【発達専門家が解説】赤ちゃんが笑うのはいつから?新生児微笑と社会的な笑顔(クーイング)の違いとあやし方
赤ちゃんといえば、いつもニコニコ笑っているイメージはありませんか?でも、実際に生まれてみると、泣いているか、寝ているばかりで、「いつニコニコ笑顔が見れるの!?」と疑問に思ったことはありませんか。
赤ちゃんの笑顔には、本能的なもの(新生児微笑)と、感情を伴うもの(社会的微笑)の2種類があります。まずは赤ちゃんの成長・発達段階について知り、そこから素敵な笑顔である「社会的微笑」を見るための具体的な方法を学んでいきましょう。
赤ちゃんの笑顔の発達段階:新生児微笑から社会的微笑へ
赤ちゃんが笑うのはいつからなのか、どのように感じているのか。自分の家にやってきた可愛い新メンバーに、パパもママも疑問がいっぱいですね。まずは、新生児期から「本当の笑顔」が出るまでの赤ちゃんの発達について、5つのステップで学びましょう。
1生まれてすぐはまだ「無表情期」
実は生まれたばかりの新生児は、まだ自分の意思で笑うことはありません。お腹の外に出てきたばかりの新生児は、呼吸を整え、おっぱいを飲んで眠るだけでも精一杯の状態なのです。
だんだん外の環境に慣れてきて、赤ちゃんの五感などの感覚器官が発達してくると、外部からの刺激に対して様々な反応をするようになります。
2生理的な反射としての「新生児微笑」
「あれ?でもうちの子、生まれてすぐから、寝ている時に笑ったよ」と思ったママもいると思います。それは「新生児微笑(せいじにゅうびしょう)」と言われる現象です。これは、何か楽しいことがあって笑ったわけではなく、生理的な反射や、脳の発達に伴う表情筋の動きであると考えられています。
新生児微笑は、一般的に生後2週間頃までに現れることが多く、赤ちゃんがママやパパに可愛いと思ってもらうために、本能的に笑顔を見せている、という説もあります。
3新生児の視力と聴覚の発達
新生児は、視力の発達が未熟で、生後1ヶ月頃で約0.01~0.02程度しかありません。目の前の輪郭がぼんやりと見える程度で、色よりも光や影、コントラストの強いものに反応します。
しかし、お腹の中にいる時から聴覚はしっかりと発達しており、ママの声や周りの雰囲気を感じ取ることができます。優しいママの声やリラックスできるオルゴール、クラシックなどを聞かせると、気持ちよくて新生児微笑を見せるきっかけになるかもしれません。
赤ちゃんが笑うのはいつからなのか気になっているママやパパは、変顔で笑いを取ろうと一生懸命になってしまうかもしれませんが、新生児期は聴覚と触覚の刺激から安心感を与えることが大切です。
4大人の表情を真似る模倣行動
少しずつ視力が発達し、生後2ヶ月頃になると、赤ちゃんはママやパパの表情を必死にマネしようとします。これは模倣行動(モデリング)と呼ばれるもので、例えば、ママが舌を出したら赤ちゃんも舌を出すといったように、ママやパパの顔を見ながら、どんな風に筋肉を使ったら、どんな表情ができるのかを勉強しているのです。だからママもパパも赤ちゃんに笑顔で接しましょう。この時期の真似っこは、赤ちゃんの社会性やコミュニケーション能力の基盤を築く大切なステップです。
5「社会的微笑」と「クーイング」:本当の笑顔の出現
赤ちゃんが自分の意思で、人(特に養育者)に対して見せる笑顔を「社会的微笑(しゃかいてきびしょう)」と呼びます。これは早くて生後2ヶ月頃から、多くの赤ちゃんは生後3ヶ月〜4ヶ月頃に出現すると言われています。
社会的微笑は、単に口角が上がるだけでなく、目の周りの筋肉も動き、本当に嬉しそうな表情になるのが特徴です。この笑顔が出始めると同時に、「あー」「うー」といった声(クーイング)も聞かれるようになり、コミュニケーションへの意欲が芽生えている証拠です。
笑いだしたばかりの頃は、ニコニコではなくニヤッとするだけだったり、顔がクシャッとしたり赤ちゃんによって様々ですが、一度笑い方が分かると、徐々に笑う回数が増えてきます。個性や接し方によってもう少し時間のかかる子もいるため、焦らず赤ちゃんのペースで見守ってあげてください。
社会的な笑顔を引き出す3つのコツ:接し方でコミュニケーションを育む
生後2ヶ月以降の赤ちゃんは、周囲の環境や人の感情を敏感に感じ取る共感力が非常に高くなります。パパやママが育児を苦痛に感じていると、その気持ちが伝わって笑顔になれないこともあります。
特に頑張り屋さんのママは育児に余裕がなくなりやすいので、ファミリーサポートや実家などの手も借りて、少しでも育児を楽しめる余裕を作れるように自分を労わりましょう。社会的微笑を引き出すための具体的なコミュニケーションのコツを3つご紹介します。
1目を見て、お世話しながら語りかける
赤ちゃんはまだはっきり目が見えていませんが、耳はしっかり聞こえています。まずは、抱っこしたり、授乳したり、おむつを替えたりといったお世話をしながら、赤ちゃんに優しく語りかけてみましょう。
優しいママの声は赤ちゃんにとって心地よく、安心感を与えます。この安心感が、嬉しくなって笑顔で反応するきっかけになるかもしれません。近年、黙ったまま赤ちゃんのおむつ替えをするママ、赤ちゃんを抱っこしたままスマートフォンに夢中のママも少なくありません。生後一年間は赤ちゃんの脳が急激に発達する大切な時期です。反応がなくても毎日積極的にコミュニケーションを増やすことができる「語りかけ育児」は、赤ちゃんの言語発達や情緒の安定にとても大切です。
笑顔を引き出す語りかけの例
- 「○○ちゃん、ごきげんね、気持ちよさそうだね」
- 「おむつを替えたらスッキリしたね、きれいになったよ」
- 「お腹がいっぱいになってよかったね、ミルクがおいしかったかな」
- (いないいないばあをする前に)「だれかな?だーれだ?」
2くすぐるなどスキンシップを増やす
生後3~4ヶ月頃になると、赤ちゃんも構ってほしくて泣くことがあります。そんな時は、たくさん赤ちゃんと触れ合いましょう。そして赤ちゃんの笑うツボはどこにあるのか、あやしながら探してみましょう。
赤ちゃんは、スキンシップが大好きです。くるくる変わるママやパパの表情や、手でマッサージされる刺激などが楽しくて、ニコニコしたり、時には声を出して喜んだりするかもしれません。赤ちゃんによって、笑うポイントは様々です。
初めて赤ちゃんを育てるママは、赤ちゃんとの遊び方が分からず困ってしまうこともあるかもしれません。けれど、赤ちゃんとのスキンシップは、とくに難しいテクニックなんて必要ありません。ママやパパの声、手、表情が、赤ちゃんには最高のおもちゃなのです。赤ちゃんのほっぺたや、お腹を優しくなでて、赤ちゃんの目を見ながらしゃべりかけてみましょう。
笑いのツボを刺激する触れ合い方の例
- 「いないいないばぁ」:生後3ヶ月頃から視力が発達し始めると、最も効果的なあやし方の一つです。
- 赤ちゃんのお腹に口を当てて、ぶーーっと息を吹く(ブーブーくすぐり)
- お腹やふとももをくるくるマッサージしながら足の裏を優しくくすぐる
- 人差し指と中指で歩くように、赤ちゃんの指先から脇の下に「トントントン」などと声付きで指を動かす
3ママやパパがニコニコ笑顔で接する(鏡の役割)
「周りの赤ちゃんと比べて、うちの子はなかなか笑わない」と不安になるママもいるかもしれません。けれど赤ちゃんが笑い出すタイミングには、非常に大きな個人差があります。生後5ヶ月や6ヶ月になってから社会的微笑を見せるようになる赤ちゃんもいるため、過度な心配は不要です。
赤ちゃんは、大人の気持ちや表情を敏感に感じとります。まずはママがリラックスして笑顔を見せましょう。赤ちゃんはママやパパの笑顔を鏡のようにマネて、自分の表情の出し方を学んでいきます。日々の積み重ねが、やがて素敵な笑顔となって返ってくるのです。
赤ちゃんはママパパが大好き!笑顔の貯金を続けましょう
泣いてばかりの赤ちゃんのお世話はとても大変です。でも、まだ笑わない赤ちゃんも、毎日お世話をしてくれるパパとママのことはちゃんと分かっていて、大好きなのです。だから、まずはパパとママが赤ちゃんに笑顔の貯金をするつもりで、意識してたくさん笑いかけましょう。
もし、生後4ヶ月以降も全く反応がない、視線が合わないなど、他に気になる様子がある場合は、自治体の乳幼児健診や地域の保健師、小児科医に相談することをおすすめします。多くの場合、成長のペースがゆっくりなだけですが、専門家の意見を聞くことで安心感を得られます。焦らず、赤ちゃんの成長の過程を楽しみながら、笑顔を育んでいきましょう。