別居中のトラブルを防ぐ!別居したいなら計画は念入りに
配偶者と距離を置きたいと思ったとき、「とにかく別居しなくては」と半ば勢いで話を進めてしまうケースも少なくありませんが、配偶者と離れたい理由は様々でも家を飛び出したらすべてが解決するわけではありません。
まだ離婚というわけではないし、簡単そうに思える別居も、実は別居してから問題が発生!なんていうトラブルもあるのです。別居するには別居したい気持ちに押されて早まらないことが大切です。ここでは別居を開始してからのトラブル発生を防ぐためにも別居前に知っておくべき3つのことをご紹介します。
1.「別居したい!」なら気持ちを固める!離婚する?しない?
別居をする理由は人それぞれ。しかし別居をする際には「なぜ別居をするのか」「別居にすることによって変わる人生」を考える必要があります。全てが自分の思い通りに行くわけではありませんから、先のことを考えずに別居に踏み切ってしまった結果、自分が望んでいない悲しい結果や理不尽な展開が待っていることもあるのです。
強い衝動によって別居に踏み切るにしても、別居後は相手と「離婚したい」のか、「離婚したくない」のかという気持ちはハッキリと決めておきましょう。なぜなら万が一「離婚する気がない」のに別居してしまうと、相手の気持ちによっては離婚せざるを得なくなってしまう可能性もあるのです。
では離婚の有無によって別居をする際の注意点がこちら。
離婚前提の別居の注意1.相手に離婚したい意思を伝えるかを考える
離婚する意思がある場合、「私は離婚したいから別居しましょう」と“離婚の意思”を相手に伝えるかどうかは場合と状況をよく判断して行動しましょう。
安易に「離婚したい」と伝えた場合、その後協議離婚や調停離婚となった際に、「別居する時には夫婦関係が破綻していた」と判断される要素となることもあります。そうすると別居期間中、相手の不貞があったときに慰謝料の請求なども難しくなってしまう可能性も…。
今後の生活なども考えるのであれば、あくまでも「夫婦関係を続けるための別居」だとアピールするためにも、「離婚」という言葉を出さないことはポイントとなります。
離婚前提の別居の注意2.相手に別居する意思をはっきり伝える
注意1と似ていますが、この微妙なポイントを押さえておくことが「将来的にスムーズに離婚をする」上で大切なことなのです。感情に任せて家を飛び出してしまうのは別居ではなく家出になってしまいます。
別居する原因が配偶者にあったとしても、別居の理由も告げずにいなくなるということは「同居義務違反」となってしまうのです。
離婚をする過程においても、「夫婦の義務を放棄した」と判断されて不利になり逆に慰謝料を請求されるなんていうどんでん返しも考えられるため、必ず「○○が理由で別居します!」という意思を相手に伝えてから家を出ましょう。
離婚前提の別居の注意3.自分に非がある場合の離婚は…
別居の原因が自分にある場合(有責配偶者)、さらに双方の間に未成年の子供がいたり経済的トラブルが生じる場合、将来的に離婚を請求しても認められる可能性はかなり低いと心得ておきましょう。ただし、別居期間が同居期間よりもはるかに長い場合や、子供が自立して独立しているケースなどでは有責配偶者からの離婚請求が認められるようになります。
離婚しない別居の注意 別居の正当な理由はありますか?
離婚する意思がない別居は、相手との関係改善を望むために距離を置く一種の解決方法となるかもしれません。しかしどんな別居にも「正当な理由」は必要なのです。「口喧嘩をしてムカついたから別居します!」では、万が一配偶者から「同居義務違反」として離婚を請求された時にピンチを招きかねません。
では別居する上で必要な「正当な理由」がこちら。
- 相手のDV(暴力)やモラルハラスメントを避けるため
- 相手が生活費を渡してくれず生活困難なため
- 相手が不貞行為をはたらいたため
- 相手が家に戻ってこないため
2.別居したいなら家を出る前に身を守る準備が必要!
自分の意思で別居をした場合、その後配偶者とトラブルが起こることは避けられません。そんな時に不利な状況にならないためには、自分の身を守るための準備をしておくことが必要です。
別居前の準備1.経済的な自立をしておく
別居をすると、今まで生活費を負担してくれていた配偶者からの生活支援を受けることができない状況も避けられません。これは、特に専業主婦だった方にとっては重大な問題となります。そんな事態に備えて、自分一人で生きていけるだけの経済的な自立は不可欠です。特に子供も連れて別居をする場合は、子供の生活や将来のことをしっかりと考えておく必要があります。
専業主婦をしている人などは、別居をする前に生活の足しになるパートやアルバイトなどの仕事を確保しておきましょう。
別居前の準備2.別居後の手当て等のリサーチ
別居をした際に経済的に苦しくならないためにも、別居後にもらえる可能性があるお金についてのリサーチをしておきましょう。(※項目3で詳しく説明)
別居をしていてもお金を支払う義務がある夫が1年以上生活費の支払いをしていない場合、母子手当や児童手当などの公的扶助が支給される対象になります。
別居前の準備3.住まいを準備しておく
軽い気持ちで別居を始めても、思った以上に話がややこしくなってしまい別居の期間が1年を越えてしまうことだってあり得ます。実家や親戚・知人の家に心狭い思いをして生活させてもらうにも限度があるのです。
「私には実家があるから大丈夫」「○○さんに頼ろう」などと甘い気持ちを持たずに、自分が住むための部屋くらいは確保する自立した精神を持つことも大切です。
別居前の準備4.住民票を移すか否かを検討する
離婚を前頭に別居をする場合、別居期間の証明ともなるので住民票を新しく生活する住所に移しておくことができます。ただし、住民票を移してしまうと子ども手当がもらえなくなるので、別居しても受給者に手当が振り込まれるように「別居看護の書類」を提出しておく必要があります。
万が一、配偶者の暴力などによって子供を連れて別居しその土地で新しく学校に通わせる場合は住民票をそちらに異動させますが、相手に開示されないよう役所に相談することも可能です。
3.別居した!なら婚姻費用を受け取る権利を勝ち取ろう!
別居をどのくらいの期間続けるにしても、夫婦の間にはお互いが生活を助け合っていく義務(生活保持義務)があります。自分の決断で別居をしたからと言って、心苦しく感じて苦しい生活を強いられる必要はないのです。
別居する際には、生きていく上での生活費を受け取る権利があるということを覚えておきましょう。
夫婦が別居した際に分担するべきお金は「婚姻費用」と言い、別居していたり同居していても収入がある方が生活費を負担しない、などという時に請求することができるお金です。協議・裁判中や顔を合わせたくないような状況化での別居であっても、婚姻費用の分担は義務であり法律的に弱者がもらうべきお金なのです。
この婚姻費用分担を請求する方法がこちら。
1交渉する
婚姻費用の分担を決める際には、まずは相手と話し合ってお互いが納得する支払い方法を取り決めます。相手が話し合いに応じない場合などは、弁護士を通じて相手に支払いを求めて、了解を得ることができたら法的執行力がある公正証書を作成しましょう。
2調停に持ち込む
話し合いや協議で話が決まらない際には、家庭裁判所で「婚姻費用分担請求の調停申立」を行います。調停委員を交えた調停でもお互いの合意が得られなければ、家庭裁判所の審判によって婚姻費用の分担額などを取り決めることになります。
家庭裁判所の裁判官は、二人それぞれが抱える収入や子供の人数・年齢などを考慮して「夫は妻に婚姻費用として月に○○万円を支払う」などと決定。
ただし、別居をしてから婚姻費用の分担の決定がされるまでの期間に、例えば妻が経済的に生活困難になる場合は、夫に対して「調停前の仮処分の申請」という申し立てをします。
調停委員会がこの申し立てを正当なものと判断すると、婚姻費用の分担が決まるまでの間、夫が妻に一定額の生活費を支払うように“婚姻費用の仮払いの仮処分”が命じられます。その請求に対して何の理由もなく拒否をした場合には、10万円以下の過料が課されるので経済的に立場が弱い人は知っておきたい費用です。
別居をするならまずは勉強!不利にならない解決法を見つけよう
「別居をする」ということは、勢いだけで行動に出てしまうと思ってもいない不利な状況を招いてしまうことがあります。明らかに相手に非がある場合などでも、別居をしたことによって予想外な展開になり悔しい思いをしてしまうのです。 別居中にした方が良いことは沢山あります。「別居したい!」と思ったら、まずは自分の身を正当化できるように別居の基礎知識をしっかりと身に付けましょう。