マイナンバー制度とは簡単に説明すると「国民総背番号制」
マイナンバー制度とは何なのかを簡単に説明すると、個人情報や税情報や金融機関等だけでなく、医療の情報にいたるまで適用が検討されている国民一人一人の番号で管理するというもの。行政上の手続き等が簡素化される一方でマイナンバー制度導入により発生する問題点も懸念されています。
2002年に施行された「住民基本台帳制度」や住民基本台帳に基づいて個人データをオンライン化した「住基ネット」。プライバシーを侵害するため違憲になるのでは?と、多くの議論や裁判を引き起こしました。
「マイナンバー制度」という言葉を初めて聞いたとき、私たちの多くは「住民基本台帳制度」と似た何かを直感的に感じたのではないでしょうか。実際に、住民基本台帳制度もマイナンバー制度も、国民1人1人に番号をつけて管理を便利にする「国民総背番号制」であることには変わりありません。では両者は何が異なるのでしょうか?
全国で一斉に始められたマイナンバー制度とは
個人の住民基本台帳番号が記してある「住民基本台帳カード」の新規発行は2015年12月に終了し、既に住民基本台帳カードを持っている人も、マイナンバーが記してある「個人番号カード」を発行した時点で住民基本台帳カードを返還する決まりとなっています。
番号で個人情報を登録することに対して抵抗を感じた国民は多く、住民基本台帳カードの総発行枚数は日本人口の1割にも上りませんでした。住民基本台帳制度があまり普及しなかった理由に、制度自体が自治体単位の導入であったという点が指摘できます。住基ネットの導入も、基本的には自治体に委ねられていましたので、自治体全体が導入しないために住民が利用できないということも往々にしてあったのです。
ですが、マイナンバー制度は、内閣官房の指導により始まる全国民を巻き込んだ制度です。自治体の意向や個人の意見に関わらず、すでに導入されてしまった制度なのです。
住基ネットよりも格段に広いマイナンバーの適用範囲
住基ネットの導入により、住民票を提出する機会が格段に減りました。パスポート申請や恩給支給における手続きが簡便化されただけでなく、異なる地方自治体においても住民票の写しを発行することができるようになりました。ですが、実生活で住民票を使う機会はそう多いものではないので、実際にとても便利になったのかと言われると疑問は残ります。
その点、マイナンバーは住民票以外にも「税金が関わる全ての手続き」や「行政上必要な全ての手続き」に使用されますので、適用範囲が断然広いということができます。税務上あるいは行政上の手続きに置いて、「マイナンバーを使用することもできる」のではなく「全てにマイナンバーの登録が必須」なのです。
マイナンバー制度が私たちの生活に及ぼす影響
マイナンバーとは簡単にいうと私たち一人一人に与えられる12桁の番号ですが、この12桁のマイナンバーが、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
まず、ご家族のマイナンバーと比較すると分かりますが、家族だからと言って数字に共通点は(偶然一部が被る場合はある)ありません。このことからも数字自体に意味はなく、あくまでも個人にランダムに振られた番号であることが分かります。この無作為な12桁の数字で、起こることと起こりうることを見ていきましょう。
マイナンバー制度の影響1:社会保険料が変わる
2016年1月以降に発生する所得には、全てマイナンバーが登録されます。これによって従来管理がしにくかった「社会保険料」が簡単に管理できるようになるのです。
従来は、複数の職場から給与を得ている場合、ある一か所で社会保険料を支払っているならば、他の職場では社会保険料の支払いは免除されていました。これは法的に免除されていたわけではなく、処理の手間を省くために免除されていただけですので、本来、社会保険料は給与を得る全ての場所で所得に応じた額を支払うべきものなのです。
マイナンバーによって複数の勤務先からの収入が一元管理できるようになりますと、今まで免除されていた分の社会保険料を支払わなくてはならなくなります。特に複数の役員を兼ねて、複数の職場から役職手当や給与を得ている人の社会保険料は非常に増えることになるでしょう。
マイナンバー制度の影響2:社会保障の受給
2018年から段階的に、銀行口座とマイナンバーが紐付けされます。確定申告を金融機関側が代行する「証券会社の特定口座」に関しては、2016年1月から紐付けが実施されます。このように2021年までにすべての金融口座にマイナンバーが登録されることになるのです。
所得や財産を隠して生活保護を受給することが頻繁に話題になりますが、口座とマイナンバーが連結されることでこのような財産隠しも激減すると予想されます。また、家族の口座に資産を隠して自分自身は生活保護を受給する・・・などの悪用も、マイナンバーによる管理が実行されるなら簡単には行えないようになるでしょう。
反対に、本当に生活保護が必要な人にとっては、審査の簡略化・短期化が期待できる制度と言えます。マイナンバー制度の目的の1つは「社会保障制度の充実」でもあるので、国民の権利として受けられるものを本当に必要な人が受けられるようになるのです。
マイナンバー制度の影響3:救急時の処置
マイナンバー制度を医療分野にも適用することが検討されています。医療データを各医療機関が共有できるようになりますと、持病を抱えている方が緊急状態に陥っても、どの病院においても適切な処置を迅速に受けられるようになるでしょう。
「マイナンバー」は非常に重要な個人情報!管理・保管の仕方に工夫が大切
マイナンバー制度とは何なのかを簡単に説明してきましたが、この国民ひとりひとりに割り振られた12桁の番号は金融機関や医療の情報とも連結されることが検討されている、それひとつが漏えいしてしまうと大問題に発展する可能性もある非常に重要な個人情報です。
既にマイナンバー制度を導入している海外の他の国では、なりすましなどの悪用・犯罪も多発しているとのことで、これからこの制度の適用範囲が段階的に広がって行くとともに様々な問題が発生する可能性もあります。マイナンバーの管理・保管の仕方はとても重要と言えるでしょう。