別居中は「今後」を考えて過ごしたい!
別居を切り出した側、切り出された側も、別居期間は冷却期間であると同時に今後の生活の準備期間でもあります。
例えば、別居を切り出した側が、相手とただ離れたい!という一心で別居をした…とします。もちろんたんなる別居の状態ですのでまだ籍は抜いておらず、一緒に住んでいないだけで戸籍上は配偶者のまま。相手が離婚に応じてくれない等の理由があるとしても、いつまでたってもこのままで良いわけではありません。それならそれで然るべき対策を考えなくてはいけません。また、別居を申し出された側で関係を修復したいのなら、相手と離れた別居期間中によく相手の言い分を考え、相手と交渉していく必要があるわけです。
離婚か回避か「別居中」の過ごし方と別居期間
別居後は離婚となるか、もう一度夫婦として仕切り直すのか、どちらに転ぶにせよ、別居中は現実逃避や休暇のような気分でいるのではなく、これからの生活を考えて過ごしていくべきでしょう。
「離婚に向けての別居」なら別居中に離婚準備を
別居の末は離婚とお考えなら、事前に次の事項をチェックしておくことで、今後のトラブル回避、スムーズな話し合いと進むことが出来るでしょう。
◆◆ 離婚原因となる証拠の収集
別居や離婚を考えるに至った明確な原因(不貞行為・DV)が相手にあるのであれば、それを証明できる証拠をおさえておきましょう。(写真や通信履歴、診断書など) 別居してからでは、証拠収集は困難になります。
>気を付けること!
相手の携帯電話やスマホ、PCのPWを破っての侵入はプライバシー侵害に当たるのでやめましょう。
また、せっかく集めた「証拠」と思っていたものが、証拠として働かないこともあり得ます。どのようなものが証拠として扱われるのか、離婚カウンセラーや弁護士へ相談すると良いでしょう。
◆◆ 財産の把握
離婚時の財産分与に関わる問題です。財産分与とは婚姻期間に発生した夫婦の利益については「共有財産」であり半分づつ権利がありますよ、という話。別居中に隠されたりごまかされてしまわないよう、あらかじめ給与の入金口座などの通帳があれば、コピーをとるなどの対策をしておきましょう。
◆◆ 固有財産の確保
婚姻生活中の夫婦の財産は財産分与の対象となりますが、それとは別に婚姻前から持っている財産・親から贈与されたり相続を受けたものは個人の「固有財産」となります。
別居に当たり大切な固有財産がある場合、相手宅に置かずに別居と共に持ち出しておくと要らぬトラブルを回避できるでしょう。
◆◆ 子供と親権の問題
自身が子供の養育を引き受けるつもりなら、子供の親権問題が生じる可能性も視野に入れて子供もつれていきましょう。いまさら、子供を巻き込むのは…などと言うのは的外れです。親権は同居の親に認められる傾向があります。離婚後の親権を獲得したいと考えているのなら、別居の段階から子供を手放してはいけません。
「修復に向けての別居」は別居中の交渉がポイント
もう一度相手と一緒に生活をする気持ちがある別居にしても、万が一に備えておくことは大切です。何にも変えられない子供はもちろん、大切な固有財産などがあるならしっかり守りましょう。同時に、相手の目線ではあまり綺麗に身辺整理をせず、自身の存在感を少し漂わしておくこと。
別居に当たり、家を出ていく側なら家中にあなたの影を残しておく最大の理由は連絡のきっかけづくり。冷却期間をおいたまま頑なに連絡を取り合わなければ復縁は果たせませんし、相手が連絡を取りたくなったとしても、何かきっかけがないと連絡取りにくいものです。何もないより例えばあなたが育てていた観葉植物など「少し気になるくらいのもの」をおいておくことで連絡のきっかけは生まれやすくなります。
◆◆ 復縁に向けた連絡の取り方
一般的に男性は社会に出て働いている時間が長い分、家庭や家族について考える時間や余裕があまりないと言えます。まして、もめているとなると普段は考えることさえ億劫になってしまうために、お互い別居中に自身の気持ちと向き合う落ち着いた時間を設けることは必要です。
しかし、夫婦が離れて生活をする別居中に相手が別々の人生を選ばないとも言えません。あなたにとってこの別居が「気持ちを一旦リセットする」冷却期間程度の意味合いのものなら、別居期間中気を抜かず対応していくことが大切なのです。
やり直したい気持ちがあるのなら、別居期間中に自分はどうしたいのかと相手の立場に立って価値観や気持ちをしっかりと考えましょう。連絡を取り話し合いをするときに相手の言い分を受け入れながらも自分の気持ちもしっかりと伝え、これを機会にお互いが十分に納得できると良いですね。
◆◆ 離婚届不受理申出を!
感情のこじれやすれ違いからの別居期間中に、想定外のトラブルが起こることも多々あります。そのひとつが「勝手に離婚届けを提出されていた」という事例。
離婚届に勝手に署名捺印は有印私文書偽造にあたる違法行為ですし、同意がない提出もNG。しかし現実には離婚届は記載に不備がないなら簡単に受理されるものです。そして、受理されると無効にするのは非常に大変です。
これを阻止するには、勝手に離婚届けを出される危険性を感じたなら、事前に役所で「離婚届不受理申出」の手続きをしておくなどの対策をしておきましょう!
- 離婚届けには署名・捺印しない!
- 印鑑や大切なものを相手の手元におかない!
- 「離婚届不受理申出」を申請する!
別居期間はどのくらい?
一般的な別居期間の目安は1年。世間一般的には別居してから「1年が勝負!」と言われることもあります。ある統計結果によると1年以内に「離婚」という結論を出す率は82.5%、つまり別居して8割の方が離婚しているという高い結果となっています。
◆◆ 離婚する前提の別居なら
離婚に向けて別居中の人は、この1年が離婚を有利に進めるための準備期間にあたるといえます。この間に離婚後の生活を見据えた就職・各申請書類の準備など、別居中にやることはたくさんあります。
「離婚の決意表明」からの1年であって「1年の別居期間を経て離婚が認められる」わけではないので注意しましょう。夫婦関係の破たんと見做される別居期間はおよそ5~10年とされています。
◆◆ 復縁にむけて別居中の場合
「復縁に向けての別居」の方は、もっとのんびり構えていてはいけません!
復縁を望むならきちんと連絡をとり、事務的な手続きはきっちりと誠意を示し、時には復縁とは関係ないことを話したりしながらも、相手に対して誠意あるコミュニケーションを重ねていくことが大切です。相手に必要なひとりの時間とのバランスを見極めましょう。
別居中の生活費用や手続き
もちろん別居中も婚姻関係は続いているので夫婦であることに変わりはありません。婚姻時の生活費について相手の給与がメインであった場合、別居中の生活費なんかは悩みの種ですが、夫婦である以上は婚姻費用分担請求の権利などもあります。別居中の生活費や最低限の手続きについてまとめてみました。
1別居中の生活費
別居中と言えど、夫婦である以上は別居解消までの期間「婚姻費用」という別居中の生活費を相手に請求することが出来ます。
この「婚姻費用」については夫婦間で合意がでればいいのですが、離婚後の慰謝料や養育費に比べ知名度があるとは言えず、相手も速やかに応じてくれるとは限りません。その場合は「婚姻費用算定表」を参考と提示しながら話し合いを進めていきましょう。
どうしても当事者同士の協議で折り合いがつかない場合は、家庭裁判所で「婚姻費用分担調停」の手続きを行い、それでもまだ決まらなければ「審判」→「判決」となります。法的な流れになりますが、このように「婚姻費用」で「生活費」を確保方法も知っておくべきです。
2転居届と各種手続き
別居中の仮の住まいでも、引っ越したなら住民票を移す手続きが必要となります。
子ども連れの別居の場合、学区外になり転校という事もあり得ます。次の住まいの学区や転校したくない場合などは学校・役所に相談してみてみましょう。
また「相手に別居先は伝えたくない」と願う方は、住民票を移動せず別居という方法もありますが、たとえばマイナンバー関係の郵便物は住民票のあるところへ送られます。郵便物の中にはマイナンバーのような重要な個人情報がつまったものもないとは言えませんので、やむなく住民票を移せない場合は居所情報を登録するなどして対応しましょう。マイナンバー関連の郵便物について詳しくは、総務省のオフィシャルホームページでご確認ください。
別居前の注意 夫婦には「同居の義務」がある
そもそも、夫婦には「同居の義務」というものが民法752条に定められています。
正当な理由のない一方的な別居は「悪意の遺棄」に該当し、のちの離婚交渉に大きく影響することもあるので、ドラマのような「喧嘩して飛び出していったまま別居!」なんてことは非現実的です。よっぽどでない限り、相手の承諾もなしに一方的に家を飛び出す…といった行為はやめておいたほうが賢明です。
ちなみに「正当な理由」というのは、夫婦が別居に同意する以外で客観的に見ても「別居するのは仕方ない」と言える理由のことです。
別居について夫婦2人で同意したとき以外の正当な理由
- DVやモラハラを避けるため
- 生活費を渡してくれない
- 家庭に対し無関心。 又は、家庭を顧みない。
- 不貞行為が原因の別居
「離婚に向けての別居」なのか「修復に向けての別居」なのかでも留意点が異なりますが、世間いパン的には離婚の一歩手前という位置づけには変わりありません。別居を考えるに至った理由は相手にきちんと知らせるべきですし、承諾も得ておくべきです。
離婚となると、戸籍や役所へ提出するべき各種手続き、相手とのお金のやりとりの取り決めや子供がいるなら親権のこと、必要があれば法的な対応などなど精神的ダメージが大きいだけでなくやるべきことも盛りだくさんで大変なイメージがありますが、それに比べると別居はそこまでのものでもない気がするからと安易な判断の一方的な別居で、後の調停や裁判にて不利に働かないようにしましょう。
別居中は相手と今後への対策期間
結婚という法的な結びをした関係は、一筋縄では解決できないことがたくさんあります。別居はとりあえず2人の物理的距離が離れたというだけにすぎず、これからにむけてやるべきことはたくさんあります。ここから離婚に向かうにしても、夫婦の修復に向かうにしても、気を緩めることなくひとつひとつ丁寧に対策を講じていきましょう。