共有型しつけで我が子の学力をアップ!自ら伸びる子に育てる方法
親子の触れ合いを大切にし、子供の好きなことや楽しめることを親子で共有する共有型しつけ。この共有型しつけが幼児の能力を高めるという調査結果があり、近年教育関係者の間で注目されています。
ここでは、共有型しつけとはどのようなしつけか、その他のしつけのスタイルや共有型と強制型の特徴、共有型しつけの効果や強制型しつけで伸びない理由、共有型しつけにシフトする方法についてご紹介します。
共有型しつけとは?
共有型しつけとは、発達心理学や認知心理学の専門家である内田伸子さんが提起したしつけスタイルの一つです。
幼児への主なしつけのスタイル(注1)
- 共有型しつけ
親子の触れ合いを大切にし、子供の好きなことや楽しめることを親子で共有できるしつけ - 強制型しつけ
子供にトップダウンで厳しい指導や命令をし、言いつけを聞かせようとするしつけ - 自己犠牲型しつけ
子供を何よりも大切に考えて優先するため負担が大きく、育児不安か放任のどちらかになりがちなしつけ
内田信子さんと言えばNHK「おかあさんといっしょ」の番組開発やベネッセ「こどもちゃれんじ」の監修にも携わり、しまじろうパペットを考案した育児のスペシャリスト。数々の著書や論文を発表し、TV番組や雑誌等でも共有型しつけについて解説しています。
2007年より内田さんが中心となって行ってきた日本・韓国・中国の幼児期のリテラシー調査では、読み書きの能力や語彙力は収入と比例しているものの、経済格差ではなく、しつけスタイルが強く関係しているということが明らかになりました。
共有型しつけは高所得層に多く、強制型しつけは低所得層に多く見られましたが、低所得層であっても共有型しつけであれば幼児の語彙力は低くならないということも判明しました。(注1)
共有型?強制型?各しつけスタイルの特徴
具体的に共有型しつけとはどのようなしつけなのでしょう。理解をより深めるために、対照的な強制型しつけの特徴と一緒に詳しく見ていきましょう。
共有型しつけ=共感的なかかわり
共有型しつけの最大の特徴は、親と子が楽しい経験を共有して家族の絆を大切にする共感的な関わりです。
共有型しつけの特徴10
- 子供の人格を尊重し会話やふれあいを大切にする
- 子供と一緒に遊び、楽しい経験を共有する
- 家庭内の蔵書の数が多く、親も本好き
- 乳児期から絵本の読み聞かせをしている
- 興味関心に熱中できる環境を与えている
- 理由や根拠を説明しながら会話をする
- 褒める、励ますなど情緒面へのサポートが多い
- 子供に考える余地を与えて会話をする
- 親は子供の様子に敏感で、合わせられる
- 子供を見守り、求めに応じてヒントを与える
共有型しつけをする親は、子供がいろいろな経験をする際や毎日の生活内でも口や手を挟みません。そのぶん子供に目を向けて見守り、子供の反応に敏感です。
会話の際にも大人が一方的に答えるようなことはしません。「そうだね。楽しかったね。」や「何でそう思うの?」「一緒に調べよう」と言うように、共感や回答へ導くためのヒントを出すのです。
そのため共有型しつけを受ける子供は親に温かく見守られながら考えて行動することができ、自主性が伸びて自立心も育ちます。また「親はいつでも自分の味方」と感じながら成長できるため、親子の絆がしっかり築かれ信頼度や充実度が高くなります。
強制型しつけ=指示的なかかわり
強制型しつけの最大の特徴は、親中心のため子供に命令し、力でしつけようとすることです。
強制型しつけの特徴10
- 子供を親の思い通りに育てたい
- 子供への禁止や命令が多い
- 言うことを聞かないと罰を与える
- 家庭内の蔵書の数が少ない
- 子供は自分で考えて行動せず親の指示待ち
- 子供に理由や根拠を伝える会話が少ない
- 子供をあまり褒めず勝ち負けの声がけが多い
- 子供に考える余地を与えずに会話をする
- 子供が親の顔色をうかがいながら行動する
- 子供の行動に過度に口出しや手出しをする
親は子供の将来の幸せを願い「ちゃんとしつけるのは親の務め」と考えるがゆえに、過干渉にクドクドとたとえ力づくになってもしつけようとします。
また子供が少しでも思い通りにならない場合は怒って「言うことを聞かないから失敗するんだ」という勝ち負けの声かけをすることも。
そのため子供は一見素直に従いますが、不満を抱えやすくなります。子供の幸せを願う姿勢はどの親も同じなのですが、一方的に伝えてしまうと子供には親の愛情やしつけの意味が伝わりにくいのです。
語彙力が伸びる!共有型しつけの効果
乳児期に共有型しつけを受けて育った子供は、語彙力や国語力が高い傾向があります。
これは共有型しつけをする家庭に蔵書が多いため、活字に触れる環境が整っていることや、親も本好きであることが多いことなどが理由の一つと考えられます。
また子供や家族との会話を大切にしているため、語彙力だけではなく主体性、コミュニケーション能力、思考力、問題解決力そして親子の信頼関が養われやすいのです。(注2)
頭が真っ白に!?強制型だと伸びない理由
脳科学では強制型しつけを行ったり、ドリル学習を強制したりすることで、記憶力が低下することが明らかになっています。
脳の中心部に位置する大脳辺縁系の「偏桃体(へんとうたい)」と呼ばれる部分は、恐怖・悲しみ・喜び・記憶・価値判断等を司っていますが、この偏桃体が不快に感じると過去の不快な記憶がよみがえり、頭が真っ白になって物事を考えられなくなってしまうのです。
社会心理学にも「気分一致効果」と呼ばれる効果があり、やはり強制型しつけを受けた子供の語彙力や学力は伸びにくくなると考えられます。
気分一致効果とは?
気分は認知や記憶力に影響を及ぼし、その時の気分と一致する物事を認知して記憶しやすいという効果です。
例えば楽しければ楽しい内容を考えたり覚えたりしやすく、悲しければ悲しい内容を考えたり覚えたりしやすいのです。
幼児へのしつけは人生をプラスに変えて楽しく暮らしていくために必要なポジティブなこと。けれど強制型しつけは子供にとって不快でネガティブなこと。この気分と覚える内容の不一致により、親との会話やしつけられた内容を考えたり覚えたりしにくくなるのです。
このように脳科学と社会心理学のどちらの面から見ても、強制型しつけを受けた子供の語彙力や学力は脳が本来の力を発揮できなくなるため伸びにくく、何度注意されてもしつけが身につかないと考えられています。(注2、3)
まだ間に合う!共有型しつけ8つの方法
これまで強制型しつけを行ってきてきた幼稚園児や保育園児、小学生のパパやママの中には「失敗した!でももう手遅れ」と思ってしまう人もいるでしょう。
けれど内田信子さんは「子育てに『もう遅い』はありません」と著書の中で語っています。ぜひあなたも共有型しつけにシフトしましょう。
1口出しをせず見守りを強化する
子供を見守ることは共有型しつけの基本です。子供に聞けんが及ばない限り、間違った行動をしても手出し口出しは控えましょう。
たとえ食べ方が汚くても、お箸の持ち方が間違っていても、ガミガミ言わずに「こうした方が可愛く(かっこよく)見えるよ」などと伝え、大人はひたすらお手本になりましょう。
子供が「できない、教えて」と言ってくるまで見守りましょう。口出しはしない。でも子供の反応をスルーせず、求めに応じてきちんと教えるのがポイントです。
2励ましたり褒めたりすり
大好きなパパママに褒めてもらうことは、子供にとつて大きな自信や情緒面のサポートに繋がります。
「毎日漢字の勉強をする」「ピアノの練習をする」など目標を立てて達成した際は、過程も含めてしっかり褒めてあげましょう。
また子供の成長に失敗はつきものです。幼児ならお茶をこぼした、お漏らしをした、食べこぼしたなど多くの失敗がありますが、そんな時は「誰でも失敗はあるよ」「どうすればよかったと思う?それはいい考えだね」などと励ましたり視野を広げたりして、情緒が安定するようにサポートしてあげましょう。
3子供の質問にすぐに答えない
子供に質問された時に、すぐに事細かく答えるのは控えましょう。
「〇ちゃんはどうしてそう思ったの?」などと聞いて、「ママ(パパ)に聞けば早くわかって楽チン」と思わせないことが大切です。
代わりに子供がつまずいてしまうポイントや先に進めなくなる疑問をよく観察して見抜き、そのポイントを超えられるように軽いヒントを与えて、時間をかけながら自分で答えにたどり着けるように支援してあげましょう。
4提言する
これまで命令や指示だったしつけを、提言に変えましょう。「遊びに行くから準備しなさい」ではなく、「外に遊びにいかない?」と本人に選択の余地を与えましょう。
当然「行かない」と親の望みと違う返答をすることもありますが、選択の余地を与えることで子供は主体的に判断できる子供に成長しやすくなります。
また子供に選ばせることができない状況の時は、頭ごなしに言うことを聞かせるのではなく、きちんとその理由や根拠を説明して本人に分かってもらえる言い方をするように心掛けましょう。
5好きな時に本を読める環境を作る
絵本の購入は費用がかかってしまいますが、図書館で借りてくればお金をかけずに活字に触れる環境を作ってあげることができます。家に絵本があれば子供は気が向いた時に本を読み、活字に触れることができますので、図書館を上手に利用しましょう。
また多くのご家庭で絵本の読み聞かせを行っていると思いますが、単に本を読むのではなく、子供のペースに合わせて読み進めることが共有型しつけのポイント。
幼児は本の途中で声を出して笑うなどの反応する場合がありますが、そんな時は少し待ってあげてから読み進めると良いでしょう。子供に多くの本を読み聞かせることは、語彙の習得だけでなく、できない体験や感情を学ばせてあげることにも繋がります。
6一緒に楽しめる経験をする
子供が楽しめる経験を親子で一緒にすることで、子供は満足感が得られるだけでなく好奇心も刺激されます。近所の公園で一緒に遊ぶ、動物園で一緒に動物と触れ合う、子供と一緒に料理をするなどなんでもかまいません。
親と楽しい経験を共有することは子供にとって幸せな経験になり、パパママへの信頼度が上がります。
たくさんの楽しい経験の中には「何だろう?どうしてだろう?」といった疑問も生まれまので、好奇心や探求心、将来の学習意欲へと繋がっていくのです。
7子供の話に共感する
親が共感してくれることで、自分には何があっても味方がいるという安心感が生まれ、自分が一人の人間として尊重されていることや愛されていることを感じることができます。
親に愛されている子供は自己肯定力が高く、ありのままの自分に自信が持てるようになります。ですから自己肯定感は将来子供がくじけそうになった際の強い武器になるのです。
ぜひ子供が話すことには耳を傾け、楽しかった出来事や悲しかった出来事に「ママも分かる!」と共感してあげてください。
8好きなことにとことん取り組ませる
子供の「大好き」はすごいエネルギー源です。幼児の集中力はわずか数分ですが、好きなことに関しては別。
ブロック好きの子供は大人が声をかけるまで何かを作り続け、電車好きの子は線路を組み立て続け、できた作品を見た親が「えっ!これ◯君がつくったの?」と驚かされることも珍しくありません。
集中力を育てるのに有効なので、時間が許す限り子供の趣味に付き合ってあげましょう。
共有型しつけは甘やかし?
近年しつけの行き過ぎによる虐待がニュースに取り上げられることも多く、その反動で甘やかし傾向になっていないかと子供のしつけに不安を感じるパパやママが増えています。けれど過保護過干渉に口出し手出しをしてしまう強制型しつけの方が、自ら考えて行動することをサボらせる甘やかしです。
共有型しつけをする親の多くは育児書などの子育てに役立つ本の読書習慣があるため、子育ての状況を客観的に見ることができる知識を持っています。そのため子供の発達状況を見定めてありのままの姿を受け入れやすいので、子供も自ら考えて行動でき、反発する必要も少なく、成長に従い親の話を自然に受け入れやすい関係を築くことができるのです。
人は鏡。親が子供にした行いは、いずれ子供から親へと返ってきます!
未熟な子供に「不快」としか理解できない行いをすることは、両者にとってマイナスです。自分の都合で必要以上に厳しくしつけをしてないか、幼児へのしつけのポイントも再確認しておきましょう。
参考文献