赤ちゃんのしつけはいつから?0歳からの信頼関係づくりが土台
出産後、授乳やおむつ替えに追われる時期が過ぎると、赤ちゃんの生活リズムも少しずつ整い、ママにも少し余裕が出てきます。それと同じ頃、赤ちゃんにも少しずつ自我が芽生え、成長とともに活動範囲が広がっていきます。
気がついたらティッシュを大量に箱から出していた、小さなおもちゃを口に入れていたなど、思わず「ダメ!」と言いたくなる場面に出会うことも増えてくるでしょう。
では、赤ちゃんのしつけは、いつから始めるのが適切なのでしょうか。結論からいえば、しつけの土台づくりは0歳から。ただしその中身は、マナーやルールを教え込むことではなく、親子の信頼関係を育てることです。まずはその考え方から見ていきましょう。
しつけは0歳から!基本は「信頼感」の構築
言葉を理解できない赤ちゃんにしつけをしても意味がない、と思う人もいるかもしれません。けれど赤ちゃんは、生まれ持った性質だけでなく、日々の関わりや環境の中で少しずつ人柄や心の土台を育てていきます。0歳の関わり方は、その後のしつけがうまくいくかどうかにもつながっています。しつけの本当の意味を知り、赤ちゃんにとってプラスになる接し方を心がけましょう。
しつけの本当の意味!自分で考える力を育てる
「躾(しつけ)」と聞くと、「厳しく姿勢を正させ、マナーや社会のルールを叩き込むこと」というイメージを持つ人もいるかもしれません。けれど本当のしつけとは、親が子どもを力で抑えつけることではありません。
しつけの本当の意味は、人として必要な道徳観や倫理観を、子どもが自分で考え、行動し、身につけていけるように導くことです。
子ども自身が周囲とうまくコミュニケーションをとり、自分の願いを実現していくために「マナーやルールが必要だ」と感じられれば、親が怒って教え込まなくても、自分で考え、学び、自然と身につけていきます。
反対に、子どもの気持ちを無視して「ダメ!ダメ!」と厳しく叱り続けると、子どももまた相手の気持ちをくみ取りにくくなり、ルールの意味が伝わらないまま育ってしまうことがあります。大切なのは、行動を禁止することよりも、その理由が伝わる関わりを重ねることです。
人は「すてきだな」「好かれたいな」と憧れや好意を抱くと、自然と「自分もああなりたい」と感じ、自分を高めようとします。赤ちゃんにとって、その最初のお手本になるのが身近な大人です。「この人のようになりたい」と思える関係を築くことこそが、本当のしつけの出発点なのです。
出産直後から始める信頼関係の構築
言葉が分からない0歳児に、しつけは難しいのでは?と思うママもいるでしょう。0歳台のしつけは、食事のマナーや社会のルールを教えることではありません。毎日の生活の中で、ママ・パパと赤ちゃんの信頼関係を少しずつ築いていくことthat自体がしつけの土台になります。
将来、子どもが自分で考え、他者とうまく関わり、自立して幸せに生きていくためには、身近な大人との信頼関係と、それを通して育つ自己肯定感がとても大切です。
発達心理学者エリクソンは、人生で最初に取り組む発達課題として、乳児期に育つ「基本的信頼感(自分や周りの世界を信じられる心)」を挙げています。また、ボウルビィが提唱した愛着(アタッチメント)理論でも、赤ちゃんは不安なときに身近な大人に近づき、安心を取り戻すことで、そこを「安心の基地」として世界を探索していくとされています。こうした安心感は、抱っこや声かけといった日々のスキンシップやコミュニケーションの積み重ねで育まれます。こども家庭庁も「はじめの100か月の育ちビジョン」の中で、乳幼児期のアタッチメント(愛着)の重要性を示しています。
親や周りの人を信じ、好意を持てるからこそ、その後のしつけも伝わりやすくなります。特別なことをする必要はありません。出産の瞬間から、日々のスキンシップやコミュニケーションを少しずつ重ねていきましょう。
応答的な関わりが、赤ちゃんの心の発達を支える
泣いたら声をかける、目が合ったらほほえむ——こうした赤ちゃんの働きかけに大人が応える「応答的な関わり」は、赤ちゃんの安心感を育て、情緒や脳の発達を支える土台になると考えられています。反対に、大人からの関わりが極端に乏しい状態が長く続くと、情緒や発達に影響が及ぶことがあると指摘されています。
関わりが少ない赤ちゃんの様子を指して「サイレントベビー」という言葉が使われることもありますが、これは医学的に確立された診断名ではなく、あくまで一般的な呼び方です。過度に不安になる必要はありません。大切なのは、完璧を目指すことではなく、できる範囲で笑顔や声かけ、触れ合いを日々重ねること。赤ちゃんの健やかな成長は、ミルクやおむつ替え、入浴といったお世話に、ママやパパの温かい関わりが加わることで支えられていきます。
赤ちゃんの心を育てるしつけのコツ4つ
赤ちゃんの心を育てるために意識したい4つのコツを紹介します。パパとママでコツを共有し、夫婦そろって同じ方向で関われると、赤ちゃんも安心しやすくなります。
1言葉がけやお世話で信頼感アップ
しつけというと難しく考えたり、ベビーサインなどの特別な教育を思い浮かべたりしがちですが、毎日のお世話に、ちょっとしたコミュニケーションやスキンシップをプラスするだけで十分です。すでに実践しているママ・パパも多いはずです。
例えば、次のような関わりです。
- 泣いたら声をかけたり、抱っこしたりする
- 顔を見ながらほほえみ、優しく声をかける
- 子守唄や好きな歌を歌ってあげる
- 赤ちゃんの気持ちや行動を言葉にして表現してあげる
- くすぐったり、一緒に遊んだりする
お世話は一生懸命なのに、つい無言でおむつ替えや離乳食を進めてしまう、という声も少なくありません。簡単な言葉がけや笑顔、触れ合いこそが、しつけの第一歩です。声かけが苦手な場合は、あいさつや短いスキンシップから、無理なく少しずつ取り入れてみましょう。
言葉がけの例
- 「おはよう。今日はいいお天気で気持ちがいいね」
- 「たくさんおっぱい飲めたね。えらいね」
- 「眠たくなっちゃったんだね。いっぱい泣いたらねんねしようね」
- 「ご機嫌がいいね。よかったね」
2友達トラブルや食事のしつけは怒らない
友達と仲良く遊ぶ、食事のマナーが身につく、といったことは0歳ではまだ難しく、もう少し先の課題です。離乳食が進んで食事中に遊んでしまっても、「お腹がいっぱいみたいだから下げるね」と、怒らずに切り上げる対応で十分です。
また、大人が少し手伝ったり、できたことをすかさずほめたりすると、赤ちゃんは「こうすればいいんだ」「上手にできた」と感じ、よい行動が身につきやすくなります。
友達とおもちゃを取り合って揉めたときも、いきなり叱るのではなく、「これを使いたかったんだね。順番で貸してもらおうね」と、まず赤ちゃんの気持ちに共感してあげましょう。気持ちを受け止めてもらえる経験が、相手の気持ちを考える力の芽になります。
3危険なときは体で止めて、安全を守る
赤ちゃんの命や体に危険がおよぶ行動をしたときは、「ダメだよ」「危ないよ」と声をかけるだけでは伝わりきりません。本当に危ないときや、二度としてほしくない行動のときは、まず赤ちゃんの体をそっと抱き寄せる、手をやさしく握るなどして、その行動を体で止めましょう。ここでいう「体で止める」とは、危険から遠ざけて安全を確保することであり、叩くなどの体罰ではありません。
行動を止めたら、赤ちゃんの目を見て、落ち着いた真剣な表情で「これはお口に入れないよ」と短く伝えます。ポイントは、やみくもに使わないこと。「本当に危なかった」という場面に絞ると、「危ない」というメッセージが赤ちゃんに届きやすくなります。恐怖で言うことを聞かせるのではなく、大切なことだから真剣に伝える、という姿勢を意識しましょう。
なお、2020年4月に施行された改正児童福祉法・改正児童虐待防止法により、親などによる体罰は法律で禁止されています。こども家庭庁や厚生労働省も、体罰や怒鳴ることによらない子育てを呼びかけています。たとえしつけのつもりでも、叩く・強く怒鳴るといった関わりは、赤ちゃんの安心感を損なってしまいます。
そして最も効果的なのは、そもそも「ダメ」と言う場面を減らす環境づくりです。赤ちゃんは危険を予測する力が未熟で好奇心が強く、大人の想像を超える行動をすることがあります。触られたくない危険なものは、手の届かない場所や鍵つきの場所にしまう、撤去するなどを徹底しましょう。それだけで叱る機会がぐっと減ります。
4パパとママで一貫した態度を大切に
赤ちゃんは、注意されるとたいてい驚きます。いつもの優しい表情から急に真剣な顔に変わるのですから、当然です。泣いてしまう子もいるでしょう。ここで大切なのは、大人が落ち着いて、一貫した態度で伝えることです。止めた直後に「ごめんね、びっくりさせたね」とすぐ謝ったり、オロオロしたりすると、伝えたいことがぼやけてしまいます。
赤ちゃんは、「昨日はよかったのに今日はダメ」「パパとママで言うことが違う」という状況になると、どうしていいか分からず戸惑います。また、泣くからという理由でその都度ダメなことを許してしまうと、「泣けば通る」と学んでしまい、かえって混乱のもとになります。
他人や自分を傷つけるような危険なことについては、夫婦で方針をそろえ、「ダメなことはダメ」と落ち着いた一貫した態度で伝えましょう。方針がブレないことで、赤ちゃんも成長とともに少しずつ我慢する力を身につけていきます。
月齢別に見る、しつけ・関わり方の目安
0歳といっても、月齢によってできることや関わり方のポイントは変わります。あくまで目安ですが、発達に合わせて関わり方をゆるやかに調整していくと、無理なく信頼関係を育てられます。
| 時期 | この時期の様子 | 関わり方の目安 |
|---|---|---|
| ねんね期(0~3ヶ月頃) | 泣いて欲求を伝える。表情や声に反応し始める | 泣いたら応える、目を見てほほえむなど、応答的な関わりで安心感を育てる |
| お座り・ずりばい期(4~8ヶ月頃) | 手を伸ばして物をつかむ。何でも口に運ぶ | 危険なものは片づけて環境を整える。気持ちを言葉にして代弁する |
| ハイハイ・つかまり立ち期(9~12ヶ月頃) | 行動範囲が広がり、いたずらも増える | 本当に危ない場面だけ体で止めて短く伝える。できたことをほめる |
この時期は「マナーを教える」より、「安心できる関わりを重ね、危険から守る」ことが中心だと考えると、肩の力が抜けやすくなります。
ママとパパが赤ちゃんのお手本になろう
赤ちゃんは、ママとパパのすることをよく見ています。まねしてほしくないことは、夫婦できちんと話し合い、二人とも子どもの前でやらないようにしましょう。
「ママが食事中のマナーを一生懸命注意しているのに、隣でパパがテレビを見ながらご飯をこぼしている」——そんな家庭では、子どもが自然にテーブルマナーを身につけるのは難しいものです。パパとママが二人そろってお手本になることが、その後のマナーやルールの習得への近道になります。しつけは「教え込むもの」ではなく、「見て・まねて・身につくもの」だと考えると、日々の関わりそのものが大切なしつけだと感じられるはずです。
赤ちゃんのしつけでよくある質問
Q. 泣いたらすぐ抱っこすると、抱きぐせがついて甘えん坊になりませんか?
泣いたときに応えることは、赤ちゃんの安心感(愛着)を育てる大切な関わりで、いわゆる「抱きぐせ」を心配して我慢する必要はありません。むしろ「泣けば応えてもらえる」という経験が、人への信頼の土台になります。安心して過ごせた子は、成長とともに少しずつ自分で世界を探索できるようになっていきます。
Q. 感情的に怒鳴ってしまいました。もう手遅れでしょうか?
一度きつく言ってしまったからといって、信頼関係がすぐに崩れるわけではありません。大切なのは、日々の関わりの積み重ねです。気持ちが高ぶったら、赤ちゃんの安全を確保したうえで一度深呼吸するなど、その場を落ち着かせる工夫を。育児のイライラが続くときは、後述の相談窓口や地域の子育て支援を頼ることも、立派なしつけの一部です。
Q. 夫婦でしつけの方針が合いません。
子どもが混乱しないために大切なのは、細かいやり方より「危険なことはダメ」といった大枠をそろえることです。まずは譲れないルールを2~3個だけ決め、それ以外は柔軟に、と考えると合意しやすくなります。子どもの前での意見の食い違いは避け、方針の相談は大人だけのときに行いましょう。
Q. しつけに迷ったとき、どこに相談できますか?
お住まいの地域の子育て支援センターや保健センター、こども家庭センターなどで、子育ての悩みを無料で相談できます。乳幼児健診の機会に保健師へ相談するのもよい方法です。一人で抱え込まず、公的な窓口や身近な支援を早めに頼りましょう。
しつけの第一歩は、安心できる関係づくりから
赤ちゃんのしつけは0歳から始まりますが、その中身はマナーの教え込みではなく、応答的で温かい関わりを重ねて信頼関係を育てることです。声をかける、ほほえむ、抱っこする——そんな日々の小さな積み重ねが、やがて子どもが自分で考え、行動する力の土台になります。
危険なときは体で止めて安全を守り、落ち着いて短く伝える。うまくいかない日があっても、完璧である必要はありません。パパとママが同じ方向を向いて、赤ちゃんにとって「こうなりたい」と思えるお手本でいること。それが、いちばん確かなしつけの近道です。今日できる関わりの一つから、気軽に始めてみてください。




