子供を信じる本当の意味とは?親がハマりやすいトラップと信頼の伝え方
子育て中によく耳にする「子供を信じることが大切」という言葉。でも、その意味を具体的に説明できる人は意外と少ないかもしれません。子供の成長にともなって表面化するトラブルの背景には、信じることの意味のすれ違いが隠れていることがあります。
そこで今回は、子供を信じる親がハマりやすいトラップ、子供を信じることの本当の意味と伝え方、そして参考になるおすすめの本をご紹介します。子育ての正解を示すものではなく、日々の関わりを見直すヒントとして読んでみてください。
子供を信じる親がハマりやすいトラップ
「子供を信じている」というとき、知らないうちに入り込みやすいのが「うちの子に限って」という思い込みです。うちの子が悪いことをするはずがない、失敗するはずがない……。一見すると深い信頼のようですが、子供にとっては少し苦しい期待になってしまうことがあります。
このトラップにハマっているとき、親が信じているのは「失敗しない我が子」であって、ありのままの子供を理解して信じているわけではない、という点に気づくことが第一歩です。
子供がトラブルを起こしたり、不登園・不登校になったり、受験がうまくいかなかったりすると、「信じていたのに」と裏切られたように感じてしまうことがあります。けれど子供の側からすると、それは失敗した自分は受け入れてもらえない、という体験になりかねません。
こうした関わりが続くと、子供は自分に自信を持ちにくくなることがあると言われています。だからこそ、成功も失敗も含めた「ありのままの子供」に目を向けることが大切です。
| 陥りやすい信頼(トラップ) | 子供を支える信頼 |
|---|---|
| 失敗しない姿を期待する | 失敗も含めてありのままを受け止める |
| 「うちの子に限って」と結果を前提にする | 子供が課題に向き合う力そのものを信じる |
| 期待どおりでないと不満が出る | うまくいかない時も見守り続ける |
信頼によって育まれる子供の心
人は誰かと関わりながら生きていきます。もし自分の力も他者も信じにくいまま成長した場合、新しい環境や人間関係に踏み出すことへの不安が強くなりやすいと言われています。反対に、人を信頼できる感覚は、社会へ一歩を踏み出すときの支えになります。
子供にとって「自分以外の他者への信頼」は、自立して社会に歩み出すためのとても大切な土台になります。
他者を信頼する心は、乳幼児期からの積み重ねで育っていきます。乳幼児期に、身近な大人がおむつ替えや授乳、遊びや抱っこを通して不快を取り除き心地よさを与える関わりを重ねることで、子供は愛着を形成し、「自分は大切にされている」という基本的信頼感を少しずつ育んでいくと考えられています。
この基本的信頼感があるからこそ、子供は外の世界へ興味を広げ、人との関わりの中で自我を確立していけるのです。
一方で、心配のあまり親が過保護・過干渉になりすぎると、かえって子供の不安が高まり、外へ踏み出す意欲がしぼんでしまうことがあると指摘されています。大学生を対象とした研究でも、親を過保護と感じているほど対人関係で不安を抱えやすく、自尊感情が低い傾向がみられたと報告されています(注1)。
信じられない…子供が嘘をつく心理
一方で、「信じたくても信じられない」と悩む親も少なくありません。そのきっかけになりやすいのが子供の嘘です。
信じて待っていたのに約束を破られたり、嘘でごまかされたりすれば、何をどう信じればいいのか分からず戸惑ってしまうのも自然なことです。けれど、子供が嘘をつく背景にはさまざまな理由があります。
- 怒られるのが嫌
- 空想を伝えているだけ
- 願望が口をついただけ
- 親が嘘をつくので真似をしている
- 本当のことが言えない状況
- 寂しい など
相手と自分の考えの違いを理解し、言葉で相手の受け取り方を左右できると分かる年齢になると、誰でも状況によって嘘をつくことがあります。裏を返せば、親の関わりや環境しだいで、子供が嘘をつく必要のない状況をつくることもできます。
親が頭ごなしに怒らなければ、子供は嘘で身を守る必要が減りますし、見守られている安心感があれば、嘘をついてまで気を引く必要もなくなっていきます。
もちろん、子育てでは「ダメなことはダメ」と伝えることも欠かせません。だからこそ悩ましいのですが、まずは「なぜこの子は嘘をついたのか」と背景に目を向けることが、信頼を取り戻す出発点になります。
親に本当のことを言えない子供なのか、それとも本当のことを言いにくい状況に追い込んでしまっていないか。そこを見つめないまま「嘘はダメ」と叱るだけでは、子供に届きにくいことがあります。
親が子供を信じることの本当の意味とは?
子供が自我を確立し、親元から自立するまでには長い時間がかかります。近年は若者の社会的自立の遅れや、引きこもり・不登校といった社会的孤立が課題として指摘され、「20歳で自立」「大学を出たら自立」といった道すじを描きにくい家庭も増えています。
もし我が子が不登校やトラブルに直面したとき、「この子はこの子のペースで、いつか自分の力で歩んでいける」と、慌てず騒がず見守ることができるでしょうか。
子供を信じるということの本当の意味
時間や世間体といった親側の不安をいったん脇に置き、子供が自分の課題を自分の力で解決していくことを信じて見守り、温かく接することです。
ですから、勉強しない子供が受験に合格することを願うだけでは「信じる」ことにはなりませんし、不登園・不登校の子が通えるようになることを期待するだけでも、同じことが言えます。
その子にとって意味を感じられない課題であれば、自分の課題として受け止めにくいため、親の期待どおりには動きにくいものです。親は「周りに遅れると進学や就職で不利になる」と時間に焦りがちですが、当事者である子供が同じように時間を重視しているとは限りません。
親の期待は子供にどう影響する?
とはいえ、親の期待が必ずマイナスに働くわけではありません。「期待に応えたい」という気持ちが原動力になり、思春期以降の勉強やスポーツで力を発揮する子もいます。こうした受け止め方には個人差があり、親など身近な養育者との結びつきの強さが関係するという指摘もあります(注2)。
ただし、それが「失望されたくない」という不安に支えられている場合は少し注意が必要です。安心感よりも失敗への恐れが大きくなり、気持ちが不安定になりやすいこともあると考えられています。期待を伝えるときは、結果よりも、その子の努力や過程に目を向けることが大切です。
「やればできる」は信じることになる?
子供が家庭で勉強や習い事の練習をしないと、親はどうしてもイライラしがちです。その気持ちを子供に向けたくない、あるいは信じたいという思いから、「あなたはやればできる子だから」と声をかける親は少なくありません。
ところがこの「やればできる」という言葉は、意外と扱いが難しいものです。困難な課題を前にした子供にとっては「やればできるなら、今はやらなくてもいい」という逃げ道になったり、「やらなければ悪い子」というレッテル貼りに感じられたりして、必ずしも「信じてもらえている」とは受け取られないことがあります。
子供の力を後押ししたいときは
「やればできる」よりも、「やればもっと伸びるよ」と、努力そのものを勇気づける言葉を選んでみましょう。
子供を信じる心の伝え方
不登園・不登校やトラブル、受験など、困難な課題に向き合う子供を勇気づけたいときは、次のような関わりを意識すると、信じる気持ちが伝わりやすくなります。
- 子供の気持ちを尊重する
- 親の価値観や常識を押しつけない
- 子供の話を真剣に聞く
- 相談は突き放さず一緒に考える
- 子供の未来を過度に心配しすぎない
- 求められていない手出し・口出しは控える
- 一緒に楽しく過ごす
- 温かく接する
常識や価値観を一方的に振りかざすと、子供は「違う考えを持つ自分は間違っている」と感じ、自分自身を信じにくくなってしまいます。また、助けを求めていないのに手や口を出し続けると、「あなたには解決する力がない」というメッセージとして伝わってしまうこともあります。

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親としては「高校を出て、現役で大学に合格し、就職して……」という道すじを願いがちですし、金銭的な事情もあって心境は複雑でしょう。それでも、人生が思いどおりに進まなくても、そこから何かを学び、自分らしく暮らしている人はたくさんいます。
「それもまた人生」と受け止める余裕を親が持つことで、子供を信じる気持ちはぐっと伝わりやすくなります。なお、不登校や子供の様子で悩みが続くときは、学校のスクールカウンセラーや教育支援センター、自治体の子育て・教育相談窓口など、身近な相談先を早めに頼ることも大切です。
子供を信じるのに役立つおすすめの本
内閣府が若者を対象に行った国際比較調査では、日本の13〜29歳のうち「自分自身に満足している」と答えた人は半数に届かず、アメリカやイギリスなどと比べて低い水準にとどまっています。一方で、親や家族からの愛情を感じている人の割合は諸外国と同じく高い、という結果が示されています(注3)。愛情を注ぐだけでは自己肯定感は育ちにくく、関わり方そのものが大切だとうかがえます。
子供を信じる関わりの方向性をつかむのに役立つ本を、2冊ご紹介します。
子供を信じること
著者:田中茂樹
出版社:大隅書店
医師・臨床心理士である著者が、子供をめぐる悩みに向き合う親へ、さまざまな事例をもとに子供との接し方を紹介する一冊です。「なぜ?」という疑問がほどけ、これからどう子供を信じて関わればよいかの道しるべになります。
子供をのばすアドラーの言葉
著者:岸見一郎
出版社:幻冬舎
アドラー心理学研究の第一人者である著者が、子供の失敗や勉強に親がどう向き合うかを分かりやすく紹介しています。子供が心配でたまらない親、自分の力で問題を解決する姿を信じきれない親にとって、信じることの意味を見つめ直すきっかけになる一冊です。
よくある質問
子供を信じて見守るのと、放任はどう違いますか?
見守りは、子供の様子に関心を持ち、困ったときにはいつでも支える姿勢を保ちながら、先回りしすぎないことです。関心を向けず関わりを手放してしまう放任とは異なります。
信じて見守っても状況が変わらないときは?
子供のペースは一人ひとり違うため、短期間で変化が見えないことも珍しくありません。悩みが続くときは、スクールカウンセラーや自治体の相談窓口など専門の窓口に相談しながら関わっていくと安心です。
「信じている」と言葉で伝えたほうがいいですか?
言葉も大切ですが、結果ではなく努力や過程に目を向けた声かけや、話を最後まで聞く態度など、日々の関わりのほうがより伝わりやすいと考えられています。
まとめ
子供を信じるとは、「失敗しない我が子」を期待することではなく、うまくいかないときも含めて、その子が自分の課題を自分の力で乗り越えていく姿を信じて見守ることです。時間や世間体への不安をいったん脇に置き、努力や過程に目を向けた温かい関わりを重ねていくことで、子供は少しずつ自分への信頼を育てていきます。一人で抱え込まず、必要なときには身近な相談先も頼りながら、その子のペースを大切にしていきましょう。
参考文献
- 注1:J-STAGE「親の養育態度の認知は社会的適応にどのように反映されるのか:内的作業モデルの媒介効果」
- 注2:J-STAGE「中学生における親の期待の受け止め方と適応との関連」
- 注3:内閣府「今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの」

