子供を信じることの本当の意味とは?親がハマりがちなトラップ
子育て中の親がよく耳にする「子供を信じることが大切」という言葉。あなたはその言葉の本当の意味を理解できていますか?子供の成長と共に表面化するトラブルからは、子供の心と共に親が子供を信じることの意味を誤解しているという問題が浮き彫りになることがよくあります。
そこで今回は、子供を信じる親がハマりがちなトラップ、子供を信じることの本当の意味や伝え方、子供を信じることに役立つおすすめの本についてご紹介します。
子供を信じる親がハマりがちなトラップ
「子供を信じている」という親がよく勘違いしているのが、「うちの子に限って」という思い込みです。うちの子供がそんな悪いことをするはずがない、うちの子供はそんな失敗はしないという親の思い込み。子供にとっては本当に辛い信頼です。
こうしたトラップにハマってしまう親は、失敗しない我が子を信じているのであって、ありのままの子供を理解して信じていることにはなりません。
子供がトラブルを起こしたり、不登園・不登校になったり、受験に失敗したりといった状況になると、トラップにハマった親からは「子供を信じていたのに」と裏切られた気分になった不満や愚痴が漏れがちですが、子供の側からするとそうした親は失敗する自分は信じず、本当の自分を受け入れてくれない親でしかないのです。
こうして子供を信じることができない親子関係が出来上がってしまうと、子供は生涯にわたり大きなダメージを受けやすくなります。
信頼によって育まれる子供の心
私達は他人と関わらなければ生きていくことができません。ところが自分の力も他人も信じられないまま成長しまった場合、外に出れば他人から何をされるか分からず怖くてたまりませんし、何かあっても自分を守ることができませんので、恐怖で外に出ることが困難になってしまいます。
子供にとって「自分以外の他者への信頼」は、自立して社会に歩み出すためにとても重要な意味を持っています!
他者を信頼する心は、乳児期からの積み重ねで形成されていきます。乳幼児期は母親や父親、祖父母といったごく身近な人がおむつ替えや授乳、遊びや抱っこなどで不快を取り除いて快を与えますが、こうした行いによって子供は愛着を形成し「自分は他者から愛されて大切にされる」という基本的信頼感を獲得していきます。
この基本的信頼感があるからこそ子供は外の世界へと興味を広げて歩み出し、他者との関わりの中で徐々に自我を確立していくことができるのです。
ところが成長過程で親が子供を信じずに過保護・過干渉になってしまうと、子供の不安は高まり、良かれと思った親の言動によって逆に外に出る勇気をくじかれてしまうのです。(注1)
信じられない!子供が嘘をつく心理
一方、子供を信じたくても信じられないという親も少なくありません。親が子供を信じることができなくなるきっかけの多くが子供の嘘です。
信じて待っていたのに約束を破られたり、嘘をついて誤魔化されたりすれば、どんなに信じたくても何をどう信じればよいのかわからなくなり、混乱してしまうのも仕方がありません。けれど子供が嘘をつくにはそれなりの理由があるのです。
- 怒られるのが嫌
- 空想を伝えているだけ
- 願望が口をついただけ
- 親が嘘をつくので真似をしている
- 本当のことが言えない状況
- 寂しい など
子供の嘘は相手と自分の信念の違いを理解し、相手を嘘によって操縦できることが分かる年齢なると誰もが状況によってつく可能性があります。ですから親の接し方や環境次第によって、子供が意図して嘘をつく必要がない状況を作ることはできます。
親が怒らなければ子供が嘘をつく必要がなくなりますし、親に見守られている安心感を抱いていれば嘘をついてまで親の気を引く必要もなくなるのです。
ただし子育て中の親は「ダメなことはダメ」と教えなければなりません。ですから親としては悩ましい限りでしょう。
けれど嘘によって子供を信じることができないママとパパはまず、なぜ子供が嘘をつくのか自分と子供の信念の違いを考えるところからスタートし、子供への信頼を回復させていくことが重要です。
お子さんが親に信じてもらうことができないような子供なのか、それとも親を信じることができない状況に子供を追い込んでしまったのか、そこをしっかりと考えて信頼を回復させず、頭ごなしに「嘘をついてはいけない」という躾を行っても、子供にとって無意味なだけでなくマイナスに働いてしまいかねません。
親が子供を信じることの本当の意味とは?
外の世界へと歩み出した子供が自我を確立し、親元を巣立って自立するには長い年月が必要ですが、近年ニート問題など若者の社会的自立の遅れや引きこもり・不登校といった社会的孤立について指摘されているように、もはや「20歳で自立」「大学を卒業したら自立」という構図を思い描けない家庭も多く存在します。
あなたはもし我が子の不登校やトラブルに直面しても「この子はいつか必ず自らの力で自立してイキイキと暮らしていけるから大丈夫」と慌てず騒がず子供を信じ、温かく接して見守ることができますか?
子供を信じるということの本当の意味
時間や世間体など親の頭によぎる不安を排除し、子供が自らの課題を自らの力で解決することを信じて見守り、温かく優しく接することです!
ですから勉強しない子供が受験に合格することを信じても、親が子供を信じることにはなりませんし、不登園・不登校の子が登園・登校することを信じても、親が子供を信じることにはなりません。
子供にとってそれが無意味なことであれば、子供は自分が解決すべき課題ではないため親の期待通りに行動しません。親は「周囲の流れと合わせられなければ進学や就職に不利」と考えて時間的に焦ってしまいがちですが、当事者である子供が必ずしも時間を重要な要素だと考えるとは限らないのです。
親の期待が子供にもたらす影響
ただし親の期待は必ずしもマイナスに働くわけではありません。子供達が「期待を裏切りたくない」「期待に背くことで親から見捨てられるかも」といった受け止め方をすることで、それが原動力となって思春期以降の勉強やスポーツで結果を出せることもよくあります。こうした傾向は母親との結びつきや依存が強い女の子に多く見られます(注2)。
けれどこうした効果は子供が親から失望されることへの不安をかかえている状態の結果であることが多く、そのような場合は子供を信じる親から得られる安心感は得られておらず、成功と同時に失敗への恐怖心も募り、将来的に情緒不安定な状態になってトラブルが起こる恐れも否定できません。
「やればできる」は信じることになる?
子供が家庭で勉強や習いごとの練習をしないと、親はイライラして辛くなってしまいやすいです。そのため、“イライラを子供に向けたくない”、あるいは“子供を信じたい”といった気持から「あなたはやればできる子だから」と口にする親が少なくありません。
この「やればできる」というセリフ、実は曲者なのです。親からすると子供を信じる言葉のようにも感じられますが、困難な課題を前にした子供にとっては「やればできるならやらなくてもいいでしょ」という逃げ場になることもありますし、「やればいい子だけど、やらなければ悪い子」というレッテル張りと感じる子もいて、子供が“親は自分を信じてくれている”と感じられないことが多いのです。
子供の能力を褒めたい時は?
ぜひ「やればできる」ではなく、「やればもっと伸びる」という努力への勇気づけになるメッセージを伝えてあげましょう!
子供を信じる心の伝え方
不登園や不登校、子供のトラブル、受験などの困難な課題に立ち向かう子供を勇気づけたいママやパパは、ぜひ次のようなことを意識して子供と接し、子供を信じる親心を分かり易く伝えましょう。
- 子供の気持ちを尊重する
- 親の価値観や常識を押し付けない
- 子供の真剣に話を聞く
- 相談は突き放さず一緒に考える
- 子供の未来を心配しない
- 手出し口出しをしない
- 一緒に楽しく過ごす
- 温かく接する
常識や親の価値観を振りかざすと、子供は違う考え方や価値観を持つ自分は間違っている人間だと捉え、自分自身を信じられなくなってしまいます。
また、子供が助けを求めていないのに手出し口出しといった過干渉・過保護な対応を続けると、子供は「あなたには自ら課題を解決する能力がない」と親からメッセージを送り続けられているように感じます。
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親の価値観からすると「高校卒業、現役で大学合格、浪人せずに卒業、就職が幸せ」と考えてしまうでしょう。金銭的な問題もありますので複雑な心境でしょう。けれど、たとえ人生が親の希望通りに失敗なくスムーズに進まなくても、そうした経験から何かを学び、後の人生に役立てて幸せに暮らしている人は少なくありません。
「それもまた人生」と子供を信じる余裕と優しさを親が持つことで、子供を信じる親心はぐっと伝わりやすくなるのです。
子供を信じるのに役立つおすすめの本
内閣府の調査では、未来を担う13歳~29歳のアメリカやイギリスなどの若者は8割以上が自分自身に満足しています。ところが日本の若者は半数以上が自分自身に満足していません。親や家族から感じる愛情に関しては日本人も諸外国の若者も8割以上と高いのですが、親の一方的な愛情だけでは子供の自己肯定感を高められないことがわかります。(注3)
ぜひ子供を信じる親としての方向性を掴むのに役立つ本を読んで、今後の子育てに役立てていきましょう。
子供を信じること
著者:田中茂樹
大隅書店
2,800円 + 税
子供をめぐる問題に苦しむ親に、脳科学者・医師・臨床心理士である著者が、様々な事例と共に心理学的に子供との接し方をご紹介します。
子供の問題に直面する親が抱く「なぜ?」という疑問が解消され、これから自分がどのように子供を信じて接して行けばよいかが分かる道しるべとなる本です。
子供をのばすアドラーの言葉
著者:岸見一郎
幻冬舎
880円 + 税
アドラー心理学研究の第一人者である著者が、子供の失敗や勉強について親がどのように子供を信じるのかを分かり易く紹介しています。
子供が心配でたまらない親、子供が自分の力で問題を解決することを信じられない親にとって、目から鱗が落ち、子供を信じることの本当の意味や効果が見えてくる一冊です。
参考文献