キャリア教育は小学生から!小学校低学年~高学年達成度チェック
教育は将来子供が社会で活躍する礎になるもの。子供によい教育を受けさせたいと考えるのは、親の願いですね。ところが今、世の中にはさまざまな子供の教育方法があって、子供のためによい教育を選択したつもりが、自力で就職すらできない子供も増えているのです。
そんな中、文部科学省をはじめとする関係府省が提言をしているのが「キャリア教育」。今回はキャリア教育の目的や内容について解説をしながら、家庭でのキャリア教育の達成度チェック、進め方などについてご紹介していきます。
キャリア教育って何?
皆さんは「キャリア教育」と聞くと、どんな教育法をイメージしますが?日本では「キャリア=高級官僚や上級公務員」といったイメージが強いので、キャリア教育を「子供を特権官僚に育て上げるための教育法だ」と思うパパやママが多いのですが、これは大きな勘違い。
キャリア教育とは、子供がさまざまに変化していく社会の中で、強くたくましく生きていくために必要な力を身につけさせることを願った、就職や社会的自立に役立つ教育理念です
ただし、キャリア教育は「これを実践すれば、良い職について豊かな生活ができる」という性質のものではありませんので、誤解しないように気を付けて下さいね。
キャリア教育の目的
文部科学省が子供の健やかな成長のために提言しているキャリア教育とは、子供達が将来次の3つを実現できるように、子供自身の実力を養うことを目的としています。
子供は一人一人個性があって、社会で求められる役割も生き方も違います。そのため、キャリア教育も全ての子供に画一的に行う内容ではなく、子供が育つ環境や子供の発達段階に応じた子供自身の個性に合わせた教育を、それぞれの家庭と学校などの関係機関が連携して進めていくことが望ましいです。
うちの子のキャリア教育は順調?キャリア発達度チェック
子供達は成長していく中で、自分の社会的な役割を見つけ、役割を果たしながら自分らしい生き方を実現する力をつけていきます。こうした過程をキャリア発達と呼びます。キャリア発達とは子供に限らず生涯に渡って行われるものです。
子供達はキャリア教育によりキャリア発達をしていきますが、我が子が年齢相応に順調にキャリア発達をしているか、親としては気になるところですよね。早速、小学校低学年、中学年、高学年それぞれのキャリア発達度チェックをしてみましょう。YESの項目にチェックを入れて下さい。この結果を参考に100%を目指して家庭教育を充実させましょうね。
小学校低学年
小学校中学年
お子さんのキャリア発達度は%です。
小学校高学年
お子さんのキャリア発達度は%です。
キャリア教育で学ぶ内容とは
文部科学省が作成したキャリア教育の手引きでは、小学生、中学生、高校生がキャリア教育で身につけるキャリア発達を次の4つの能力に分けています。(注1)
- 人間関係を形成する能力
- 情報を活用する能力
- 将来設計をする能力
- 意思決定する能力
学校ではこれら4つの能力を、小学校低学年~高校生が年齢相応に身につけられるように細かく目標を定めて指導を行っています。この細かい目標が、先程チェックした項目。
子供の勉強の成績が気になるのは親心ですが、目先の成績に捕らわれず自立に不足するキャリア発達を促すことで、子供は自ら必要な能力を身につける努力を始めます。ご家庭でも「うちの子やる気がない」と思う場合は特に、子供に不足する部分を補う指導を心がけるようにしましょうね。
キャリア教育を怠るとどうなる?体験談
キャリア教育は、社会生活を送るうえで「ごく当たり前のこと」を、無理なく身につけさせていく教育方法です。勉強ばかりに偏り、こういったごく当たり前のことが身につかないと、子供達の成長にどのような影響が出るのか、いくつかの体験談をご紹介します。
待つだけじゃダメだろう!
スポーツジムで働いています。自分が指導を担当している中学生の男の子がいるのですが、
その子は自分でバナナがむけません。トレーニングの間の栄養補給にジムでバナナを用意するのですが、彼はバナナを前にして食べない。でも、母親が皮をむいてやると食べるんです。
あるとき母親が同伴していないときに、彼がバナナを前にドリンクだけを飲んでいるので、なぜ食べないのか聞いてみたところ、「手が汚れるから」だそうです。でも腹は減っているから、誰かが皮をいてくれれば食べたいらしい。「おいおい、それじゃダメだろ!」と突っ込んでしまいました。
その子はいわゆる難関私立中学に通っている子で、テニスも熱心で成績も悪くないし、礼儀正しい良い子です。母親はジムで見る限りそれほど過保護な印象はないのですが、「早く食べなさい」なんて文句を言いつつも、中学生の男の子に幼稚園児でもむけるバナナの皮をむいてやるので面倒見が良すぎるのかもしれません。
自分なんかお腹がすいたら自分の手が汚れても食べたいし、生きるために食べることが必要なんだから自分で食べなきゃいけないと思うのですが、最近の子は上品なのんだろうか?
高校生の娘が引きこもっています
高校3年生と1年生の娘がいるのですが、高校に入ったばかりの次女が学校に行かなくなってしまいました。次女は小さい頃から大人しく、高校は私が勧めた女子高を受験したのですが、入学して1月位で頭が痛いと休みがちになってしまい、もしや学校で何かあったのかと娘に理由を問いただしたところ、「受験が終わってしまったら、何をするのかわからなくなった」なんてことをいっています。
私も「燃え尽きちゃったのかな」としばらく娘のしたいようにさせていたのですが、今はもう8月。今までは私の言うことをよく聞いて、特に苦労もなく育ってきた娘なのに、今度ばかりは私やパパがどれだけなだめすかしても学校に行こうとせず、どうしたらいいのか、本当に困っています。
大学生に送り迎えは変ですか?
大学2年生の長男と高校2年生中学3年生の娘を持つ父親です。大学生の長男のことなのですが、自宅から通える大学に行っているためか、いまだに親を頼って何かと送り迎えを妻にさせ、なかなか自立してくれなくて困っています。
高校生までは「学生は勉強が仕事だ」とバイトなどは許していなかったのですが、大学生になって自立を促すためにも「自分の遊ぶ金は自分で稼ぐように」とバイトを許したのです。息子はバイトには自分から行くのですが、「夜帰りが遅くなったから」といって電車のある時間に妻を呼ぶのです。
妻は、文句は言うものの「最近は物騒で男の子でも夜道は危ないから」といって、高校生の頃に塾の送り迎えをしていた時のように、結局は長男を迎えに行ってしまいます。妻の心配もわかるのですが、大学生になったのでもう少し自分でできることを自分でやることを考えてもらいたい。頭が痛いです。
この母にしてこの子アリ?
私は地方銀行に勤めています。今年の新入社員の女の子の指導を受け持っていたのですが、良い大学を良い成績で卒業してきたはずなのに、仕事にやる気が見られません。頼まれた仕事はそつなくこなすのですが、自分から電話に出たり、同僚の手伝いしたりする気がないんですよね。
でも、今の子ってあまり厳しく注意するとすぐ辞めてしまうのであまり強くは言えず、私は「こうしたらどうかしら」という感じでいろいろフォローしてきたのですが、とうとう3日前から無断欠勤し、携帯電話や自宅訪問を無視した挙句、今朝になって彼女のお母さんから「退職させて下さい」と娘の替わりに退職を連絡がありました。
本人の話を聞いてみなくては話が進まないので、「一度会社に娘さんを連れてきてもらいたい」と話を向けてみたのですが、「娘の中ではもう決めたことなので」と彼女と話もさせてもらえません。「母親も母親だけと、社会人になって自分で決められた退職手続きができない大人ってどうなの!?」と腹が立ちますが、周りからは私の指導がいけないような目で見られるし、本当に迷惑しています!
今どきの大学生は突っ立っているだけ
私はキャリアカウンセラーを12年勤め、現在某大学で就活指導を行っていますが、今どきの大学生は知識ばかりで行動がおかしい。困ったことがあっても、私の机の前に来てただ突っ立っているだけ。しばらく様子をみても話しかけてこないので「どうして何も言ってこないの?」と聞くと、「声を掛けてくれるかと思って」と一言。
話しをする時にスライドを使おうとしても、誰もカーテンを閉めようとしません。「カーテン閉めて」と言われると閉めるのですが、私の学生時代は先生の様子を見て何も言われなくても窓際の人がサッとカーテンを閉めていましたよ。勉強だけ出来ても正直東大生だって就職できない時代に、それじゃあ就職は厳しいんだよね。就活面接者が求めているものを理解できてない学生が多くて困ります。
キャリア教育が小学生に求められるようになった背景
「小学生の段階からキャリア教育が必要だ」といわれるようになった背景には、次のような日本社会の急激な変化が影響を与えています。
- 技術の進歩による情報化
- 経済・産業のグローバル化
- 雇用の多様化や流動化
このような変化は私たちの社会に豊かさをもたらしましたが、その反面子供達は多くの情報にさらされ、自分の理想とする将来をイメージしにくく、将来の明確なビジョンや希望を持つことが難しくなってしまったのです。
そういった背景の中で自分の職業を選ぶことができず、フリーターやニートなどの道を選択する若者が増えてきました。そのため、「若者が自分の将来の希望を失わないように、これまでよりも就業意識を高めた実践的な教育をすべきだ」という専門家の意見から、キャリア教育の理念が生まれたのです。
小学生のキャリア教育におすすめの映画
文部科学省の提言が始まって、小学校などの学習指導要綱にはすでにキャリア教育の理念が盛り込まれるようになっていますが、家庭でもキャリア教育をもっと推進するために、文部科学省がタイアップして平成27年7月に公開された、木村拓哉主演の「HERO」という映画を子供に見せてみてはいかがですか?
「HERO」はフジテレビ系列で放送されたテレビドラマの映画版ですが、木村拓哉が演じる検事たちが立ちはだかる外交特権や陰謀に屈せずに、チームで真実を粘り強く暴いていくというストーリー。既にみたことがあるママの中には、感動した人も多いのではないでしょうか。
「将来の夢や希望」というとイメージを思い浮かべにくいのですが、自分の仕事に打ち込み、社会的な正義感をもって自分の役割を果たそうとする責任感のある大人の姿を映像としてみることで、子供も「自分もこうなりたい!」というビジョンを描きやすくなります。小学生から、親子で楽しめる映画でもありますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
文部科学省推奨キャリア教育映画
- WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~
- 魔女の宅急便(実写版)
- HERO
親が手本となることもキャリア教育です
キャリア教育というとなんだか難しくなってしまいますが、そんなに肩ひじを張って考える必要はありません。「子供は親の背中を見て育つ」といわれている通り、子供がお手本にすべき大人の姿や理想とする将来の生活は、パパやママの姿の中にあります。
子供が将来の明確なビジョンを描けるように、親子のコミュニケーションをしっかり取って、自分の姿を子供にしっかり見せていきましょう。
キャリア教育で求められているのは、絶えず変化する不安定な現代の社会の中で、子供達が夢や希望を失わずに自分自身で未来を切り開いていく力です。そのためには、学校や家庭などのあらゆる場所でさまざまなことを体験させ、子供達に学ぶ楽しさや働くことの大切さ、チャレンジすることの素晴らしさを教えていけるといいですね。
参考文献