生にスマホを持たせることにはメリットとデメリットがあります。「人類のIQは年々上昇を続けている」とニュージーランド大学ジェームズ・R・フリン教授はその著書の中で記していますが、この現象を脳科学や心理学の分野では「フリン効果」と呼んでいて「原因はスマホなどのモバイル端末による影響だ」と脳科学者の茂木健一郎さんも解説しています。
子供にスマートフォンを持たせるメリット
- GPS機能を使うことで、子供の居場所がわかる
- いつでもすぐに連絡が取れる
- 子供同士でも連絡が取れ、仲が深まる
- 災害時でも連絡手段がある
- 子供の「知りたい」などの欲求を満たすことが出来る
- 情報機器の操作に慣れる
子供にスマートフォンを持たせるデメリット
- 誰と繋がっているか把握できない
- インターネットトラブルに巻き込まれる可能性がある
- ルールがないと依存症などの恐れがある
- 使い過ぎによって脳の働きが悪くなる恐れがある
- 目が疲れやすくなる
- ルールを守らず親子の喧嘩の種になることがある など
スマホ使用には子供本人の自覚が大切!
小学生にスマホを持たせるかどうかは、親子の情報リテラシーの高さや親子の情報リテラシーを学ぶ姿勢が重要な判断ポイントとなります。
「小中学生にスマホは禁止!」と頭ごなしで教育もせず、後で解禁すればいいということで済まされる問題ではありません。時代は刻々と変化していています。早期に情報機器に触れている子と触れていない子では能力にも差が出るとなると避けてばかりはいられませんので、ぜひ家族全員で情報リテラシーを高める取り組みを行いましょう。
小学校で行われている情報リテラシー教育
小学生への教育と言えばやはり小学校ですが、公立小学校では何年生からどのような情報リテラシー教育を行っているか知っていますか?まずは子供達が学校でどのような情報リテラシー教育を学んでいるのかを確認しておきましょう。
文部科学省では小学生への情報リテラシー教育として3つの目標が掲げられ、公立小学校では次のような授業が行われています。
1実践的な情報活用力の育成
学校によって差はありますが早い学校では小学校1年生から様々な授業の時間にパソコンに触れる時間が設けられ、小学校3年生から国語の授業でローマ字を習うと同時に、パソコンのタイピングやファイルの種類、整理や保存方法、印刷、メールソフトの基本操作などの基礎的な情報活用方法を教わります。
4年生以上になると調べ学習でパソコンを使用する時間が増え、フラウザの基本操作など情報検索の学習をさらに深め、検索した情報をグラフ化する、画像や文章で新聞を作るなどの編集方法や表現方法も学び、情報を受け取る側の状況を踏まえた発信方法を学習します。
こうした小学校での授業によって、子供達は情報を正確に分かり易く伝えるためのメディアの使い方、調べた情報を効果的に伝えるプレゼンテーション方法などの実践的な情報活用力を学んでいきます。
小学生のSNS活用への研究
近年小学生へのSNS活用の情報リテラシー教育の研究として、小学生へのスマートフォンによる学習用SNSやTwitterを使った国語の随筆や短歌の授業が行われました(注2)。研究が進むことで今後の小学校の情報リテラシー教育ではパソコンだけでなくタブレットやスマホを使用した授業も段階的に検討されていくことが予想されます。
2科学的に情報を理解する能力の育成
スマホやパソコンを利用していく中ではファイルの大きさや種類、保存先の構造など意識して作業を行わなければなりませんが、小学生もこうした問題に気づいて意識的に作業を行えるようになるために、学習計画が組まれています。
また子供達がPDCAサイクル(計画Plan→実行Do→評価Check→改善Act)を意識しながら自分の情報活用能力を高められるように、小学校の授業では自己評価をする機会を設けたり、調べた情報の信ぴょう性の確認をさせたり、他者からの評価を受ける機会を作ったりしています。
3情報社会に加わる態度の育成
ネット社会は子供であっても発信した情報により他人や社会に何らかの影響を与える可能性があります。話題となっている小学生のYouTubeなどが顕著な例でしょう。
またこうした情報発信による影響を逆に受信した小学生が受けることもあり、嘘の情報などよい情報ばかりではなく鵜呑みにすることで危険なケースもあるため、情報社会で活動するための基本となる認識を小学生であれ持っておく必要があります。
LINEや掲示場への悪質な書き込み等ネットワーク上のルールやマナーが守られていないことで、他人を意図せず傷つけたり自らが傷つけられたりしてしまうケースもあるため、発信への責任についても小学校では教えています。
中高生への情報リテラシー教育
文部科学省では、小学生への情報リテラシー教育の3つの目標をさらに深めて知的財産権の尊重やセキュリティ対策、ルールや法律といったより高度な情報リテラシー教育を中学生や高校生にも行うように推進しています。
2017年現在中学生以上はプログラミング教育も受けていますが、2020年からは小学生からのプログラミング教育が必修になります。
そのため2020年度からは新学習指導要領への変更に伴い小学生がコンピュータを使用する授業時間が増えると共に、道徳の時間で情報モラルについて取り扱うなど小・中学生の情報リテラシー教育の機会もこれまで以上に充実させる方向で話し合いが進められています。(注3)
家庭で行う小学生への情報リテラシー教育
小学校での教育内容には非常に心強いものがあり、自分が授業を受けたいママもいることでしょう。子供に情報活用の方法等を教えてもらうのは子供の復習や自信につながり大変良いことなのですが、パソコンが苦手なママも夫婦で協力して学校で行っている情報リテラシー教育に沿う環境をきちんと準備し、情報リテラシーへの意識を子供に教育しましょう。
フィルタリングをかける
フィルタリングや機能制限は子供のプライバシーを保護し、悪質サイトやアプリの害から子供を守るために必須です。小学校高学年や中学生になるとフィルタリングをかけないままスマホを持たせる情報リテラシーへの意識が不足している保護者が増えますが、インターネットトラブルに遭った子供の約95%がフィルタリング未設定であることが分かっています。
フィルタリングについて子供に正しく伝えた上で、スマホのみならず携帯ゲーム機や携帯音楽プレイヤーにもフィルタリング設定や課金ゲーム問題への対策を行いましょう。
情報端末使用の家庭内ルールを作る
情報端末の使用時間や置き場所などの家庭内ルールを子供と話し合って決めましょう。ルールを決めないことで小学生でもスマホ依存症など深刻な害が起こる恐れがあります。
ルールは自主的に守るものですので、保護者が独断で決めるのはよくありません。子供に決めさせることで自主的にルールを守ってもらうことに重点を置きましょう。そのためにもSNS等のリスクを説明するなど、子供の情報リテラシーについて確認しながら話し合いましょう。
親が率先して情報モラルを守る
情報リテラシー教育の3本柱の一つである情報モラルを親が守れていないと、どうしても子供は情報リテラシーが低くなってしまいます。食事中や就寝前のスマホ利用をしないなどの姿を親が率先してみせることで、子供に情報リテラシー教育を行いましょう。
参考文献