子供に伝わる話し方:幼児から小学生まで届く言い換えと合言葉の使い分け
同じことを何度も言っているのに動いてくれない。そんなときに効くのは、声を大きくすることではなく、言葉を子供のサイズに置き換えることです。「静かにして」を「ネズミの声で」に変えるだけで、伝わり方も、その後の空気もまるで変わります。
ここでは、幼児の話し方や聞き取り方の特徴をふまえた日常の言い換え、園や警察・消防などで使われている合言葉、そして幼児期とはコツが変わる小学生への伝え方までを順にまとめました。先輩ママやパパ、園の先生から寄せられた実例も、そのままご家庭で使える形で紹介します。
子育て4コマ漫画:子供に伝わる話し方とは?使える合言葉
幼児の話し方の特徴を知ると、伝わる言葉が見えてきます
伝え方を工夫する前に知っておきたいのが、幼児の話し方と聞き取り方の特徴です。ここが分かると、「なぜ伝わらなかったのか」が見えてきて、言い換えの精度が一気に上がります。
幼児期の子供は、耳から入った長い文を頭の中に置いておく力がまだ育っている途中です。「早く着替えて、歯を磨いて、それからカバンを持ってきてね」と3つ並べると、最後の「カバン」しか残らないことも、最初の「着替え」だけで止まってしまうこともあります。これは聞く気がないのではなく、一度に扱える情報の量が大人とは違うためです。
また、幼児は抽象的な言葉をイメージに変換するのが苦手です。「ちゃんと」「きちんと」「静かに」「気をつけて」は、大人には具体的に見えても、子供の頭の中では絵になりません。絵にならない言葉は、行動に変換されないまま流れていきます。逆に「ダンゴムシ」「ライオン」「こおり」のように、姿かたちが思い浮かぶ言葉は、聞いた瞬間に体が動きます。子供に伝わる話し方とは、要するに絵になる言葉を選ぶことなのです。
もうひとつ、幼児は興味のあることは驚くほど覚えるのに、興味のないことはすぐ抜けていきます。恐竜の名前は10種類言えるのに、靴をそろえることは毎日忘れる。これも記憶力の優劣ではなく、注意が向いた対象だけが残るという時期特有の特徴です。だからこそ、伝えたいことを面白い言葉やゲームの形に乗せると、興味の側に引き寄せることができます。
言葉が舌足らずに聞こえるのは、口と舌の使い方が育っている途中だから
「うちの子、喋り方が舌足らずかもしれない」「話し方がおかしいのでは」と気になることがあります。けれど発音は、手先の器用さと同じように、体の育ちに沿って少しずつできる音が増えていきます。自治体が開設している「ことばの教室」の案内などでは、発音できるようになる音のおおよその順番が、次のように示されています。
| 年齢の目安 | 発音しやすくなる音 | この時期によく聞かれる言い方 |
|---|---|---|
| 2歳代 | 母音、パ行、バ行、マ行、ヤ行、ワ、ン | 「まんま」「ぶーぶー」など唇を使う音が中心 |
| 3歳代 | タ行、ダ行、ナ行 | 「さかな」が「たかな」になる |
| 4歳代 | カ行、ガ行、ハ行 | 「かめ」が「ため」になることがある |
| 5歳代 | サ行、ザ行、ラ行 | 「らくだ」が「だくだ」になる |
サ行やラ行は、舌先を細かく動かして出す音です。順番として最後のほうに並んでいるのは、それだけ舌の使い方が難しいから。3歳の子が「せんせい」を「てんてい」と言うのは、むしろ順番どおりに育っている姿だといえます。
この時期に気をつけたいのが、大人がその場で言い直させてしまうことです。「せ、ん、せ、い、でしょ」と何度も練習させられると、子供は話すこと自体を面倒に感じてしまいます。おすすめは、正しい音をこちらの返事にそっと混ぜる方法です。
- 子「てんてい、みてくれた!」→ 親「そう、先生が見てくれたんだね。嬉しかったね」
- 子「おたかなたべる」→ 親「お魚、食べる? 今日は焼き魚だよ」
訂正ではなく、会話として正しい音を返す。これなら子供は否定された感じを持たずに、正しい音を何度も耳にできます。発音の育ち方には幅がありますので、気になるときはお住まいの自治体の子育て相談窓口や、乳幼児健診の場で相談してみると、その子の様子に合わせた見通しを教えてもらえます。
何を言っているか分からないときの、聞き返し方
子供の言葉が聞き取れないとき、つい「え?」「もう1回」と繰り返してしまいがちです。ところが同じ聞き返し方を3回続けると、子供のほうが諦めて「もういい」と背を向けてしまうことがあります。
そんなときは、聞き返す代わりに、分かった部分だけを声に出して確かめてみてください。
- 「公園の話だよね? 公園で、だれかと会ったの?」
- 「今のは、うれしかったこと? それとも嫌だったこと?」
全部を聞き取ろうとせず、場面や気持ちの枠から埋めていくと、子供は残りを身ぶりや別の言葉で補ってくれます。指をさしてもらう、絵を描いてもらう、その場まで連れて行ってもらうのも立派な方法です。言葉が足りない時期は、言葉以外の手段を一緒に使うほうが、親子ともにストレスが減ります。
子供に伝わる話し方~日常の「言い換え」編~
小さな幼児に難しい言葉で説明しても、なかなか理解できませんし、一度理解してもすぐに忘れてしまいがちです。何度も同じことを繰り返して説明しなければならないパパやママはイライラしてしまうかもしれませんが、それはお子さんに聞く気がないせいでも、頭が悪いからでもありません。
興味のあることは覚えやすく、興味がないことは覚えにくい。それが幼児期の記憶の特徴です。イライラしてしまう時は、面白く言い換えたり、ゲームのようにすることで、お子さんに伝わる話し方を心がけましょう。ここからは、園や家庭で実際に使われている言い換えを紹介します。
ダンゴムシのポーズ!災害時の安全な姿勢
保育園や幼稚園で指導されることが多い「ダンゴムシのポーズ」。これは、地震などの揺れを感じたときに頭を守る姿勢を、お子さんに伝わりやすいように言い換えたものです。具体的には、地面に両ひざと両ひじをついて体を丸め、両手で首の後ろ(後頭部)を押さえる姿勢をとります。
「頭を守って低くなって」と言葉で説明しても、幼児にはどの姿勢のことか分かりません。けれど「ダンゴムシになって」なら、公園で丸まる虫を見たことがある子はすぐ再現できます。園でこの言葉が広く使われているのは、指示を聞いてから動き出すまでの時間が短くて済むからです。
ご家庭で練習するときは、遊びの中に混ぜてしまうのがおすすめです。「ダンゴムシ!」と声をかけたら丸まる、「ちょうちょ!」と言ったら立ち上がる、というように動物ごっこにすると、子供は繰り返したがります。未就園児の場合は、低い姿勢で体を丸めているパパやママのお腹の下に入ってダンゴムシのポーズをすることを教えておくと、その場から離れていってしまうことがなく、すぐそばに来てくれます。
ライオンの声とネズミの声!声の強弱をコントロール
元気よく大きな声を出してほしい時は「ライオンの声で」、ヒソヒソと小さな声で話してほしい時は「ネズミの声で」というように、動物の声に言い換えて声のトーンを伝える方法があります。
小さな子供にとって「静かに」は、声を出すなという意味なのか、少しなら話していいのか、判断がつきません。「ネズミの声で話そうね」なら、出していい音量まで含めて伝わります。電車の中で息子さんが大きな声を出してしまったとき、耳元で「ここはネズミさんのおうちだよ」と言ったら、そのままヒソヒソ声で話し続けてくれた、という声もよく聞かれます。
逆に、朝の挨拶や返事など、はっきり声を出してほしい場面では「ライオンの声、いける?」と誘うと、子供は張り切って応じます。声の大小を自分で切り替える経験は、園や学校での集団生活にもそのまま生きてきます。
幼稚園や保育園、小学校、療育の現場などで使われているお子さんに伝わる話し方ですので、「静かにしなさい!」「元気よく!」「こら!」といった、お子さんにとって抽象的で伝わりにくい伝え方の代わりに使ってみましょう。
「あと3回で終わり」遊びをやめさせたい時の言い換え
公園や支援センターからの帰り際は、一日のうちでもっとも言葉が届きにくい場面かもしれません。「もう帰るよ」「早くして」を繰り返しても、子供の中では遊びが途中のままだからです。
ここで効くのが、終わりを数や順番に置き換える言い方です。時計が読めない年齢でも、数えることならできます。
- 「すべり台、あと3回すべったら帰ろう。1回目いくよ、せーの」
- 「ブランコ10回こいだらおしまい。一緒に数えてくれる?」
- 「靴を履くのと、帽子をかぶるの、どっちを先にする?」
ポイントは、宣言したら必ずそこで切り上げることです。「あと3回」と言ったのに5回になり、7回になると、次からその言葉は効かなくなります。逆に一度きちんと終われた経験ができると、子供のほうから「あと2回ね」と言い出すようになります。
それでも切り替えられない日はあります。そんなときは、次の楽しみを先に見せてしまうのも手です。「帰ったらお風呂でアヒル浮かべようか」と、帰宅後の場面を1つ渡すと、気持ちの行き先ができて足が動きやすくなります。
否定形を肯定形に置き換えると、行動に変わります
「走らないで」「こぼさないで」「触らないで」。一日に何度も口にしている言い方ですが、幼児の頭には「走る」「こぼす」「触る」という映像のほうが強く残ることがあります。してほしくない動作を思い浮かべさせてしまうためです。
そこで、してほしい行動のほうを言葉にします。
- 「走らないで」→「アリさんの速さで歩こう」
- 「こぼさないで」→「コップは両手で持つと安心だね」
- 「触らないで」→「手はポケットにしまっておこう」
言い換えたその場では反応が薄くても、同じ言い方を続けていると、ある日子供のほうから「アリさんで歩くんだよね」と口にするようになります。スーパーの通路で走り出しそうになった子に「アリさん!」と一言かけるだけで止まってくれるようになったら、その合言葉はもう定着したということです。
子供に伝わる話し方~安全・生活の「合言葉(標語)」編~
お子さんに伝わる話し方は、さまざまな「合言葉」としても活用されています。入園後や入学後に、園や小学校を近所の警察、消防、役所の人が訪れて教えてくれることもある標語をご紹介しますので、知らない場合はぜひお子さんに教えてあげてください。
合言葉が覚えやすいのは、頭文字が身近な言葉になっていて、一度聞くと耳に残るからです。総務省消防庁や文部科学省の防災教育の資料でも、低学年向けの避難訓練の標語として頭文字をつないだ言い方が紹介されており、とっさの場面で思い出しやすい形が選ばれています。
また、ご家庭の中でも応用し、本当に伝えたいことを合言葉にしてみると、パパやママの脳トレになるだけでなく、大切なことがお子さんに伝わりやすくなるのでぜひ試してみてください。
い・か・の・お・す・し/つ・み・き・に・お・に(防犯標語)
「いかのおすし」は、平成16年(2004年)に警視庁少年育成課と東京都教育庁指導企画課が考案した防犯標語です。現在は全国各地に広がり、地域によっては応用編の「きょうはいかのおすし」などと指導されている所もあります。
- いかない(知らない人についていかない)
- のらない(知らない人の車に乗らない)
- おおきな声を出す(危険な時は大きな声を出す)
- すぐにげる(危険を感じたらすぐに逃げる)
- しらせる(怪しい人に出会ったら親や先生などに知らせる)
「つみきおに」も、愛知県警が子供に伝わる話し方として普及に努めている防犯標語で、今全国に広がり始めています。下校時など、お子さんが一人になる時間帯に備えて、防犯ブザーの使い方とあわせて、こうしたお子さんに伝わる合言葉を教えておくと安心です。
- ついていかない
- みんなといつもいっしょ
- きちんと知らせる
- おお声で助けを呼ぶ
- にげる
たとえ声をかけられても知らない人にはついていかない、みんなといつも一緒にいる、出かける時や異変があった時はきちんと知らせる、連れて行かれそうになったら大声で助けを呼ぶ、怖いと思ったらすぐに逃げるという意味があります。
家庭で教えるときは、怖い話として伝えるより、ごっこ遊びの形にするほうが身につきます。「お母さんが知らない人役をやるね。『お菓子あげるからおいで』って言われたらどうする?」と場面を演じてみると、子供は自分の言葉で「いかない!」と答えます。答えられたら、その場でしっかり褒めてください。頭で覚えた合言葉が、口に出す練習を通して体の動きに変わっていきます。
お・か・し・も・ち/お・は・し・も(防災標語)
「おかしもち」は、お子さんに伝わる話し方として広く知られている防災標語です。他にも似たような防災標語に「おはしも」があります。避難訓練の際に消防署の職員などによって指導が行われていますので、ご存知のパパやママも多いでしょう。
- おさない
- かけださない
- しゃべらない
- もどらない
- ちかよらない
避難の際には、押さない、駆けださない、喋ったり元の場所に戻ったりしない、近寄らないという意味があります。「おはしも」は、押さない、走らない、喋らない、戻らないという意味です。短いので、小さな幼児には「おはしも」の方が覚えやすいかもしれません。
地域によって使われている言葉が違うのは、子供がイメージしやすい形を各地で工夫してきたためです。自治体の中には、「おはしも」に「ち」を足して「お箸」と「お餅」という誰もが知っているものを連想させ、とっさのときにも思い出しやすくしている例もあります。お子さんの園や学校でどの合言葉を教わっているかを聞いておき、家庭でも同じ言い方に揃えると混乱がありません。
「おはしも」避難訓練の合言葉
7歳の小学生の子供がいる母親です。保育園の頃から月に一度は避難訓練などが行われていますが、小さな子供でも覚えやすい短い言葉で身につけさせているようでした。
『お』は押さない、『は』は走らない、『し』は喋らない、『も』は戻らないで教わったそうです。保育園の頃、子供からこの合言葉を聞きました。難しい言葉ではなく分かりやすかったようで、ちゃんと意味も理解しているようでした。
し・じ・み・と・れ・た(生活習慣定着への合言葉)
「しじみとれた」は、鳥取県の教育委員会が推奨してきた、正しい生活習慣をお子さんたちに定着させるための合言葉です。
文部科学省では「早寝・早起き・朝ごはん」を推進していますが、「しじみとれた」はさらにきめ細やかな生活習慣の指標となっています。しつけの仕方に自信がないパパやママにも役立つでしょう。
- しっかり朝食を食べよう
- じっくり本を読もう
- みなり(服装)を整えよう
- そとで元気に遊ぼう
- テレビを長時間見るのをやめよう
- たっぷり寝よう
6つ全部を一度に始めようとすると、家庭のほうが息切れしてしまいます。まずは1つだけ選んで、朝の会話に混ぜてみてください。「今日は『み』からいこうか、お洋服そろってる?」という具合に、頭文字を呼びかけの合図に使うと、指示ではなくクイズのような響きになります。
紙に6文字を縦に書いて壁に貼り、できた項目にシールを貼っていく方法も定番です。文字が読めない年齢なら、絵で描いて並べても構いません。自分でシールを貼れることが嬉しくて、朝ごはんの席に自分から座るようになった、という声もあります。
ブ・タ・ベ・ル・サ・ハ・ラ(自転車点検標語)
「ブタベルサハラ」は、子ども向けの自転車教室などで利用されている自転車点検標語です。
小学校3~4年生になると、親任せではなく、お子さん自身も自分の自転車に異常がないか確認することが大切になりますが、点検項目を覚えるのは少し難しいかもしれません。しかし、こうした合言葉を使えばお子さんに伝わる話し方ができますので、毎日の出発前に自分でチェックする習慣がつきやすくなります。
- ブレーキは効く?
- タイヤは大丈夫?(空気圧、溝)
- ベルは鳴る?
- サドルの高さやグラつきは大丈夫?
- ハンドルや反射板は大丈夫?(曲がり、汚れ)
- ライトはつく?(向き)
タイヤは空気圧や溝のチェック、サドルは身長に合っていてグラグラしないか、ハンドルは曲がっていないか、反射板は壊れたり汚れたりしていないか、ライトはつくだけでなく向きもあっているかといった利用前の点検に、お子さんだけでなくご家族で「ブタベルサハラ」を利用しましょう。
大人が黙って点検してしまうと、子供は自分の自転車を見なくなります。「今日はブから読んでみて」と声をかけ、子供が唱えて、大人が一緒に触って確かめる。この形にすると、点検そのものが親子の会話になります。
ま・け・な・い・よ(少年非行防止の合言葉)
「まけないよ」は、宮城県警の少年課などが推奨してきた非行防止の合言葉です。
言葉の響きがそのまま「負けないよ」になっているところがこの標語の良いところで、禁止事項を並べているのに、聞いた子供には前向きな宣言として届きます。小さいうちから親だけでなく周囲の大人たちみんなで教えてあげたい、お子さんに伝わる話し方でしょう。
- まんびきしない
- け-タイの危険に注意する
- なぐらない
- いじめない
- よ遊びしない
小学生になったら、「まけないよ」
二児の母です。宮城の親戚に教えてもらった合言葉は「まけないよ」でした。万引きしない、携帯危ない、殴らない、いじめない、夜遊びしないという意味の「まけないよ」は、小学生のお子さんに教えるのにぴったりな言葉だと思います。
宮城の親戚のおばさんは、うちの子が小学生になると知って「小学生になったらまけないよ、だよ!」と言い聞かせてくれました。男の子にはかっこいい言葉に聞こえるらしく、その名の通り様々な悪い誘惑に負けないで頑張ろうという気になったようでした。
我が家だけの合言葉は、こう作ると続きます
既存の標語をそのまま使うだけでなく、ご家庭の「毎日言っていること」を合言葉にしてしまう方法もあります。作り方は3つの手順だけです。
| 手順 | やること | 例 |
|---|---|---|
| 1 | 1週間で一番よく言っている言葉を3つ書き出す | 手を洗って/脱いだ服を出して/宿題は? |
| 2 | それぞれを1文字に縮める | て・ふ・し |
| 3 | 並べ替えて、意味のある言葉にする | 「ふ・て・し」より「て・ふ・し(手・服・宿題)」など、家族で言いやすい順に |
コツは、項目を4つ以内にすることと、子供にも一緒に考えてもらうことです。自分が名付けた合言葉は、子供にとって自分のものになります。「これ、なんて名前にする?」と相談すると、大人では思いつかない語呂を出してくることもあり、そのほうがよく定着します。
うまくいかない典型は、大人が完璧な標語を作って一方的に貼り出すパターンです。数日は物珍しさで動きますが、そのうち壁の一部になってしまいます。週に一度「今週の合言葉、まだ使えてる?」と点検する会話を入れると、飽きる前に更新できます。
先生が教えてくれた!幼稚園・保育園で使える子供に伝わる話し方
幼稚園や保育園では、多くの子供たちを少ない人数の先生方が指導しなければなりません。そのため、お子さん一人ひとりにきめ細やかな指導をするためには、伝え方が非常に重要になります。
そんなお子さんに伝わる話し方に長けた先生方に、3歳くらいのお子さんに有効な伝え方について聞いてみました。ぜひあなたのご家庭でも参考にしてみてください。
「おやますわり」でお話を聞こう
元幼稚園教諭をしていた現役ママです。お尻を地面につけて膝を曲げて座る「体操座り」を教えるときは、「お山すわり」と教えると3歳くらいの小さな子供に伝わりやすいです。幼稚園で働いていたときに知りました。
まず自分が体操座りをして見せて、脚が「おやま」になっていることを説明しましょう。「体操座り」という言葉ではイメージしづらい座り方ですが、脚の形が山に似ている「おやますわり」ならイメージしやすいです。3歳の子はすぐ理解して座れるので、集団で話を聞いたりする場面でスムーズに活動ができました。
忍法壁ぺったんの術
女性の教育関係者です。3歳児に有効な、お子さんに伝わる話し方として、先輩がやっていたのを真似していました。なんでも忍者修行をしているストーリーの中に入れてしまいます。
例えば片側に寄って歩いてほしい時などは、「端っこに寄って」などというとわざと違うようにしようとする子などもいますが、「ニンニン!修行でござる!できるかな?」などとニンニンフレーズを使ってゲーム感覚にしてしまうと、知らず知らずのうちにこちらの意図通りになります。
他にも止まってほしい時に「石の術」と言ってみるなど、色々と応用ができます。
2つの実例に共通しているのは、指示を「役割」に変えている点です。座りなさいではなく山を作る人になる、寄って歩きなさいではなく忍者になる。役割を渡された子供は、言われて従うのではなく自分で演じ始めます。指示に反発しやすい3歳前後の時期に、この形はとても相性が良い伝え方です。
まだまだある!ママパパが教えてくれた子供に伝わる話し方
パパやママの中にも、どこかで習った合言葉や自分で編み出した言い換えを上手く取り入れて、お子さんに伝わる話し方で楽しく子育てをしている人たちがいます。あなたも今日から参考にして、育児ストレスを減らすことに取り組んでみましょう。
「ぶたさん、ブー!」でお鼻をかもう!
7歳の娘の母親です。娘が2歳くらいの頃、鼻をかむ方法を教えたくて考えた合言葉が「ぶたさん、ブー!」でした。
まず「ぶた(左)さん(右)」という声に合わせて、片方ずつお鼻の穴の上に一本ずつ指を添えます。お鼻の穴を指でふさぐイメージです。
もちろんこのまま鼻をかむと耳を痛めてしまうので、続く「ブー!」でどちらか片鼻の指を離させて鼻から息を吹かせると、立派な鼻水が出ます!リズムが良いので娘も喜んで乗ってくれました。
「わかりやすいね」と保育園の先生にも褒められましたよ。まだ小さな子には口で説明しても分かりづらいので、できるようになるまではママが手を取って教えてあげるとよいと思います。
「みがみがして」歯磨きの言い換え
ママです。教育関係ではありませんが、福祉施設で仕事をしていたことがあります。自分の歯にひどいコンプレックスを持っていたため、どんなことをしても歯磨きの習慣をつけさせたかったので、この言い換えで子供に伝えました。
子供に夜になって「歯磨きして」と堅い言葉で言っても、やはりあまり伝わらないのですね。それで「みがみがして」というように二人の子供に毎日言って聞かせました。「みがみが」というのはもちろん、歯磨きの「磨き」からきていますが、子供は言葉を重ねた方が単純にわかりやすいのです。それを毎日言っていると、自然と歯磨きをするのだなと伝わります。
「1・2・3・し~」お口にチャックをさせる時の話し方
2人の子供がいるママです。子供を静かにさせたい時、「1・2・3」と言ってから人差し指を口にあてて「し~」と言います。特に3~6歳の幼児を静かにさせる時に使える、お子さんに伝わる話し方です。
保育園の先生をやっている友人に教わりました。言う前に「みんな~」と注目させるとより効果があります。「静かにして!」というよりも「1・2・3」と注意を向けてからなので伝わりやすかったです。面白がって一緒にやるようになり、すぐにおしゃべりをやめさせることができるようになりました。
「こおりにへんしん」で静かにさせる
4歳児の男の子のママです。「こおりにへんしん!」は、息子がいとこのお姉ちゃんと「こおりおに」をしたときに、「こおり」になると「固まる」ということが理解できていたので、それから使うようになったお子さんに伝わる話し方です。
レストランなどのお店や公共機関の中で、テンションがあがってしまい、大きな声でおしゃべりしたり、はしゃぎ始めたりしたときに、息子の頭にそっと手をおいて、魔法をかけるように一言「こおりにへんしん!」というと、ピッと固まります。
その直後(間をあけてはいけません)に、「ここは遊んでいいところ?」などと質問し、自分の行動を反省させています。あえて「静かに!」というよりも、ゲームの延長線上の言葉なので、息子にはすんなり入っていくようです。
「リボンがまーえ」でトイトレや着替えが上手くなる
3歳の女の子の母です。2歳を過ぎてからトイレトレーニングを始めましたが、トイレトレーニング自体はスムーズで、便意があるとすぐに教えてくれました。しかし、パンツを履くときにいつも裏返しになったり、前後ろが反対になったりしていました。
そこで「リボンがまーえ」と言いながら直していくと、自分でもパンツを履くときにリボンを探して、見当たらなければ一旦脱いで反対にしたり裏返しにしたりして、きちんと履くことができるようになりました。これを応用して、保育園での体操着にもリボンをつけてあげると、間違わずに上手に着替えができるようになりました。
「ウソは泥棒の始まり」
私は父親ですが、10歳ぐらいまでの子供には実感でき、なおかつ少し面白く愛着のある言葉の方が伝わりやすいかと思います。
「ウソは泥棒の始まり」という言葉は、私が小さい時に親から伝えられた言葉です。子供に普通に「ウソをつくな」と叱るだけでは伝わりにくいため、なぜいけないのかという理由と、その結果起こりうる怖さを具体的に伝えることが、子供の心に伝わりやすいと考えます。
子供に伝わりやすく、子供自身も覚えてくれ、友達にも子供自身で伝えていました。そのため、親が嘘をつく場面を目撃したり、実際に子供がウソをついたりすること自体が減りました。
寄せられた実例を並べてみると、鼻のかみ方、歯磨き、着替え、静かにする場面と、内容はばらばらです。それでも共通しているのは、動作の順番が言葉の中に入っていること。「ぶた・さん・ブー」は指を添えて息を出すまでが1セットになっていますし、「リボンがまーえ」は探す場所と向きが同時に伝わります。手順が言葉に埋め込まれていると、子供は自分で再現できるようになります。
小学生を惹きつける話し方は、幼児期とはコツが変わります
幼児期に効いていた言い換えが、小学生になると急に響かなくなることがあります。「ダンゴムシになって」と言っても、照れくさそうに笑うだけ。これは反抗ではなく、言葉の受け取り方が変わったサインです。
小学生になると、話を最後まで聞いて意味を組み立てる力が伸びてきます。同時に、自分が子供扱いされているかどうかにも敏感になります。惹きつける話し方の重心は、「面白い言い換え」から「納得できる中身」へと移っていきます。
「子供に接するような話し方」から一段上げる
小学生に対して、幼児と同じ高い声・ゆっくりすぎる口調・語尾を伸ばす言い方を続けていると、内容が良くても耳に入らなくなります。本人は「子ども扱いされた」と受け取り、その時点で聞くのをやめてしまうためです。
切り替えの目安は、次の3つです。
- 声のトーンを、友達と話すときと同じ高さに戻す
- 「〜してね」ではなく「〜しよう」「〜してくれる?」と依頼の形にする
- 相手の考えを先に聞く。「どう思う?」を最初の一言に置く
一方で、幼児期の合言葉が完全に無駄になるわけではありません。低学年のうちは、家族の中だけで通じる合言葉が「うちだけの秘密」として機能し、かえって喜ばれることもあります。人前では使わない、家では使う、という線引きを本人と決めておくと長く使えます。
結論を先に言い、理由は1つだけ添える
小学生に長い説明をすると、途中で意識が別のところへ行きます。惹きつける話し方の基本は、最初の一文で結論を言い切ることです。
- 「宿題は、ごはんの前に終わらせよう。後だと眠くなって時間がかかるから」
- 「明日の準備、今やっておこう。朝バタバタすると好きなテレビが見られないよ」
理由を並べすぎると、説教の色が濃くなります。1つに絞ると、子供のほうから「でもさ」と返してきます。その返しこそが会話の入口です。「でも」が出たら、こちらは反論せずに「なるほど、じゃあ何時ならできそう?」と、決める役を渡してしまいましょう。自分で決めた時間は、言われた時間より守られます。
質問から始めると、子供のほうを向かせられる
学校の話をしてほしいのに「今日どうだった?」と聞くと「ふつう」で終わってしまう。これは質問が大きすぎるためです。範囲を狭めた質問に変えると、途端に言葉が出てきます。
- 「今日の給食で、一番おいしかったのは何?」
- 「今日いちばん笑ったのは、どの時間?」
- 「今日、ちょっと嫌だったことを1個だけ教えて」
ポイントは、答えが単語で済むこと。単語で答えられると、そこから「なんで?」「だれと?」と自然に続きます。逆に、話し始めたときに家事の手を止めずに背中で聞いていると、次からは話してくれなくなります。5秒でいいので体ごと向き直る。それだけで、話す量が変わります。
子供の心をつかむ話し方に共通する5つのポイント
ここまで紹介してきた言い換えや合言葉を見比べると、うまくいっているものには共通点があります。年齢や場面が違っても使える形にまとめました。
| ポイント | うまくいかない言い方 | 伝わる言い方 |
|---|---|---|
| 短くする | 着替えて歯を磨いてカバンを持ってきて | まずは着替えだけやろう |
| 絵にする | 頭を守って低くなって | ダンゴムシになって |
| 肯定形にする | 走らないで | アリさんの速さで歩こう |
| 選ばせる | 早くお風呂に入りなさい | お風呂と歯磨き、どっちが先? |
| 終わりを示す | もうおしまい | あと3回すべったら帰ろう |
全部を一度に実践しようとすると、話しかけるたびに考え込んでしまって疲れます。今週は「肯定形にする」だけ、来週は「選ばせる」だけ、というように1つずつ試すほうが定着します。
そして、うまく言えなかった日があっても、それで積み重ねが消えることはありません。大人でも、疲れている日は言葉が雑になります。「さっきの言い方、きつかったね。ごめん」と言い直せること自体が、子供にとっては言葉の使い方のお手本になります。
怒鳴らずに伝えるためのヒント:子供の特性を理解しましょう
小さな子供は想像力が大人ほど発達しておらず、経験も不足しています。そのため、大人が「真剣に怒れば伝わる」と思って怒っても、怒られた不快感しか残らず、本当に理解してほしいことが記憶に残らないことが多いです。ですから、大人は子供の特性をよく理解して伝えることが大切です。
例えば、小さな子供はフレーズや映像を記憶する方が得意です。そのため、言葉のみで長々と説明するのではなく、短めの面白いフレーズや絵(イメージ)を見せて説明する方が届きます。この記事で紹介してきた言い換えや合言葉が園や学校で使われ続けているのも、まさにその特性に合っているからです。
また、笑顔のパパやママから話されたことのほうが、怒られながら言われたことよりずっと素直に受け取ってもらえます。強い口調で言われると、子供は言葉の中身よりも相手の表情のほうに気を取られてしまい、肝心の内容が残りません。
言うことを聞かないお子さん、話を聞くのが苦手なお子さん、何度伝えても身につかない年齢のお子さんには、ぜひこうしたポイントを思い出してみてください。伝わらない日は、子供の理解力の問題ではなく、言葉と子供のサイズが合っていないだけかもしれません。合言葉をひとつ増やすことが、明日の朝の空気を少し軽くしてくれます。

