自主性が宝!イタリアの小学校に関する記事

『イタリアの小学校20の特徴~子供の学習意欲が高まる仕組み』

個性的で独創的なアイディアをもつイタリア人。その基盤教育を行うイタリアの小学校では、考える力を育む評価法と学校制度によって、個を大切にしつつ自主性を育くみます。やる気のない我が子に悩む日本のママやパパ必読です!

マーミーTOP  >  子育て  >  イタリアの小学校20の特徴~子供の学習意欲が高まる仕組み

日本とこんなに違う!イタリアの小学校のやる気が育つ20の特徴

イタリアの小学校は、幼稚園までの「お遊び専念」から一変し、入学後から「お勉強モード」へとスイッチが切り替わります。たとえ小学校といえども、イタリア人にとって学校とは勉強するために通うところ。

それが分かっているからこそ、あえて一年前倒しで入学できる小学校への飛び級制度を利用せず、「うちの子はもう少し幼稚園でゆっくりさせてから入れたいわ」と、義務教育が始まるまで焦らずに我が子の成長を見守るマンマも多いのが実情なんです。

一見「勉強漬け」のように思えるイタリアの小学校の教育システムや特徴を、こちらでは詳しくご紹介します。日本人の親にとっては目から鱗の、子供のやる気や個性を育む秘訣が満載です!

イタリアの小学校の教育制度

イタリアの小学校は、2学期制5年生まで。9月中旬に始まり、翌年の6月上旬に終わります。ほとんどが公立の学校で、学費や教科書代は義務教育ですので日本と同様に無料です。

生徒数は普通学級で1クラス15人以上26人以下の少人数制。一クラスの上限が40人の日本の小学校と比べると、非常に恵まれた教育環境です。

大体8時過ぎに始まり、朝礼も朝自習もないため、着いて間もなく授業が始まります。1日5時間授業で、最終授業は通常13時半頃に終わります。

終わるのが早過ぎて親は困らない?

共働き家庭が多い大都市やその近郊都市では、フルタイムの小学校があって午後4時半位に終わります。私立の小学校には午後6時まで開いているところも。ただし入学するには、家庭の事情や親の仕事の都合が優先されます。

また日本のような学童保育はないものの、大都市には仕事を終えた親が迎えに来るまで、学校終了後に一時的に子供を預かってくれる民間のサービスがあります。

自主的に学ばせる!イタリアの小学校

イタリアの小学校には次のような特長があるため、子供達は毎日の学習を楽しみ、やる気をもって自主的に取り組みやすいです!

イタリアの学校の特長

  1. 子供達は学校の決まりや活動にしばられることなく、比較的自由に時間を過ごす
  2. 生活の中で勉強と遊び、あるいは校外活動、とメリハリをつけて過ごしている
  3. 少人数制の授業で、生徒の理解度を確認しながら進める
  4. 教科書の丸暗記ではなく、自分なりの解釈を自分の言葉で発言することを重視する
  5. 多様性の許容を促すインクルーシブ教育
  6. 子供がすることを大人が厳しく矯正せず、時間をかけて理解させる

政府は学校に対して「ゆるい」コードを設定し、カリキュラム・科目数・教員数・授業時間などの大きな枠組は作りますが、後は地域や学校に任せ、教える側も自由に教科書を選定し、自分の考えに基づく授業を行えるようにしています。

このような「ゆるい」コード設定が、教師側にとって教えることに専念できる「ゆとり」を生み出すと共に、子供達にとっても校外活動や興味の対象を掘り下げる「ゆとり」につながっているのです。

これらが相互にうまく噛み合わさることで、子供達は個性豊かで独自の考えを持ち、多様性を認める寛容性を備えたイタリア人に育っていきます。

日本とここが違う!イタリアの小学校

同じ先進7ヵ国の1つと言っても、イタリアの小学校はシステムや学校設備など日本とかなり違います。

日本の小学校は勉強だけが目的の場ではなく、社会のルールを先生が教えて身につけさせる場ですが、イタリアの小学校は勉強のみをする場所。勉強以外は教育制度を通して、体験しながら自分自身で気づかせる仕組みになっています。

また授業は理論中心。授業時間を少なくし、短時間に集中して子供達が「どうして?」という疑問を掘り下げて学ぶ高度な学習を行います。少人数制だからこそできること!そのため小学生のうちは、実習がほとんどありません。

入学式・卒業式がない

イタリアの学校では入学式や卒業式がありません。また新学期の始業式や終業式もありません

新学年初日は新入生を除いて時間通りの授業が始まり、学年最後の6月の最後の授業日は、終了の鐘が鳴ると共に子供達の歓声が聞こえます!

子供の送迎は親が行う

防犯のため、子供の送迎は親に任されています。

終了時間が近くなると、親達が校舎入り口の外で子供達が出てくるのを待っている姿が見られ、道路には送迎の自家用車が列をなすため渋滞します。

先生達は親の顔を確認しながら一人一人子供を手渡していきます。もし親が仕事などの都合で迎えにいけない場合は、予め学校に代理人申請をしておけば代理人が迎えに行けます。

スモックを着用する

近年、スモック着用が義務付けられました。私服を汚さないためと、身につける物の違いによって子供達の間で差別意識が生じないようにするためです。

キラキラ光りものが付いている服や、高級ブランド服を着せて登校させる親がいるので、問題視されました。また、子供の非行に早期から歯止めをかけるという狙いもあります。

休み時間は1日1回のみ

イタリアの小学校は1日5時間授業ですが、日本のように細かい時間割はなく、10時過ぎになると約15分の休憩を取ります。

その間にトイレを済ませたり、家から持ってきたおやつを食べたりして少し腹ごしらえをし、終了時間までの授業に備えます。

大事な授業は午前中に行う

イタリアには午前中で終わってしまう学校と午後も授業を行うフルタイムの学校がありますが、学校間で授業の進度に差が出ないようにするために、大切な授業は午前中に行われています。

午後の時間帯は、午前中の授業の補習をしたり、家庭学習をしなくても済むように宿題をしたりする時間に充てています。

当番・日直・委員会活動がない

イタリア人は子供達の仕事は勉強することと考えているため、学内の清掃や給食の配膳を行う掃除当番や給食当番はありません。

全て業者さんが入って行いますので、子供達が給食を配ったり、授業の後に掃除をしたりすることはなく、子供達は授業が終わるとすぐに帰宅します。

水泳の授業がない

イタリアの小学校にはプールの施設がないので、体育の授業に水泳がありません。

イタリアはどこも海に囲まれているので、海水浴はとても身近な遊びです。子供達は夏に家族と海に行った時に泳ぎを覚えたり、あるいは放課後のスイミング教室に通って泳ぎを覚えたりします。そのため水泳は、イタリア人にとって人気がある習い事の一つです。

運動会がない

イタリアの小学校には、なぜか全校生徒が一同に集まって競技するは運動会がありません!オリンピックの発祥地、ギリシャは近いのですけど。

ただし遠足や、学年末に生徒達が集まって合唱をしたり劇をしたりする日本の学芸会の様な機会はあります

理科室(実験室)がない

理科では色々な事を学びますが、学校には理科室がなく、理論中心の授業が行われています。

その分、イタリアに吹く局地風の名称、方位、火山の種類、水の循環、物質の三態、アルキメデスの原理などを学習し、小学生のうちから日本の中高校生が学ぶ高度な内容も学びます。

101年生からの英語授業

イタリアの小学校に全面的に英語が導入されたのは2003年からです。

低学年の時は、英語の歌を歌って踊ったり、絵や写真を見ながら単語を覚えたりします。
3年生からは簡単な詩を覚え始め、4~5年生は教科書に従って動詞の活用などを学習し、会話を中心とした授業を進めます。

さらに5年生は、トリニティ(GESE)試験と呼ばれるスピーキングとリスニングのスキルを見るテストを、任意で受けます。

11授業中の発言を重視している

イタリアの教育では、知識や情報の伝達よりもそれぞれの個人の考え方を伸ばすことが目的になっています。そのため授業中に当てられて何も発言しないでいると、何か発言して間違った場合よりも成績表に低い点数を付けられてしまうのです。

さらに、発言する際の態度も評価点に含まれるため、子供達は間違うことを気にするよりも堂々と自分の意見を発言するようになるのです。

これは内閣府が公表した「親と子の生活意識に関する調査」でも、多くの日本人が子供の教育で重要視している点ですので、ぜひ日本人の子育てに取り入れて欲しいおすすめの方法です。

12クラスによって教科書が変わる

イタリアの小学校には教科書の検定や指定がなく、教師が自分の判断によって自由に教科書を選べるので、同じ学年の同じ科目であっても、複数の教師が教えている場合は、それぞれ使用する教科書が違います。

ですから「教科書を忘れたから別のクラスの人に借りよう」という手は残念ながら使えません。

13宿題が多い

イタリアの小学校は日本と比べて宿題がかなり多いのが特徴です。そのため塾は必要ありません。午後もあるフルタイムの小学校では、平日は家庭での宿題を出さないように配慮されていますが、午前中で終わってしまう小学校では、ほぼ毎日、科目ごとに宿題が出されます。

ただし友達の誕生パーティーや習い事、家族内行事などと重なると、翌日学校へ行くかどうか子供が悩んでしまうことも。

14ランドセルはなく、リュックは重い

日本の小学校と言えばランドセルですが、海外の小学生は基本的にランドセルを使わず、イタリアでも小学校にはリュックで登校します。

イタリアの教科書は大判サイズで小学生用なのに厚みがあり、まるで日本の中学生のよう。たとえ学校のロッカーに置くことができても、宿題をこなすために家へ持ち帰ります。

「大きなリュックに重たい教科書を詰めて持ち歩くのは、子供の成長の妨げになる」と考え、親が代わりにリュックを担いで学校の入り口まで送迎する家庭が多いです。

15留年がある

小学校は義務教育ですが、欠席日数が多い、授業態度が悪い、勉強を全くしないなど、障害を抱えていないにもかかわらず学習面に大きな問題がある場合は、留年する可能性があります。

ただしこれについては賛否両論あり、留年した生徒がクラスから追い出されてしまうことがないよう、余程のケースを除いて避けた方が賢明だと考えられています。

162ヵ月毎に保護者面談がある

子供達の授業中の様子や成績について、2ヶ月ごとに保護者面談があります。普段、親には分からない学校での子供の様子を把握できる良い機会になるので、なかなか有意義です。

筆者も面談で、子供が一時、勉強に身に入っていないと指摘されたことがありましたが、その後、一緒に話しあう機会を持てて改善につながりました。

17夏休み3ヶ月!休みが多い

イタリアの夏はジリジリした暑さで、年によっては5月後半でかなり気温が上がることも。そのため暑い夏を避けるために、学校も早仕舞いしてしまうのが伝統です。

4月後半になると国民の祝日やメーデーなど休日も目白押しで、早くも夏休み気分。しかし長い夏休みも後半に入ると、子供も飽きてきて新学期が待ち遠しくなります。

18音楽/美術がなくなることがある

芸術の時間と称し、美術・音楽・舞踏(ダンス)のいずれかをその時間帯に行いますが、どれを学ぶかは教師によるので「小学校卒業するまで1回も音楽の授業がなかった」などというケースがあります。

おまけに家庭科の授業も学校教育に盛り込まれていないので、ボタン付けもできないのは残念!大人になって洋服のボタンが取れた時はどうするのでしょうか?

19クラス替えがない!

イタリアの小学校にクラス替えはありません。そのクラスを教える先生達も生徒達も5年間一緒に持ち上がります。

「教え方が上手くない先生に当たって、勉強が分からない!」となったり、そのクラスに合わなかったりした場合は困ってしまいますので、そんな時イタリア人の親は、クラスを変えたり転校させたりすることもあります。

20特別支援学級がない!

イタリアでは、障害を持つ生徒は、保育園から大学まで、普通学級で他の生徒達と一緒に授業を受けています。これは、1970年代から始まったインクルーシブ教育制度によるもので、ハンディを持つ生徒には補助の先生がついて授業に参加します。

多様性を許容する感覚を育む教育が、保育園の時から実践されていることは素晴らしいです!

メリハリで楽しく学べる!イタリアの学校

イタリアでは中学校や高校はどこも午前中で終わり、時間的な面でもあまり厳しくコード化されていません。

ところが小学校のうちの理論中心の授業によって机に向かう習慣が身につき、早い段階での留年制度もあるため、沢山出される宿題をこなしていくうちに、自然と勉強する習慣を身に付けていくことができるようになります。

またイタリア人は「勉強する時は勉強に専念し、休むときはゆっくり休む」というように、メリハリをつけた生活を好みます。夏休みまでは学校側も宿題を沢山出して生徒達をしごき、授業も速いスピードで進みますが、バカンスに入れば生徒達も先生達も解放されて、それぞれが思い思いの時間を過ごすのです。

この記事を書いたライター

川島レア

イタリア人研究者と結婚後、イタリア生活早20年。現在、翻訳及び被服関係、バイリンガル教育活動中の2児の母です。