でんぐり返し(前転)は何歳からできる?メリットと家庭でできる正しい教え方・練習法
世界がグルンと一回転するような感覚を味わえる「でんぐり返し」。小学校の体育の授業では「前転」と呼ばれるマット運動の基本動作です。一度できると、お子様は自信を持って繰り返し挑戦し、成長した姿を見せてくれるでしょう。
この記事では、でんぐり返しのメリットや練習を始める適切な時期、子どもの体に負担をかけない家庭での上手な教え方などについて解説いたします。でんぐり返しのやり方を忘れてしまったおうちの方も、お子様と一緒に楽しく練習してみましょう。
でんぐり返しで子供が得られる効果
でんぐり返し(前転)とは、両手を床につけて、頭から背中、腰へと体を丸めて前に1回転して起き上がる運動です。この動作には、様々な身体能力が要求されます。
でんぐり返しを繰り返し行うことで、次のようないくつもの効果が期待できます。
- 体幹(コア)と筋力の強化:腕や足を踏ん張る力、体を支える体幹の力が養われます。
- バランス感覚・運動調整能力の向上:自分の体の動きをイメージする力(運動のイメージ化)や、手足の動きのバランスを上手に取るコントロール力が身につきます。
- 三半規管の強化:回転運動により三半規管が鍛えられ、環境の変化に強くなり、車酔いの予防にもつながる可能性があります。
- 危機回避能力(受身の能力)の習得:失敗しないように体をコントロールする能力が磨かれ、押されたときや転んだときなどに、とっさに身を守る「受身」の基礎が身につきます。
失敗すると横に転がったり、背中から落ちてしまったりで痛い思いをすることもありますが、小さな子どもはこういった少し怖い動きに挑戦するのが大好きです。
お子様がでんぐり返しに挑戦していたら、「危ないから」とやめさせるのではなく、安全な環境を与えて「頑張れ!」と応援してあげましょう。
でんぐり返しは何歳からできるの?
子どもの成長を記録する母子手帳には、5歳の記録欄に「でんぐり返しができますか」という項目があります。しかし、でんぐり返しができるようになる時期には個人差が非常に大きく、1歳で始める子もいれば、3歳を過ぎても興味を示さない子もいます。
幼児体操教室などでは、骨格がある程度発達し、一人で歩けるようになり、筋力と体のコントロール能力が身につく3歳前後がでんぐり返しを教える目安としています。この時期であれば、教えられたことを自分の体で再現しやすく、スムーズに習得できる傾向があります。
保育園や幼稚園に通っていると、お友達のできる姿を見て焦ってしまうかもしれませんが、焦りは禁物です。身体能力が発達していない低年齢で無理にでんぐり返しを教えると、首(頚椎)への負担や怪我のリスクが高くなります。また、上手にできないことで、お子様が自信を失ってしまう可能性もあります。
本格的にでんぐり返しを教えるのは3歳以降が無難です。それ以前は、親子遊びの範囲で、回転する感覚や体の使い方に慣れさせていくことから始めましょう。
低年齢向け:でんぐり返しの感覚に慣れる親子遊び(2歳頃~)
でんぐり返しが苦手な子どもは、手の突っ張り方がわからないか、頭が下になって足が浮く感覚に慣れないことがほとんどです。
2歳前後のお子様は保護者の方と体を触れ合う親子遊びが大好きですから、次のような手順ででんぐり返しの感覚に慣れさせていきましょう。必ず、柔らかい布団やマットの上で行ってください。
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布団の上に保護者の方は床に足を延ばして座り、お子様を向かい合わせで抱っこします。 -
そのままお子様の体を足の上で倒して仰向けに寝かせ、保護者の方の足首のあたりに子どもの後頭部がくるように調整します。このとき、お子様にバンザイをさせて、頭の上のあたりで床に手のひらをしっかりつけるように促します。 -
保護者の方がゆっくりと膝を曲げて子どもの体をエビ反りにしていきます。 -
足や手で支えながら、お子様の足を前方に押しやって、身体を1回転させます。この時、お子様の頭のてっぺんではなく、後頭部から背中が床につくように、優しくサポートしてください。 -
怖がらずに上手にできたら、たくさん褒めてあげましょう。
こういった親子遊びは、お子様が楽しく体の動かし方を学ぶことが目的ですので、無理強いは禁物です。怖がる場合は無理に回転させず、根気よくそこまでの過程を繰り返しましょう。
でんぐり返しの習得は慣れることが第一です。繰り返し遊ぶことで徐々に恐怖感をやわらげ、褒めることでやる気を向上させてあげましょう。
本格練習:でんぐり返しの正しい教え方とポイント(3歳頃~)
でんぐり返しは、転んでも姿勢を維持して怪我を防ぎ、衝撃を最小限にしてすぐに起き上がるなど、身を守るためにも習得しておきたい動作です。お子様にとって難しい動きを保護者の方が教えて手を貸してあげることは、親子の信頼関係を深く結ぶことにも繋がります。
でんぐり返し(前転)は、次の2つのポイントを意識して練習しましょう。
1.頭のてっぺんではなく後頭部をつく
2.おへそを見るように背中を丸める
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布団の上で肩幅の広さで足を開いて立ち、身体を倒したら両手の平をできるだけ足の近くに、肩幅の広さに開いてしっかりとつけます。 -
アゴを引かせて背中を丸め、「おへそのあたりをしっかり見る」ように教えます。その後、お尻を高く上げさせます。 -
そのまま両手に徐々に体重をかけ、身体を丸めるように足でけり出して一回転をさせます。首の骨を痛めないよう、頭のてっぺんではなく、後頭部から背中へ体重を移動させるように指導しましょう。 -
足は丸めたまま回転させてしゃがませ、床についたら力を入れて立ち上がるように教えます。
もちろん最初のうちは上手にできません。「お腹を見てね」「背中を丸めてね」などと声をかけ、必要に応じて頭や腰を支えてやりながら、保護者の方がサポートをしてあげましょう。
大事なポイントは最初の姿勢!
床につく手の位置はできるだけ足元の近く、つま先から手の平1個分位前に進んだところがベストです。
こうすることで、足で蹴り出すのも楽になりますし、アゴを引いて背中を丸めやすくなり、背中からドシンと落ちる失敗を回避することができます。
最初は前方に体重をかけやすくするため、お尻を高く上げた状態から始めますが、お子様がでんぐり返しに慣れてきたら、しゃがませてから手を床につけさせて回転する練習へ移行していくといいでしょう。
膝から崩れてしまう場合や横に倒れてしまう場合は、しっかりと両手で体を支えられていないか、または回転のタイミングがとれずに早めに手を離してしまっていることが多いです。
そんなときには、四つん這いの姿勢で手と足に体重をしっかり乗せる練習(クマ歩きなど)をさせることをおすすめします。両手をついて雑巾がけをする動作も、筋力と体重を前にかける感覚を養うのに良い練習になります。
でんぐり返しの事故や怪我を防ぐポイント
子どもは成長すれば自然にでんぐり返しができるようになります。しかし、危険を回避する能力が未熟な小さな時期にでんぐり返しを覚えてしまうと、思わぬ怪我をするリスクが高くなりますので、周りの大人がしっかりと注意を払い、事故を防いでいきましょう。
起こりがちな事故事例
幼児期のお子様がでんぐり返しを覚えると、褒められるのが嬉しくて、ところ構わずでんぐり返しをして注目を集めようとすることがあります。
ところが、周りの状況を目で見て危険を理性的に認知する能力はまだまだ未熟なため、場所を選ばずにでんぐり返しをして、怪我をするリスクが高いのです。
子どものでんぐり返しで起こりがちな事故
- 両手を使わずに回ろうとして、顔面を床に打ちつける
- 体を丸めずに回転して、背中を強く打ち付ける
- 両手で支えきれず途中で態勢を崩し、首を強く痛める
- テーブルやベッドの上ででんぐり返しをして、高いところから落ちる
- 机などに衝突する、ガラス戸を蹴破る
- アスファルトの道路や砂利道ででんぐり返しをして怪我をする、交通事故にあう
事故や怪我を防ぐための配慮
このような怪我を防ぐために保護者の方ができることは、でんぐり返しの正しいやり方をしっかり教えるとともに、周りの環境を整えることです。
家の中には危険がいっぱいです。お子様が勝手にでんぐり返しを繰り返すようであれば、ストーブなどの周りにはガードを置き、柱やテーブルの角にはカバーを巻いておきましょう。電化製品や熱いもの、割れ物などがひっくり返る可能性もありますので、危険なものはこまめに片付けるよう配慮してください。
子どもに何が危険かを教えておくことも大事です。「でんぐり返しは、布団の上でだけ」「保護者の方がいるときだけ」など、でんぐり返しは安全な場所でだけするものだとしっかりと教えておきましょう。
むやみに禁止する必要はありません。幼児期にはまず自分から手足を動かし、身体を自由に動かせるよう学ぶことが大切です。でんぐり返しは多種多様な動きを身に着ける入門となる動作ですので、基本を教えながら、親子で楽しく体を動かしましょう。