赤ちゃんの癇癪(かんしゃく)の原因と対処法:いつから始まっていつまで続く?
赤ちゃんの突然の癇癪(かんしゃく)には、多くのママやパパが悩まされていることと思います。特に、外出先や夜中の激しい癇癪は、周囲への配慮から焦りやストレスを感じやすいですよね。機嫌を直すためにあらゆる手を尽くしても効果がないと、「もうどうしたらいいの!」と、思わず途方に暮れてしまう保護者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、赤ちゃんの癇癪が始まる時期やピーク、主な原因、そして状況に応じた上手な対処法について、詳しくお伝えします。癇癪が起こるメカニズムを知り、適切な対応方法を学ぶことで、育児の負担を少しでも軽減していきましょう。
赤ちゃんの癇癪とは?いつから始まり、いつピークを迎えるのか
一般的に癇癪とは、感情を抑えきれずに激しく怒り、泣いたり暴れたりする行動を指します。赤ちゃんや幼児期の子どもにとって、癇癪は感情表現の未熟さからくる一時的な爆発であり、多くの場合、成長の過程で見られる自然な現象です。
癇癪が始まる時期と、ピークを迎える年齢
赤ちゃんの癇癪は、生後10ヵ月頃から1歳前後で始まることが多いです。これは、この時期に自我(自分という意識)が芽生え、自己主張をするようになるからです。この頃の赤ちゃんは、様々なものに興味を持ち、「やりたい」「触りたい」という欲求が高まりますが、運動能力や言語能力が追いつかないため、自分の思い通りにならない時にイライラが爆発してしまいます。
その後、2歳から3歳頃にかけて、癇癪の頻度や激しさがピークを迎えると言われています。この時期は「イヤイヤ期」とも呼ばれ、言葉を理解し始めても、感情を整理したり、言葉で伝えたりすることがまだ難しいため、癇癪という形でしか表現できないことが増えるのです。多くの場合、4歳を過ぎる頃から徐々に落ち着いてきます。
赤ちゃんが癇癪を起こす6つの特徴的な症状
癇癪を起こしている赤ちゃんは、怒りや不満で気持ちをコントロールできなくなり、以下のような行動で自分の感情を表現します。
1激しい「ギャン泣き」
癇癪で最もよく見られるのが、激しく泣き叫び、手の付けられない状態になる「ギャン泣き」です。赤ちゃんは、怒りや混乱で状況が分からなくなっており、あやしても大きな声で泣き続け、パパ・ママも途方に暮れてしまうことが多い症状です。
2テーブルなどを叩く、物に当たる
癇癪の最中にある赤ちゃんは、イライラする気持ちを発散するため、身近にあるテーブルなどを両手でバンバン叩いたり、物に当たったりします。この行動を止めようとすると、赤ちゃんはさらに機嫌が悪くなり、保護者の方を叩きだすこともあります。癇癪中の赤ちゃんは、大人の言葉を聞き入れる余裕がない状態です。
3甲高い「奇声」を上げる
感情が爆発すると、甲高い声で奇声を上げる赤ちゃんがいます。これはギャン泣きと似ていますが、声を出して叫ぶのが特徴で、言葉で表現できない気持ちを、声という手段で発散しているのです。赤ちゃんの声は高音で周りに響きやすいため、外出先で奇声を出された場合は、周囲への配慮から、ひとまず抱っこしてその場を離れるという対応をする保護者の方が多いようです。
赤ちゃんの奇声と発達の関係について
奇声を上げる赤ちゃんを見て、「発達に問題があるのではないか」と不安に思う保護者の方もいるかもしれません。しかし、奇声は、音声機能が発達していく過程で自然に見られる現象であり、自分の声が出せることに気付いて楽しんでいる場合も多くあります。言葉を話す能力が発達してくれば、自然と奇声は落ち着いてくるものです。もし、癇癪や奇声の頻度、他の行動など、お子さまの発達について特に気になることがあれば、保健師や小児科医などの専門家に相談してみると良いでしょう。
4抱っこすると後ろに反る
癇癪中の赤ちゃんをなだめようと抱っこすると、後ろ側に体を反り返らせることがよくあります。これは、泣いたり暴れたりすることでイライラした気持ちを発散させたいのに、抱っこによって行動を止められるのが面白くない、という気持ちの表れです。保護者にとっては良かれと思って抱っこした行動が、かえって赤ちゃんの気持ちを逆なでしてしまい、反り返ってしまうことがあるのです。
5手足をバタバタさせる
手足をバタバタとさせて、気持ちを表現する赤ちゃんもいます。思い通りにならなかった時など、床に寝そべってバタバタ動く子もいれば、立ったまま手足を大きく動かして床を蹴っている子もいます。うまく消化できない気持ちやエネルギーを、全身を使って表している状態といえます。
6物を投げる・周囲に危険が及ぶ行動
癇癪で気持ちをコントロールできなくなった赤ちゃんや幼児が、周りにあるおもちゃや物を投げてしまうことがあります。物を投げることでストレスを発散しているのでしょうが、周囲の大人にとっては危険が伴います。柔らかいおもちゃ程度ならまだしも、思いもよらないものを投げてしまうことがあるため、癇癪中は周囲の安全の確保が最も重要です。
赤ちゃんが癇癪を起こす主な3つの原因
赤ちゃんは、突然癇癪を起こすことが多く、保護者としては理由が分からず困ってしまうことが多いものです。癇癪につながる原因はいくつかありますが、ここでは特に多い3つの原因をご紹介します。
1. 気持ちをうまく伝える「言語能力」の未熟さ
赤ちゃんや幼児が癇癪を起こす最大の原因は、自分の気持ちを言葉でうまく伝えられないことです。「あれが欲しい」「これをやりたい」「ママに構ってほしい」など、言いたいことがあるのに、まだ言葉が発達途中のため、自分の気持ちを周りの大人に伝えることができません。気持ちがうまく伝わらないことでモヤモヤし、それが爆発して癇癪を起こしてしまうのです。このようなケースでは、言葉(表現方法)が発達し、うまく使えるようになるにつれて、癇癪を起こすことが減ってきます。
2. 欲求が満たされない「自己主張」と「能力」のギャップ
赤ちゃんの欲求が満たされない時に、癇癪を起こして気持ちを表現することもあります。例えば、「やりたいことがあるのに運動能力が追いつかずにうまくできない」、あるいは大人の都合で「禁止されたり邪魔されたりする」など、自分の思い通りに物事が運ばない時に、激しく泣いて訴えようとします。
言葉をうまく使えない赤ちゃんの欲求を、保護者がすべて察してあげるのは至難の業です。もし保護者が見当違いのことをした場合、「そうじゃないよ!」という気持ちから、さらに大きな癇癪を起こしてしまうこともあるでしょう。
3. 空腹や疲れ、睡眠不足による「体調不良」
大人と同じように、空腹や疲れ、眠気などで不快感がある時は、癇癪を起こしやすい状態といえます。赤ちゃんは、自分の空腹や疲れといった体の不快感にまだ気づけないことが多く、その不快感が解消されないため、イライラして癇癪を起こしてしまうのです。この場合は、授乳や食事、睡眠といった基本的な欲求を満たすことで、あっさりと機嫌が直ることがよくあります。
赤ちゃんの癇癪への効果的な対処法5選
赤ちゃんが癇癪を起こした時に、早く落ち着かせるための対処法はいくつかあります。赤ちゃんの年齢や性格、状況に合った方法で落ち着いて対処することで、癇癪を乗り越える手助けをしてあげましょう。ここでは、癇癪を起こした赤ちゃんへの、効果的な対処法について5つご紹介します。
1. まずは安全な場所に移動し、抱きしめて気持ちを落ち着かせる(クールダウン)
赤ちゃんが癇癪を起こしている時は、まず周囲に危険なものがない安全な場所に移動させましょう。そして、優しく抱きしめて気持ちを落ち着かせてあげるのが効果的です。癇癪を起こしている赤ちゃんは、自分でもコントロールできないほど気持ちが高ぶっている状態です。保護者の方にギュッと抱きしめてもらうことで、安心感を得て気持ちが整理されやすくなります。背中をトントンしたり、優しく撫でてあげたりするのも良いでしょう。
2. 子どもの気持ちを言葉で代弁してあげる(共感)
子どもが自分の気持ちを伝えられなくて癇癪を起こしているのなら、大人が子どもの気持ちを代弁してあげることで、癇癪が落ち着くことがあります。例えば、子どもが高い場所にあるおもちゃを取ることができず癇癪を起こしている場合、「あのおもちゃが欲しかったんだね」「手が届かなくて悔しいね」と声がけをしてみてください。
言葉にできなかった気持ちを代弁してもらうことで、「ママ(パパ)に自分の気持ちを分かってもらえた」と感じ、気持ちが安定し、癇癪が治まってくることが期待できます。この対応は、親子の信頼関係を築く上でも非常に重要です。
3. 気持ちを伝えられる方法を教える(赤ちゃんサインなど)
言葉が未発達なことで癇癪を起こす赤ちゃんには、気持ちを伝える別の方法を教えてあげるのも有効です。手を使ったジェスチャーで気持ちを伝える赤ちゃんサイン(ベビーサイン)は、言葉の発達を助けるだけでなく、「自分の気持ちを伝えられた」という成功体験を赤ちゃんに与えることができます。親子で楽しみながら取り組んでみることで、癇癪の頻度を減らすことにつながるでしょう。
4. 危険な行動やわがままには「毅然とした態度」で接する(一貫性)
もし、欲しいものを買ってもらうためなど、わがままや要求を通すために癇癪を起こしていると判断できる場合は、毅然とした態度で接することが効果的です。癇癪中に早くおさめようと子どもの意見を通してばかりいると、「騒げば親が言うことを聞いてくれる」と学習してしまい、癇癪がエスカレートする可能性があります。
そのため、危険な行動や、明らかに受け入れられない要求に対しては、「買いません」「これはやめなさい」と冷静かつ一貫した態度で伝えることが大切です。わがままが通らない時もあると子どもが気付けば、徐々に無駄な癇癪を起こさなくなってくるでしょう。
5. 周囲に迷惑が掛からなければ「やりたいようにやらせてみる」(見守り)
安全が確保され、周囲に迷惑が掛からない環境であれば、気のすむまで泣かせて様子を見るという方法も有効です。癇癪を早く終わらせようと大人が過度に介入すると、かえって癇癪がひどくなる場合があります。特に、エネルギーが強く、一旦爆発すると止められないタイプの子どもには、いったんすべてを発散させて気持ちをスッキリさせるのが狙いです。
癇癪中は周りの安全にも気を付けて
癇癪中は、同じ部屋の少し離れたところから見守ります。この際、子どもが激しく暴れたり物を投げたりする恐れがあるため、周りに危険なものがない安全な場所であることを必ず確認してください。子どもがある程度落ち着いてきたところを見計らって、「おやつにする?」「あのブロックで遊ぶ?」など、遊びや休憩に誘うと、気持ちの切り替えがうまくできますよ。
赤ちゃんの癇癪は成長の「通過点」です
大人にとっては対応に困ってしまう癇癪も、赤ちゃんが自我を確立し、感情や言葉の発達を遂げている証拠、つまり成長の通過点といえます。癇癪は時期がくれば必ず落ち着いてきますので、今回ご紹介した癇癪の原因や対処法を参考に、「子どもの気持ちに共感しつつ、許されない行動には毅然とした態度で接する」という一貫した姿勢で、焦らずに対処してみてくださいね。
癇癪への対応を通して、親子間の信頼関係を深め、子どもの健全な心の成長をサポートしていきましょう。

