お膳立て症候群のパパママが招く子供への悪影響にご用心!
お膳立て症候群のパパママが子供に招く悪影響は、子供のみならず家族の将来に大きな影を落とします。
「私がいないと本当にダメなんだから」「この子は人より幼いから」と思っている溺愛パパママ、親心のつもりが子供のやる気や意欲といった自立に必要不可欠なエネルギーを奪っているかもしれませんのでご用心ください。
お膳立て症候群とは?度を越してお膳立てをする過干渉な状態
お膳立て症候群とは、子供のやることなすことに度を越してお膳立てをする状態を指す言葉。正式な病名ではなく、最近耳にする機会が増えた俗語です。
例えば、食事を一人で食べられる年齢なのに、親が「こぼすから」「遅いから」とご飯を食べさせてしまう行動も、お膳立て症候群の親がしがちな行動の一つ。
多かれ少なかれ、子供可愛さについつい「お膳立て」してしまうのが親心ですが、「親心」「愛情」という名目で無意識に度を越したお膳立て症候群になってしまうと、子供の精神的成長を阻害する悪影響を及ぼしてしまいます。
お膳立て症候群が子供に与える悪影響|やる気が失われるだけじゃない!?
幼児期の子供は幼児的万能感を持っているのが普通ですが、現実にさらされることで徐々にその万能感は真実ではないと気づき、自らどうにかしようと動く自主性が育っていきます。
ところが失敗しそうになったり、困っていたり、泣いているからとお膳立て症候群の親が頼まれもしないのに手出し口出しをし過ぎると、子供自身が自ら問題解決をする必要がなくなります。自分が行わなくても親が勝手にしてくれるため、常に万能でいられるからです。
お膳立て症候群の親が何とかしてあげ続けると、子供はいつまでも万能感を持ち続けたまま大きくなってしまい、その結果自分の人生を他人任せにし、問題があれば親や他人や世の中のせいにする人格に成長してしまうなど、精神面の健全な成長が損なわれる悪影響を受けてしまいます。
- 自分から行動するやる気や意欲を失う
- 自主性が育たない
- すぐにあきらめる
- 打たれ弱い
- 登校拒否や引きこもりになる
- 常に誰かが何とかしてくれると思うようになる
- 無責任になる など
親は子供を守っているつもりでお膳立てをしますが、子供自身に感情をコントロールし課題を考えて解決したり失敗を克服したりする成功経験が乏しいと、自信をもって生きていくことが困難になります。
つまり親の過度なお膳立てによって、子供は自立への芽を摘まれるという大きな悪影響を受けてしまうのです。
お膳立て症候群の親の心理|実は子供ではなく自分への愛!?
「子供に失敗のない幸せな人生を送ってほしい」「能力を最大限に伸ばして欲しい」と願うのは、親ならば当たり前の感情です。
けれどお膳立て症候群の親の場合、お膳立てをする愛情が実は子供ではなく自分自身への無自覚な自己愛であるケースが多いです。
そこには子供の失敗や才能を目の当たりにした親ならば、誰もが一度や二度は思ったことがある、次の様な心理が働いています。
- 自分自身が不快になり耐えられない
- 子供の失敗への尻拭いが面倒
- 自分と同じ失敗をさせたくない
- この子には自分がいないとダメだ
子供へのお膳立てはマイナスばかり?やり方次第でプラスにもなる
もちろん子供へのお膳立てはマイナスばかりではありません。やり方次第で人格形成にプラスに働くこともあります。
例えば逆上がりができずに相談してきた子供に対し、親が一緒にコツを調べることでモチベーションをアップしてあげ、手を添え何度か回転する感覚を体験させたら、あとはできるようになるまで見守っているというケースです。
子供が小さいうちは、ハードルの高い課題を自分自身の力でクリアしやすくなるお膳立てをすることが、子供の人格形成に重要な役割を果たす「達成感」や「自信」を与えるのに役立ちます。
けれど残念ながらお膳立て症候群の親の場合、子供自身の力で達成できるハードルの低い課題にまでHELP要請がないのに手を出してしまいます。
子供にしてみればやる気や挑戦する勇気があったのに、お膳立て症候群の親に課題そのものを奪われたり課題への義務感や失敗への恐怖心を植え付けられたりし、自立するまでに蓄えるべき達成感や挑戦する勇気を、本来ならばくれるはずの親に奪われてしまうのです。
中には子供の気持ちなどそっちのけで、親がお膳立てへの強い喜びや自分の存在意義を見いだすという赤信号の親子関係を築いているケースもあります。
お膳立て症候群は心の病気?共依存への注意
共依存とは、子供や病人など依存が必要な人から助けを求められることに自分の存在価値を見いだし、相手の依存を継続させることに手を貸す人間関係ことです。
思春期に形成される自分固有の価値観や生き方(=アイデンティティ)が失われ、間接的に子供の無力さや依存者の病気に依存している「自己喪失の病気」とも言えます。
次の共依存チェックに一つでも当てはまる場合は、ただのお膳立て症候群ではなく共依存へと進んでいる恐れがあります。子供への考え方や接し方をすぐに改めましょう。
いくつ当てはまる?共依存チェック
- 子供に口うるさく「勉強しなさい」「片づけなさい」と言い、子供の拒否反応を強くしている
- お膳立てすることで、子供が自分の苦手な面に気づかないようにしている
- 子供の失敗の後始末をし、学校や周囲に子供に問題行動がないように見せかけている
- 性格だから仕方がないと、子供の問題行動を問題と捉えない
- 甲斐甲斐しく子供の世話をし、悲劇のヒロインを演じている
- 大変な時も子供を人に預けられない(預けたくない)
「こんなの、どの親も当てはまるでしょ」と軽視しているアナタ。このチェックは厚生労働省のアルコールへの共依存の例を、子育てに置き換えたものです。アルコール依存症患者への家族の対応に置き換えて考えてみてください。
アルコール依存症の人に「お酒はやめて」と言っても、強く反発してもっと飲んでしまうだけです。アルコール依存症の人が失敗しないように手を貸せば、本人が依存を自覚できずにお酒をやめる必要性を感じられません。アルコールの失敗を周囲に隠して円満を装えば、誰も助けることができません。「もともと乱暴な人だから」とアルコールの影響を否定すれば、アルコールから脱する必要がなくなります。
共依存の自立させない親に育てられ、自力で課題を解決しないまま生活するという負のループの中で育てられるのは子供にとって悲劇でしかありません。身に覚えのあるパパやママは、今からでも脱共依存の子育てにチェンジし、自立させられない親を卒業しましょう。
海外でも問題視される!お膳立て症候群
お膳立て症候群は日本国内だけに見られる現象ではありません。スウェーデンではお膳立て症候群のように、子供の行く手に先回りしてお膳立てする親のことを「カーリングペアレント」と言います。
スポーツのカーリングからとった言葉で、ブラシで障害物を排除するカーリングのように子供の進む先を親が平らに地ならしすることから名付けられています。
海外でも子育ての研究結果として、親のお膳立てが子供や子供の人間関係に悪影響を及ぼすことが明らかになっているため、問題視されているのです。
お膳立て症候群から抜け出す7つの方法
子供の成長と共に、勉強や習い事へのやる気のなさに悩まされる親が増えますが、その原因が親のお膳立て症候群であるケースはとても多いです。
身に覚えがある場合は、次の7つの方法をすぐ実践するように行動を起こし、お膳立て症候群から脱出しましょう。
1子供以外の自分の世界を持つ
没頭できる趣味はストレス解消に大変役立ちます。
子育て中は子供の失敗や孤独、子育てや金銭面の不安など様々なストレスに晒されますが、子供から離れて趣味や仕事に没頭する時間を持つことで、ストレスから立ち直る力が強くなり子供への依存の必要がなくなります。
子供のイヤイヤ期は、親が子供との距離を見つめ直すことが必要な時期でもあります。ぜひ自分らしくキラキラ輝いて生きるために、そして子供の自立のために主婦におすすめの趣味などの子供と何の関係もない没頭できる世界を持つようにしましょう。
2子供の課題と自分の課題を分ける
アドラー心理学には「課題の分離」という考え方があります。人と自分の課題を分けて考えるという、対人関係のストレス解決に役立つ考え方です。
お膳立て症候群の親の一番の課題は、子供の課題と自分の課題を分離して考えること。子供の課題は親であるアナタが解決すべき問題ではありません。
子供が助けを求めた時、子供が課題をクリアするためにはどんなサポートをすることで子供が課題をクリアしやすくなるのかを考えて行動に移すことこそが、あなたが行うべき課題なのです。
例えばボタン掛けが上手くできずにかんしゃくをおこす子供には、怒りをコントロールしやすくするためにぬいぐるみをプレゼントしたり、布絵本で遊びながらトレーニングさせたり、自分で怒りを落ち着けたら褒めてあげたりなどのサポートです。
幼児がぬいぐるみに執着する心理についてはこれまで世界でも研究されてきましたが、実は課題のクリアにプラスになるからなのです。
3失敗から学ばせる姿勢を持つ
靴ひもをキチンと結ばずに踏んづけて転ぶ、コップをテーブルギリギリに置いて落とすなど、子供によくある失敗をあなたはどれくらい積極的にさせていますか?
「まだまだ小さいから」と決めつけて、子供が使いたがっているのにハサミを使わせないなど、過保護な行動をしていませんか?
あなたの人生を振り返って下さい。今あなたの助けとなっている本当に大切な信念や常識の多くは、人から言われたことではなく失敗から学んだことのはずです。
幼児期の失敗は家庭内で解決できたり、誤れば許されたりするレベル。つまり幼児期は失敗をたっぷりさせる好機なのです。後遺症が残るほどの危険がない範囲であれば、できるだけ子供の選択を受け入れて失敗から学ばせる勇気を持ちましょう。
4子供の自由を尊重する
子供は親の所有物ではなく、人権を持った親とは別個の存在です。そのため遊びや考え方など、親とは違う価値観や思考をすることもあります。当たり前のことですが日常生活を振り返ると、意外と子供の自由を尊重できていない親が多いです。
例えば、子供は時々親から見て悪い感情も持ちます。実はそれも成長過程の一つなのですが、親はついつい「そんな風に言わないの」「いい子はそんなこと言わないよ」などと否定してしまいがち。
ところが率直な自分の考えを否定されると、子供は自由に自分の考えを親に言えなくなってしまい、度が過ぎるといい子症候群になってしまうこともあるんです。特にお膳立て症候群の親は、「失敗=悪いこと」と決めつけがちですので注意しましょう。
5アドバイスはアイメッセージで
子育て中は「リスクの大きすぎる失敗だから、さすがに少しアドバイスをすべき」と思う時があるものです。
お膳立てだと分かっていてもどうしてもアドバイスしたい時は、主語をあなた(YOU)ではなく私(I)にするアイメッセージにして伝えましょう。
アイメッセージにすると例えば「片づけなさい」は「ママは片づけて欲しいな」、「バカって言わない」は「ママはバカって聞いて悲しいな」など、命令ではなく選択肢の一つになります。
6バランスを意識する
何事もバランスが大切です。まずは子供をよく観察し、程よいバランスを意識して子供と接するようにしましょう。
例えば子供の甘えを毎回全て受け止めるのをやめて、環境の変化があった時や何らかの理由からいつもと様子が異なる心配な時だけにする。
あるいは不安からではなく怠け心から甘えてくる時は自分でできることを自分でするように促し、できたらたっぷり褒めてあげる。など、甘えへの対処のバリエーションをいくつか持つことで、自然にバランスがとりやすくなります。
7共有型しつけを心掛ける
お膳立て症候群の親の場合、親が子供より上の立場として命令する、あるいは親が子供より下の立場と感じさせるほど子供の犠牲になっているケースが多いです。
ところがこうした親子関係では子供の自立心が育ちにくいことが明らかになっています。ぜひ子供と共に喜びや楽しさを共有し、言葉や態度で上下関係を押し付けない「共有型しつけ」を心掛けてみましょう。