自我の芽生えとは?子供がイヤイヤする理由や親の適切な関わり方
育児書などを見ると「イヤイヤ期」や「第一次反抗期」とセットで扱われるのが「自我の芽生え」という言葉。目や耳にしても明確に理解しているママは少なく、「自己主張が強くなる」「ワガママになる」「成長に必要なもの」という漠然としたイメージしかないので、思い通りにならない我が子にどうしてもイライラしてしまいがち。
そこで今回は赤ちゃん期~自我の芽生えまでの心の成長の流れ、自我の芽生えをサポートする我が子への関わり方についてご紹介します。
この機会にママも「必要だから仕方がない」と理由も分からず我慢する育児から、理解を深めて日々まっしぐらに成長する子供を前向きにサポートする育児へとステップアップしましょう。
そもそも自我って何?自我の芽生えとは?
「自我の芽生えの時期だから自己主張が強くなり…」などと言われても、心の底から納得できずにイライラして「そもそも自我って何?」「なぜ自我の芽生えが必要なの?」「ワガママなだけじゃない?」と、不安や思い通りにならない怒りで心が揺れ動くのがママ達からよく聞かれる本音。まずはそうした疑問から紐解いていきましょう。
自我とは?
自我とは「自分」「自己」を意味する言葉です。
生まれたばかりの赤ちゃんには「自分」という概念、つまり「自我」がありません。自分の手、体、相手といった意識はなく、情緒(感情の動き)も「快」「不快」という2種類しかありませんが、自我がない一方でいつも不快をとり除いて自分を快適にしてくれる人、つまり母親への愛着形成を始めて「人への基本的信頼感(社会を構成する人間は基本的に信頼できる存在だと感じられる気持ち)」を獲得しようとします。
脳や身体の発達に伴い生後3ヶ月を過ぎた頃からハンドリガードを始め、自分の体や声などは自分が動かしたり出したりしているものだと徐々に気づき、情緒の種類も「怒り」「嫌悪」「恐れ」「愛情」「得意」と増加します。
1歳半を過ぎると情緒がさらに発達して「喜び」「嫉妬」「大人や子供への愛情」といった気持ちも感じるようになっていき、鏡に映る自分の姿を認知する子が増えますが、その反面「あれ?自分とママは同じはずなのに…違うの?」と思い始めて不安を感じることもあります。幼児期前半は母親以外の父親や祖父母への愛着形成も行う時期ですが、この頃はまだ親の保護が必要な年齢ですので、自己欲求は抑制されています。
そして「親が心の中に常にいる」と思えるようになる2~3歳になると、自我が芽生えてひとり歩きを開始します。こうして次第に母親から離れて集団生活の中でお友達と遊べるようになるのです。
心理学者フロイトの考える自我の役割
夢分析で有名な精神学者のフロイトは「自我には心のバランスを取るための大事な働きがある」とし、自我の役割は「○○がやりたい!」という本能的な衝動と、親のしつけによって培われた「○○をやってはいけない!」という道徳心のバランスを保ちながら、できる限り本能的衝動を満たそうとする働きだと考えています。
自我の芽生えとは?
自我(自分という存在)を認識して客観的に見られるようになると、自分の意思と他人の意思は違うということに気づき、自分の意思を他人に主張しようと考えるようになります。これが「自我の芽生え」と呼ばれる時期。
2~3歳になると情緒も急激に発達して、「望み」「うらやみ」「失望」「心配」「恥じ」を感じるようにもなります。
ママの手を借りずに何でも自分でやってみたいと感じる自律心が強くなり、自己主張や反抗を強く行うようになりますが、大人から行動を止められることも増えるため、増々反抗や自己主張を強くするのです。けれどこうした期間があるからこそ、自分と他者との違いへの認識を深めていくことができます。
自我の芽生えは必要です!
「自我がない=自分がない」ということですので、自我の芽生えはワガママではなく成長に伴う当然の主張。幼児期に芽生えた自我を様々な人間関係によって形成させ、青年期の第二次反抗期を経て確立することで、子供は自分と違う他者を受け入れ、自分の心と他者との折り合いをつけて生活できる大人へと成長することができるのです。
自我の芽生えはいつから?
赤ちゃん期~自我芽生えまでの発達の流れを見てお分かりのように、自我の芽生えは1歳半から2歳くらいに訪れると言われています。
自我の芽生えの時期を「第一次反抗期」とも言いますが、虐待などで親への愛着形成が上手くいかないと「親が心の中に常にいる」と感じられずブレが生じたり、親の過保護過干渉で自我が芽生えていても社会性の形成に問題が生じたりしてしまい、2歳の第一次反抗期がみられないことがあります。
社会性の発達には「自己表現」「共感」「調整」といった力が必要ですので、自我の芽生えや反抗期がなかなか訪れず心配な場合は、口出しや手出しが多すぎないか、受け止めたり待ったりする姿勢が欠けていないか、教えていることが少なすぎないかを再確認しましょう。
自我の芽生えとイヤイヤ期の関係
自我が芽生えによって行う自己主張の一つが「イヤイヤ」の連発。「イヤイヤ期」とは自我の芽生えによって「イヤイヤ」を連発することからつけられた第一次反抗期の別名です。
イヤイヤ期はそれまで言いなりだった子供がママの言うことを聞かなくなり、何でもイヤイヤと反抗的な態度をとるのでママもイライラしてしまうことが多くなりますし、人を噛むなどの他者に危害を加える行動や危険な行動をすることも増えるため、その度に注意するママは「怒り過ぎてしまった」と自己嫌悪など悩みを抱えやすくなります。
文部科学省「子供の育ちをめぐる現状等に関するデータ集」(注1)によると、親のお世話が必要な赤ちゃんのママよりも1歳児のママの方が「仕事や家事が十分にできない」という悩みを抱える割合が高く、2歳になるとその割合はさらに高くなります。
また3歳になると「言うことを聞かない」という悩みがピークに達しますが、4歳から徐々に割合が下がっていくことからも、自我の芽生えによって訪れるイヤイヤ期がこの時期のママ達を悩ませていることがわかります。
イヤイヤに負けないで!
自我の芽生えと共に何でもイヤイヤと自己主張をしますが、子供にとってはそれがこの時期に重要な仕事のようなもの。ママが自分や他人を傷つけることや社会のルールに反することに対してイヤイヤを受け入れない姿勢を示すことで、子供は自我をしっかりと発達させることができます。自己嫌悪したり不安に思ったりせず、本当にダメなことは自信を持って強い気持ちで受け入れられないことだと教えてあげましょう。
自我の芽生えで見られる5つの特徴
あまり自己主張が強くない子供やおっとりしたママの場合、自我の芽生えに気づかないこともありますが、次のような行動が見られたら子供の自我が芽生え始めています。
1ママの言うことに「いや」と言う
ママが「ご飯食べようか」と言うと「いや」、「そろそろねんねしようね」と言えば「いやいや」と、何でも「いや」と言います。
「いや」と言ってばかりなので反抗やわがままのように思えますが、「まだお腹がすいていない」「もうちょっと遊びたい」など、ご飯やねんねを嫌がる子供なりの理由があって、それを「いや」の一言で表現します。
2なんでも自分でやりたがる
今までママと一心同体だと思っていたので当然のようにママに身の回りのお世話をしてもらっていましたが、自我の芽生えで自分が一人の存在であることに気づくと、なんでも自分でやってみたいという発達に伴う欲求が現れます。
ちょっとしたことでも子供がやりたがるので時間がかかってしまいママの負担が大きくなりますが、子供の成長のために避けては通れないことなのです。
3感情のコントロールができない
自我の芽生えの時期の子供はまだ感情のコントロールができません。そのため時と場所を選ばず、気に入らないことがあると駄々をこねたり泣き叫んだりします。
ママはそのような子供の態度に疲れ果ててしまいますが、子供はこのようにして感情を他人にぶつけることで、自分の感情が受け入れられない場合もあるということを学んでいきます。
4ダメと言われていることをやる
この時期は脳の発達が未熟なため自分の欲求を抑えることができません。そのためママに「ダメ」と言われたことでもやってしまいます。
ママの言っている事が理解できている時期なので、「ダメって言ったはずなのに…」とがっかりしてしまいますが、この時期の子供は頭では理解していても心が伴わないものなのです。
5自己主張が増える
自我が芽生えると自分の気持ちが他人の気持ちとは異なることに気づき、気持ちを伝えるために自己主張するようになります。
赤ちゃん期は泣くことで自分の欲求や気持ちを伝えていましたが、泣く以外の方法を使っても自分の気持ちが相手に伝わり受け入れてもらえるという経験を積んで学んでいきます。
自我が芽生えた子供への接し方
自我が芽生えた子供の言動は、時にママを困らせたり悩ませたりしますが、親がどのように対処するかが子供の発達に影響を与えますので、ママは子供の自我の芽生えと上手く付き合っていくコツを身につけましょう。
できるだけ自由にやらせてみる
子供の「やりたい気持ち」を尊重し、危険や他人への迷惑がない範囲で、できるだけ子供が納得いくまで自由にやらせてあげましょう。
子供に自由にやらせると物事がスムーズに進まなくなるため時間がかかり、家事や仕事が思い通りに進まなくなります。そのためママはイライラしやすくなりますので、時間に焦らずイライラを軽減させるために、常に時間に余裕を持って行動させるように心掛けることが大切です。
子供の感情にいちいち反応しない
大泣きしたりかんしゃくを起こしたりして自己主張する子供には、感情的になって怒鳴ったり、どうしたらいいかオロオロしたりするのではなく「今日はお菓子を買えないんだよ」と努めて冷静に伝えるようにしましょう。
子供の感情に流されず、毅然とした態度で接することを心がけることが大切です。
「やっていいこと」「いけないこと」を明確にする
子供のやりたい気持ちを満たすことは大切ですが、「やっていいこと」「いけないこと」を明確にしなければ、子供の自我や社会性は健全に成長することができませんし、家族によって違うと子供は混乱します。
先程の文部科学省のデータ集(注1)によると、3歳になると「家庭内での躾の仕方の不一致による悩み」が11.7%に上昇しますが、そのような場合は夫婦や家族間での話し合いが大切です。
また「やってはいけないこと」を伝えて本人が納得していない時、危険な場合は安全確保が最優先ですが、危険がなければ怒鳴ったり叩いたりと力ずくで無理矢理やめさせるのは避け、理由をきちんと説明して理解させるように教え導きましょう。脅迫により目先のトラブルを回避するより、自ら考え、判断し、行動できる子供の心を育てることを優先させましょう。
やってはいけないことを本人が納得できないまま無理にやめさせると、かんしゃくを起こしたり余計に反抗したりする要因となります。子供に分かるような対話によるコミュニケーションを習慣化すると、将来他人と意見が合わない時に脅しや暴力ではなくコニュニケーションで解決することを学びます。
約束をきちんと守らせる
子供の欲求の趣くままにしていてはキリがありません。かといって無理にやめさせると、自我の芽生え始めた子供は駄々をこねたり泣き叫んだりしてママも大変です。
そんな時は「時計の長い針が上まできたらお片付けしようね」と事前に約束し、約束はきちんと守らせるようにしましょう。
また、約束を守らず例外を作ってしまうと子どもは混乱して約束を守らなくなることがあります。守れない約束ならしても意味がありませんので親も守れる範囲で約束し、一度した約束は守りましょう。
頭ごなしに否定しない
「もっと遊びたい」と泣き喚いたり、「これが欲しい」と駄々をこねたり、自我が芽生えた子供の行動はママにとっては反抗的な態度に見えます。しかしこのような態度は子供の自己主張の延長ですので、子供の言動を頭ごなしに否定せず、子供の気持ちに寄り添って、意図を汲み取ることが大切です。
また子供の自己主張を聞き入れられない時は頭ごなしに「ダメ」と言うのではなく、毅然と拒絶しながらも子供の心に寄り添い「○○したかったね」と気持ちに共感する声かけをしましょう。自我の芽生えた子供は心を寄り添わせてもらうことで気持ちを落ち着かせやすくなります。
自我の芽生えは大人への第一歩!
自我の芽生えによってイヤイヤ期が始まると、ママは先の見えない暗いトンネルの中にいるような気持になり、時々「何も反抗しなかった赤ちゃんの頃に戻って欲しい」と思うこともあるでしょうが、自我の芽生えはママがここまで子供を育て上げてこられた証でもあります。
自我を確立できずに大人になってしまうと、自己主張が上手くできなかったり、他人の顔色をうかがって行動したりする大人になり、健全な自立が困難になることも多々ありますので、自我を育てるためには自我が芽生えた時期のパパやママの関わり方がとても重要!反抗的な態度を抑圧するのではなく、子供の心に寄り添って温かい目で見守ることが大切です。