英語の早期教育はメリット大?デメリットは?無理のない取り組み方
小学校での英語教育の開始時期前倒しに先駆け、英語の早期教育やバイリンガル教育への注目が集まっていますが、英語の早期教育については賛否両論あります。
興味があっても判断に迷っているパパママも多いでしょう。テレビやインターネットの情報があふれている時代だからこそ、ご自身の子供に合った英語教育を親がしっかり選ぶことが大切です。
英語早期教育の必要性を親が感じる背景
グローバル化が進み、国際社会で活躍する子供への教育として、英語教育の強化が必要になっています。ところが、小学生のうちは「楽しい」と感じられる英語も、中学生になると「苦手」と感じる子が増えてしまうのが現状です。
上智大学特任教授の吉田研作さんによると、グローバル化が進み英語の必要性は中学生も理解している一方で、海外には行きたくないとグローバルな活動には消極的な傾向が見られます。英語に堪能なはずの留学経験がない上智大学の日本人学生ですら、英語を使うことに自信がないのが実情だそうです。
こうした背景により文部科学省は、新学習指導要領を大幅に改訂し、令和2年度(2020年度)より新学習指導要領が小学校で全面実施されることになりました。
この改訂では、英語に親しむ外国語活動を小学校3年生から、新教科「外国語」を5年生からに前倒すことが決まっています。
そのため、乳幼児及び小学生の子供を持つ親の間では、「家庭で英語を早期教育するべきだろうか?」といった不安の声が上がり、英語早期教育の必要性を強く感じている人が増えているのです。
必要性あり?英語を早期教育するメリット
将来海外に行かないと言っている子供でも、企業公用語が英語の会社が増えはじめるなど、国際化する日本社会で活躍するためには英語教育が必須の時代です。
ただし、忙しい現代の子供達への早期教育には弊害も多いため、まずは親が英語を早期教育するメリット・デメリットをしっかりと把握し、周囲に流されずにいつどのように教育するのが我が子に合う教育方法かを選ぶことが大切です。
まずはメリットから見ていきましょう。
1苦手意識なく取り組める
英語の早期教育では、歌やリトミック、ゲーム、物語の視聴など、子供の興味を引いて楽しみながら学べる内容や教材が多いです。
そのため早い段階から楽しく自然に英語に親しむことができ、「英語」=「楽しい」に変換されやすいため、苦手意識が芽生えにくいと考えられます。
2好奇心と教材レベルが合い、楽しめる
初期段階の英語学習では、英単語を聴いてすぐにリピートすることとアルファベットの学習が基本です。知らないことだらけの幼児は指差しして物の名称を「これ何?」と親に聞いてきます。つまり、幼児期は言語が何であれ語彙習得への興味が比較的強い時期なのです。
例えば教材にりんごの絵が描かれていて、ボタンを押して「アポー(apple)」と英語の声が聞こえれば、面白がってしばらくボタンを押しますし、中にはりんごを指差して「アポー」と親に言う子もいます。英語教室でも先生が発音して「Repeat after me(私の後に繰り返して)」と言えば、意味が分からなくても身振り手振りや周囲の様子から抵抗なく繰り返します。
一方、中学生になると「何でこんなことしなきゃいけないの?りんごはアップルでしょ」と困難さや興味のなさから反発する子供もいて、習得が難しくなるのが実情です。つまり、英語教材や学習に楽しく親しみやすいというのが、英語早期教育のメリットの一つなのです。
3音に慣れやすい時期で、習得しやすい
乳幼児期は英語教育の第一段階である「聞く力」が大人と比較して敏感で優れているため、英語の早期教育をおすすめしている本などが数多く出版されています。
乳幼児期は脳の神経細胞が豊富で、口や体の動き、音などを感じる力や真似る力が優れていることから、英語に限らず言語習得に適していると考えられています。
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育脳のスペシャリストたち(尾木ママや久保田カヨコおばあちゃんなど)からのアドバイスが詰まった1冊です。英語教育だけではなく、勉強脳、運動脳、そして入学前に絶対にしておきたいこと、してはいけないことも書かれており参考になります。
「何回か聞いただけの曲を子供が自然と歌う」「数回しか見ていないテレビCMの真似をしていた」などが、こうした幼児の能力を示す代表例です。
ですから、大きくなってから英語を習うよりも習得が比較的楽で、発音もよくなるとうのが英語早期教育のメリットの一つと言えます。
4感情表現への抵抗感が少なくなる
英語は日本語と比較して感情表現がストレートな言語であり、外国人の感情表現が日本人に比べて豊かなことは周知の事実です。大人でも英語を習い始めると、ボディランゲージを含めた会話が必要になり、「性格まで明るくなったのでは?」と感じる人もいます。
子供に与える影響はそれ以上です。日本人から見たネイティブティーチャーのオーバーリアクションを小さい頃から見慣れているため、日本人が苦手とする感情表現への抵抗感が少なくなることに繋がると考えられています。
5英語に触れる時間を多く確保できる
英語に限らず語学習得には時間が必要です。母国語ですら、体内で音を聞き始めてからコミュニケーションがスムーズになる5~6歳頃までに、3万時間は日本語を聞いていると言われています。
母国語以外の英語であればなおさら、触れる時間が多く必要です。つまり、英語の早期教育は、英語に触れる時間を増やせるのが大きなメリットなのです。
弊害あり?英語早期教育のデメリット
英語の早期教育には魅力的なメリットがある一方で、早期教育によるデメリットも指摘されています。特に英語の場合、母国語を習得する前の語学教育ですので、他教科への影響や人格形成面も心配されます。
英語の早期教育を行いたいご家庭では、親がデメリットをしっかりと把握し、子供へのフォローをしっかり行うことが大切です。
1日本語の語彙力不足につながる可能性
英語に限らずどの言語でも、母国語以外の言語の早期教育を行うことで、「ダブルリミテッド(セミリンガル)」と呼ばれる状態になるリスクがあり、大きなデメリットとして心配されています。
ダブルリミテッド(セミリンガル)とは?
母国語と第二言語の両方の習得が中途半端になり、どちらの言語においても表現力や思考力が年齢相応に達していない状態を指します。
ダブルリミテッドの状態にある子供は、コミュニケーションを取りたくてもうまく伝わらないため、感情のコントロールが難しくなったり、自己肯定感が低下したりする可能性があります。
特にバイリンガル教育をしたいと考えているご家庭では、誤った英語を教えたり、単純に英語の学習時間を増やしたりすればいいと考えていると、ダブルリミテッドになりやすくなるとも言われていますので十分に注意しましょう。
2英語や勉強嫌いになる可能性
家庭で厳しく叱りながら英語のワークドリルなどの興味を持ちにくい教材ばかり使って教えてしまうと、子供は英語を楽しめず、英語嫌いや勉強嫌いになってしまう恐れがあります。
子供の教育スキルがない親が英語の早期教育に熱が入り過ぎてしまうと、「昨日も間違えたよ」「何で書けないの」などとネガティブな指導を行ってしまいがちです。そうなると子供のやる気を損ない、早い段階から苦手意識を植え付けられてしまうのです。
3日本の文化や学校に馴染みにくい可能性
英語の早期教育のためにプリスクールやインターナショナルスクールに通った子供が、途中から公立の学校に通うことになった場合、英語はできても残念ながら日本文化や日本人の考え方との違いにより苦労することがあります。
また、バイリンガル教育を受けている子供の場合、思春期になると幼児期から培った異なった2つの文化や言語の狭間で、「自分は何者なの?」というアイデンティティーについて悩むこともあります。
そうならないために母語をしっかりと鍛え、日ごろから日本文化に親しみ、日本人の考え方を学ぶことが大切になるのです。
4運動や遊び時間の不足
早期教育に親が熱を入れるあまり塾や習い事が多くなり、子供が自然に触れ、自由に考え、好きなことをして遊ぶ時間が不足するのは問題です。
健全な子供の発育や学力向上には、睡眠・運動・栄養の3つが必要不可欠です。この3つが不足したりストレスを強く感じたりすると、子供は心身の不調につながる可能性があり、心の発達にも影響を及ぼす場合があります。
令和2年度(2020年度)から始まる小学生の英語教育でも、小学生のカリキュラムは既にぎっしり詰まっており、授業時間を削ることは困難です。そのため、朝読書の時間や中休み・昼休みの時間を利用して子供達に早期英語教育を進めようと模索されているのが現状です。
ですから、家庭でも子供に必要な運動時間や自由時間が削られるとなると、子供の健全な成長への大きな不安要素となってしまうのです。
5学校の授業がつまらなくなる可能性
英語に限らずどの教科でも、小学校入学後に授業がつまらなくなり、集中して楽しく授業を受けられなくなるのが早期教育の弊害の一つです。
知っていることを黙って聞かなければならない場面が多いため、学校の授業がつまらなくなってしまうのです。小学生の通知表は意欲や関心が大きな割合を占めますので、成績が思っていたより悪いことで自信を失ってしまう子もいます。そのため、英語の早期教育による弊害で成績が悪くなった子には、メンタル面への十分な配慮が重要になります。
幼児や小学生を英語塾に通わせる際の注意点
大人が一方的に押し付けて英語塾に通わせてしまうと、後々英語嫌いや勉強嫌い、子供のストレスの原因になることもあります。早期教育を受けている子供の場合、初めは喜んでいても小学校入学後はお友達と遊びたくなり、塾を嫌がる傾向もあります。
英語塾の後に「今日も楽しかった?」などコミュニケーションをしっかりとり、子供が現在どのように考えているか把握するように心掛け、子供の本音に寄り添って、成長に必要なことが不足しないように注意しましょう。
- 毎日の遊びや運動時間をしっかり確保する
- 家庭学習や宿題などを無理強いしない
- 勉強のために睡眠時間を遅くしたり削ったりしない
- 嫌がっても怒らない
無理のない英語の早期教育への取り組み方
英語に限らず早期教育には弊害もありますが、子供の意思を尊重し、自由遊びとのバランスを考えて、楽しめる環境を作っていけばマイナスにはなりません。
例えば、部屋の壁紙にアルファベットのウォールステッカーやポスターを貼るといった、子供が英語に興味を持った時に、自然に目に入るような早期教育はおすすめです。
他にも、家庭内に英語を使ったコミュニケーションを取り入れたり、家族で海外旅行に行ったり、子供が喜ぶなら英語絵本で読み聞かせをする、音の出る英語おもちゃで遊ばせる、DVDアニメを見せるなどもよいでしょう。
また、パパママが上の子へ、上の子が下の子へと家庭内で教え合いをするのも、子供にとっては楽しめる手法の一つです。
英語の早期教育を行いたいママは、自然な形で日常生活に取り入れ、親子のコミュニケーションツールとして楽しく活用していくとよいでしょう。



