子ども・子育て支援新制度に隠された問題点にクローズアップ!
平成27年春いよいよスタートすることとなった「子ども・子育て支援新制度」!
深刻な少子高齢化社会を迎える日本で、女性の社会進出を進め、労働力を確保すると共に、子供の出生率を向上させるための、新しい子育て支援制度です。
日本の子育て家庭の女性就業率は約45%!この数値は、新制度の導入によってどう変わるのでしょう?
また、子供達のうける保育の質や保育料、待機児童問題は?
新たな模索が、今、始まろうとしています。
親として知っておきたい!子育て支援新制度が抱える5つの問題点
この新制度の主役は制度を作る政府や有識者ではなく、実際に子供を育てるパパやママであり、これから子供を産み育てる若い世代です。
自分とは関係ないでは済ますことができない、子育て支援新制度が抱える問題点について、一緒に考えていきましょう。
1待機児童問題が解消されない!?
新制度の導入の最大の目的は、「保育・教育施設を増やし、待機児童問題を解消する」ということです。
そのため、新制度では現行の教育・保育施設に、新しい形態の施設が増えることになりました。
<現行の教育・保育施設>
- 保育所
- 幼稚園
- 認定こども園
<新たに新設された地域型保育>
- 家庭的保育
- 小規模保育
- 事業所内保育
- 居宅訪問型保育
これまで待機児童を抱えた親は働きたくても働けず、また働くために子供を無認可の保育所や個人のベビーシッターに預けることで、子供が事故やトラブルに巻き込まれるといった問題点が指摘され続けてきました。
そのため、多くの人が受け入れ施設を増やすことを提唱してきたのです。
平成18年に待機児童解消策として保育所・幼稚園に次いで新たな第三の子育て支援施設として「認定こども園」が開設されました。
これにより幼稚園の空定員を、待機児童用の受け入れに使えると考え導入したのですが、実際は「認定こども園」へ移行する幼稚園の数が思ったより伸びず、待機児童解消に成果をあげることができませんでした。
「認定こども園」自体が、施設や人員の確保、施設を作る経済的な問題などの、さまざまな問題点を抱えているのです。
今回の新制度ではその問題点の一つである、「認定こども園」の認可手続きを簡素化し、新たに「地域型保育」を導入することで、どれだけの施設が増えていくか、また増えたとしても、保育の質や子供達の安全を確保できるのかなど、さまざまな課題の解決が未知数であるといわざるをえないのです。
待機児童解消への新制度の問題点
- 幼稚園や保育所にとって「認定こども園」へ移行するメリットが少ない
- 保育を担当する人員が全国的に不足している
- 新制度では公的資金援助が受けられるのは「認定こども園」のみなので、保育園増設には関係ない。けれど、認定こども園には0~2歳児や障害児を受け入れる義務はないので、拒絶されるかもしれない。
- 新制度で導入される、「地域型保育」へ参入する事業者数が不明確 など
2今まで利用してきた保育所に通えなくなるかも!?
新制度で大きく変わるのは、「認定制」の導入です。
この制度が導入されたことにより、子供に保育や教育を受けさせたい場合、住んでいる市町村から「保育の必要の有無」に関する認定を受けなければならなくなりました。
実は、保育所に子供を通わせている親にとっては、この「認定制」がクセ者なのです。
この「認定制」の導入で問題となるのは、保育の必要性、つまり親の就業状況などにより、受けた認定に該当する施設以外は利用できなくなるのです。
例えば、保育園に通っていた乳児のママが失業した場合、新制度では90日後には認定資格がなくなり、保育園に預けられなくなってしまいます。90日後に再就職できなかったらと考えると…不安になりますね。
ココが「認定制」の問題点
認定性により、幼児教育のみの1号と保育が必要な2号、3号に分類されて、さらに親の就労時間により保育時間も標準時間(最大11時間)と短時間(最大8時間)に分けられます!
そのため従来と同様に、自分の希望通りの施設や保育時間が選べなくなります
3市町村はもう味方になってくれない!?
認定制の導入に対しては、地方自治体の保育・教育に対するかかわり方が変わってしまうという問題点も指摘されています。
これまでは「保育を提供する義務」が市町村にありました。
市町村が保育園と私たち親との間に立ち、仲介や斡旋をすることで、私たちは公平な保育を受けることができていたといっても過言ではありません。
しかし子育て支援新制度の導入に伴い、これまで市町村が行ってきたこれらの業務を、利用者支援員が行うことになります。
そのため、これまでのように保育施設との調整をして親を助けたり、保育の斡旋をするなどのサポートが希薄になるのでは?という心配の声もあります。
また、市町村が仲介しないことにより、たとえ2号3号の認可受けても、保育や認定こども園を必要とする子供を受け入れるか否かは、保育施設の判断にゆだねられることになります。
そのため、受け入れ義務がない新制度では、保育施設が「この親は保育費用を支払う能力がない」とか、「この子供は面倒をかけそうだ」と判断して、保育を必要とする子どもを受け入れない可能性もあります。
生活に困窮している親や、障害児を抱える親という公平な保育の保障を最も必要とする人達が不安になる状況なのです。
これまで市町村が果たしてきた役割
- 保育料の徴収
- 生活困窮者への保育料の補てん
- 受け入れ先の保育所の斡旋
- 保育所との間に生じたトラブル解決の仲介
- 障害のある子供の受け入れに関する保育所との調整
4親の金銭的負担が増える!?
一番気がかりな、金銭的な問題ですが、保育料については現行の制度と変わらず、親の収入に応じた支払いが基本です。
新制度の保育料は国が定める基準を上限にして、それぞれの市町村が定めるので、保育料が現行以上に値上がりするということはない、という面では安心なことですね。
ところが…実はここにも問題点が隠されています。
「保育料は今まで変わりません」に安心してはいけません!
新制度ではあくまで認定を受けた部分だけが保障されるだけなのです。
例えば、短時間で認定された親が、残業してお迎えが遅くなった場合、残業時間の保育については一時保育を受けることになり、その費用は親の自己負担が原則となります。
さらに新制度導入後は、これまで市町村が負担してきた給食費も親の実費負担になり、施設ごとで上乗せ利用料などの実費負担が増えることも予測されます。
親の金銭的な負担が増えるということは、子供の施設利用や親の就業状態にも影響を出しかねない大きな問題です。
新制度導入後に親の実費負担となるもの
- 認定外時間の保育料
- 給食費
- 早朝、夜間、土曜日等の上乗せ利用料
- 入学金などの施設ごとの個別費用
- 体操や音楽などの施設特有の教育費用など
5質の良い保育や子どもの安全は大丈夫!?
新制度の最大の目的である、待機児童問題解消のための保育・教育施設の増設。
これは保育の場に民間企業の参入を増やし、新たな事業や雇用を生み出すといったメリットが期待されます。
ところがその反面、子供達が十分な保育を受けて健やかに成長するという憲法でも認められた権利が脅かされるのでは?と懸念する声が上がっています。
万民のもと公平・平等であるべき保育の現場に、利益追求を目的とする民間企業が参入することで、最も弱い立場の人達が、保育の現場から追い出されるのではないか?と心配されているのです。
これまでは市町村が保育を提供する義務を負うことにより、裕福な家庭の子供でも、生活に困窮する家庭の子供でも、公平に同じ保育を受ける権利が保障されてきました。
仮に親の収入がなくなり保育料が支払えなくなった場合も、市町村が補てんするなどして、最低限保証されてきた子供の保育ですが、新制度導入後は参入する企業によって、簡単に覆されてしまうかもしれません。
新制度では保育料を徴収するのは施設=企業になります。
裏を返せば、どのような理由があっても、保育料を払えなくなった親(=客)は、企業側が排除することもできるのです。
事業者が営利追求に走ると?
- 「保育」が商品化され、音楽や体育などの独自のプログラムを売りにした保育内容で、親の競争心をあおる可能性がある
- 公平な保育が失われ、貧富の格差が生じる
- 生活困窮家庭や障害児を抱える家庭など、子育て支援を必要とする家庭への支援が希薄になる
子育て支援新制度導入の目的を理解しておきましょう
ここまで子育て支援新制度の問題点について考えてきましたが、新制度は本来、私たちが子供を産み、育てやすい社会を作り出すために始まる新たな制度です。
まだまだ問題を抱えていますが、問題点を指摘してばかりで、ため息をついていても前に進めません。
新制度に移行後に問題点が浮き彫りになった場合は、新制度の主役である私たちが問題を提起し、子供達にとって最良の道を選んでいくことが大切なのではないでしょうか。
知っておきたい子育て支援新制度の目的
- 幼稚園と保育園の良い機能を兼ね備えた「認定こども園」の普及を図る
- 保育の場を増やして待機児童を減らすことで、子育てと就業を良質しやすい社会を目指す
- 幼児期の教育や保育に加えて、地域の子育て支援の質や量の向上を図る
- 子どもが減少している地域の子育ての支援を推進する