配偶者控除廃止で何が変わる?影響と注意点をチェック
夫がサラリーマンで妻が専業主婦やパート勤務の場合、夫の給与から配偶者控除を受けている家庭は多いでしょう。配偶者控除とは、収入の少ない配偶者がいる家庭の税負担を軽減する制度で、子育て中で長時間働けない主婦にとってはありがたい制度です。
しかし、配偶者控除が女性の社会進出を妨げているとの考えから、廃止の動きが進んでいます。2017年1月には現行の配偶者控除が廃止され、新しい制度が導入される予定です。
配偶者控除の対象者にとっては不安もありますよね。控除の廃止によって、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか。ここでは廃止によるデメリットや今後の働き方の参考情報をお伝えします。
夫の給与から控除される項目
配偶者控除の他にも、夫の給与から控除される項目はいくつかあります。控除される内容を知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは給与から差し引かれる主な控除項目と現行の配偶者控除について解説します。
所得控除とは?
所得控除とは、必要経費などを年収から差し引くことを指します。課税の際は所得からあらかじめ一定額を控除します。所得税法では、最低生活水準を維持する目的や納税者の事情に応じて負担を調整するため、さまざまな所得控除が設けられています。
その中でも「基礎控除」は誰でも無条件で38万円が控除されます。さらに、サラリーマンやパートの場合は「給与所得控除」も同時に受けられます。そのため、年末調整では基礎控除と給与所得控除が行われます。その他、条件に応じて控除される「扶養控除」や「医療費控除」、「生命保険料控除」などがあります。そしてそのひとつが、今後廃止予定の「配偶者控除」です。
給与所得控除や基礎控除によって控除額は決まっており、国税庁のホームページで計算式も公開されています。例えば、年収が360万~660万円の場合は、収入の20%に54万円を加えた金額が控除されます。
現行の配偶者控除の仕組み
次に、現在の配偶者控除の内容について説明します。専業主婦などで収入がほとんどない場合や、給与所得控除を差し引いた後の妻の合計所得金額が38万円以下であれば、夫の給与から配偶者控除として一律『妻の基礎控除分の額』が差し引かれることになっています。
例えば、妻のパート収入が103万円までの場合、給与所得控除65万円を差し引いた残額は38万円となり、妻の基礎控除分と相殺されるため、夫の給与から配偶者控除を受けられる、という仕組みです。
いわゆる「103万の壁」と呼ばれるものですね。控除を受けるために103万円を超えないように働くパート主婦の方もいます。(現行では妻の合計所得が76万円未満の場合、夫は段階的に配偶者特別控除を受けられますが、配偶者控除とともに廃止される見込みです)
◆ 給与所得控除とは
自営業では売上から仕入れなどの必要経費を差し引いた金額で課税されますが、サラリーマンも同様に、仕事に必要なスーツや通勤費などの経費を考慮して課税されます。それが給与所得控除の意味です。
◆ マイナンバー制度と配偶者控除
マイナンバー制度の導入により、夫の会社が年末調整時に扶養親族のマイナンバーも確認できるようになりました。これにより、妻の収入を正確に把握でき、夫の会社に内緒で働くことは難しくなっています。
配偶者控除が廃止される背景
配偶者控除廃止の理由には、「控除があることで女性の社会進出が妨げられている」「103万円以下の収入だと妻も控除を受け、夫の給与からも控除を受けられるため二重取りになっている」などがあります。控除に代わる新制度の導入も計画されており、今後の動向に注目が必要です。
配偶者控除の廃止によるデメリット
扶養範囲内で働いていた主婦にとって、配偶者控除の廃止はどのような影響があるのでしょうか。ここでは主なデメリットを2つ紹介します。
1夫の税金が増え収入が減る
配偶者控除がなくなると、控除額分に相応する税金が増え収入が減るのが最も大きなデメリットです。例えば、所得控除後の課税所得が年500万円の場合、配偶者控除がなくなることで所得税・住民税合わせて約8万円の増税となり、家計に与える影響は無視できません。
2長時間働けない主婦は不利になる
子育てや介護などで長時間働けない主婦の場合は、これまでより損に感じることがあります。増税に対応して仕事を増やすことができれば問題ありませんが、現実には子どもが小さい、保育園の待機児童問題、家族の介護など、働き方を自由に選べない場合も多いです。
また、核家族化が進んでいる現代では、家事や子育てをしながら収入を増やすことは容易ではなく、配偶者控除の廃止による影響をより強く受けやすくなっています。
廃止後の得する働き方とは
配偶者控除の廃止によって増税は避けられませんが、どのくらいの働き方をすれば得になるのでしょうか。廃止後の主婦の働き方でメリットを得やすいパターンを2つ紹介します。
1パートから正社員を目指す
配偶者控除を意識してパート勤務している方は、正社員を目指すのも一つの方法です。配偶者控除廃止により、103万円以内で働くメリットはなくなります。パート勤務で130万円以上働く場合、夫の社会保険から外れて自分で国民健康保険に加入する必要がある場合もあり、毎月の保険料負担が増える可能性があります。
仕事の環境が整っている場合は、福利厚生が充実した正社員を目指す方がメリットが大きいです。年収160万円以上、可能であれば200万円を目標に働くと、社会保険料を払っても手取り収入が増えるため、検討してみてください。
2将来の仕事に役立つ準備をする
子供が小さくてすぐに働けない場合は、子供が成長した後に就職できるよう準備しておくとよいでしょう。就職に有利な資格を取得したり、以前の職種に関連する資格を取って経験者としての強みをアピールするのも効果的です。
子供を保育園や学童に預けて働きたい場合は、園や学童の情報もあらかじめ調べておくとスムーズに就業できます。
ライフスタイルに合わせた働き方を考える
配偶者控除の廃止で増税は避けられません。子供が小さいうちは専業主婦で節約し、園に通うようになったらパートを開始、小学校に入ったら働く時間を増やすなど、ライフスタイルに合った働き方を柔軟に考えることが大切です。