共育と教育の違いとは?親や地域と一緒に学ぼう!主体的な子育て
共に学び成長する。これは共育の意味の一つです。子育て中は子供への一方的な指導者になってしまうパパやママが少なくありませんが、共育の概念を知って子供と向き合うことで、子供がより主体的に学ぶきっかけが作れます。
こちらでは、共育とはどのような意味か、共育に関する様々な団体の国内での取り組み、共育を妨げるパパやママの特徴、家庭でできる共育への取り組みについてご紹介します。
共育とはどのような意味?
共育とは、「きょういく」もしくは「ともいく」と読む造語で、その意味は地域の人や企業など様々な立場の人達が連携して教育を行うことです。教える側(親など)と教えを受ける側(子供)が、共に学び成長していくという意味もあります。
子供には大人との年齢や経験の差がありますので、当然一方的に知識を受ける教育も必要です。けれど全てにおいて大人や親が常に教える側である必要はありません。時には対等な立場に立って共に学び、子供から学んだり大人も成長していったりすることが、結果的には子供の自主性や主体性を育むことに繋がります。
共育と教育の違い
教育とは親や学校の先生などの教育権のある人が、一方的に教えることです。
一方的に教えを受けるだけですので、子供からすると説明を受けるだけの受け身。言い方を変えれば、大人しく聞くフリをし、大人の言う通りに振舞ってさえいれば、言われたことについてきちんと考えていようがいなかろうが、どちらでもよいと捉えられてしまうこともある教え方でもあります。
もちろん教える側の親や先生は頑張って子供が興味を持てるようにし、学校の授業では席で話を聞くだけではなく実験や実習などもあります。ある程度自由にテーマを決めてよい活動もあります。けれど子供によっては上から目線で言われた通りにやるだけと感じることも。自由度が低く、中には主体的に考えて学ぶ必要性を感じない子もいます。
この状態は国際社会でリーダーシップをとる人財育成には望ましくありません。文部科学省も2020年よりアクティブラーニングを導入し、自ら考えて行動する教育への転換を図ろうとしていますが、様々な課題も指摘されています。
共育の考え方は、教育とは異なります。子供は教わって学ぶ側であると同時に、教える側でもあります。また教える側の大人は、子供と同じ目線での対話を心掛けます。
孔子は「三人行けば、必ず我が師あり」と論語の中で述べています。三人の人がいれば、必ず自分の師となる人がいるという意味です。相手の良い所を見習い、良くない所は反面教師として自らを改善すれという孔子の考え方で子供を見れば、子供だって大人の師となり得る部分が十分にあるのです。
さらに子供を育てるにあたって親や教師だけでなく、様々な環境や世代の大人達と共により良い子育てを考えていくことで、思い詰めたり行き詰ったりしていた難題も超えることができます。
皆が同じ目線で共に学ぶことで、一人では解決できなかった問題でも力を合わせて解決しやすくなり、しかも互いに成長できるというwin-winの状態を作ることができる。これこそが共育のねらいなのです。
共育のねらい
地域交流を通した共育は、普段は交流しない地域の年長者や企業で働く人達と話すことができる機会でもあります。
地域や企業の保護者向け学習プログラムなどもありますので、家族以外の社会で暮らす人達とのつながりを持つことができますし、親の視野も広がります。
地域によっては、研修を受けて地域の子育て家庭を支援するサポーターとなり、他の家庭の子育てを支援する共育活動も行われています。
こうした活動を通して外に出て地域の人とのコニュニケーションがとれることで、知り合いが増えてストレス解消になったり、ワンオペ育児の不安などを年長者に相談したりと、子育てのストレスを解消したり子育てコツを学んだりするチャンスにもなります。
また子供への共育では、大人が子供と同じ目線に立ち、子供を軸とした未来を考え、共に過ごすことで家庭・学校・地域の人達の顔や名前がわかるネットワークを広げます。これによって地域の子供達の安全が守られますし、子供と大人が意見を言い合える関係が築けるようになります。
高齢者との交流では子供達に思いやりの心が育まれ、こうした経験を積み重ねることで子供自身も主体的に学ぶようにもなるなど、共育には良い効果が期待できるのです。
共育への取り組み事例
共育は子供に対してだけでなく、企業内でも先輩後輩の垣根を超えて行われています。近年ダイバーシティと呼ばれる多様な人材活用で生産性を高めるマネジメントが国内でも増加し、従来の絶対的な上下関係から成り立つ企業内の人間関係も変わりつつあるのです。
国内の様々な現場で行われている共育の取り組みの一部を、具体的に見ていきましょう。
共育を広める川柳
愛知県新城市では共育(ともいく)を教育理念に掲げ、大人も子供も口ずさんで共に実践する共育ポスターを作ったり、大人も子供も市内在住者であれば全員が参加できる教育川柳を募集したりして、共育の普及に努めています。
新城市以外にも共育活動を行っている地域はあり、例えば富山県小矢部では平成15年より「おやべ市民ネットワーク委員会」という市民団体の主催で、「平成教育一揆」と称して子供達に伝えたいことや川柳を募集したり、交流会を開催したりしています。
「子に学び親に学びて人となる」(平成教(共)育一揆より)といった、親ならば共感できる共育に関する川柳が地域の共育川柳で発表されていますので、お住まいの地域に教育プログラムがある場合は、一度参加してみるとよいでしょう。
地元大学生考案の学習プロブラム
とある大学の学生達が考案した「中学生向け英語学習支援プログラム」はその例です。有志の学生の取り組みで、中学生に授業の復讐を中心に自分で考えたことや感じたことを英語で発信できるようにしようとする取り組み。教室で先生の話を一方的に聞くよりアットホームで学びやすい環境のため、子供の意欲も向上しています。
また北海道函館市には地元の大学生とお寺が共同で行っている、食を通して子供達の健全な育成と居場所を作ることを目的とした「函館てらこや」などもあります。地域のお寺の協力をえて行っているため、子供達は大人と共に遊んだり食事をしたりして学ぶと共に、礼儀作法や自分らしく生き抜く力を育むことができます。
世代間交流施設
世代間交流施設とは、老人ホームと保育園を合体させた施設のことです。高齢者は子供にあやとりやお絵かきを教えることで役割が生まれます。また子供は高齢者と触れ合うことができ、核家族化が進んだ社会には貴重な体験ができるなどメリットがあります。ただし法の規制があるため、なかなか広がらないのが現状です。
看護や医療現場での取り組み
看護学生と教員が共育に取り組んでいるとHPで報告している学校もあります。また薬剤師、臨床検査技師など他の医療の教育現場でも取り組まれつつあります。共育を取り入れることで、技術だけではなく心の成長も期待されているのです。
企業内の取り組み
車メーカーのマツダでは、上司、部下、同僚が共に学び合う共育を大切にしています。「ペアコーチ制度」を採り入れたことで「相談しやすい環境だった」「教えるために勉強をしたことで知識を深められた」といった、教える側と教えられる側の両者がメリットを感じる報告もあります。
また新人の育成、コーチの成長、職場の活性化を目的にした「OJTコーチ制度」も取り入れています。
OJTとは?
On the Job Trainingの略語です。実際の仕事(業務)を先輩、上司について学ぶ教育訓練のことを言います。指導担当者が随時職務に必要な知識やスキルを伝えることができるため、教育を受ける側は業務に沿った生きた情報を得られ、指導側も正しい指導のためより深い知識を必要とします。両面においても優れた共育システムと言えます。
共育を妨げているかも!?パパママの特徴
社会的にも取り組まれつつある共育は、家庭においても取り入れたい教育法。しかし子育てに一所懸命なご家庭では、パパママが共育のチャンスを逃しているかもしれません。次のような項目に心当たりがあるパパママは注意しましょう。
- 子供の言い分を聞かない
- 親の思い通りになるように言い聞かせる
- 自分の価値観に子供を当てはめる
- 食事中に注意ばかりする
- 友達や兄弟と比較してしまう
- 友達との喧嘩で自分の子ばかり注意する
- 結果しか見ず、過程を褒めない
これらの項目はパパママならば心当たりがある人が少なくないでしょう。しかし意識改革をして気をつけていくだけで、自然に家庭内での共育の準備ができていきます。またパパやママの会社やPTAなどでの人間関係も、良好に進めやすくなっていくでしょう。
家庭でできる共育への取り組み
文部科学省も家庭の教育力向上に必要な視点として、親と子どもの主体的な「育ち合い」(共育)を推奨しています。家庭でも共育は簡単に取り入れられ、親子共に成長をさせてくれますので、夫婦で情報を共有してぜひ実践してみましょう。
1子供の疑問に一緒に取り組む
子供は疑問の宝庫です。その疑問はさまざま。すぐに答えられるものばかりではありません。大人だって分からないことは多々あります。
「知らない、分からない。」と答えるのではなく、一緒に図書館に行くなどして子供と同じ目線に立ち共に学び疑問に一緒に取り組むこのことが大切なのです。
2親が指導者にならない
子供に対して“他人に迷惑をかけない大人に成長して欲しい”という願い。親の欲望だけでなく、親としてきちんとしつけるべき大切なことです。ただし加減が難しい。そのためつい「〇〇しなさい!」「〇〇でしょ!」と強い口調の指導者になってしまいがちです。
ですが幼児や小学生への厳しすぎるしつけは、必ずしも子供のプラスになるとは限りません。反抗期の強い反発につながる可能性も。
ですから指導するとの観点ではなく、子供の立場や行動理由を考えたうえで注意してみるとよいでしょう。ただし甘やかすのも厳しいしつけと同様にマイナスですので、危険なことをした場合は速やかに止め、いかなる理由があろうとも危険であることをしっかりと伝えましょう。
3身近な人への挨拶を親が率先して行う
子供だけでなく親もきちんと近所の人に挨拶をしているでしょうか?子供の「生きた教科書」はパパママです。親が「挨拶は?」と子供に言わなくても、大人が挨拶をしていれば子供もおのずと挨拶ができる子に育ちます。
挨拶がきちんと交わされている地域は知らない人が入ると目立つため、防犯にも繋がると言われています。安全な環境で子供と過ごすためにも、大切な役割を果たしてくれますので挨拶をすることはおすすめです。
4家族だけで子育てをしようとしない
親や身内といった家族だけの子育ては、価値観も近く楽と感じる人が少なくないでしょう。けれど他人と交流をしないことで視野が狭まりがちになり、厳しすぎる躾や甘やかし、過干渉に繋がることもあります。
けれど地域で行われている活動に参加するだけで、家族以外の周囲の人との交流ができ、新しい情報を手にすることもできます。
例えば、児童館や保健センターなどで開催される子育てのコミュニティーや地域のお祭り。参加をすることで同じ悩みを抱えたママと悩みを共有できたり、家族以外の年長者からアドバイスをもらえたりします。また、子育てに孤独を感じるママの打開策にもつながります。
5喜び・悲しみ・痛みを親子で共有する
子供が道や公園でこけて小さな擦り傷に大泣き。そんな時「大丈夫だからもう泣き止みなさい。」と言うパパママは少なくありません。しかし、こんな時こそ「痛かったね。」と言い子供が満足するまで泣かせてあげるといいでしょう。
喜び・悲しみ・痛みを親子で共有することで、子供は「自分のことを分かってくれている。」と感じ、親子の信頼関係が強固なものとなるのです。この信頼関係こそが、子供の人格形成に最も重要な要素の一つなのです。