現代の離婚事情を日本の離婚率から考察してみる
男尊女卑の激しかった時代に比べると、離婚に対して寛容になってきた日本社会。離婚率が高いから悪いのか、低いからいい社会なのかは誰が決めることでもありません。世界の国々を見渡しても、離婚事情は全然違います。
離婚できるのは社会体制がしっかりしているからという国もあるし、離婚が成立しても住宅事情が悪く、同居は続けているのなど、日本では考えられないような事情を抱えている国もあります。世界ランキングでは日本は何位なのかを見ながら、日本の離婚事情を見ていきましょう。
日本の離婚率ランキングは全世界で36位
日本の厚生労働省が平成27年度に発表した人口動態統計によると、1000人に1.77人が離婚したという結果がわかっています。それに基づき、世界の主要国の離婚率を人口1000人あたりの数字で調べたランキングでは、日本は6位でした。ちなみに全世界ランキングだと、36位です。
統計の仕方で、結果が違いすぎる感がありますが、上位にランキングされている他国の事情を調べると、日本の状況はそんなには悪くありません。
まず、主要国で1位のロシアですが、主な離婚原因は度重なる社会情勢の変化によるものです。急激な民主化により、自分で就職先を探さなければならない状況に、特に男性が追い付けない状況が起因しています。なかなか仕事が見つからないため、アルコール中毒やドラック中毒に陥り、家庭不和につながり、あっという間に離婚に至るのです。
2位のアメリカは、州によって離婚率が異なります。例えば、ニューヨークのような高収入世帯が多いエリアでは、離婚率は低く、貧困層が多いエリアでは離婚率が高いという状況なのです。ただ、離婚する決心をしても、なかなか手続きが進まないのがアメリカの特徴。離婚が成立しても、子供の親権などのトラブルで実際には解決に至らないのが現状です。
以上のような、離婚率ランキングの上位国の実態からして、日本の離婚事情はさほど悪くないということがわかります。
日本で離婚が多いのは結婚4年目
結婚してすぐ子供ができた夫婦の場合、その子供が乳幼児期を過ぎた4年目あたりの離婚が一番多いです。
もし一人目の子供がちょうど4歳の場合、母親が専業主婦なら幼稚園に入れる年齢で保育園も受け入れが多い年齢です。妻が自立できる、ひとりの時間ができる最初のチャンスと言えます。乳幼児の世話に専念している間は、身も心も不安だらけ。多少夫に不満があっても何か行動に出る勇気や余裕もなく、そのまま時間が過ぎていくだけでした。
しかし子供がひとり歩きを始め、付きっきりで見張る面倒の見方をする必要がなくなり始めると、ふと考えごとをする時間もできるようになり、妻の自立心も芽生えてきます。
そうなると仕方なく夫の言いなりになっていたことに疑問を持ち始めます。ママ友たちとの交流が広がり、社会とのつながりが復活するので、いろいろな情報が入るようになり、ますます離婚への思いが強くなります。
夫の方も育児に専念する妻とのつながりが弱くなっていくことに薄々感づき、他の異性や人間関係の方に魅力を感じ始めます。せっかく、子供を通じて深まった夫婦の絆がかえって弱くなってしまいます。このような環境に変化していくのが結婚4年目なので、離婚に踏み切る夫婦が多く出るという結果に陥ります。
若年層の離婚率が高い原因は「精神的な未熟」
以前から離婚率が高いのが若年層です。若年層はできちゃった婚も多く精神的にも未熟な上に低収入です。同年代の友人たちが自由を謳歌しているのを横目に自分だけ育児に専念している状況にストレスは溜まる一方となります。
夫婦共々若ければ、大きな衝突が起きるのは当然です。離婚が成立するのは時間の問題で、若いからいつでもやり直せると簡単に離婚を成立させてしまいます。
熟年層は日頃の不満が爆発して離婚に至る
最近になって増加しているのが熟年層の離婚率です。熟年層の場合、結婚した時から積もり積もった妻のうっぷんが爆発したことに起因することが主です。結婚当時は、妻は夫に常に従うものという思想に全く疑問を抱かなかった妻ですが結婚生活を続けるうちにストレスへと変化していきます。
もう一つ離婚を選択する理由は、女性の社会進出です。これは高度経済成長期に結婚し、バルブ経済が崩壊する直前に夫が定年退職した世代によく見られます。
夫の方から熟年離婚を切り出す例も少なくありません。景気がよく、羽振りのよかった時代から関わりのあった妻以外の女性と定年退職を機に本格的に一緒になることを決心し、妻に離婚を切り出します。しかし今後の日本は年金など老後の金銭的な問題が深刻化していくため容易に熟年離婚には踏み切れないケースが増える可能性があります。
離婚原因の1位は性格の不一致
夫と妻で離婚の動機はズレがありますが、共通の1位は性格の不一致です。育児方針の違い、金銭感覚の違い、育ってきた環境の違いからくる様々な価値観の違いはなぜ結婚前にわからなかったのでしょうか。これらのズレは毎日いっしょに生活を続けるうちに徐々に露呈してきます。中には、エアコンの温度設定の好みが原因で離婚したという例もあります。
妻の不貞行為が原因となる離婚も増加傾向
夫からの離婚の理由では、異性関係のトラブル、妻の浪費癖、妻の家族との不仲などがあります。異性関係のトラブルは、自分が妻以外との女性と関係を持ったのが原因である例もありますが、妻が夫以外との男性と関係を持っていたのが発覚したため、離婚を決意するというケースが増加傾向となっています。
家庭内暴力や経済的暴力なども離婚の原因
妻から切り出す離婚理由には、夫からの家庭内暴力や精神的な暴力から逃れるため、生活費を入れてくれないためなどがあります。夫が生活費を払わなくてはいけないというのは、民法でも定められているので重要です。夫の身勝手な理由で、妻に生活費を渡さないというのは法的にも許されることではないため、立派な離婚の動機になります。
夫からの肉体的、精神的な暴力に妻が異議を申し立てられるようになったのも現代日本の特徴です。一方で女性があまりにも強くなりすぎ、妻が夫に対してさまざまな暴力を振るうようにもなっているのも事実です。
スマホの普及で離婚に関するトラブルも増加中
スマホや携帯電話の普及に伴い、さまざまな方法で他人との交流ができるため、トラブルも多様化しています。夫や妻のどちらかが悪徳商法や新興宗教にはまり、騙され、経済的に破たんするだけでなく、精神的にも破たんし、解決の糸口が見つからず、子供を守るために離婚に至るケースも増加しています。
離婚率には経済的な問題が直結している
結婚は夫婦でさまざまな困難を乗り越えて行くからこそ、喜びも共有できます。離婚すれば喜びの共有はできませんが、その代わり自由を得ることができます。しかし一人で頑張っていくには、何よりも収入が必要で離婚原因も経済状況が大きく関係しています。
不況だと離婚率が高くなるとも言われますが、好況で女性の就職先に不自由しないから思い切って離婚するという国も存在します。また、日本の経済状況の先行きが不安な中で、安易に離婚を考えていいのかという意見もあるのも事実です。
ライフスタイルも多様化されつつある現代ですが、離婚はまだまだ大胆な行動であることは否めません。離婚することにどんな意義があるのか今一度考えてみるのも良いのではないでしょうか。