将棋盤や駒を手作り!直感的思考を鍛える3種の作り方や遊び方
将棋は81マスの盤(ばん)の上で駒(こま)を競って戦う、日本伝統のボードゲーム。購入しなくても将棋盤や駒を手作りし、自作で遊ぶことができます。
最近藤井聡太さんが中学生で史上最年少棋士記録を塗り替えて昇進する大躍進を遂げ、小学生にも人気が出はじめています。素人でも訓練次第で直感的思考回路が鍛えられるため、子供の脳を鍛えるのにも最適。(注1)
こちらでは、小学生が自由研究工作で手作りするのにもピッタリの将棋、今注目されている9マス将棋、4歳前後の幼児にもできるどうぶつ将棋の3種の作り方と遊び方をご紹介します。親子で一緒に手作りして楽しく遊びましょう。
簡単!手作り将棋の作り方&遊び方
まずは、初心者やルールが良く分からない幼児や小学生でも駒の並べ方や進め方が分かる将棋の盤と駒を手作りしてみましょう。将棋盤にはスタート時の並べ方の印をつけます。
市販の「こども将棋」「スタディ将棋」「はじめての将棋」のように、駒に進める方向の印をつけます。将棋は2人で1つの将棋盤に向かい合って行いますので、駒は1人分(王将×1、金将・銀将・飛車・角行・桂馬・香車×各2、歩兵×9の8種類20個)が2セット必要。合計40個作ることになります。
正式な試合には木製の将棋盤と駒を使いますが、今回は100均で安価に購入できる材料を使いますので、買うよりずっとリーズナブル。購入を検討しているご家庭では、こちらで遊びなれてから本物の木製将棋セットを購入するのもよいでしょう。
将棋の手作りに必要な材料
- 両面マグネットシート
- マグネットボード(A4)
- ラインテープ
- マスキングテープ
- 油性ペン
- カッター・ハサミ
- 定規
ラインテープとは、黒板にスケジュールボードなどを作る際に線を引くための極細のマスキングテープのことです。マグネットボードが白なので、今回は黒いラインテープを使用します。
将棋盤(しょうぎばん)の作り方
- まずはマグネットボードの上下左右の中央に、ラインテープで線を引きます。そこから2cmずつ線を引いていって、縦9マス×横9マスの合計81マスを作ります。
- マス目のうち将棋盤の端3段がそれぞれの陣地になります。スタート時に置く駒の名前をマスキングテープに書いて、駒を置く位置に貼り付けておけば将棋盤の完成です。
スタート時の駒の置き方
- 1段目
中央に王将、両隣に金将、その両隣に銀将、その両隣に桂馬、その両隣に香車 - 2段目
右側桂馬の前に飛車、左側桂馬の前に角行 - 3段目
全マスに歩兵
将棋の駒(こま)の作り方
- マグネットシートをハサミで切り、2cmの正方形を40個作ります。カッターを使う場合はカッティングマットがあると、下線を書かずにスムーズに正方形に切り分けられます。
- まずは不要な紙を使って、写真のような5角形の将棋の駒の型紙を作ります。王将の型は2cmの正方形を目一杯使って作りましょう。完成した型をマグネットシートに当ててハサミで余分を切り落とし、2枚の大型駒の王将の原型を作ります。
- 将棋の駒は大きさが3種類あるため、王将の型紙の四隅を少しだけ切り落として中くらいサイズの型を作り、マグネットシートに当てて20枚の金将・銀将・飛車・角行・桂馬・香車に使う中型駒の原型を作ります。
- さらに型紙の四隅を少し切り落として小さめの型を作り、マグネットシートに当てて18個の歩兵に使う小型駒の原型を作ります。
- 全ての駒の原型ができたら、駒の表面に油性ペンで名称を書きます。本来は王将と玉将があるのですが子供には紛らわしく、「王」を取り合ってケンカになりやすいので、今回は王将一つに統一して作ります。
- 最後にそれぞれの駒の動きを「●」と「―」で記入すれば完成です。
駒の動きの書き方
将棋の駒はそれぞれマス目の動かし方が違い、王将と金将以外は敵陣に入ると裏返ってさらに強力な駒へと動き方を進化させることができます。このように駒を裏返すことを成る(なる)といい、裏返した駒は「成り駒」と呼ばれ、それぞれに名称があります。
この駒が動くルールが複雑で子供が混乱しやすいので、今回は子どもでもルールブック無しで遊べるよう、駒にそれぞれの動きを●印とー印で記入していきましょう。
王将(おうしょう)
写真のように駒の8方向に●印を記入しましょう。
王将は全ての方向に1マスずつ動くことができます。王将に成り駒はありません。王将は最強の駒ですが取られると負けてしまうので、他の駒で守る必要があります。王将は自分の陣地に引きこもっているだけでなく、他の駒と同じように相手の陣地にも進んで攻撃に参加できます。
金将(きんしょう)
写真のように斜め後ろ以外の駒の6方向に●印を記入しましょう。
金将は斜め後方には動けませんが、それ以外の方向へは1マスずつ動くことができます。金将も成り駒はありません。自由自在に動ける駒ではありますが、基本的に王将を守るために使われます。
銀将(ぎんしょう)
写真のように駒の5方向に●印を記入しましょう。
銀将は左右と後方には動けませんが、その他の方向へは1マスずつ動くことができます。銀将は守りと攻撃両方に使えるので、1個は王将の近くで守り、1個は離れて攻撃に使われるのが一般的です。
また、銀将は相手の陣地に入ると「成銀(なりぎん」)に変化しますので、写真のように駒を裏返して「金」と書き、駒の6方向に●印を記入しましょう。
成銀は金将と同じように斜め後方以外、どの方向へも1マスずつ動くことができます。
桂馬(けいま)
写真のように駒の2方向に●印と―線を組み合わせた記号を記入しましょう。
桂馬は「馬」ですから、前方に駒があっても1段跳び超えて、斜め前に動かすことができます。
また、桂馬は相手の陣地に入ると「成桂(なりけい)」に変化しますので、写真のように駒を裏返して「圭」と書き、駒の6方向に●印を記入しましょう。
成桂は金将と同じように斜め後方以外、どの方向へも1マスずつ動くことができます。ただ成桂になってしまうと本来の桂馬の駒を飛び越える動きができなくなります。成るのは基本的に強制ではなく、自分の戦略によって相手陣地でも桂馬のまま使うことができますので、自分の戦略を考えて成り駒にすることが大事です。
香車(きょうしゃ)
写真のように駒の1方向にー線を記入しましょう。
香車は車ですから、他の駒にぶつかるまで何マスでも前方に動くことができます。
また、香車は相手の陣地に入ると「成香(なりきょう)」に変化しますので、写真のように駒を裏返して「杏」と書き、駒の6方向に●印を記入しましょう。
成香は金将と同じように斜め後方以外、どの方向へも1マスずつ動くことができます。香車も成香になってしまうと、本来のマスをいくつも進む動きができなくなります。
飛車(ひしゃ)
写真のように駒の4方向に―線を記入しましょう。
飛車も車ですが香車よりもさらに自由度が高く、前後左右方向にぶつかるまで自由に動くことができます。飛車は攻撃の要として使われます。
また、飛車は相手の陣地に入ると「龍(りゅう)」に変化しますので、写真のように駒を裏返して「龍王」と書き、駒の4方向に―線、4方向に●印を記入しましょう。
龍は飛車本来の前後左右方向に自由に動くことも、前後左右の斜め1マスに動くこともできます。龍になってしまうと、飛車に戻ることはできません。
角行(かくぎょう)
写真のように駒の4方向に―線を記入しましょう。
角行は飛車に次ぐ強力な攻撃の駒で、前後左右の斜め方向に自由に動くことができます。
また、角行は相手の陣地に入ると「馬(うま)」に変化しますので、写真のように駒を裏返して「龍馬」と書き、駒の4方向にー線、4方向に●印を記入しましょう。
馬は角本来の前後左右の斜め方向に自由に動くことも、前後左右に1マスに動くこともできます。一度馬に成ってしまうと、角行に戻ることはできません。
歩兵(ふひょう)
写真のように駒の1方向に●印を記入しましょう。
陣地の先端に配する歩兵は、スタートして最初に動かすことが多い駒。前1マスしか進めません。
また、歩兵は一番下っ端の駒なのですが相手陣地に入るとかなり強力な攻撃に使える「と金(ときん)」に変化しますので、写真のように駒を裏返して「と」と書き、駒の6方向に●印を記入しましょう。
と金は金将と同じように、斜め後方以外のどの方向へも1マスずつ動くことができます。
将棋の遊び方
- 盤と駒ができたら、さっそく将棋で対戦をしましょう。最初の配置場所にそれぞれの駒を置きます。
- プロの場合は振り駒をして決めますが、子どもですのでじゃんけんをして、先手・後手を決めましょう。「よろしくお願いします。」とお辞儀をしたらスタートです。
- じゃんけんで勝った先手から自分の駒を1枚動かし、次は後手が1枚動かして、交互に駒を動かしていきます。歩兵を先に動かすのが一般的ですが、飛車や角行を前に出すのも効果的です。
- 駒を動かして相手の駒とぶつかったら、その相手の駒を奪って自分の持ち駒にすることができます。持ち駒は次の回から自分の駒として自由にマス目に置いて使えますが、置いた後に動けなくなるマスや、相手の駒が既においてあるマス目には置けません。歩兵の場合は縦に2個の歩兵を並べると違反になってしまうので注意しましょう。
- 王将を囲んであと1手で奪える状態になったら、「王手!」と宣言します。王将を自分の駒で取り囲み、逃げられなくなった場合は「詰み」となりますが、持ち駒をいきなり使って王将を獲ることはできません。盤上の駒を一手動かすことで王将を獲得できる状態になったら「投了」、王手をかけた方が勝ってゲームが終了します。
- ゲームが終了したら。「ありがとうございました。」と挨拶をするのがマナーです。その後でゲームの進行状況や勝敗を分けた原因などを話し合うと、より将棋に強くなることができます。
今回マグネットシートを使いましたが、マグネットの場合は盤を動かしたり、盤をたてたりしても駒の位置が変わらないので、対戦途中に食事の時間になったなどでゲームを中断しても大丈夫。
100均などで売っているファイルケースを使うと持ち運びもできるので、長距離ドライブで規制する際などのお出かけにも活用してください。
小学生の初心者でも、子供同士が遊べるよう盤の上の初期配置の位置を書いてありますが、マスキングテープで貼り付けているだけなので、取り外しができます。子どもが将棋に慣れてルールを覚えたら、テープを取り除いて習熟させましょう。
9マス将棋の作り方&遊び方
本将棋は手持ちの20個の駒を駆使して戦うため、1回の対局で数万以上のパターンがあります。それを読み取り先手を打つことで相手に勝てるのですが、時間もかかって小さな子供には負担が大きいかもしれません。そんな場合は手作りした将棋セットを使って、9マス将棋を試してみましょう。
9マス将棋は日本将棋連盟のプロ棋士青野照市九段が考案したゲーム。本来81マスの将棋盤のうち9マスだけを使い、さまざまな将棋の駒の初期配置から手を繰り出して、相手を攻略しようとするものです。(注2)
わずか数手で勝敗が決まってしまうからこそ、頭脳や直感的思考力が必要になる奥が深い遊びなのです。
9マス将棋の作り方
- 手作りした将棋盤の中央の3×3マスを、写真のようにラインテープで囲って強調しておきましょう。これで9マス将棋盤は完成です。
- 9マス将棋の場合は王将・金将・銀将・飛車・角行・桂馬・香車・歩兵の8種の駒を1枚ずつ、2人で16枚用意しておきましょう。
9マス将棋の遊び方
- 基本的な駒の動かし方や成り方は将棋と同じです。ただし9マス将棋の場合は1マス進めば相手の陣に入って成駒に進化できますので、その点には注意が必要です。
- 9マス将棋で使う駒は王将と、その他最大2枚の合計3枚まで。お互いに向き合い、同じように駒を初期配置してスタートします。実はこの初期配置には40種類ものパターンがあり、例えば入門編の場合は、写真のように王将だけを使って戦います。
- これができたら次は初級編。王将・銀将・歩兵の3つの駒を配置して王将を取り合います。
- 初級編に慣れたら、次は上級編。王将・桂馬・歩兵を次のように初期配置した場合は、どの一手を打てば相手の王将が取れるのでしょうか?
このように9マス将棋は初期配置の仕方で戦い方がさまざまに変わり、タイトな争いだからこそ難しく、かつ面白いという特徴があります。手作りでも簡単に楽しめますので、ぜひ親子で試してみてください。
4歳から!どうぶつ将棋の作り方&遊び方
将棋は子供にとっておもしろいゲームではありますが、駒の数が多く複雑で小さな子供には難しいです。将来的に将棋へとステップアップさせたい幼児の場合はどうぶつ将棋がおすすめ。
どうぶつ将棋は4歳から将棋に親しむことができるようにと、女流棋士の北尾まどかさんが考案したゲーム。(注3)
現在はどうぶつ将棋のステップアップ版、駒の数が将棋と同じ「大きな森のどぶつ将棋」も販売され、幼児や小学生のいるご家庭に人気があります。
今回ご紹介するどうぶつ将棋に使う駒は4種(ライオン・ゾウ・キリン・ヒヨコ&ニワトリ)の8個だけ。マス目も12マスと小さく、楽しく遊べますのでぜひ試してみてください。どうぶつ将棋の駒や盤は市販されていますが、今回はペットボトルと空き箱を使って自宅で、0円で作ってみましょう。
どうぶつ将棋の手作りに必要な材料
- ペットボトルのキャップ 16個
- お菓子の空き箱(A4サイズ)
- 画用紙・折り紙
- マスキングテープ
- ノリ
- 油性サインペン
どうぶつ将棋盤の作り方
- A4サイズの画用紙に5cmの正方形を3×4の12マスになるようにサインペンで書きます。
- お互いに2段目までが陣地になるのですが、子どもでもわかるように1方の側は空の絵を描いて「空の陣地」に、反対側は「山の陣地」で分けておき、ゲームがスタートするときの駒の配置をマスキングテープに書いて貼り付ければ完成です。
スタート時の駒の置き方
- 1段目
中央にライオン、右側にキリン、左側にゾウ - 2段目
ライオンの前にヒヨコ
どうぶつ将棋駒の作り方
- ペットボトルのキャップ2個を1つに組み合わせて、駒を作ります。キャップを2つあわせたら、マスキングテープで巻いて留めましょう。
- キャップを止めるマスキングテープは、盤の上の配置の目印にも使います。4種類別々のマスキングテープを使い、8個2組の駒を作っていきます。
- ペットボトルキャップの表面を折り紙で飾り、ライオン・ゾウ・キリン・ヒヨコのイラストをノリで貼り付けます。ヒヨコだけは将棋と同じように敵陣に入ってニワトリに成りますので、ヒヨコの駒だけ裏面にもニワトリのイラストを貼りましょう。
どうぶつ将棋:駒の動きの書き方
どうぶつ将棋もそれぞれの駒の動かし方が決まっていますので、それを駒にわかりやすく●印で書いていきます。それぞれの駒の役割とともに、動かし方や●印の記入方法を写真で紹介していきます。
ライオン
写真のように駒の周り6方向に●印を記入しましょう。
ライオンは王将に該当する駒で、前後左右、斜めにも全方向に1マス動くことができます。
ゾウ
写真のように駒の斜め4方向に●印を記入しましょう。
ゾウは角行に相当する駒。斜め前後方向に1マス動くことができます。
キリン
写真のように前後左右4方向に●印を記入しましょう。
キリンは飛車に相当する駒。前後左右に1マス動くことができます。
ヒヨコ
写真のように1方向に●印を記入しましょう。
ヒヨコは歩兵に相当する駒。前方1マスしか進めません。
また、ヒヨコは相手の陣地に入ると「ニワトリ」に変化しますので、写真のように駒を裏返して、駒の6方向に●印を記入しましょう。
ニワトリは金将同様に斜め後方以外の6方向に動くことができます。どうぶつ将棋の場合はヒヨコを1マス動かすだけで敵陣に入り込みますので、攻撃に活用できます。これで駒の出来上がりです。
どうぶつ将棋の遊び方
- どうぶつ将棋の遊び方も基本的に将棋と一緒。交互に自分の駒を動かして相手のライオンを獲ることで勝敗が決まります。「王手」ではなく「キャッチ」します。まず、じゃんけんで先手・後手を決めましょう。
- それぞれの駒は決まった方向にしか動かすことができません。動かした先に相手の駒があったら自分の持ち駒にできるのも将棋と同じです。
- どんどんライオンを追い詰めて、ライオンをキャッチしたらゲーム終了です。
市販されているどうぶつ将棋の駒は平らな四角形なのですが、ペットボトル2個を組わせて作ると小さな子供の手にピッタリとなじみ、動かしやすくなります。
盤も空き箱の内側に作ることで、遊び終わったら箱に駒を入れて蓋をすれば、そのままお片付けができて便利。初めのうちは「●の方向だけに進んでいいんだよ」と教えながら、親子一緒にゲームで楽しく遊びましょう。
将棋を手作りして家族の団らんを楽しもう
あまり知られていないのですが、将棋文化を世に広めた江戸時代の第8代将軍徳川吉宗にちなんで、日本将棋連盟では11月17日を「将棋の日」と定めています。(注4)
将棋は家庭でパパやママが子どもに教えるケースもあれば、おじいちゃんやおばあちゃんに教わる子もいますし、児童館や学校の授業で教わって子供だけができるといった家庭もあるのですが、こんな面白い遊びをやってみないのはもったいない!
プロ棋士が競っているので「難しい!」というイメージがありますが、やってみると難しいからこそ面白く、やればやるほど引き込まれてしまうのが将棋の魅力。繰り返し遊ぶうちに子どもの直感的思考は鍛えられ、大人の頭は柔らかくほぐれてきますので、ご家庭にない場合はぜひ親子で将棋セットを手作りし、夕食後の1局など親子の団らんに取り入れてみましょう。
参考文献