児童館とは?料金や利用時間、子育て中に利用すべきメリットを解説
児童館とは、児童福祉法第40条に基づき設置・運営される児童福祉施設の一つです。公立と私立(民営)を合わせて日本全国に多数設置されており、地域における子どもの生活と福祉の拠点施設と位置付けられています。児童館は、子どもたちの生活や健康、能力、情操を豊かに育てるための支援や、健全な遊びの場を提供することを主な目的としています。
日本には、児童福祉法をはじめ様々な法律を根拠とした幼稚園や保育所、各種学校などの施設がありますが、これらはすべて、社会を担う子どもたちを社会全体で健やかに育てようという根本的な理念を共有しています。児童館は、地域の子どもたちが安全かつ自由に遊び、交流できる場として、重要な役割を果たしているのです。
児童館のルーツとは?セツルメント運動から始まった歴史
日本における児童館の歴史的なルーツは、明治末期に始まったセツルメント運動にさかのぼります。セツルメントとは、現代のグループワークやコミュニティワークの原型であり、主に地域課題を抱えやすい大都市で、大正から昭和初期にかけて活発な活動が行われてきました。
セツルメント(Settlement)とは?
約120年前にイギリスの首都ロンドンで始まった社会福祉活動のことで、貧困などの社会的課題を抱えた地域に教育や医療、社会福祉、法律などの専門家が常駐し、住民と一体となって地域環境や社会制度の改善をはかろうとする活動です。児童館の理念は、この運動が困難を抱える子どもたちに遊びを通して集団的なルールを学ばせ、自立を促していった活動が基礎となっています。
戦前の日本の社会事業に大きく貢献してきたセツルメント活動の理念は、昭和23年に児童福祉法が施行される際に「児童館」として明確に位置づけられました。これにより、児童館は地域社会において、不特定多数の子どもたちにとっての健全な遊びと交流の場として、公的に認知されるようになったのです。
児童館は誰が運営している?運営主体と職員について
現在、児童館の実施主体は、主に都道府県や市町村などの地方自治体となっています。しかし、実際の運営は、指定管理者制度によって管理を引き受けた社会福祉法人やNPO法人、または保育所などを運営し児童福祉のノウハウを持つ民間企業などが担っているケースが多いです。
昭和26年には、当時の厚生省(現・厚生労働省)によって児童館を運営するための基本指針「児童厚生施設運営要領」が提案されました。さらに、昭和38年に国が児童館の設備や運営費を補助する制度が生まれると、児童館は現在のような公的な施設として高い水準を維持できるようになりました。
児童館の施設数と公営・民営の割合
児童館の施設数は、厚生労働省の統計調査(※最新のデータは常に変動しますが、概ね)によると、日本全国に約4,000箇所以上設置されています。これは、同じ児童福祉法を根拠とする保育所(保育園)に次ぐ設置数であり、児童館が私たちの身近にあって利用しやすい施設であることがわかります。
設置されている児童館を運営主体で分類すると、自治体などの公営施設が大部分を占めていますが、民間の社会福祉法人やNPO法人による運営も増加傾向にあり、地域の実情に応じた柔軟な運営が行われています。
児童館は何歳まで利用できる?利用時間と対象年齢
児童館は、原則として18歳未満のすべての児童(子ども)が利用することができる施設です。そのため、乳幼児から高校生まで幅広い年齢層が利用対象となっています。
ただし、施設の規模や地域の子育てニーズに合わせて、受け入れ可能な年齢や利用時間に一定の制限が設けられている施設もあります。例えば、「午前中は乳幼児とその保護者(ママやパパ)の交流の場を提供し、午後は小学生の放課後の居場所(学童保育)を提供する」など、施設によって実施事業や活動内容は異なります。
学童保育を兼ねる施設(放課後児童クラブ)の利用について
学童保育(放課後児童健全育成事業)を主な活動とする児童館(または児童センター)の多くは、共働き家庭などの利用者が多いため、施設の大きさなどの制限から小学1年生から3年生までの低学年児童しか受け入れられないことも多いのが実情です。利用には事前の申し込みが必要であり、定員超過の場合は受け入れができないことがあります。保護者の就労証明書を求められる場合もありますので、最寄りの児童館の利用条件は早めに施設に確認しておきましょう。
児童館の3つの種類と特徴!施設規模と機能の違い
児童館は、その規模や機能、対象地域によって、大きく分けて大型児童館、小型児童館、児童センターの3種類に分類することができます。それぞれの特徴を理解することで、子どもの年齢や目的に合った施設を選ぶことができます。
1大型児童館:広い地域を対象とした高機能施設
大型児童館は、都道府県内などの広い地域に住む子どもを対象とした支援を行っている児童館です。面積や施設、活動内容によってさらにA型、B型、C型の3つに区分されています。
- A型児童館
面積が2,000平方メートル以上で、小型児童館や児童センターの指導や連絡調整等の役割を果たします。 - B型児童館
面積が1,500平方メートル以上で、宿泊施設や野外活動施設を備え付け、子どもが自然を生かした遊び体験ができることが特徴です。 - C型児童館(こどもの城)
面積の規定はありませんが、他の児童館全ての機能に加え、芸術、体育、科学等の総合的な活動ができる施設です。屋内プールやコンピュータープレイルーム、劇場、ギャラリーなどが付設され、子どもの多様な遊びや成長のニーズに応えられるようになっています。
2小型児童館:地域に密着した身近な遊び場
小型児童館は、小地域に住む児童たちを対象に設置された、最も地域に密着したタイプの児童館です。地域における子どもの健全育成を促す、総合的な機能を併せ持つ児童福祉施設であり、子どもや保護者にとって身近な居場所となっています。
小型児童館の主な役割と活動
- 児童の健康を増進し、情操を豊かにする活動を行います。
- 児童に健全で安全な遊びの場を提供します。
- 母親クラブや子ども会などの地域組織活動の育成・助長を図ります。
3児童センター:体育活動に特化した機能を持つ施設
児童センターは、小型児童館の施設に体育館などの運動施設を備えつけ、運動を主体とする遊びを通して児童の体力増進や能力の発達を促していくタイプの児童館です。施設面積などによって児童センターと大型児童センターの2つに分類されます。
- 児童センター
面積336.6平方メートル以上 - 大型児童センター
面積500平方メートル以上。スタジオやトレーニングルームなど年長児童(中学生・高校生)向けの設備が揃っており、より専門的な育成支援を行っています。
児童センターには、通常、児童厚生員2名以上の他、体力増進指導者や年長児童指導者が配置され、子どもの指導にあたります。
児童館とはどんな目的と役割をもった施設?遊びを通じた発達支援
児童館の最も重要な目的は、子どもに健全な遊びの場を提供し、サポートすることにより、心身の健康な発達を促し、情操を豊かにすることです。その役割は、単なる「遊び場」の提供にとどまりません。
児童館で経験できる「遊び」は、子どもの人格的発達を促す素晴らしい効果があります。子どもたちは遊びを通して、集団でのルールを学び、状況に応じて決断し、行動する力を養います。また、様々な年齢の子どもたちが集団になって遊ぶ機会はとても貴重であり、他人との関わり合いや社会性を学びながら、自分の能力を発達させていくことができるのです。
その活動は建物内にとどまらず、屋内外のスポーツをはじめ、芸術活動、知的好奇心の探求、遠隔地でのキャンプなど、子どもの成長に必要な多様な経験が盛り込まれています。児童館は、「遊ぶことで強い身体を作り、豊かな情操を育てていく」子どもの成長を専門的にサポートしてくれる施設なのです。
児童館の「屋内型施設」としての重要性
児童館は、子どもに遊びの場を提供する屋内型児童厚生施設であり、子どもたちが楽しく遊べる遊戯室をはじめ、様々な施設を備え付けています。現代において、子どもが安全に外遊びをする場所が少なくなっている中、児童館は車などの危険がなく、安全に配慮された貴重な遊び場を提供しています。
また、施設だけでなく、遊具や道具も充実しています。各家庭にもある積み木やブロックなども、子どもが集団で遊ぶための大型なものなど、家庭では味わえないおもちゃもありますし、普段とは違った遊びを体験することは、子どもにとって良い刺激になります。
児童館の指導員とは?子育て支援の専門家
児童館には、利用する子ども一人ひとりの状態を観察し、安全を確保しながら、個々のペースに応じて自立を支援することができるよう、専門の知識を持った指導員が配置されています。指導員は正式には「児童の遊びを指導する者」と称され、地域の実情に合わせた健全な遊びの指導を行います。
指導員がサポートするのは児童だけではありません。子育てをする親に対する支援も実施していて、母親クラブやママ・パパ同士の交流、そして育児相談などの活動の支援も合わせて行っています。子育てに悩んだとき、身近に専門知識を持った指導員に相談できる人がいるのはとても安心できますので、児童館は保護者にとっても非常に利用価値の高い施設といえます。
児童館に通うメリットは遊び場だけじゃない!子供と保護者に役立つ点
児童館とは、子どもにとって友達と伸び伸びと安全に遊べる空間であることはもちろん、自己肯定感や社会性を育む場でもあります。児童館では学校教育のような「○○しなくてはいけない」という義務付けがなく、子どもたちは自分の好きな遊びを主体的に選び、スポーツや図画工作、音楽など、好きなものを通じて可能性を広げることができます。
特に、子育て中の保護者にとって、児童館は計り知れない利用価値の高い施設です。
- リフレッシュと負担軽減: 子どもを安全な環境で遊ばせている間に、一時的に保護者が負担を減らしてリラックスできる貴重な時間を持てます。
- 地域での交流: 同じ環境のママ・パパ同士の交流が、子育ての悩み解決や情報交換につながります。
- 専門的な支援: 指導員から専門的なアドバイスを受けたり、必要に応じて子育て支援や療育など、別の専門機関を紹介してもらえたりすることもあります。
家族の在り方が多様化し、ともすれば子育て中に孤独感を味わいやすい現代において、児童館は、保護者のメンタルヘルスを支える重要な子育て支援インフラとしての役割も担っています。
利用前に知っておきたい!児童館でのトラブル事例と対処法
子どもが楽しく遊べて、保護者にとっても交流の場となる児童館ですが、不特定多数の人が集まる公共施設であるため、残念ながら子ども同士や保護者同士のトラブルが発生することもあります。安心して利用するために、実際に起こりやすいトラブル事例とその対処法を事前に確認しておきましょう。
集団生活における感染症への注意喚起の重要性
息子が小学校に入学し、私がフルタイムの仕事を始めたため、通っている小学校の敷地内にある児童館(学童保育)を利用しました。
夏休みの終わりに、息子がやたらと頭をかきむしりだしたので調べてみたところ、集団生活で感染しやすい皮膚のトラブルでした。すぐに医療機関を受診し、無事に解決できました。
その後、児童館に話したところ、同様のケースが数名いたとのことでした。感染症ではないため、施設からの全体的な注意喚起は行われなかったようですが、集団生活では皮膚のトラブルも含め、様々な感染症のリスクがあります。保護者が日頃から子どもの健康状態を細かくチェックし、気になることがあればすぐに施設に相談することが大切だと感じました。
保護者同士の人間関係の難しさ
転勤で引っ越しをして、話し相手が欲しくて子どもの生後6ヶ月頃から近くの児童館に行くようになりました。
ですが、実際に行ってみると、ママ・パパ同士のグループや派閥のような集団意識がとても高く、新参者はなかなか輪に入ることができませんでした。特定のママグループが、他の保護者の育児に口出しをするような場面も見受けられ、相談するのも嫌になってしまいました。
児童館の指導員さんはいますが、基本的には「保護者同士で楽しく交流してください」という雰囲気なので、性格的に児童館での集団交流に合う人と合わない人がいるかもしれません。無理にグループに入ろうとせず、指導員さんとの個別相談や、子どもの遊びに集中するなど、自分のペースで利用することが大切だと学びました。
異年齢交流の場でのトラブル対処の難しさ
3歳になる双子のママです。雪が多い地域に住んでいるので、冬の遊び場として近くの児童館をちょくちょく利用しています。暖房も入っていて、広々と遊ばせてもらえるので大変助かっています。
助かってはいるのですが、いろいろな年齢の子どもが出入りするので、中学生くらいの男の子が言葉遣いが悪かったり、小さい子に乱暴だったりするのを見かけることがあります。大きい子は保護者が一緒にいないことが多く、指導員さんの前では乱暴なことをしないため、注意が行き届かないことがあります。
異年齢の子どもを受け入れるのが児童館の良いところだと思いますが、私が出しゃばって大きな子に注意をしていいのか、指導員さんの役割を侵してしまうのではないかと、いつも悩んでしまいます。基本的には指導員さんに任せるべきですが、危険な行為や見て見ぬふりができない場合は、穏やかに指導員さんに報告するのが最善だと考えています。
学校と児童館におけるいじめ・嫌がらせの連携
小学生の男の子2人と、保育園の年中さんの女の子のママです。日中仕事をしていますので、小学2年生の次男が児童館に通っていましたが、そこで嫌がらせを受けていました。
たまたま顔見知りの保護者から情報を得て、慌てて指導員の先生に話をしたところ、特定のグループの子にたびたび乱暴をされたり、仲間外れにされたりしていたことがわかりました。
相手の子たちは小学校の同級生で、学校での嫌がらせの延長で児童館でもうちの子をターゲットにしていたとのこと。児童館の先生は、学校の先生とも連携して指導をしてくれていたのですが、学校から保護者に説明をするべきという判断で、私への連絡が遅れていたようです。
その後、学校の先生とも話し合い、相手の保護者にも根気よく指導をしてもらいましたが、学校と児童館の連携は保護者が積極的に確認することも重要だと反省しました。日頃から積極的に児童館の先生から話を聞くようにしておけばよかったと思っています。
子育て4コマ漫画:児童館とはどんなところ?ものは試しで行ってみたら…
児童館とは、子ども同士の触れ合いが必要な年齢の子どもたちだけでなく、子育て中で孤独を感じている保護者にとっても「孤独な気持ちが癒やされた」「ママ友・パパ友ができた」「子育てに役立つ情報が得られた」など、心が救われる心強い児童福祉施設でもあります。
確かに、不特定多数の人が訪れる場所ですから、保護者同士の人間関係や、子ども同士のトラブルが実際に起こる可能性はあります。しかし、経験不足の子どもたちにとっては、多少のトラブルも自立に向けて必要な経験であると捉えることも大切です。
児童館は、異なった環境や性格、考え方を持つ18歳までの子どもとその保護者が利用する権利がある公共施設です。大人は子どもの手本であることを自覚し、公共マナーを守って賢く児童館を利用しましょう。
児童館を利用する際は、トラブルに巻き込まれないよう気をつけるだけでなく、子どもの気持ちを尊重し、一人の大人として公平に見守ったり、必要な手助けをしてあげたりする姿勢が大切です。また、日頃から困った時に子どもが相談できる信頼関係を築くように努力し、子どもだけで児童館を利用するようになっても、何かあればすぐに相談できる環境を整えておくことが重要です。
もし、児童館でのことを子どもが話してきた時は、頭ごなしに否定したり、聞く耳を持たない態度を示したりしないようにしましょう。子どもの話を遮らず、一人の大人として真摯に相談にのってあげることが、子どもの安心と自立につながります。



