今、公立中高一貫が注目される理由!全国に広がる人気のワケは?
公立小学校から中学に進学の際、以前は地元の公立中学もしくは、私立や国立受験にて進学するという選択肢しかありませんでした。
ところが1999年、公立中高一貫校の設立が始まり第三の新しい選択肢が誕生しました。2019年には大阪にも公立中高一貫校の2校目が誕生予定。今、中高一貫は全国に広がり、年々人気を集めているのです。
子供の希望に沿う進学先を選ぶためにも早い段階から、公立中高一貫校とはどのような学校か、注目される理由、中高一貫校の試験内容や受験するのに塾は必要か、家庭での受験対対策、受験させる親の心構えなどについて知っておきましょう。
偏差値60以上!?公立中高一貫とは
中高一貫校とは、中学校と高校が連携したり一体化したりすることで、6年間一貫で教育を行うシステムの学校です。公立の中央一貫校には次の3種類があり、中学受験をして入学する学校と、受験なしで入学できる学校があります。
中高一貫校の3つのタイプ
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中等教育学校
中学受験がありますが、中学を前期課程、高校を後期課程として高校からの外部募集を行わないため、6年一貫カリュキュラムで学習ができます。 -
併設型
中学校を高校に併設して中高一貫教育を行いますが、高校からの外部募集も行うため、内進生と外進生の進度に差が生じていることが多いです。 -
連帯型
既存の中学に都道府県立高校の教師や生徒が交流し、連携して中高一貫教育を行うため、中学受験がありません。半数以上の公立中高一貫校は連携型です。
1999年の開設以来、高い人気を誇る公立中高一貫校。6年間一貫した教育を受けられるため、次のような利点あると言われています。
- 計画的・継続的な教育指導ができる
- 高校入試の影響を受けないため「ゆとり」があり、安定した学校生活を送れる
- 先生が個別に生徒を把握しやすく、優れた才能を発見しやすい
- 中高生間の異年齢交流ができ、より社会性や豊かな人間関係を形成できる
中高一貫教育導入に当たって受験エリート校化や受験競争の低年齢化が懸念されていますので、中等教育学校と併設型中学校でも入学者選抜では学力検査を行わないこととされています。
ただし試験倍率が高く、塾などが発表している偏差値も60以上と高いことから、入試の難しさは私立の難関校と変わらないと言わざるを得ない状況です。
今、公立中高一貫校が注目される理由
まだ始まって歴史の浅い公立中高一貫ですが、私立中高一貫や公立高校と異なる点がいくつかあります。これこそが公立中高一貫校が注目される理由です。
学費が安い
他の公立中学と同じで中学3年間は授業料はいりません。高校の学費も一般の公立高校と同じように「公立高校学校授業料無償制」があるため、所得により補助が貰えます。基本的に私立に比べて学費が安いため、補助で学費のほとんどをまかなえる世帯もあります。
一方私立中学は年間100万近くかかる学校もありますし、自宅を出て寮生活を行うとなれば年間150万~200万かかることも。ですからこうした学費の安さが、公立中高一貫校の大きな魅力なのです。
大学進学実績が良い
6年一貫教育だからこそ、中学の段階で高校の内容を一部先取りで学習することが可能です。
私立では以前から取り入れられていましたが、学習指導要領の弾力化によって公立中高一貫校でも可能になりました。
そのため大学受験の対応ができ、進学実績も上がっているのです。
リーダーの育成
中高一貫校の大きな目標の一つです。大学の進学実績から「エリート教育をしているのでは?」と思われがちですがそうではありません。部活や学校行事に力を入れ、豊かな人間性を育てることに取り組んでいる学校が多いのです。
これは社会に出てリーダーとして仕事をしていくうえで必要な、問題解決力やコミュニケーション能力を育てることに繋がっています。
公立中高一貫の試験内容は?
調査書、面接、作文、適性検査を組み合わせて試験をします。多様な方法を組み合わせて行うことで、その学校の特色に合った入学選抜を行います。ちなみに首都圏では、適性検査での試験が一般的です。
調査書
一言でいえば通知表です。これを点数化したものです。学校の勉強は勿論ですが、生活態度が重要になります。
とはいえ調査書のために生活面をきちんとさせようとしても、子供には理解できず行動を改めさせるのは難しいことです。ですから日ごろから正しい行いや判断力を育ててあげることが大切。毎日の積み重ねが調査書を良くするためには必須なのです。
面接
6年間の意欲をアピールし、自分がこの学校になぜ行きたいのかを子供がしっかり伝える場です。学校により異なりますが、グループ面接と個人面接があります。
内容は志望動機や学校生活で何がしたいか、自分の長所、短所、好きな教科、将来の夢などを聞かれる傾向があります。
控室での態度や入室、着席のマナー、受け答えの仕方、退室の仕方等様々な細かいルールはありますが、緊張しすぎて何も答えられなくなっては本末転倒。毎日の生活できちんと身につけておきましょう。
作文
頭の柔軟性や読解力、理解力を問われます。グラフから資料を読み取る力を問われたり、環境問題についての問題だったりと傾向は様々。
例え作文が試験になかった場合でも、適性検査に文字数の多い問題が出る場合がある傾向もあります。そのため、しっかり文章にまとめる力や自分の意見を限られた文字で書けるように訓練することが大切になるのです。
適性検査
適性検査であって、各教科の知識を直接問う私立の中高一貫校の入試問題とは異なり、学力検査ではないとされています。思考力、表現力など総合的な能力を検査されます。
そのため、考え答えを導き出す適性検査の学習は将来役に立つと言われています。
公立中高一貫校受験に塾は必須?家での対策
近年小学生の通塾率は高くなり、公立中高一貫校を受験する子供も例外ではなく、残念ながら塾に行かずに合格する子供は少ないのが実情です。
ただし、入塾するかしないにかかわらず家庭で行える対策はありますので、次のような対策を行ってみましょう。
塾の模試を活用する
塾で定期的に開催されている模試を活用することで、自分のレベルが分かります。私立中学受験とは問題傾向が異なりますが、基礎学力は必要です。そのためきちんと学力が身についているか確認ができ模試は有効なのです。
受験後も模試の答案を復習し、効率よく学習を進めましょう。
通信教材で学ぶ
塾よりも費用が安価な通信教材で対策するのもおすすめの方法です。z会や進研ゼミには公立中高一貫校対策のコースもあり、適性検査にきちんと対応しています。そのため安心して学習を進められます。
もちろん受験対策が始まる前から、家庭の基礎学力UPのために活用するのもおすすめ。興味がある場合は資料請求をし、親子で検討してみましょう。
本を読む
読解力、語彙力、表現力は一朝一夕では身に付きません。国語は塾に入ってもなかなか成績を上げられない積み重ねの教科の一つと言われています。
学研より出版された「公立中高一貫校に入る!2011年」にも、「公立中高一貫校の対策前に本を読むことをまずさせましょう」と書かれていましたが、公立中高一貫校受験のためだけでなく、子供には多くの本を読める環境を作ってあげることが大切。読書で培った能力は、子供にとっての財産になるのです。
色々な経験をする
公立中高一貫校の問題傾向は、思考力、判断力、表現力が問われます。受験対策が始まる前に、子供に多くの「なぜ?」「どうして?」「どうやったらうまくできる?」と考える経験をたくさんさせましょう。
例えば、竹とんぼを作って一緒に飛ばすという遊びの中で、どうしたらもっと遠くに飛ばせるのかを遊びながら考えさせるなど、遊びを使ってもよいでしょう。
子供は楽しいことから多くのことを学びますので、親もしつけや関わりの中でも共有型しつけや共育を心掛けることをおすすめします。
公立中高一貫校の受験対策は、まだ受験を決めかねている幼児や小学校低学年のお子さんでも取り組めるものがあります。中学受験に使わなくても思考力が身に付きますので、子供の能力開発として親子で取り組んでみるとよいでしょう。
公立中高一貫校を受験させる親の心構え
塾に行っても、小学校の成績がオール5でも、学級委員などをしていても、自分の意志で受験しても、中学受験をする子供達は早い段階から準備をしていますので、落ちる子は落ちています。
また入試がゴールではないため、入学後に授業や学校生活をハードだと感じて落ちこぼれる子は、一般の公立中学校より多く、入学後に家庭教師や塾などで勉強へのサポートを続けている家庭も実は多いです。
公立中高一貫校での生活は、基本的な生活習慣やマナー、勉強習慣などの家庭教育が身についていないと、つまずきやすい傾向があります。入学後に楽しく生活するためには、学びへの本人の強い意思が必要不可欠です!
親に言われてなんとなく受験する、あるいは友達が受験するから自分も受験するなど、子供の本意や能力に沿わない場合、入学後に成績低迷や不定愁訴、不登校などに繋がることもあります。
そうなってしまうと、ちょうど思春期とも重なりますので本人が自信を失うだけでなく、一般の公立中学生が習う学習内容すら身につかず、大学受験の大きなマイナスになることもあります。そのため入学後に一般の公立校に転校させるご家庭も少なくありません。
公立中高一貫校を受験させる際は子供の意思を大切にし、入学後も成績だけでなく子供の不定愁訴や起立性調節障害などの思春期に多い体調不良に気を配り、通塾など親の手厚いサポートが必要になるケースもあることを心得ておきましょう。